人は幸福なとき、けっして映画など見ない「カイロの紫のバラ」
アメリカの古き良き時代、30年代を舞台に、映画への愛をファンタジックに謳い上げるハートフルなロマンチックコメディ! といった印象で語られるウディ・アレン1985年公開の映画「カイロの紫のバラ」であるが、私自身も公開当時に見たまま、そんなイメージで記憶していた。 久しぶりに見たら、まるで違う映画だった。 ウディ・アレンは、現実の世界を酷い世界だと言い続けている。たとえば「人生万歳!」という能天気なタイトルの2009年の映画の中でも、主人公は、この世は暴力に満ち、不条理なことがはびこり、努力が必ずしも報われるわけではないと繰り返し主張する。 代表作「アニー・ホール」で語られる有名な台詞はこうだ。「…
2021/07/01 21:59