chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
小杉 匠
フォロー
住所
練馬区
出身
中区
ブログ村参加

2013/06/08

arrow_drop_down
  • すり抜けた光の尾

    「すり抜けた光の尾」立木の緑葉が両瞼を閉じたしなる幹、うとうと枝振り頬をくすぐる微かな光の粒視線の主を探すも空の彼方夜空さえまぶしさに彩られ揺れながら、彷徨いながら輝く漆黒の海に木精は漂う星々が目に映らぬ速度で碧の夜空をゆるりと回りその位置を大きく変えてもはや目に見えない境に身を置いたはずの太陽が巡り巡りて我らのもとへそしてひぐらしが鳴く頃うっすらと、うっとりと降り注ぎはじめる陽光は舞い踊るようなリズムで幾千通りの旋律を奏でる皆の者、目覚め、目覚めよ訪れる朝、そして光手のひらの上でたたずむ朝日数え切れぬ光の粒を握り潰しすり抜けた筋が尾を伸ばして無限かつ永遠の時の海を泳ぐ木精は大樹の陰に身を隠して不都合な情景から目を逸らし暖かな陽だまりに身を埋めるそして、誰もがこの暁に遭遇して抱く既視感何度も巡りくる朝年輪に深く...すり抜けた光の尾

  • 「遠くへ」

    「遠くへ」朝霧よりも密度の濃い分厚い水膜の向こうへ手を伸ばせば、なぜに届かざる地平線に届く群れをつくる白波よ輝く白浜に歯向かえ沖を行き交う帆船に目をやれば、なぜに見えざる異国を思う炎天下の陸に登れば街を闊歩する獅子のひざ下までしっとり垂れるそのたてがみなびきながらもつれながら彼方に揺れる志士達の魂よおい、地球の民よ騙し合っている探り合っている真っ白な嘘を塗り替えてみないかおい、地球の民よ痛みきっている弱りきっている大地のどよめきに耳を澄ませるがよい子分達に裏切られた怒り、憤り雲の群れはごうごうと流れる己の罪を大空に放ち希釈して振り返らず、立ち止まらず我が身を省みぬ地球の民よ地球を救済し、開発せよ鳥達が飛び立つ宿り木を見守る者などいやしない海がうねる陸がゆれる空がはねる地がはてる世の果てに投じた石ころよ水面をはね...「遠くへ」

  • 時代

    「時代」煮え切らないアイデアと冷え切ったホットティー窓外の鴉と視線が合った不意に遮断された緊張感絵筆を止めた私の心の隙にかの中世詩人が耳元で囁く「言葉なんて無粋だ」と登場人物はみな凡人描くのはそんな物語数えきれない働き蜂が無限にも思える有限の中で巣から半径10キロ圏内を行っては帰り行っては帰り行ってはまた帰りまた行ってはまた帰りその生態系が損なわれた今蜂は過去を懐かしみ現実を受け止め未来を憂い尊びでも、本当は常識という概念が変えようのない秩序が、法則がすこし崩れたことを喜んでいる年老いた哲学者は涙する自らの唱え続けた学説がこのカタストロフィの中ついに証明されたことをこの時代、ある者は咲き誇り、またある者は果てる桜の季節はとっくのとうに終わりを告げ自然の緑が深まり、狂おしい夏に向かうそして、花という花が咲き、幾万...時代

  • 未来切符

    「未来切符」移りゆく季節の狭間妙ちくりんな表情の空薄紫に転じた夕映えと西へ向かう飛行船屋根裏から取り出した古いカンヴァスに少し鮮やかに色をつければ飛び切りの夏空が現れたそして今、もう若くない灰色がかった雲海は何かを追うように何かに追われるように西へ、西へと疾走する今日の終わりを待たずして明日へ繰り出す若人たちよようやく手に入れた今宵の寝床さあ、もう眠るがよい今日と明日の違いなどお前たちにわかるはずがない黒一色で塗りたくった夜に白金スプレーを吹き付けたまばゆいまでに果てしない夜空よ、彼らの寝息を優しく包んで臆病な無謀者のちっぽけな心にほんの少し勇気を吹き込んでくれそして、いつか暁色が黒を塗り替えてヒヨドリが舞う空、その奥行き目覚めよ、そして気づくだろう枕元にある未来行きのチケット白帆をあげて船はもう銀河で待ってい...未来切符

  • 水の匂い

    水の匂いゆらゆらゆら形のないカタチ澱みのない流れは遥か遠く天を塗りつぶすのは色のない色、水色無色透明な液体に色をつけたのは誰ならば私は匂いをつけましょう彼の地ですすった一口の水匂いのない匂いを胸いっぱい吸い込んで癒やされた心の生傷水色の心、水色の私ゆらゆらゆら形のないワタシ汚れのない心は遥か遠く戻れやしないゆらゆらゆら水が匂う水の匂い

  • ラストピース

    「ラストピース」希望という名のついた太陽が今日を燃やして生きていく触れたくて走ったあの日手を伸ばしため息ついたなりたくてなれなかった情けなくて自分を恨んだ人が夢を追うから儚いなどとつまらない辻説法を聞くうち時代という不可抗力がドタバタと集団占拠世論という同調圧力がバタバタと民族大移動誰もが駆けだすように今から消え去ったいや、僕だけが目的地を持たなかった自分が悪いのか、周囲が悪いのか、誰も悪くないのかわかりきっている答えを見つからないふりして探して回るそうやって毎日暮らしてきた、今もこれからも公園のベンチ脇に一匹だけ取り残された猫何もひとりきりになりたかった訳じゃない僕は真剣、いつも真剣勝負でもいつもひとりぼっちなんだ誰も気づかないけれど心はSOSを常に発している完成には程遠いけれど、なんとなく結末が見えたすべて...ラストピース

