仲間はずれ。 (4)
ゆるぎない自信をもって、この部屋にとりついていたよこしまなものと、かみさんは対決したのではなかったらしい。「ううっうっ、うううう」少しの間、くぐもった嗚咽をもらしていたが、ふいに堰を切った如く、かみさんの感情が爆発。おいおい泣き始めた。闇を支配するものの一種に違いない。かみさんの涙に追い払われるように、大きな浴室の隙間という隙間から、すうっといずこかへ立ち去っていく。たちまちのうちに、浴室は元どおりの静謐をとりもどした。「もう泣かないでいい。もう大丈夫だ」Mは、かみさんの両肩を抱いた。浴槽の水はもはや元どおりになった。再び、浴室は清らかな空気で満たされた。よこしまなもの。その正体は依然として想像することしかできないが、それがふれるもの、なめるものすべてを汚してしまう。かみさんは浴槽の中をのぞきこむようにし...仲間はずれ。(4)
2024/07/28 21:11