枕草子を読んできて(135)その1
123あはれなるもの(135)その1あはれなるもの考ある人の子。鹿の音。よき男の若き、御嶽精進したる。いでゐたらむ暁の額など、あはれなり。むつましき人の、目さまして聞くらむ、思ひやる。詣づるほどのありさま、いかならむとつつしみたるに、たひらかに詣で着きたるこそいとめでたけれ。烏帽子のさまなどぞ、なほ人わろき。なほいみじき人と聞こゆれど、こよなくやつれて詣づとこそは知りたるに、右衛門佐宣孝は、「あじきなき事なり。ただ清き衣を着て詣でむに、なでふ事かあらむ。かならずよも『あしくて詣でよ』と御嶽のたまはじ」とて、三月つごもりに、紫のいと濃き指貫、白き襖、山吹のいみじくおどろおどろしきなどにて、隆光が主殿亮なるには、青色の襖、紅の衣、摺りもどろかしたる水干袴にて、うちつづき詣でたりけるに、帰る人も詣づる人も、めづらしく...枕草子を読んできて(135)その1
2020/01/26 12:48