10 「自閉症児」の育て方・8・《「物」のやりとり》 「物」のやりとりをするためには、以下のようなレディネス(土台)が必要条件である。�触れた物を握っている(1か月)、�手を開いたり閉じたりする(1か月)、�手を口のもっていってしゃぶる(
「自閉症・治癒への道」解読・17《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》
《第9章 指導法の実際・・・両親と保育者のために》 ◎要約 ・われわれは、自閉症の「すべてを知っている」わけではない。以下に述べることは、暫定的な「試案」であり、将来大いに改善される余地がある。 ・この指導法は、害よりは益のほうが多いと感じ
「自閉症・治癒への道」解読・16《第8章 全体にわたる結論》
《第8章 全体にわたる結論》 ◎要約 ・最も重要な要因は心理学的要因である。:自閉的状態とは、不安に支配された情緒不均衡であり、それが対人的なひきこもりにつながり、それに続いて(母子の絆がうまく確立していない時にしか現れない)対人的な相互作
《第7章 方法論について》 《感想》 ここでは、これまでの論述をふりかえり、自閉症に関する「研究方法」に対して「一般的な注釈」を加えている。その内容は、従来の「児童精神医学」における研究方法の「不完全さ」「誤り」を(暗に)批判し、その中に
「自閉症・治癒への道」解読・14《第6章 自閉症はどこまでよくなるか》
◎要約 《その他の「治療法」》 ⑵シュリープマンとケーゲルの行動変容療法:従来ふうの言語治療で「技術を教える」という面が多いが、それらすべてのことが温かい、愛情深い、心のつながりの中で行われている。�その治療がうまくいくのは「
「自閉症・治癒への道」解読・13《第6章 自閉症はどこまでよくなるか》
《第6章 自閉症はどこまでよくなるか》 ◎要約 【いろいろな見解】 ・「予後が暗い」というのは一つの見方にすぎない。1970年にオゴーマンが「過去におけるわれわれの努力はおおかた経験的なもの(こじつけか、当てずっぽう)であり、大体において無
「自閉症・治癒への道」解読・12《第5章 何が子どもを自閉症にするのか》
《第5章 何が子どもを自閉症にするのか》 ◎要約 【「結果的」自閉症】 《聾・風疹などの結果としての自閉症》 ・一次的な欠陥の二次的な結果として、自閉的になっていく子どもも数多くいる。 ・デ・ソート症候群というまれな病気によって、自閉症にな
「自閉症・治癒への道」解読・11《【自閉症を発生させる要因のリスト】》
◎要約【自閉症を発生させる要因のリスト】 *このリストは(一部)は、確固たる証拠に基づいたものというよりもむしろ暫定的なものであり、直観に基づいたものである。 《出生前の影響》 ・妊娠中の母親の風疹(風疹が原因で聾になり、聾が原因で自閉症に
「自閉症・治癒への道」解読・10《第5章 何が子どもを自閉症にするのか》
《第5章 何が子どもを自閉症にするのか》 ◎要約 【はじめに】 ・自閉症の病因、発生をどう理解したらよいかという問題について、�最初に自閉的逸脱ないし脱線を起こさせるものは何なのか、�不可避と思われているその後の荒廃を起こすものは何か、とい
「自閉症・治癒への道」解読・9《第4章 自閉的状態の分析⑵・・・子どもの行動》
《第4章 自閉的状態の分析⑵・・・子どもの行動》 【感想】 《葛藤仮説の実験的検証》 この節では、著者夫妻(の研究グループ)が行った実験で、「葛藤仮説」が検証されている。その第一ステップは「自然の実験」(非意図的実験)である。
「自閉症・治癒への道」解読・8《第4章 自閉的状態の分析⑵・・・子どもの行動》
《第4章 自閉的状態の分析⑵・・・子どもの行動》 ◎要約 ・仮説によると〈自閉症の子どもは、二つの動因、一方では特定の対人的物理的状況からひきこもろうとする(その状況へ近づくまいとする)傾向をもち、もう一方では、その同じ状況に対
「自閉症・治癒への道」解読・7《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》 ◎要約 《葛藤行動のカテゴリー》 �抑制された志向動作:ひき起こされる行動全体のうちの冒頭の、始まりの部分。(例・カモメの「直立姿勢」、人間が(敵対者に対して)「拳を握りしめる」姿勢、「振り
