ほんの一瞬のこと
「ほんの一瞬のこと」この広い大地にひとり立ちすくむ何度も見たはずの青がいつしか赤に染まるその連続性を追いきれぬまま迎えた夕闇の到来暮れなずむ街の風景託されたのだ託されたのだよついに、私しかいなくなった震える冬の日に道端で天を仰ぎふと思い出す細長く白い煙がたなびく青空を見上げたあの夏の日一筋の陽光が私の吐息を溶かす遠のきゆく存在に誰もが思いを馳せた記憶であり、憧れであり、懐かしさであり、憤りであり、そして、雄姿であった今去りゆく無数の時間の断片主役は姿を、そして言葉を失ってしまった数限りない満足と悔恨を残してこみ上げる感情はどこへ持っていけばよいたとえ拳を振り上げたとしても行き場なく地に堕ちるだけ大切なものはかくも容易に失いゆく私を現世へ誘ったあの太陽は草葉の陰で眠る託されたのだ託されたのだよ生きること、笑うこと...ほんの一瞬のこと
2019/12/15 23:30