  • 春を待つ

    「春を待つ」つぎつぎと朝が来る冬の夜を越えて春の宵を呼んでいつか、かの人は消えた知らぬ間に天まで届いたあの大樹の先端を追って一瞬の空白が無限の余白を埋め尽くす同じように誰かが去った抜け殻になってしまった少しだけ狭くなった世界走ってしまった焦ってしまった未知の存在で迷ってしまった悩んでしまった無知の状態で呼び戻そう、すべてを頼りないただの呼吸わかっているけど甲斐ないただの鼓動わかっているから悲しくなれないなら寂しくなくて幸せでなくて楽しくもなくてそれなら消え去ってしまえ無価値だからうねった長い道の果てに希望の未来があるのなら這ってでも目指すけれど足元に咲いた一輪の花がちっぽけな勇気を配って諦めた陽がもう一度昇るそして何とか一日が回るそんな毎日をただ過ごすぐっと君が言葉を飲み込んだその一瞬の空白が無限の余白を埋め尽...春を待つ

  • ら、ら、ら

    「ら、ら、ら」働いて、働いて朝から晩まで働いて、働いて衣服に染み付いた汗のにおいわずか三日間、束の間の休息ゴロゴログルグルゴロゴロと心地よさそうな寝息を立てて働き者の猫は夢の世界に浸る想像が、希望が、未来が山麓の石清水のようにこんこんと湧いてくるよそして、昔から変わらない歌を子供たちがくちずさむら、ら、らら、ら、ら目に映るすべてがまばゆくてそう、あれはちょうど一年前あの白い雲のようになりたいとふもとの祠に通った回数は優に一千回を数えたああ、我が町に雪が降るあの町にもこの町にも雪が降るよそして、あなたの足元一面に舞い降りる白く冷たい花びら少し積もって、ぜんぶ覆って精一杯の愛情であなたを包もうら、ら、らら、ら、らら、ら、ら

  • 冬の使者に告ぐ

    「冬の使者に告ぐ」響きという響きが町じゅうを埋め尽くし匂いという匂いが体じゅうに染みわたるどこまで続くのだろうこの目で確かめたくて朝一番で飛び起きた澄んだ空気の先に緩やかな弧を描く山の稜線子供の頃、端から端まで駆けた夏の日の浜辺辿りつかない終点を、先端を目で追うばかりそんなとき、どうしても思い出すのだもう一歩踏み出す勇気を持てなかった冬の日を冬の使者に告ぐ、耳を澄まして聴くがよい春よ早く来い目の前の真実を何ひとつ打ち消せぬまま許されるものと許されないものが入り混じって濁りきった黒の墨汁で毒と愛の混ざった言葉を並べていく耐えて、ただひたすら耐えて果てしないこの歌の終わりまで耐えて誰の目にも映らぬよう秘かに懺悔する本当はとても小さな小さな道端の草花それが私だ、摘んでくれグシャリと砕けたガラスの心崩れ切った身を宙に委...冬の使者に告ぐ

  • 春を愛す

    「春を愛す」響きという響きが町じゅうを埋め尽くし匂いという匂いが体じゅうに染みわたる先行く者の背中を追う視線振り返った腰のひねり具合につられるように歩幅をずらして終いには後ずさりする、そうだろう冬の使者に告ぐ、耳を澄まして聴くがよい春よ早く来いどこまで続くのだろうこの目で確かめたくて朝一番で飛び起きた澄んだ空気の先に緩やかな弧を描く山の稜線子供の頃、端から端まで駆けた夏の日の浜辺辿りつかない終点を、先端を目で追うばかりそんなとき、どうしても思い出すのだもう一歩踏み出す勇気を持てなかった冬の日をほら、誰かが踏破しようしているあの境目指をくわえてぽかんと見守っている間に臆病者は子供のまま大人になってしまった目の前の真実を何ひとつ打ち消せぬまま許されるものと許されないものが入り混じり濁りきった墨汁のように毒と愛の混ざ...春を愛す

  • 道端の草花

    「道端の草花」響きという響きが町じゅうを埋め尽くし匂いという匂いが体じゅうに染みわたるふと背中を追う誰かの視線振り返った腰のそのひねり具合につられるように歩幅をずらして終いには後ずさりする、それは秋、それとも冬?春よ早く来いどこまで続くんだろうこの目で確かめてみたくて朝一番で起きた澄んだ空気の先に緩やかな弧を描く山の稜線子供の頃、端から端まで駆けた夏の日の浜辺辿りつかない終点を、先端を目で追うばかりそんなとき、どうしても思い出すんだもう一歩踏み出す勇気を持てなかった冬の日をほら、誰かが踏破しようとしているあの境目指をくわえて見守っている間に子供のまま大人になってしまったよ許されるものと許されないものが入り混じった濁った墨汁のように毒と愛の混ざった言葉を並べていくただ文字を書きなぐるだけならばデタラメにも慎重にも...道端の草花

