隠語(完)
エピローグ 深夜の街を、一人の男が歩いている。 仕事帰りのサラリーマンの姿もすでに路上には見えず、街はひどく閑散としていた。 彼は、会社を辞める後輩の送別会に行った帰りだった。 本当は一次会で帰る予定だったが、その後輩に、 「先輩もぜひ二次会に来てください。相談したいことがあるんですよ」 とせがまれて、仕方なく二次会に参加した。だけど相談といっても何のことはない。後輩が今まで勤めていた会社、つまり彼が今勤めている会社に対する愚痴がそのほとんどを占めていた。 「だから、この会社は駄目なんですよ」 酔って呂律が怪しくなった後輩の話にうんざりとしながら、それでもそれをできるだけ顔に出さないようにして…
2024/05/26 21:00