「自閉症・治癒への道」解読・6《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》 ◎要約 【動物と人における葛藤行動】 ・動物における動因の葛藤の研究は、「ディスプレイ」と呼ばれる行動や「情動の表出」、それに関連した行動の解釈を始めたときからスタートした。 ・動物行動学者
「自閉症・治癒への道」解読・5《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》 【感想】 《人あるいは場面との出会い》 ここからは、(いよいよ)�一見混沌としている自閉症の「奇妙な」行動の中にどんな規則性を見いだせるか、�「自閉的である」とは正確にいってどういうことな
「自閉症・治癒への道」解読・4《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》 【感想】 《方法論について》 ここでは、ティンバーゲン夫妻の「研究方法」、具体的には「自閉的状態の分析」方法について述べられている。その方法は、まず「チャイルドウォッチング」から始まった。
「自閉症・治癒への道」解読・3《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》
《第3章 自閉的状態の分析・・・その方法と概念》 【感想】 《はじめに》 ここでは、1985年当時の「自閉症研究者」が自閉的状態の本質について、どのように考えているか、著者(ティンバーゲン夫妻)は、その考えをどのように評価(批判)している
《第2章 序章》 【感想】 ここでは、まず「『自閉症児』とはどんな子どもたちか」について述べられている。その要点は以下の通りである。�正常な対人関係を結ぶことがまったくあるいはほとんどできないこと、�慣れない世界に踏み出すことをしたがらな
《第1章 まえがき》【感想】 冒頭は「『自閉症は治らない』という結論は誤りだ」という見出しで書き始められている。その結論は�1970年代初頭、BBCテレビ番組(英国自閉症児協会代表者の意見)、�1978年秋、オックスフォードの講演(サマーコ
「自閉症・治癒への道 文明社会への動物行動学的アプローチ」(ニコ・ティンバーゲン、エリザベス・A・ティンバーゲン著 田口恒夫訳・新書館・1987年)
「自閉症・治癒への道 文明社会への動物行動学的アプローチ」(ニコ・ティンバーゲン、エリザベス・A・ティンバーゲン著 田口恒夫訳・新書館・1987年)という本を読み始める。通販サイト・アマゾンの「商品説明」では以下のように述べられている。〈本
【親の愛着スタイルが子どもに伝達される】 ・「親の不在」「養育者の交替」といった問題のないふつうの家庭に育った子どもでも、三分の一が不安定型の愛着パターンを示し、大人のおよそ三分の一にも、不安定型愛着スタイルが認められるのはなぜか。それは、
《第2章 愛着障害が生まれる要因と背景》 【増加する愛着障害】 ・子どもの数が減り、一人ひとりの子供が、手厚く大切に育てられているはずの現代において、愛着の問題を抱えた子どもだけでなく、大人までも増えているという現実がある。 (虐待、育児放
【良い子だったオバマ】 ・オバマ大統領は、「良い子」や「優等生」を演じきった。「従属的コントロール」を駆使した典型である。 ・クリントン大統領は、母親に対してはとても従順であったが、それ以外の女性に対しては支配的で、うまく利用したり搾取しよ
【ストレスと愛着行動の活性化】 ・何か特別な事態が生じて、ストレスや不安が高まったときには、「愛着行動」が活発になる。それが健全な状態であり、自分を守るために重要なことである。 ・愛着行動には、さまざまなヴァリエーションがある。(幼い子ども
【親を求めるがゆえに】 ・愛着を脅かす、もう一つの深刻な状況は、守ってくれるはずの親から虐待を受け、安全が脅かされるという場合である。この場合、子どもは親を求めつつ、同時に恐れるというアンビバレントな状況におかれる。しかも、親がいつ暴力や言
【愛着の絆と愛着行動】 ・いったん、愛着の絆がしっかりと形成されると、それは容易に消されることはない。愛着におけるもう一つの重要な特性は、この半永久的な持続性である。(「母をたずねて三千里」のマルコ少年) ・愛着の絆で結ばれた存在を求め、そ
