欅しぐれ
山本一力/朝日文庫2007年2月28日初版。著者の作品には2014/09/05、「まねき通り十二景」でお目に掛かって以来、久々の登場である。今回の話しは実際、あり得ない話だが、渡世人と商人が同じ書道塾で机を並べ、肩書無しの付き合いから、男の友情に発展といったものが作品のテーマになっている。著者はこのテーマが好きで、同様の作品が多いらしい。特に日頃から細かい事の積み重ねを基とする商人、「士農工商」の最下段である工人(職人)、商人の生活、活動を背景に描くのを得意としているようだ。そして、「士は己を知るもののために死す」という信頼、友情を中心にした作品作りである。著者の「思い定めた確信」をいかに描くかということに尽きる。例えば、185p「雨の降りしきる中、主の危篤を知らせに猪之吉のところに急ぐ誠之助の心象描写」など、...欅しぐれ
2020/05/17 15:17