chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
月の雫・・・語り部屋 http://28420746.at.webry.info/

生きるのが難しい時代。 愚直なまでに真面目に生きる男の物語です。

 昭和から平成へ・・・。 世の中の移り変わりを、独特な視点で描く物語。 真面目に生き、失敗を繰り返しながらも幸せになる事を諦めない藤堂。  子育てが終わり第二の人生を歩み始める世代に、幸せの本質を問うお話を書いてみました・・・。

語りべ
フォロー
住所
静岡県
出身
未設定
ブログ村参加

2013/03/04

arrow_drop_down
  • とき坂のかけら 8-1

    ふぅ~っと 白い煙を吐き出す ぼぉ~っと、ひじ枕をしてどこを見るでもなく 床に横になり、溜息とも吐き出すタバコともつかない息がもれる 何となく後味の悪い会話だった 「今日ねお買い物のついでに、和江ちゃんのとこ寄ったのよ」 「そしたらなんとビックリ!」 「ねぇ、和江ちゃんのとこ 食器洗い乾燥機があったのよ~」 「いいなぁ、あんなの憧れちゃう」 夕飯の片付けをしながら、留美子…

  • とき坂のかけら 7-5

    「こんにちは~~」 語尾が少し枯れた村松の声が、事務室に響いた 緊張してるんだな・・・ 彼女の緊張を悟られないようにと、藤堂も挨拶を重ねたへぇ こんにちは こんにちはっ お疲れ様です 休憩に戻ってくる社員達に声をかけていく 「あれっ?村松さん それ何?」 村松が持っている大きな風呂敷包みに気が付いた 事務員の娘が聞いてきた 「えへへ~、今日 社長さんのお誕生日でしょ」 ちょ…

  • とき坂のかけら 7-4

    車の中ではずっと、何やらいい匂いがしていた お昼前のこともあって、食欲を刺激する 後部座席に置かれた、紫色の風呂敷に包まれたそれは 上品な存在感と、およそ仕事に関係の無い違和感に溢れていた 営業部を出る時に村松が積み込んだものだ 「今日はね青木社長のお誕生日なの。 お祝い持って来ると 約束したのよ」 今朝は早くから起きて、子供達のお弁当と 沢山の赤飯のおにぎりを 作ってきたらしい 村松…

  • とき坂のかけら7-3

    藤堂は出世を獲りにいくタイプの男ではなかった 偉くなりたくないわけではない 小さな組織をまかせればソツなくこなす 頭の良さとそれなりの人望ももっていた 少し足りないやる気と 将来をイメージした時の夢の無さ 何より大好きな釣に、気が向けばいつでも行ける 今の環境が影響していた 長男が生まれて、お金の為に転職して5年 収入もそこそこ安定してきたし、欲しかった物は揃いつつある 世間でいう幸せな…

  • とき坂のかけら 7-2

    「そうそう、リーダー知ってた? 城北営業部の安間さん、大変だったみたいよ・・・」 ん? 安間・・・ 何かあったの? 「それがね、聞いた話なんだけれど・・・ 数人の男の人に襲われたみたいなの」 「ちょっと前の夜らしいんだけど、車に乗ってるところを いきなりだったみたいで・・」 ふぅ~ん、ひどいの? 「暫くは会社にも出て来れないらしいよ 車もボコボコにされちゃったみたいだし」 そう…

  • とき坂のかけら 7-1

    「さっきからチラチラ見てるでしょ?」 助手席に乗せた部下の村松が、笑いながら言う 「女子高生!」 何かを言いたげにこちらを見たままだ なんで俺の目線に気付くのかな~ 藤堂は村松が何処を見ているのか気になった 「ほらっ、ちゃんと前を見ないと危ないよ」 部下なのだが歳は少し上で、友達のような女房のような 口の利き方をする すぐに怒り、すぐに泣く女性部下 自転車に乗った女子高生が通るた…

  • とき坂のかけら 6-8

    湖の雰囲気が明らかに違っていた ここで生活する者達の息使い ピーンと張り詰めた緊張感 繰り返されてきた命のやり取り・・・ 今 自分はその中の1人 藤堂の投げたペンシルに影たちが気付いた 狩る者がスーっと近づいて来る 無防備に待つだけの狩られる者 一瞬で決まるであろう間合いで影達が止まった 藤堂はルアーを動かせないでいた 今日1日いろんなルアーを投げ、動かし方も分かったはずなのに…

