ふたつの感情
私たちは普段何かに記名をするとき、 その氏名欄の横に必ずといっていいほど用意されている「性別」の欄に戸惑いを感じることはない。 だが、性同一性障害の人々は、この「性別」欄でペンが止まり、そのペン先はしばらく宙を泳ぐことになる。 自分は何者なのか、男なのか女なのか、そのことをまた考えなくてはならなくなる。 自分は自分であるだけなのに、そこに男女の別を記入しなくてはならない制約は彼らを苦しめる。 我が子がそんな苦しみを抱いていることにまだ気付いていなかった私に、カミングアウトの日はやってきた。 それは息子(それまでは娘だと思っていた)が17歳の時だった。 ―― 俺は性同一性障害だと思う ―― この…
2022/09/30 20:37