  • 今宵雪を待つ

    「今宵雪を待つ」この大海原で溺れかけている手を思い切り伸ばして救いの船を掬う色とりどりのボール水面を流れる流れる波紋は端まで広がり辺り一面を漂うばかり船首から見える光景は冬舞い散る白粒を指でつまむ頼りなく崩れるカタチ触れただけで消えるツブテ粉々に砕けたあとは空を飛ぶことさえ難しくなってしまったはるか斜めから差し込む光の筋を数えあげるうち誰かの年齢を偶然言い当てたそれが幸せなのか不幸なのかわかるはずもない苛立ち明日が近いから焦り怯え昨日が尊いから立ち尽くす美しい晴れ空はいつまでも続きはしないのだと鼠色の空が鼻をならしながらつぶやいた春を愛する人は夏を愛し、秋を愛し、冬を愛す四季を愛する人、その人はその変わり目の名もなき季節の中にすら永遠を見る目の前の一束の空気がいつかこの季節の代名詞となって誰かの手のひらの上にそ...今宵雪を待つ

  • 手のひらのうえ

    手のひらのうえまわり、まわり、まわりつづけるいくつかの音を立てて幾千の色をなしていくつもの余韻を残し次から次へとやってくるわずかよっつしかない季節はその変わり目も手伝って万華鏡のように色鮮やかお前は、天使の矢が恋人たちを射抜くそんな季節に産まれたのだこの地球に、大宇宙にあれからいま時は流れてお前はとうに忘れてしまっただろうこの世に生まれ落ちたばかりの感情をお前は確かに人間だった均しく美しく尊い存在もうすぐ天国から使者が参るその者に伝えるがよい我が人生は素晴らしきかな、と鱗状の雲が彼方まで続いている朝日が差すこの部屋でお前は物思いにふける愛しきものそれは辺り一面を覆う霧深い朝の光景それは一日の終わりを告げる漆黒の闇それはじりじりと身を焦がす太陽の光それは身を引き裂くほど凍てつく寒さ空想の世界から届いた一通の手紙を...手のひらのうえ

  • 天体観測(即興詩)

    「天体観測」多くの葉をまとった大樹よしなびた花びらを手放したまえ忘れてしまえ、季節を外れた色なんてすべてが地面へ向かう秋だから緑から赤、黄へと色を変えて落としてゆけばよいのだよ紅く色づく大樹の葉わたしのふるえる指先があなたの枝先に振れたとき涙が止まらなかったのはなぜだろう目に見えない悲しみが先端から伝わってわたしの心を凍らせたから?あなたの頂部が差す先にあるあの星の大地は限りなく広いこと私は知っている、そしてこの星のいのちが残り少ないこと誰もが気づいている企てている、誰もが脱出を行くべきか、残るべきかいずれが正しいかもわからず今日もまた日が暮れる私はずっとこの星で暮らしてきたこうやってひっそり年老いていつかひとりっきりになったらあの星が廃れゆくさまを見届けることになるのだろうなぁこの星が安泰である限り水が流れる...天体観測(即興詩)

  • 夏色

    「夏色」ある穏やかな日風の子をとらえたてのひらに渦巻く暴れん坊すぐにでも飛び出しそうな荒々しさまるできかん坊のような騒ぎっぷりにやわらかな視線を向ける私にちようびまちの穏やかなひととき行き交う人々は別世界とともにあるあの人が好きだった季節は何色?日の光は人の好みに合わせ七変化再び歩き出した私は風の子を握りつぶす風の子は私の指の隙間を滑り抜け親なる大空のもとへ駆けていったカラカラと夏の音がするカラカラと笑う声がする夏色

  • か弱きものへ

    「か弱きものへ」人生は勝ち負けではなくて、入れ替わりがあり、移り変わりがあって、私の立ち位置に誰か他の人が座り、私は行き場を見失って、だから何処かへ行かねばならず、さまよい、移ろいながら、年齢を重ね、なんとなくそれらしい気分でこの世の中でひっそりと暮らしていて、そんな自分でも生きていていいのかと、誰もが自然に思うことを変に難しく考えて、自分の存在価値なんてどこにも転がっていなくても誰かが拾い上げてくれるかもしれないし、自分でひねりだしてしまえばいいし、相容れない誰かをゆるすことだって我慢することではないし、放置することだって、無視することだって、忘却することだって、誰かの目からすれば「ゆるし」なのかもしれないし、私が紡ぎあげる未来がたとえ美しくなかったとしても、誰もそんなことに関心を示すことなく、ひとり落ち込ん...か弱きものへ

  • 針路

    「針路」ゆらり指先で優しくなぞって形を確かめた小さなかかといまその足は一歩外に踏み出し室内に残ったのは半身の私と黒い猫どこへいくのだ誰かが発した言葉が脳内に再生される反響、残響、反響、残響どこというどこが大量生産される右足に続かない軸足がバランスを保つ黒猫は招き猫のように目のそばで腕をこねるいくのか、それとも戻るのか空は放っておいても翳り、そして白む私の向かう先など誰の関心も惹かない赤い夕陽の沈没を風見鶏が嘲笑したとき百万、千万の民がその過ちを糺すだろう反響、残響、反響、残響無責任極まれり、ここにそして微動だにせず汗を垂らすばかりの中途半端いつまでも描かれぬ道が脳内ですっと消えた針路

  • ただひとり(即興詩)

