◆小説「傾国のラヴァーズ」その56・聖名の体温、聖名の匂い
さらにはこの人が世襲議員ということがわかって、ますますがっかりしてしまった。それもよく読むと三代目だという。初代である彼の祖父は自憲党を与党にするために先頭に立ったが、実現直前で病に倒れた。そうでなければ初代総裁、総理大臣になれたはずという。そして2代目である父は政局の混乱のため2度目の総裁選を辞退するはめになり…それでこの伸一郎という人が、今度こそと周囲の期待を背負っているらしい。まあ俺の目には、庶民の暮らしも苦労も知らない坊ちゃん育ちのエリートおじさん。そんな風に見えた。金絡みより女性絡みのスキャンダルに引っかかりそうな脇の甘さがどうしてか感じられた。…まあこんな時代に生きている若者としては、政治家にはいい仕事をしてもらわなければ困るのだ。…聖名のお祖父さんのように。…隣で聖名がもぞもぞと動く。「セン...◆小説「傾国のラヴァーズ」その56・聖名の体温、聖名の匂い
2023/06/01 21:47