現代語訳 徳川実紀 25 雪斎禅師の教え
雪斎禅師の教え 元服の晴れ舞台を故郷、岡崎で過ごされた元信君ではあるが、その喜びは駿府への道中すぐ消え失せた。 様々な教えを乞うてきた雪斎禅師の病がいよいよ重くなり、枕頭で元信君を呼んでいると、元信君の留守居を務めていた石川数正が早馬を駆けて知らせて来たからである。 自らの死期を悟っていた雪斎禅師は、病身ながら秘かに駿府の臨済寺を発ち、住持を務める駿府より西の藤枝の長慶寺へと身を移された。 このことは今川家中の主だった者はまだ誰も知らずにあった。 禅師は、死期が家中に漏れれば、義元はじめ、駿府在国の重臣らから、慕う領民まで臨済寺に押し寄せると踏み、ひっそりと静まる禅寺である藤枝の長慶寺へと移り…
2025/05/31 07:23