    「ただひとり」街中をひとり急ぐ私の足音をかき消す不自然な夜闇存在は消されてしまったありきたりな日常私の目に映る異常戻ってきてしまった雨音は涙を連想させるYouの神経は愚鈍ですか吐息は歩数と湿度の乗数で増える上昇する体温が私の生の証街中をさらに急ぐ気づいたら明日は我が子の誕生日だった気づいたら今日は我らの結婚記念日だった気づいたらすべてが過去の断面であった今日と明日の狭間であなたは何を思うラジオが奏でるサザンオールスターズ脳内にあふれ出す幾多のメロディーそれぞれイントロから再生してみるこれも過去、すべて過去そうでしょう失ったのは未来だったのか、感性だったのか今をつかもうと必死すぎたゆえに失った明日ただひとりリビングでなまぬるい缶ビールをあおる先のみえない苦しさなんて今この瞬間のわびしさとくらべればクソみたいなもの...ただひとり(即興詩)

  • らら、ららら

    昼下がりの少し眠気が襲う頃そろそろ届く、母さんの好きな花かごあなたの趣味を思いながら子どもの頃を思い出したよワガママだった僕はずいぶん手がかかる子どもだったろう母さん、あるときはとても気弱で寝込むこともあったね姉さんと二人で、布団に横になっているあなたを案じた家族を養うプレッシャーがどれほどかなんて知ることなく愛情をいつも求めていたその重さに気づかない子供の特権あのひ、僕はちっぽけな我が家の庭で椅子にすわってあなたがさばくハサミの奏でる音に聴き入っていたなんの不安も抱かず、なんの苦労もせずにこのままいつか大人になるのだろうと無神経に思ってたリズミカルに、ラララ、時計は幸せを差して止まってた今遠い異国にいる僕はふるさとの大地を踏めないけれどスイッチひとつであなたの声や表情を知ることができるそれは味気ないコミュニケ...らら、ららら

  • あこがれ(改稿版)

    灰色の雲の切れ目からすべてを照らそうとする光の筋分厚い雲に行く手をはばまれて夕空はすっかり雨雲に覆われるもうすぐ雨降りの季節あじさいの花びらのうえ一匹、二匹懸命にはいつくばっているもしも真っ暗な夜空が晴れならばあなたは一番星の名乗りをあげてわたしの視界にぽっと灯るだろううすのろだってゆるされますか星がいつ消えたのかさえ知らずわたしは懸命に緑葉の上を這うあこがれ(改稿版)

  • あこがれ

    太陽灰色の雲の切れ目から降り注ぐ光はすべてを照らすけれど分厚い雲にはばまれては手出し無用気づけばすっかり雨雲に覆われた夕空季節もうすぐ雨降りの日々がふえてあじさいにかたつむりが現れるはいつくばっていきてきた半生うすのろだってゆるされますかねばりづよく、あなたのように回想もしも真っ暗な夜空が晴れたならあなたは一番星の名乗りをあげてわたしの視界にぽっと灯るだろうやり直すことなどできないけれどあの頃と同じ夢をみていたいのだ夢みる若者を応援していたいのだあなたはいつまでもあなたやすらかな笑顔をたやさなかったあなたの勝ちやせほそった身体をみせなかったあなたの勝ちかなしみは海よりも深くそしておもいでだけが記憶を彩る星が消えたのはいつ?子どもたちは行き場を失ったあなたは今どこを泳ぐのですかわたしは葉の上を這うかたつむりあこがれ

  • 熟した果実

    大切なものは目に見えませんこころこの世にうまれ出たときから常に脈動し続ける胸の臓物が目の前三十センチ四方の空気をぶるぶるとゆらす脳内に搭載した顕微鏡を使ってその複雑な動きを分析する入り乱れる感情が生むのは滝のように雪崩落ちる罵詈雑言幼い頃にはピンク色していた心のひだが自分でも気づかぬうちに怒りや苛立ちや焦りで能面のようにツルンとしてきた今日この頃誰かの感情のつぶてがすりぬけてゆくかつてより美しくなくなった世の中にあらがいわたしは自分史を再構築しようとする老眼鏡が手放せなくなったわたし歩くために杖が必要になったわたし今よりほんの少し優しくなった社会を先の未来に期待するけれどもわたしはわたし庭先で熟した無花果の収穫時がわからない縁側で座ってひとり考え込むわたしもいで持ってきたのは隣家に住む少年だったありがとうとどめ...熟した果実

  • ゆめうつつ

    ゆめうつつはらはらと細い指のあいだをすりぬけてゆく音がおどるそして流れゆく時先端が響くのかカラカラと揺れるかすかな気配をたどっては朝の光のしぶきに目をそらしそして夕風はなきごえのようにひゅるひゅると鳴いて誰もたどりつかなかった夢世界へすべてをいざなう答えはただひとつではないと誰かが信じたのかもしれない朝は空を見上げたそして夜は床に就こう何気なく目に映った天井の歪んだ木目が未来への入口だと子どもたちは知っている気づいている小さな寝音を立てながら眠りに落ちる母よあなたはどこへゆくゆらりゆらり心地よくそして私もこくりこくりゆめうつつゆめうつつ

  • ここにいること(即興詩)

    「ここにいること」わたしは今生きているそれは、前を向くこと立ち上がること朝焼けを眺めること全身に日の光を浴びること帰り道で雨に打たれること濡れた髪をタオルで拭うこと生暖かいコンビニ弁当と一人きりの晩酌狭い湯船につかって鼻歌を歌いペタンコの布団に寝ころんで天井を眺めれば普段より緊張感を増した私の心に眠気が襲う今日一日ここにいることが許されたそう安堵して枕を抱きしめるそんな狂おしい日々がまだまだ続く振り返ると少しつらくなるから前を向くここにいることここにいることかつて世界がこんなに狭いなどと思わなかった逃げ場のない時間と空間の中で唯一わたしの手のひらの中にあるそれがここだったここにいることここにいることいま世界はここでしかないのだから世界中の人々とここを共有しようもしそこに行けずとも世界がなくなることなどないたとえ...ここにいること(即興詩)

