第一部 第3章−8 ナオミの名はナオミ
「信じられるか?ネイビー時代のドラッグの影響で頭がおかしくなったんだろうか?」「信じるわ。あなたがこの何ヶ月かわたしに隠れてタトゥーショップに通いつめてたんじゃなければ」「どういう意味だ?」「鏡で背中を見てご覧なさい」ケネスが後ろの鏡を振り返ってみると背中一面に立ち上がって爪を今にも敵に伸ばそうとするマーライオンの勇姿が彫り込まれていた。「おい、お前もオレと同じことを考えてるのか?」夏海はうなずいた。「忘れたの、わたしの実家?」動転して忘れていたが、夏海は日本でもめずらしい人魚を祭った湘南の比丘尼(びくに)神社の一人娘だった。得体のしれない海軍兵上がりに娘を奪われて逆上した父親とはずっと絶縁状態の二人だったが。「こっちにいらっしゃい」夏海が赤ん坊を抱き上げると部屋全体が白い光に包まれて、気づいた時には尾ビレはな...第一部第3章−8ナオミの名はナオミ
2019/08/30 00:00