第一部 第4章−6 シュリンプとウィンプ
一九八〇年九月。ナオミはすでに七歳になっていた。つやつやした肌は健康そうに見えた。大きな目が見る者が見ればわかる常人とは違う意思の強さを感じさせた。マーメイドの記憶は断片的でも、使命を持って人間界に送り込まれたことは確信していた。寝床や白昼夢で、時々祖母トーミの声を聞いたからだ。「元気かえ?」「楽しくやってるわ、おばあ様」「姿を見せるのはもう少し待っておくれ。まだ海の底で生きていられるようだ」「会いたいけど、いつまでも生きていてくれた方がうれしいわ」「よろこばせておくれでないか。でも心配はいらない。時間切れがだんだん近づいているようだ」「ナオミは何をすればいいの?」「わたしゃ方向は間違っていても前向きな奴が好きさ。正しいか間違っているか、やってみる前から決められる奴なんているのかい。すべては仲間に出会う時に知れ...第一部第4章−6シュリンプとウィンプ
2019/09/30 00:00