  • ある夫婦の幸せ

    精巧な積み木細工のような離島の家屋想像力に満ち溢れた創造力の結集今にも崩れそうな絶妙な均衡を保つ島人達の驚く顔が最大級の賛辞匠は呆然と立ち尽くす私に尋ねる「アナタは何でできていますか?私はコンビニの総菜コーナーに並ぶカレーパスタチープな食材でできています」島を一回りして帰ってきた飼い猫我が新居の軒先に寝転ぶ日日是好日門出となる今日という日を夢見て毎日を慎ましく暮らしてきた私達匠の技で終の棲家を手に入れた縦の糸はあなた横の糸はわたし紡ぎあげた絹のベールが君の表情を隠すわずかな隙間から垣間見える唇の動き「ありがとう」とつぶやいたのかい?隣からじんじんと伝わる体温が今日の幸せ、そして明日から永遠に続く幸せある夫婦の幸せ

  • 少年の涙

    薄桃の花びらがはらはらと舞い降り風は空っぽの心の細道を吹き抜ける少年はちっちゃな手指を差し出して白灰色に沈積した路上の塵芥を拭う道端に咲く花が揺れてダンスダンスダンス限りなく白に近い薄桃に誰かが色を付ける少年が開け放った白い扉の向こうにはモノクロームの日常が群れをなして待つ少年よ、少年よもはや涙すら涸れ果てた私朽ち果てて黒の亡骸になるのを待つほかないその間ただひたすら祈るのだ君が憂い、流す涙の一粒一粒に世界のあらゆる黒が閉じ込められるよう涙は真実でできていると知ったあの日から誰かがついてきた優しい嘘をすべて許そうそしてすべての罪と罰に色をつけよう、春色を口づけのようなやわらかなタッチで少年の涙

  • 「モノクロームキッス」(推敲中)

    「モノクロームキッス」薄桃の花びらがはらはらと舞い降り風は空っぽの心の細道を吹き抜ける少年はちっちゃな手指を差し出して白灰色に沈積した路上の塵芥を拭った道端に咲く花が揺れてダンスダンスダンス限りなく白に近い薄桃に誰かが色を付ける少年が開け放った扉の向こうにはモノクロームの日常が群れをなして待つ視線の遥か先にある空に泳ぐ虹が黒から白へ七色のグラデーションを描くもはや涙も涸れ果てた老人は黒ずんだ自らの躯を抱きしめるほかないそしてただひたすら祈るのだ少年が流す涙の一粒一粒にあらゆる黒が封じ込められるよう涙は真実でできていると信じたあの日から誰かがついてきた優しい嘘をすべて許そうそしてすべての罪と罰に色をつけよう、春色を口づけのようなやわらかなタッチで「モノクロームキッス」(推敲中)

  • 「モノクロームキッス」(草稿)

    薄桃の花びらが足早に舞い散り空っぽの心の細道を吹き抜ける少年は小さな手指を差し出して白灰色に沈積した路上の塵芥を拭った道端に咲く花が揺れてダンスダンスダンス誰か色を付けて、誰かアナタは何でできていますか?私はコンビニの総菜コーナーに並ぶカレーパスタチープな食材でできています町を一回りして帰ってきた飼い猫我が家の軒先に寝転ぶ日日是好日視界の遥か先にある空に泳ぐ虹よ黒から白へ七色のグラデーションを描け少年が開け放った扉の向こうにはモノクロームの日常が群れをなして待つ老人はもはや涙も涸れ果てた黒ずんだ自らの躯を抱きしめるほかないそしてただ祈るのだ、少年が流す涙の一粒一粒にすべての黒が封じ込められるよう涙は真実でできていると知った夜(=君がそう教えてくれた)誰かががついてきた優しい嘘をすべて許そうそしてすべての罪と罰に...「モノクロームキッス」(草稿)

  • 永遠も半ばを過ぎて

    永遠も半ばを過ぎてすっかり冬籠りした白髪の山々に囲まれた古都は新たな一年を迎えても変わらぬ落ち着きを見せる町を埋め尽くす群衆、立ち込める人いきれ振り向けば道すがら辻説法そんなのも粋じゃあないかかつて生きた町、とても好きな町湧き上がる水を手で汲み口に運ぶ満ちわたるやわらかな空気を全身にまといいつか見た人魚の幻影を追うこの地に存在するすべてが常に変わらず古より残りそして、当然の所作が如く後世へ語り継がれていくあゝ、なんと逞しき生命のリレー変わらないことの重さを認識し残すべき血筋を確かに受け継ぎ伝えるべき何かを綴り、語るかつての若者はいつしかこの町の顔役にその生き様、それは思うにあるべきものをあらしめる覚悟と決意永遠も半ばを過ぎて万里の歩みの末に見出すものはきっと光の眩さと暖かさ古都を包むように照らし始めた朝日を浴び...永遠も半ばを過ぎて

