枕草子を読んできて(105)その3
九二めでたきもの(105)その32019.1.28法師の才ある、すべて言ふべきにあらず。持経者の一人としてよむよりも、あまたが中にて、時など定まりたる御読経などに、なほいとめでたきなり。暗うなりて「いづら、御読経油おそし」など言ひて、よみやみたるほど、しのびやかにつでけゐたるよ。◆◆法師で才学のあるのは、まったく言うまでもない。持読経が一人で読むよりも、大勢の中で、早朝・日中・日没・初夜(そや)・中夜・後夜・という六の時の勤行は一層立派である。暗くなって「どうした、御読経の灯明が遅い」などと言って、みなが読みやんでいる間、才学のある法師だけは声をひそめてあとの文句を空で読み続けて座っていることよ。◆◆■持経者(ぢきょうじゃ)=『法華経』を読むことを専門にしている僧。まつりなどしたる、后の昼の行啓。御産屋。宮はじ...枕草子を読んできて(105)その3
2019/01/28 17:33