《第1章 愛着障害と愛着スタイル》 【あなたの行動を支配する愛着スタイル】 ・愛着スタイルは、その人の根底で、対人関係だけでなく、感情や認知、行動に幅広く影響していることがわかってきた。パーソナリティを形造る重要なベースとなっているのである
《はじめに 本当の問題は「発達」よりも「愛着」にあった》 ・人間が幸福に生きていくうえで、もっとも大切なもの・・それは安定した愛着である。愛着とは、人と人との絆を結ぶ能力であり、人格のもっとも土台の部分を形造っている。 ・昨今。「発達障害」
「障害乳幼児の発達研究」(J.ヘルムート編・岩本憲監訳・黎明書房・昭和50年)抄読・7
� 幼児ー母親の相互交渉の型と刺激の特性《映写観察を使用したセット場面での行動的相互交渉の評価》 A 背景 ・(幼児ー母親の相互交渉を「映写観察」〈その記録を分析〉することにより)、刺激パタン、刺激の数や多様性、回数・強さで示される刺激の量
「障害乳幼児の発達研究」(J.ヘルムート編・岩本憲監訳・黎明書房・昭和50年)抄読・6
� 母親の行動と幼児ー母親の相互交渉《録音面接の際の母親の叙述とそのときの幼児ー母親相互交渉についての観察者による逸話記録に基づいた研究》 A はじめに ・録音面接時の母親の叙述は、面接時の観察者による幼児ー母親相互交渉の描写と比較された。
「障害乳幼児の発達研究」(J.ヘルムート編・岩本憲監訳・黎明書房・昭和50年)抄読・5
� 方法 A 被験者 1.選択 ・母親と幼児被験者は、Illnois大学病院の小児科部門から得られた。被験者は、次のような基準に基づいて対象にされた。 �. 年齢:30カ月未満 �. 異常行動:異常行動のリストにあげられた1つ以上の異常状態
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10 「自閉症児」の育て方・8・《「物」のやりとり》 「物」のやりとりをするためには、以下のようなレディネス(土台)が必要条件である。�触れた物を握っている(1か月)、�手を開いたり閉じたりする(1か月)、�手を口のもっていってしゃぶる(
9 「自閉症児」の育て方・7・《「声」のやりとり》 生後1か月頃になると、乳児は「泣く」とき以外にも「声」を出すようになる。授乳後、満足して、気分がいいときなど、「アー、ウー」「オックン」など、いかにも「話をしている」様子に見受けられる。
8 「自閉症児」の育て方・6・《「表情」のやりとり》 「笑顔」は表情の一つだが、それ以外にも「泣き顔」「怖い顔」「驚いた顔」「変な顔」「寂しそうな顔」「悲しそうな顔」「浮かない顔」等々、人間の表情は「千変万化」する。また「表情一つ変えない
7 「自閉症児」の育て方・5・《「笑顔」のやりとり》 新生児は2カ月頃になると(あるいはそれ以前でも)、「一人で微笑んでいる」ことがある。親は、その「微笑み」を見逃してはならない。「笑った、笑った」などと言いながら、頬をなでたり、軽く突っ
6 「自閉症児」の育て方・4・《「泣く」ということ》 「泣く(ことができる)こと」は、人間にとって素晴らしいことである。 新生児にとっては「親を呼び寄せ」「自分の不快感」を取り除くことができる。乳幼児にとっては、自分の気持ちを表現して訴
5 「自閉症児」の育て方・3・《泣き声の観察・3》 新生児・乳児は、「泣いて」親を呼ぶ。親は、その呼びかけに《無条件》に応じる。そのことによって、両者の「愛着関係」が形成される。これがコミュニケーションの「第一歩」であり、「人間の生活」の
4 「自閉症児」の育て方・2・《泣き声の観察・2》 現代では、新生児・乳児が「泣く」ことに、(過度な)《不安》をもつ親がいるかもしれない。できるだけ「泣かない」状態を維持しようと努め、子どもが「泣き出す」前に、(授乳、おむつ交換などの)「
3 「自閉症児」の育て方・1・《泣き声の観察・1》 新生児を評価するチェック・ポイントとして、分娩の様態、「生下体重」、「黄疸の程度」、「乳の飲み具合」、等が挙げられるが、最も重要な観点は「産声の有無」「泣き声の強さ」である。「出生」は、
2 基本的な考え方 定説によれば「自閉症児」(と呼ばれる子ども)は、〈1.対人相互反応の質的な障害2.意思伝達の著しい異常またはその発達の障害 3.活動と興味の範囲の著しい限局性〉を主な行動特徴としており、周囲からは〈・言葉の発達が遅い、
