超短編27(三稿) 声 麻屋与志夫
2月3日土曜日超短編27(三稿)声声をかけられたことがあった。それがどこから来たのか、誰の声かわからない声もあった。「翔平。声をかけられても行っちゃダメ。もどっておいで」「行きたいよ。向こうへいきたいよ。お花畑で呼ばれている」「ダメ‼」母の声はいまでも耳元にのこっている。あのとき、誰になんと声をかけられたのかわからない。呼びもどしてくれた母の声の記憶があるだけだ。四歳のときだった。母が信仰していた岩船さんの孫太郎尊の助けをかりて必死で呼びもどしてくれなかったら――。いまのわたしはない、と翔平は思っている。木暮サーカスの女の子に声をかけられた。「お兄ちゃんとこ、あの塀のかかっている門のある家でしょう。食べ物がタントあるでしょう。お腹がすいているの。食べ物くれたらアタイのブランコの芸みせてあげる」翔平はまだ小...超短編27(三稿)声麻屋与志夫
2024/02/03 07:28