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  • 白砂に落つ・・17

    定次郎の菩提寺である寒山寺のお千香が眠るに傍らに葬られた。本来ならば、とが人を墓所にほうむってやることなど、断りをいれるはずの住職であったが、人づてにきいた佐吉の最後の絶叫があまりにあわれでもあった。お千香さんの横でねむらせてやれれば、佐吉の魂も、やすらぐであろう。お千香さんもそうのぞんでいるだろう。住職はそうもかんがえた。だが、残された家族。定次郎や定次郎の妻。つまりお千香さんの両親には、許せないことであろう。ところが、案に相違して定次郎が処刑場から佐吉をひきわたされると住職に頭をさげてきたのである。とが人を墓所にいれてやってくれというのも、無理難題であろうが佐吉の亡骸をお千香のそばにほうむらせてくれないか。と。住職が定次郎の温情に手を合わせたことはいうまでもない。実際、お千香が自分を殺した佐吉を傍らに...白砂に落つ・・17

  • 白砂に落つ・・11

    「つ・・・まり、それで、お咲が、できたってわけかい」孫娘の名前は佐吉の「さき」をもらって、咲と、なづけられている。定次郎はどうしても信じられない。お千香が口をぬぐい、あげく、「咲」と、なづける事を承諾する?承諾するしかなかったか、いかにも、佐吉の子とおもわせたかったか。「親方。勘弁してくだせえ。お咲にやあ、何の罪もねえこった。お咲は佐吉を父親だと思ってるんです。俺もそれは、充分に承知しているつもり・・・」弥彦の言葉が、又も途切れた。お千香が咲を産んだ。その事が弥彦の鬱屈をいっそう、大きくした。親方が男の子を欲しがっているのをよく、知っていた弥彦である。「俺はお咲の出生の秘密を種にお千香ちゃんをなんど、おどかそうとしたか、わかりゃしない。だけど、それだけはしちゃいけない。あのことはそれ一度限りのこと、そうか...白砂に落つ・・11

  • 葵のタイトルって・・・

    ひさしぶりに、小説もどきを書きたくなって、葵・・をしあげたものの、まあ、つじつまの合わないこと、この上なし。だいたいにして、なんで、タイトルが葵なのか・・・ここが、実は今までのタイトル付けを考えると作品の軸になっている。第一印象というやつだな。その印象を一言でいうと、葵ってことになる。だからあああ、なんで、第一印象が葵なのかってことになる。そこで、逆に考えることになる。葵といえば、一番におもうのが、葵のご紋水戸黄門さまだろう。そして、葵の花。どちらも、存在感、はんぱね~~~~!!君臨しているというイメージなのだけどどちらも、柔らかく、情のある感じだな。相手を思いながら、君臨している、そんな柔らかさがある。ここかな?主人公・・・相手を傀儡のようにあやつってると考えるけど実際は、男性側が崇拝するかのように、主...葵のタイトルって・・・

  • 犬夜叉、蛮蛇小説の裏話

    犬夜叉、蛮蛇小説をあげましたが・・・。憂生は自分の作品を小説といいたがらないのです。小説の域に達していないという謙虚な気持ちではありません。憂生の中で「作品と(あるいは、物語)」と「小説」との区別があるとおもいます。今回の犬夜叉、蛮蛇作品は臆面なく小説といっています。あと、ADARUTO小説や、官能(官能にならないんで、ADARUTOとよびかえていますが)小説ならば、小説というわけです。時代物BL小説(みじかいんで、小説ともいえませんが、お笑い系です)も小説というときがあります。きがつきましたか?娯楽的な読み物として、書いたものや娯楽的作品とうけとめられるだろうものを「小説」と呼ぶ憂生がいるようです。ですので、自分のことも「小説家」とはいいません。もちろん、小説家というには、もっと、資格がいります。まず、...犬夜叉、蛮蛇小説の裏話

  • 悪童丸 から・・

    自分で書いて、自分で感心するのも、妙とも当然ともいえるがwww我ながら、こんなところに、いっぱい「ネタ」を仕込んでいるのだとおもう。その「ネタ」が芽吹いてくるのがこれまた、ずいぶん先の話であったり、同じ・・本編であったりする。「ネタ」をしこむのに、できうるかぎり、さりげなく場合によっては、ぜんぜん気がつかれず・・・ということがおおくある。この「ネタ」もあえて、埋めるものとあとから、ほじくりだして、咲かせるものがある。いわば、古代の蓮の種のようなもので、本人もおぼろげにしか咲く「ネタ」になるとわかっていないことがある。たとえばであるが、まあ、ちょっと、しつこいほど、政勝とかのとの睦言をかいている。この中でしこまれているのが睦言のときには、「政勝さま」(ちがったかな?だんなさま?)と、返す。と、いうさりげない...悪童丸から・・

