命乞う猫に願いを夜寒かな 麻屋与志夫
10月10日月曜日曇り日●manismortal人は死すべきもの。これが最後の上京になるかもしれない。家業をつがねはならず文学の友と会いに行くのはこれまでだ――。ひとりさびしく新鹿沼駅の待合室のベンチにすわり英語の本を読んでいた。そのとときに覚えたフレーズだ。●「あれから四十年」の綾小路文麿麻呂師匠ではないが、あれから65年。よく息をすってこられたものだ。わたしも北斎の享年になる。●desperate――必死で藻掻くような生活をずっとしてきた。でもこのところの体の具合がとくに悪い。こここまでかと悲観的になる。ひとり聞く土塀にそそぐ秋の雨ひとり病み秋の雨音きく夜かな石塀に猫かげ歩み秋の暮れトレリスを猫かけあがる月の夜月光に爪とぎのみが聞こえてき月明りの露縁にひとり座っていた。爪とぎの音だけがかそけく聞こえて...命乞う猫に願いを夜寒かな麻屋与志夫
2022/10/10 11:52