《「自閉症児」の育て方》 【まえがき】 本来なら「自閉症の治し方」「自閉症の防ぎ方」といったタイトルにしたかったが、現代では「自閉症は治らない」ということが定説になっており、そのような定説に異議をとなえる気など毛頭ないので、というより、
◎要約 《訳者あとがき》(お茶の水女子大学家政学部児童学科 言語障害研究室 田口恒夫) ・これは「自閉症」の本としては、きわめて異色のものである。まず、著者が変わっている。著者は児童精神科医でも心理学者でもない。もちろん治療士でも教師でも自
◎要約 《追記》 【プレコップ博士の中間報告】 ・ドイツのプレコップ博士は、(ニコ・ティンバーゲン博士の情報を得て)1981年からウェルチ博士の「強制抱きしめ療法」を37組の親に始めてみた。対象児37例のうち8例は、子どもの力が強すぎる、母
◎要約 《付録2 地域社会における自閉症児の治療》(ミッシェル・ザッペラ) 【「非専門家」にも自閉症児と対話できている人がいる】 ・この報告は自閉症の子どもと、日常生活をともにする人々との「相互交渉」を促進する治療の8年間の経験の要約である
◎要約 《付録1 母子抱きしめ療法による自閉症からの回復》(マーサ・G・ウェルチ) 【治療の方法】 《母と子の絆をつくることがすべての基本》 ・治療の課題は、自閉症の子どもとその母親との間に強い絆を確立することにある。 ・治療をうまく成功さ
◎要約 《付録1 母子抱きしめ療法による自閉症からの回復》(マーサ・G・ウェルチ) 前章で、著者・ティンバーゲン夫妻による著述は終了し、以下は「付録」である。その1は、本書の「核心」ともいえる「母子抱きしめ療法」がウェルチ博士自身の手によ
◎要約 【出版されている六つの論文】 《6.パーク「包囲・・自閉症児との接触のための闘い」》(エリー) ・この本は、自閉症児を救おうとした家族の苦闘の物語であり、両親の熱心な努力、適切な措置、率直に報告されている過ちなどからみて、きわめて重
◎要約 【出版されている六つの論文】 《5.アクスライン「開かれた小さな扉」》(ディブス) ・この本は、遊戯療法の先駆者(の一人)である臨床心理学者によって書かれた小さな宝石ともいうべきものである。 ・ディブスは科学者夫婦の第一子で、下に妹
◎要約 【出版されている六つの論文】 《�.コープランド&ホッジス「愛の軌跡」》(アン) ・アンは第二子で、兄が1歳4か月の時に生まれた。出産は正常だったが、「一時的仮死状態」になった。(事故?) ・アンは初めから極端におとなしい赤ちゃんで
◎要約 【出版されている六つの論文】 《ベック「アホウドリの悪魔払い」》 ・ステファンは兄が4歳の時に生まれた。母親は出産時の激しい出血で衰弱していたので、ステファンと一緒にいることがめったになかった。ステファンはおとなしい赤ちゃんだった。
◎要約 【出版されている六つの論文】 《2.ヴェクスラー「サンディの物語」》 ・サンディは2歳前になって歩きはじめたが、歩き方はぎこちなかった。 ・2歳過ぎに妹が生まれると、歩行を止めてしまい、いくつかの面で退行を示した。(単語や音声を出さ
《第一章 情緒の構造》【要約】《一 情緒の定義》・情緒とは「生理的な現象、および衝動的な行動・心情を伴う激しい感情」である。・情緒には、衝動的な行動を伴う「外むきの感情」(くやしさ、怒り、反抗、攻撃)と、衝動的な心情を伴う「内むきの感情」(
《まえがき》【要点】・「情緒障害」=「情緒の現れ方の歪曲」・(以下の記述には)いわゆる科学的データが少ない。人文科学に関する限り、数で処理された科学的データなるものは特別な場面や特別な条件下のものであり、部分的なものである。それを数多く集め
9 初期語連鎖から文へ・・・その形式面・・・【要約】 1語による談話(“1語文”)のつぎに、二つの語を連鎖した談話が現れてくる。しかしこれは本格的な文の段階にはいったことを意味せず、1語談話のいろいろな特性を残している。このような原始的な語
■“対話”における母親の役割【要約】 サンガー(Sanger,1955)は、何人かの母親の、乳児に対する音声による働きかけの細部を数ヶ月にわたり追跡観察した結果、母親、とくに“良い母親”は、子どもの目覚めている間は、ほとんど子どもに話しかけ
《言語訓練の意義》【要約】 喃語活動における母親の役割、音声模倣における母親の役割と同じことが、母子間の 命名についての音声接触でもあてはまる。まず母親からの積極的な音声的働きかけがある。実物のイヌのいるところで、母親がいつでもイヌと発声す