  • ほんの一瞬のこと

    「ほんの一瞬のこと」この広い大地にひとり立ちすくむ何度も見たはずの青がいつしか赤に染まるその連続性を追いきれぬまま迎えた夕闇の到来暮れなずむ街の風景託されたのだ託されたのだよついに、私しかいなくなった震える冬の日に道端で天を仰ぎふと思い出す細長く白い煙がたなびく青空を見上げたあの夏の日一筋の陽光が私の吐息を溶かす遠のきゆく存在に誰もが思いを馳せた記憶であり、憧れであり、懐かしさであり、憤りであり、そして、雄姿であった今去りゆく無数の時間の断片主役は姿を、そして言葉を失ってしまった数限りない満足と悔恨を残してこみ上げる感情はどこへ持っていけばよいたとえ拳を振り上げたとしても行き場なく地に堕ちるだけ大切なものはかくも容易に失いゆく私を現世へ誘ったあの太陽は草葉の陰で眠る託されたのだ託されたのだよ生きること、笑うこと...ほんの一瞬のこと

  • はれのひ

    「はれのひ」見た目よりゆるやかに流れる星が天空の彼方を駆けて、もしも消え果ててしまったら誰かの覚悟さえも消し去ってしまう。安寧と秩序を求めてさまよう星の数々。ひとつずつ数えてみよう。らら、ららら永遠の背中に乗っかる蝶。春の息吹はまだまだなれど、私の心はなぜか揚々。麗しい日々を思い出したなら、忌まわしい過去を遠ざけてしまおう。いち早く陽だまりだけを集めていたら、あなたの灯が消えてしまった。振り返ればもう届かない虚ろな思い出だけが改めて木陰に映る。輝いていた私。煌めいていたあなた。誰も彼も信じられない歪んだ俗世の中で二人はいつしか出会った。この世の中で私たちをもてあそぶ荒波と、未知なる別の人生をもとめる歩み。私の視界からあなたが消えていなくてよかった。いつの日もあなたがともにいてくれてよかった。夢の切れ端を歩いたら...はれのひ

  • 永遠旅人

    「永遠旅人」たおやかに流れる水の流れに手を差し出し、手のひらに一瞬収まっては逃げていく無数の光の粒子。遥か幾万光年の彼方からやってきたその波長の断面を捉えた一瞬に脳裏に刻み込まれた美の祭典。その裏側には途絶えることない過去と未来があると海を渡った異邦人が教えてくれた。昨日という過去を乗り越えてやってきた今日という新しい一日。波面がゆらゆらと揺れる、夢のまにまに睡眠と覚醒の狭間で漂う間に光り輝く星々は旅立ってしまった。消えざる過去と創りゆく未来が交錯して足元の影はゆらりと揺らぐ。覆い隠す飛行船の軌跡を避けるように旅人は東へ向かう、地平線の彼方に訪れるであろう太陽の光を浴びるために。これ以上の喜びはないと夕闇の宴で誓った衆生たち。いつまでもこの幸せは続かぬと山河を慈しみながら自然物と人工物が奏でる不協和音を鳥達の囀...永遠旅人

  • 暖かきもの

    「暖かきもの」暖かきもの、それは軒先のやわらかな陽だまり飼い猫の首筋のあたり祖母が編んでくれたセーター恩師の慈愛に満ちたまなざしそして、母のか細い腕の中淡い記憶を辿り、深く身を沈めて辺りを見回せば冷たい風が鳴く声が方々から聞こえてくる。未来を包んでいたのは決して闇ではなかった。陽の当たる道をひたすら歩む。地球は少しだけ傾きを変え、人の心には温かさを美徳とする気持ちが芽生える。なだらかな山脈の稜線を視線でなぞるように陶製のコップの縁を右の人差し指の先で撫でる。その一か所だけ欠けた部分で意図せず痛覚が働く。鮮血が指の腹から滴り落ちて足元に赤い斑点が大小みっつ並んだ。この赤と中和するような遥か山肌を埋め尽くす万葉の赤、紅、黄、金。目で追えば数えきれると見まがうほどくっきりした光の粒、かがやき。見えないものがまるでない...暖かきもの

  • だんだん

    『だんだん』行き交う人々の笑顔を数えてみたり、吹き込む風の色を感じてみたり。いま時は流れて、風は私という物体を避けるから、逆に私のほうから風に身をさらしてみよう。ああ、やわらかな空気の流れ、連なりそして目を凝らすと空の遥か彼方に鳥達が未来を描く。私はあんな風に自由になりたいなどと戯言を重ねては、まだ見ぬ季節の訪れを待ちわびる。足元でざわめく落葉の一枚一枚。丁寧に拾い上げてふっと息を吹きかけ空に飛ばす。数秒間の空中飛行。ああ、ゆるやかな時の流れ、重なり路上に映る黒影が伸びてゆく。だんだんと私が見えてきた。だんだん、だんだん。だんだん

  • きっといつの日か

    「きっといつの日か」はらはらと空を舞い降りる金の葉を数え上げ、世の不条理など笑い飛ばして雲の上を闊歩する自分と出会おう。パラパラと冷たい雨が降りだした。笑顔のない町人が第一走者を通せんぼしている。国境線を越えようとする子供たち、まだ親の温かな膝枕で暖を取っていなさいと諭す大人たち。意味のない調和は崩れる。DNAに刻み込まれた設計図にしたがい、一人ずつそのぬるま湯を振り切って新たな道を切り拓きはじめる。そしていつの日か100万光年の彼方に辿り着いた夢の狩人たちは誰一人いない無の空間で新たな城を、豊かな町を築くことができるだろうか。独りぼっちになって初めて気づく無力感。そんなときは隣人と手をつなごう。大自然の無常観は君に生のリズムを与え、自分自身に戸惑う君の心を解きほぐしてくれるだろう。君がいま歩き出した未来は永遠...きっといつの日か

