呉道元
◎宮中の洞窟に消える呉道元は、最初書を学んだが何の得るところがなく、絵画に転じ、その名声は朝廷にまで聞こえた。宮中に高さ数尋の墻壁があり、彼はそこに山水画を描くことを命じられた。その山水画では、木も草も人も鳥も一々生きて動いているように思われた。呉道元は、皇帝を前にいちいち山水画の各箇所を説明したのだが、ある岩を指さして「この岩の下に一つの洞窟があって、一人の仙人が住んでいる。」と言いながら件の岩の上を指で軽く叩いた。すると忽然として一つの門が現れ、中から一人の童子が出てきた。呉道元は、「洞窟の中の景色をご案内しましょう。」と、自ら洞窟に入り、皇帝を洞窟の中へ手招きした。その時皇帝は、しばらく入ることを躊躇しているうちに、その門はパタリと閉められ、今まであったはずの山水画も消え、元の白壁に戻った。中国では、壺中...呉道元
2020/06/30 05:33