■言語訓練(教育的態度)【要約】 人格化と同一視は、“教育的態度”によってチェックされている。これは、子どもの現在達している水準に適合する仕方で行われる発達促進のための言語訓練の基礎となっている。《言語訓練の様式》 人間以外の生活体では、母
19 育児者の役割【要約】 発声活動の言語化が、育児者からの影響に主として依存することは明白である。ラインゴールドら(Rheingold and Bayley,1959)の実験的研究によると、発声の十分な活発さは、ひとりの養育者のもとではじ
18 育児語【要約】 母親が幼い子どもに向かって用いる語を“育児語”とよぶことにする。育児者が意図的ないし非意図的に、幼児に対してだけ用いる育児語を“特殊育児語”とよぶことにする。これは、子ども自身の発する音声の諸特徴をもっている。以下、特
■幼児語【要約】 “かたこと”には2種類がある。一つは、成人語とは系統のまったくちがう“語”であり、もう一つは成人語からの音韻転化によってできている語である。子どもが最初に形成するのは、ほとんどが前者であり、前者をふくまない子どもはないので
16 成人語の形成過程【要約】 少なくとも現代の文明国では、子どもの最初の言語習得がその社会の成人の間で用いられている語形(成人語)を用いることからはじまることはない。はじめ子どもは“かたこと”を用いる。そのなかには、喃語発声、音声模倣に発
8 幼児語から成人語へ【要約】 幼児語が成人語へ変化していく過程は、1歳のある時期に急速に進められる。この期に、ワンワンはイヌとなり、マンマががゴハンとなり、tick-tackがclockになり、miawがcatとなる。この変化が成人の子ど
■機能語(助詞)《助詞機能の分化》【要約】 日本語の助詞が、文ないし談話できわめて重要な役割を果たすことはいうまでもない。“山は高い”というとき“山”や“高い”はそれぞれ外延と内包をもっているが、助詞“は”にはそれがない。助詞は、同じ文の中
■動作語【要約】 一定の動作に伴って生じる一定の発声、あるいは“かけ声”は比較的早く慣用型の音声に近づき、よく分節している。これを“動作語”とよぶことにする。 自分の動作に伴う発声として、物を投げるときのパイ、ものを持ち歩くときのヨイヨイ、
■要求語【要約】《初期発声》 不快、とくに空腹に連合して生じる最初の音声は[ma ma ma...]というような型であることが古くからいわれている(Jespersen.1922;Gesell and Amatruda,1947;Lewis,
■状態語【要約】 “状態”とは、個体の側の内的な状態のことである。特殊な状態に対応する特殊な語が“状態語”であり、イタイ、ウツクシイ、カワイイなどがこれである。個人の内的な事象が表示されなければならないという点で、対象語の形成の過程とはかな
7 語の発生と分化(略)14 初期の品詞分化《発達論と品詞分類》(略)《初期の語の性質》(略)《対象語》【要約】 1歳児の語彙は、はじめは感嘆詞であり、つぎにそこから名詞が派生し、つぎに動詞、形容詞、副詞がこの順に生じるといわれてきた(St
13 場面と談話【要約】 場面の性質のちがいが同一人物の談話の性質や量を規定すること、場面の変化が談話に変化をもたらすことは、成人にも幼児にも共通した事実である。われわれの言語行動の特徴の一つは、現実場面による拘束からの離脱にあるけれども、
《初期の質問の形式と機能》 子どもに“疑似質問”といえるものが存在する。真の質問と疑似質問との間の判別は容易ではないが、その基準のおもなものはつぎのようである。⑴ 子ども自身がその名を知らないものについて質問する。⑵
《“質問期”》【要約】 シュテルン(Stern u. Stern,1907)は、1歳6カ月の子どもに、あらゆる椅子を一つ一つ指示しながらその名をたずね、部屋中を駆け回る時期があったと報告し、初期質問は、名をたずねることであり、これは子どもが
■質問《質問の機能》【要約】 質問は“特定の明白な目的と、独自の聴覚的音声形式と、思考交流における重要な役割とをもつ、特殊な言語的伝達”(Reves,1956)である。質問は、質問者が自分の知らない情報を最も有効・迅速に知るためのすぐれた手