閉じ込められた部屋(81)
とうとう完全に足が付かなくなった。 必死になって顔を水の上に出し、呼吸をしようとする真尋の口に、水が流れ込む。 真尋はげほげほと咳き込んだ。それでも立ち泳ぎのような形で何とか顔を水面の上に出して、息をする。そして 「苦しいよ・・・。ここから出してよ・・・」 と声を上げた。声はすぐに水の音にかき消されていく。 「お母さん・・・、怖いよ・・・。怖くてたまらないよ・・・」 真尋の眼に再び涙が溢れ出す。 涙が止まらなかった。6歳の少女のように、真尋は泣きじゃくっていた。 「お母さん・・・、助けて・・・」 真尋は必死に母に救いを求めた。もうそこにしか縋れるものはなかった。 そんな真尋の心に、また母の声が…
2024/05/08 21:00