  • 白峰大神 終えました。

    白峰大神終えました。順番替えは明日にします。文字数多くても1スレッド5000文字までが読みやすいと、思ったりしているのですが切れが悪いといっていいか。つなげてしまう書き方が悪いというか。なかなか、切れ目が見つけられず文字数の多いスレッドが多いです。原稿用紙にしたら6万文字ほどだったと思います。白峰大神より、長いのが白蛇抄では邪宗の双神です。これを掲げるには、まだ、登場人物が出そろってないのでまだ、先になります。7年ほど前の同人誌ペーパーから、およそのあらすじを・・・・只今、16編を完成し、17話ー銀狼ーで停滞しています。続きに文芸社からの審査書評を掲げますが、これにも、書かれているように、「前編では、判然としなかった事が他編で初めて明らかにされる事実によって急に輪郭をもったものとなって眼前に立ち現われる」...白峰大神終えました。

  • ちょっと、一休み・・・

    白峰大神をあげておりますが・・・・過激な表現が多いため・・・冒頭にそれらがでてこないように掲げると1ページ(1スレッド)が3万文字近くなる・・と、いうことが起きていたりしています。(フォント4にしているので、実際はその半分の文字数)この白峰大神も悪童丸と同じようにふたつの「物事」を一挙に解決していく形をとっています。そして、書評の中・・・人と鬼と、そして神。多くの登場人物が絡みあいながら、少しずつ物語の道筋が付けられてゆく。―読み手は何よりもその壮大で深遠な世界観に度肝を抜かれるだろう。エピソードはそれぞれ個々に独立はしているものの、前章が次章に、そして、次章が前章と関連しながら、著者の描く世界の拡がりは留まる事を知らない。番外編4編を含む全十四編の本作品は、複雑な人物相関の中で、人間の業、情愛の深さ、本...ちょっと、一休み・・・

  • 白峰大神・15 白蛇抄第3話

    鼎の眼が虚ろに開いたまま、夕刻迫り探しに来た白銅に見付けられるまで山童の蹂躙が何度も繰返された。「か、な、おのれ!」白銅は鼎の有り様に気が突くとたちどころに法術を唱えた。風が起きると山童の身体が巻き上げられ引き切られぼたぼたと肉片となりて落ちて来た。「鼎」慌てて、鼎の側によると鼎の顔を覗き込んだ。「鼎?」眼が宙をさ迷い白銅と目があわない。ひしと鼎を抱き締めると、「鼎?」もう一度呼ぶと鼎の眼がぼんやり、山童の肉片を見つめた。やがて小さく悲鳴を上げた。「ひっ」「鼎」「あ」やっと白銅に気が付くと「兄上」一言呟く様に言うと「うわああああああああ」声を上げて泣き出した。白銅が鼎の身体の汚れをはたくと、鼎は、「痛い、痛い、痛い」と、うめく様に言う。「鼎。なんでもない。忘れろ。良いな。忘れてしまうのだ」鼎は呆けたような...白峰大神・15白蛇抄第3話

  • 白峰大神・14 白蛇抄第3話

    「白銅もう一つ用事があると言うたであろう」「お、おお。言うておったの?」白銅はやっとひのえを放した「鼎様の事だ」「鼎」「何故、ああなった?」「聞かぬがよい」「あの姿のままで良いと言うのか?もしも、助くらるる法があったらどうする?」「え・・・?」「伊達に、白峰の所におったわけではない」ひのえの嘘である。が、そうでも言わなければ白胴も喋るまい。『白銅から読み透かしはしとうない』色んな思いが渦巻いている。それも拾うてしまう。これ以上その思いを知れば産を成した後の結果によっては尚、苦しむのはひのえの方である。白峰の慟哭も心に応えた。だが、白銅は澄明に請われるまま澄明の迷いさえ思い浮かばぬまま話し始めた。「鼎が数えの十三の年。森羅山に入った。知っての通り霊域だ。が、護守の数珠を持たせている。我らはなんの気にも止めて...白峰大神・14白蛇抄第3話

  • 白峰大神・13 白蛇抄第3話

    白峰の百日があけようとするのに、なんの手立ても得られなかった。手繰る糸は有るのに手繰る術がない。歯噛みしながら日が過ぎて行った。矢も立ても溜まらず白銅はもう一度正眼の元に行った。ひのえの心さえ白峰の物になっていなければそれで良い。が、正眼の応の返事は無かった。意に沿わぬ婚儀でこれ以上ひのえを苦しめたくない。ひのえの心はどうなのじゃ?逆に正眼に聞かれ、白銅は答える事が出来なかった。「白峰の事が無ければ考えられたやも知れぬ」と、ひのえが言った事が答えに成る筈がない。考えた挙げく否という事だって有り得る。が、白峰との事が終わりを迎えようとしている。ひのえが考える事だけでもしてくれるやもしれぬ。とにかく、動こうそう決めて白銅は正眼の元に来たのである。「本意に望んでおると、それだけは必ずや、お伝え下さりませ」最後に...白峰大神・13白蛇抄第3話

