映画館
束ねられた光でできた映像を見るとき、そこにはないはずの体温があって、鼻腔が乾いて、自分のものではない思いが湧き出る。それは自分と外界を隔てるガラスに結露となって形を成して垂れていく。口が乾いていく。安そうな紙コップに入った割高のジンジャーエールで喉を潤すと一瞬だけフィクションの世界に引き戻される。でもそれは炭酸の泡のようにはじけてまたノンフィクションへ戻っていく。そこでのあなたは雑魚なのです。脇役なのです壁なのです。何が起きようと手が出せない。でもそれってフィクションでも起こるよね。そのことに気づいたときジンジャーエールの辛さが舌を突きくたびれたソファーの匂いが鼻につくようになる。背もたれの居…
2023/02/28 20:02