【新】にっぽん徒然:私小説 (08/08/2023)

【新】にっぽん徒然:私小説 (08/08/2023)

僕は以前から、芸術的創作物(絵画でも彫刻でも音楽でも小説でも、あるいは「物」ではないが、演劇でも)というものの「創作」は、果たして、作者の「主体性」から完全に切り離された、つまり、「経験」に引き摺られない、全くの「自由創作」であり得るのか、ということを考えてきた。 初めてこのことを考えたきっかけは、僕の一番好きな小説家のひとりで、高校時代にその作品群を七割方読破した井上靖にある。彼は、「しろばんば」「夏草冬濤」「北の海」という三部作、あるいは「あすなろ物語」、などに代表される作品群によって、「私小説」というジャンルを確立した小説家、ということになっている。三部作における一連の主人公「洪作」のエ…