凡太の憂鬱[メランコリー] 再掲
いつの間にかウツラウツラしてしまって、しくじったか、と私は思った。それで咄嗟(とっさ)の勢いで目覚ましを掴む。昨晩、覚醒のために珈琲(コヒー)を啜ったのがいけなかった。結果として更けても寝つけず、もう朝まで起きていてもいいや…と、投げ遣りな発想に及んだのだが、人間の生理的欲求は妙ちきりんなもので、微睡(まどろ)んでしまったのだ。しかし、この時点では運よく六時前だった。安心して、また微睡む。叩き起こされたのは凡太(ぼんた)によってだった。無意識でアラームを止めていたのか、空が白々と明るさを主張しているのに、私は目覚めてはいなかった。凡太は、家(うち)の飼い猫である。今年で三齢になる雄猫だ。ミャーミャーと呼ぶ声は朝の餌を求めていたのだろうが、私にとっては至極幸いであった。彼が目覚ましの代役を立派に果たしてくれ...凡太の憂鬱[メランコリー]再掲
2023/04/23 00:00