荒木田みつ殺法帳 Ⅱ その十一
みつは伝兵衛を静かに見つめる。「……道場で相対した時よりは腕を上げているようだが……」みつは静かに言う。「わたしに、その刀に寄り掛かり過ぎていると言われ、地擦りの構えを解いたのか?」「ほざけ!」伝兵衛は一喝する。「お前などに、定盛の力などいらぬと言う事だ!」「あなたは刀の妖しい話を受けて、日々の修練を怠っている。そのような者の剣など、わたしには通じない。腕が上がって見えるのは、単に場数を踏んで血の気を帯びただけの事。しかも己より弱い者を相手にして得た、まさにその邪剣に相応しい恥晒しな腕前だ」「抜けい!」伝兵衛が怒りに任せて叫ぶ。その場の空気がびりびりと震える。その空気に気圧されながらも、周りの者たちは息を凝らして成り行きを見ている。「抜かぬ」みつは伝兵衛に答える。「あなたがその刀を手にしている限り、わたし...荒木田みつ殺法帳Ⅱその十一
2022/10/29 09:00