  • 実存主義

    「実存主義」罪と罰で濁り切った聖水を胃の中にグイっと流し込む鋭利な陽光に数万時間照らされ変わり果てた色行き交う群衆は見過ごすかの花が艶やかに揺れる姿を街角に立つ一人の道化師は砂漠の嵐をかき消して見せた足るを知るそれを才能というのならばきっと君はこの世に不可欠な人間だ絵筆を持ちパレットから色を運ぼう西の空一面に広がる橙色が夜を呼ぶ無を連想させる漆黒の世界は明日への布石実存主義

  • 孤狼の生涯

    孤狼の生涯

  • 水のしるし

    大宇宙の端に心許なく立ち、眺める地球の姿丸みを帯びた楕円形、その凸と凹をミクロに見つめる薄白い光の筋は地平線の隅から隅までピンと伸びる足取りの重い旅人は途方もないその距離に歩き疲れるしばし足を休めよう温泉の窓のほとりから罪なき清らかな湯が流れ溢れて両方の手のひらに溜めきれないほどに滔々と流れる水の形遥か遠くから飛んできたという星の使者から託された一杯の水我らを守る神々のために銀の盃に注いで回ろう世界中の海がすべて一滴の水から始まったのだとしたら歩き疲れた旅人のために新たな地中海を創り出してあげようとはいえ空は空で厄介だ、旅人よ北極星と南十字星の距離が広がりすぎだ神経質な天文学者はセンサーの感度を確かめながらレンズ越しに天体を眺める目に映ったのはただの高層ビルの窓明かりではないのか?晴れの日に訪れたまえ曇りの日に...水のしるし

  • 幕間の情景

    幕間の情景

  • お久しぶりでございます

    みなさまブログアップをさぼっておりましたが、詩作等は続けております。こちらにもときどきアップしますね。更新さぼってましたらこちらもご確認ください。https://note.mu/39showよろしくお願いいたします。小杉匠お久しぶりでございます

  • 我思う

    「我思う」友よ、君は知らない誰が為に君は生きる友よ、君は知らない誰が為に我は生きる心に咲いた一輪の花大地に屹立せよ!我思う、心を鎮めよ占星術でも魔術でもなく未来を見通す目を持ったただそれだけのことすべての点と点は繋がり合う王国は自ら築き上げるものそして自ずと朽ち果てるものあの白雲を突き破る突風我は皆の視界から消える今日、昨日が消えたように明日は今日が去りゆく予感時を喰らい、喰らってはどこまでも、どこまでも誰も彼も流されてゆく生のザラつき感は皆無無能な青二才の存在に苛立ちを隠せない我輩砂時計が刻む残り時間霞が如く消え去る運命ふと、手を差し伸べたそれは禁じ手神々の視線が一斉に我を射抜くあの山を越えていけ知恵を少し授けようありあまる力はすべて我輩を超える為にある迷わず行けよ我思う、心を無にせよ我思う

  • 自由の束縛

    「自由の束縛」幼い頃から胸に秘めた変身願望。随分と成長した無表情の三十路は時折りアルカイックスマイル。少し気恥しい紅色の思いは肌をくすぐる清風の通り道を行く。周囲の視線や思惑を振り払い、黒の舞台に軽やかに足を運ぶ。冷たい秋雨の憂鬱は無限に透明の未来が洗い流してくれるはず。遥か遠い空の彼方で誰かが引きちぎった白雲そのピースを繋ぎ合わせるままに至った現実今は互いに背と背を向け合い、行先は逆方向柔らかな秋風が包み込もうとする恋路を逆走赤、青、黄。強さも弱さも油絵具のように溶け合う。真実の自分を知る者は思いのままカンヴァスに描く。誰もが望まぬ道であってもきっとそれが正解だろう。惑わない、躓かない、間違わない思いのほか早く訪れた人生の分岐点流されない惰性ではないから赦されない情が邪魔するからやり切れない裏切り者の烙印待ち...自由の束縛

  • 冬がその姿を現すとき

    「冬がその姿を現すとき」蒼色の大空が太陽を包む日常という名の不感症はお決まりの行動パターンそれが生きてるってこと空に溶け込むノッポ煙突我が町の見守りシンボル巨大なキリンの破壊行為人々は指を加えて無抵抗寒空にコホン!と咳払い昨日の通り雨にやり返しもうすぐ冬のはじまりだ樹々の後ろ姿が寒々しいほんの少し季節に抗ってこの町の春を探してみた時々刻々と過ぎゆく毎日普遍の価値を見出したい秋が過ぎ、また冬が来る夏が来れば、春が終わる廻る、廻るよ、順序よく人々は踊り、踊らされて自動的に四季を通過する天空が群青に暗転する頃ぐーっと伸ばした掌一杯星の金貨よ、降り注げ!シリウス、プロキオン、ベテルギウス星空を遮る摩天楼を透過都会の空は汚れちまって希望も絶望もごった煮だ今宵はキラ星の大運動会春を探した私は天邪鬼かただただ季節に弄ばれるそ...冬がその姿を現すとき

