鈴のふるさと 学生時代
鈴は父の転勤のため故郷の村を出て大きな街にやって来た。 五時間も汽車に揺られてトンネルをいくつもくぐり、紅葉した山の木々いつまでも続く青い海。 鈴はこの旅を退屈することなく希望と好奇心でいっぱいだった。 母に時々睨まれるほど弟妹とはしゃいでいた。 父から住む家が小さいことだけは何度も聞かされていた。 大きな街は戦争でやられ焼け野が原になったのだと聞かされていた。 汽車を下りて駅前の広場に立った時、鈴は言葉が出なかった。 弟が痛いと言うほどその手を握りしめていた。 高い建物はひとつもなく、た焼け野が原の街に電車の線路が真っすぐに延びていた。 やって来た電車で官舎のある所まで十五分くらい。 「お父ちゃん小さい家はこの電車くらいの大きさ?」小さい声できく鈴に父は頷いた。 これから鈴たち家族七人が住む家に着いた。 「大きいじゃな..
2019/11/22 16:18