  • とき坂のかけら 6-7

    柴田ではない 他の2人が発する違和感 仕方なく考えられる理由を探し始めた 確かに持ってきた道具は古い あのキャンプの後、急いで買いに行った物だ 柴田の物と比べても古さは歴然としていた さりげなく2人の道具をチラ見する・・・ おそらく何匹かのバスを釣ってきたであろう道具達 鮮やかな黄色いラインを見て、逆に笑ってしまう どうも投げているルアーに問題があるらしいと感じた スピナーは主に鱒…

  • とき坂のかけら 6-6

    1番のポイントは はずす・・・ 興奮しているはずなのに、冷静な自分がいる そう、昔からそうしてきた 少しだけずらして様子を探りたい 今日の自分と魚のやる気・・・ なんだ これ? 初めて使うルアーは作られた目的が分からない ペンシルタイプは投げた事も無かった エラ辺りまで出して斜めに浮いている ラインを巻くと水面を滑走する ただの棒 2投目・・ 更にポイントからずらし被害を避け…

  • 6-5

    「あそこは良く釣れるよ あの少し張り出している所から先に投げるんだ」 湖を見下ろす外周道を走らせながら 時折車を停めては兄ちゃんがポイントを教えてくれる 「去年は結構釣れたんだ、デカいのも出るしね あっ、白いスピナーベイトは買ってきた?」 いいから早く始めたい ポイント選びも楽しみのひとつじゃん・・・ 藤堂は兄ちゃんの少し自慢げなアドバイスがウザかった それにしても、綺麗で大きな…

  • 6-4

    「白いのが効くらしいですよ あと、ワームは持って行けって」 柴田の言葉もがろくに耳に届かないほど 藤堂は興奮していた 久し振りに来た釣道具屋には、それまで見た事が無い いかにも釣れそうなルアー達が並んでいた 手に取るだけで多くを語りかけてくる戦士達 アメリカ製のいい加減な物とは違う、綺麗な作り 今日の釣行への期待は高まるばかりだった んっ、 ワーム? およそ釣が似合わない柴田に、負ける…

  • 6-3

    「じゃ、明日迎えに来ますね。 ダム湖まで兄が連れてってくれるんですけど 午後からでいいか?って・・」 あっ、 あぁ 藤堂は最近軽い ウツ に悩まされていた 外に出るのが嫌だった 人に会う事も極力避けていた 「ストレスですね」 医者の答えはいつも一緒 薬出しておくので様子みてください・・ ストレスって なに?・・・ 無理やり誘ってくれ! きっと断るから・・・ いろいろ理…

  • 6-2

    ピシュ! ピュッ! 慣れてくるに従い、ロッドの限界値でキャストできていた スピナー、スプーンとも、流れに対して引いてくる角度も 自然と身に付いてきていた ここでは釣れない事は分かっていたし 釣り人は騙せても、ここに住む魚には興味の対象にさえ なっていない宝の破片は、違和感だけを放ち続けていた 「猛君~、テント張るから手伝って~」 ついに断れないお誘いがきてしまった もう一回…

  • とき坂のかけら 6-1

    「明日行きませんか?」 う、うん・・・ 暖かい土曜の午後、後輩の柴田が訪ねて来た この日本にも、ブラックバスが居るらしい 藤堂はルアーの釣りが好きだった 小学生の頃、初めて見るルアーは その名の通り魅惑的で 期待感と、こんな物で魚が釣れるのか?という 猜疑心の両方が同時に膨らむ不思議な鉄片だった スプーン、スピナー、プラグなどと、呼び名もかっこいい! それらを投げるためのロッド、…

  • 5-3

    南無妙法蓮華経~ 南無妙法蓮華経~~ はにゃ・・・・ ロウソクの炎が時折揺れている・・ 祖母は目を閉じたまま数珠を掛けた手で拝んでいた あや・・ ◎▽#・・・ 南無~~みょう~ ほ~~れん げ~~きょ~~~ ジャラッ うん、うむ 祖母は座ったまま振り返り母に告げた 「この家には外に・・北西の方向だな お稲荷様が祭って…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、語りべさんをフォローしませんか?

ハンドル名
語りべさん
ブログタイトル
月の雫・・・語り部屋
フォロー
月の雫・・・語り部屋

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用