1 天気輪
11月25日超短編小説2「書くことがなかったら、おれたちのことを書けばよい」standbymeより。1天気輪ぼくらは十二歳だった。その年の夏戦争がおわっていて。十二歳だったぼくは、すでに中津博君と友だちになっていた。戦争のはじまった年から彼を知っていた。父親が工事現場の事故で重傷という知らせをうけた彼が校門から走り去る後ろ姿が、一番古い彼との思い出だ。小学校の二年生のときだったと記憶している。戦争が終わった年にはぼくらは小学校の最上級生になっていた。戦争がおわってよかったことがぼくには一つだけあった。体操の時間がなくなった。いや、時間はあったのだが鉄棒はもちろん教練とよんでいた剣道や空手や竹やりで米兵を刺し殺す訓練はしなくなっていた。とくに、鉄棒による体力強化の時間がまったくなくなったのが噓のようだった。...1天気輪
2022/11/25 08:39