自選小説『ダンディー』
『ダンディー』 そこは、海沿いにある観光地だった。 海岸沿いの道路には二階建ての建物が並んでいて、一階部分は様々な店舗になっていた。 マリンスポーツ、イタリアンレストラン、コンビニエンスストア、釣具屋、居酒屋、結婚式場、あらゆる店がそろっていた。 その並びに一店のコーヒー屋があった。 看板には富士珈琲と書かれていた。 店は丸太小屋のような木造の建屋で屋根は赤かった。 海の見えるテラスもある。 観光の季節になるとテラスも全て埋まり、オフシーズンだと店は静かに始まり、静かに終わった。 その男は富士珈琲に、毎朝決まって同じくらいの時間に現れた。 着席すると同時にホットコーヒーを頼んでいた。 それがど…
2022/05/28 14:58