女の子って、わからない。 (5)
大ジョッキで二杯のビールは、康太をして、帰りの浅草駅の構内で、赤の他人の若い女性に、背後から、声をかけさせた。「ちょっと待ってよ。あおい、あおい。どうしたんだよ。こんなところで?」紺のスーツの上下を身に着けた女性は、振り向きざま、きついまなざしを康太に向けた。実際のところ、彼女は見かけよりうんと年老いていたらしく、振りむきざま、康太にきついまなざしを向けた。「ふうん、わたしがおたくの知り合いの女の人に似てるんだ。きっとお若いことでしょうよ。ああ、うれしいやらかなしいやら。まあ、ありがた迷惑もいいとこってとこね」彼女は、康太の目の前まで、つかつかと歩み寄った。そして細い右腕をしならせ、ピシャリと康太の左ほほを平手でたたいた。へえっと言ったきり、ふたりの様子をわきから観ているしかなかった二郎である。彼女が靴音...女の子って、わからない。(5)
2023/04/28 21:43