  • 彼女の絵が完成する頃には

    「彼女の絵が完成する頃には」心地よい風に連れられて人混みに身を預けてみる少しずつ肌寒くなってきた家族連れで賑わう街の風景どの瞬間を切り出しても笑顔まるで時が止まったようだ薄紅色の樹々が緑に混じって一面を塗り変えようと虎視眈々小鳥達はチュンチュンチュン何か嬉しいことでもあったのか?伸びをすれば抜けるような青、青、青静寂など無縁な日曜日の午後彼女はおもむろにカンヴァスを取り出す木の葉が風に吹かれて転げてるカラカラカラと流転の人生僕達を置いてきぼりにしたちょっとした罪悪感も小休止まとわりつく蝿を叩き落としてあまりにも無慈悲な自分を笑う見知らぬ人が早足で彼女を通り越すきっと彼も彼女のことを知らないそして彼女は誰も知らないんだそれでも彼女は人間を愛する会話もない、視線も合わせないコミュニケーションは暗黙の了解街のエコシス...彼女の絵が完成する頃には

  • 水のカタチ

    「水のカタチ」時は廻り、陽はまた射すだろう登り切ったその先に水があふれる頼りない自信を煽って限りない生命をつなぐそれでも君は言っていたこわがらなくていいよここより暖かい場所を探そう帰り時刻を気にせぬ少女たちが季節外れの花火に興じて過ぎ去った夏を懐かしむもう、時は終わりに近づくけれどそれはまた再び訪れることをひととき忘れているだけなのだふと耳を澄ませば川の流れが絶えず響く耳元まで水音が届いて訳もなく安堵するのさまだ何も終わることはないと大切が何かを思ったときふるさとの記憶が甦る霧深き朝の空気真っ白く低い雲空を分かつ山々の稜線街灯よりも光り輝く星々数え切れない青春の断面を切り取って僕はひとり感傷に浸ってはもう甦らない日々に別れを告げまだ形を持たない明日を待ちわびるすべてが静止したまま時も水も止まったまま僕は大人にな...水のカタチ

  • 10月の雹

    「10月の雹」君が僕に手渡した真新しい一冊の本。その装丁は星空から舞い降りてきたような光を放っていた。君の処女作。1ページずつパラパラとめくると虹色の文字列が踊る。僕の微笑みに君の瞳が瑠璃色に染まった。僕は茶色の鞄を小脇に抱えて、しばし足を止めて目を瞑った。そして、少し不思議そうな顔をした君のもとからダッシュして満天の夜空を360度見渡した。実はちょっと失望したんです。否、かなり失望したんです。生きるとは紡ぐことだから。生きるとは失うことだから。君が綴った言葉には未来がなかった。君が綴った言葉には過去がなかった。もっと寛容でありたかった。もっと鈍感でありたかった。君の感性を共有したかった。君と同じ風景を見たかった。大人の理屈で片付けたくない。子供の君を赦せる自分でいたかった。いつまでもずっと弄ばれる子供のままで...10月の雹

  • 青年と師

    「青年と師」時は魔法だと師に教わった泣き虫だったあの青年は大草原を駆け巡る駿馬を操れるほどの大人になったそっと耳を澄ませば律動よく聞こえてくる足音遠い未来を夢見た青年はいつしか時の流れに追い付いた辿り着いた先は新世界海が、空が、大地が待ち受ける時の魔法に身を任せてみる自然と勇気と希望が溢れた夜空の星屑に語りかけるあり得ない再会を信じて灰色に時が流れた二十代もう振り返る必要もない新しい世界の幕を開いた行き場のない魂を葬り自身の源流と向き合う誰にともなく、そう宣言した新世界の主は言う風の音を聴け、とごうごうと吹き荒ぶ嵐は心の壁を突き破らないかふと不安に駆られて胸に手を当てるそれは母なる大地の胸青年は思わず両手を空高く掲げた流れる雲が指の間をすり抜けてゆく師は他人事のように微笑んだままだ不意に父が、母が恋しくなったす...青年と師

  • 未来へ

    「未来へ」幼い頃から耳を澄ましていた僕を戸惑わすほんの微かな兆し鈍い感覚を研ぎ澄ませては心に潜む本能を揺さぶるんだ愛とは言わず横に携えて互いの重さを分かち合う絞り出した生暖かい吐息は溶かして荒野に放つんだ遠巻きに眺める人生は頼りなく小さく、軽くて冷え切った体躯を暖めるコーヒーより薄いんだだからひととき、ほんのひととき永遠は君を優しく包み込む明日というゴールを追いかけ光速で追い越した遠い未来は果てしなく続く君のよく通るその声!ようやく確信した僕はこの瞬間を生きている誰かの生命にしがみつきながら新しい世界を夢見てさあ、一歩ずつ踏み出そう君を取り巻く景色を変えるよそっと耳を澄ませて風向きを感じて微音を聴き取り季節の行方を追って未来へ

  • 言の葉大賞

    久しぶりに詩以外の書き物をしました。それなりに自信作です。手書きする余裕がなかったのが残念。言の葉大賞

  • ふたりぼっち

    『ふたりぼっち』突然に降り出した雨僕達は行き場を失う聳え立つビルの窓から七色の傘の行方を追った記憶の片隅にぶらさがったモノクロームの残像に癒されては、また足掻いた成り行きに身を任せて懸命に笑った物陰に隠れてふたりで遊ぼう何を言っても仕方ないなんて考えるだけ無駄じゃないか当たり前に笑おうと天空に指を差した君の言葉は溶けてしまった裏腹に僕は叫ぶよ強くありたいと願って夜はまだ長く続く君が眠るまで一緒さ夜空に頬杖をついてふたりぼっち

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、小杉 匠さんをフォローしませんか?

ハンドル名
小杉 匠さん
ブログタイトル
巨匠 〜小杉匠の作家生活〜
フォロー
巨匠 〜小杉匠の作家生活〜

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用