  • 白峰大神・12 白蛇抄第3話

    何時のまにやら夏の盛りになり、青く小さな柿の実が花を結んで枝枝に付いている。蝉の声がじいいいと底鳴りをさせるように唸り出すと、あちこちから、呼応していくつもの蝉が鳴き始めた。ひのえは急いでいた。早く家に帰りつきたい。父に逢いたい。そう思うが父の顔を見て泣き付いてしまわぬだろうか。やっと、帰って来たひのえを迎える父の前でけして泣いてはならない。そう言い聞かせながら足早に歩いていたひのえの足が止まった。白銅の家の前にさしかかった。開け放たれた縁側に今日は白銅の姿は無かった。今更、どんな顔をして逢えばよい。ひのえはふと俯いた顔をあげると又、すぐに歩き始めた。家の玄関まで来ると足駄をはむ正眼の姿があった。ひのえに気が付くと「おお、今、白峰の麓まで迎えに行こうと思うておった」「帰りました」「よう、帰って来たの。ああ...白峰大神・12白蛇抄第3話

  • 白峰大神・11 白蛇抄第3話

    八十八夜白峰はこの所よく眠る。朝に昼に夜に供物を届けてくる巫女の声にはっとしたように目を開けると、必ず白峰は自分から供物を取りに行く。巫女の方はそれを置くと一目散に山を下って行く。うっかり白峰の姿なぞ覗こうとしたら、どんなあふりがくるか。自分から姿を現わさぬ限り触れる事のならない掟のような物を巫女は判っている扉を開けて供物をとりいれると白峰がひのえの前に供物を置き食べるように言う。「精をつけねば、ややが育たぬぞ」確かにひのえは孕んでいる。軽いむかつきが胸に上がってくるようになっていた。悪阻である。『やはり、宿ったか』悪阻が上がってこぬでも、もう、二月以上つきの物が無い。その上、連夜の白峰の責めである。孕まぬわけがない。「ひのえ、女子じゃ」「は?・・い」「宿ったのはの、女子じゃ」「もそっと、馳走を出すように...白峰大神・11白蛇抄第3話

  • 釦を・・・

    まだまだ、揚げたいものがあり、ついつい、スピードアップ。懐の銭などは、ゆっくり余韻をたのしみつつ、次、どうなるの?と、きになってしまう。と、いう読む楽しみ?みたいなものを・・・と、思うくせに、やっぱ、揚げてしまうWWWその揚げる合間に、ちょっと、他の人の記事を読みに行く。良いね。とか、応援。とか、続き希望。とか・・・そんなボタンを押すのは、かえって軽々しい、と、思ってしまう深い内容。訪問したことは相手の方には判っていると思う。そして、その記事には次々と釦が押されていく。押すのがいけないという意味ではない。自分が「いいね」と、押す、その重さが記事を受け止めた深さと重さが「いいね」では、伝わらないと思う。読み物のように、読んで簡単に評価するように見えてしまうのは釦の表記の仕方だろうか?ー心に沁みましたーとか真...釦を・・・

  • 懐の銭・・11

    お多福をあとにした男の足はまっすぐに文次郎親方の元へとむかい、寸刻のちに、文次郎親方の前で、ひざをつき、土間に頭をこすりつけんばかりの男をとめたのが他ならぬ文次郎親方だった。「よせやい・・謝らなきゃいけねえのは、俺のほうだ・・それは、なしにしてくれ」思い越せば子飼いの倣いから男と親方の付き合いは三十年をこす。すりつけた頭を上げて親方をみつめれば、親方の目の端が赤くうるんでみえる。「殿中ご用達の品はな、おまえじゃなけりゃつくれねえんだ。きっと、けえってきて必ずつくってくれるとおもってな・・おりゃあ、ずうううと、さしとめていたんだぜ」まちがいなく男を一人前の職人として認めているとその言葉でわかると、男の目からも、にじむものがほほをつたいはじめていた。けれど・・。「親方・・勝手にとびだしちまって、迷惑をかけて、...懐の銭・・11

  • 懐の銭・・12

    その白銀町の大橋屋の隠居は、こけつまろびつ、大急ぎで店をしめてやってきたお多福の女将からの委細事情をきいていた。「文次郎親方の所にわびにいくっていって、まあ、それが、順序だろうって・・順序って言えば、修造の若い衆にもそういって追い返す事ができたんですよ・・そりゃあ、ご隠居が金をだしてくれるって判っていたから、あたしも・・こう・・なにくそってね・・やおら、腕をまくられたときにゃあ、本当は足ががくがくふるえていたんだけど・・」まだ、興奮さめやらずで、順序、順序といいながらとうの女将の話の筋道はたっていなかった。年恰好はせいぜい三十絡みにしかみえない女将にとっては、こんな愁嘆場をくぐりぬけたことなど初めてのことであったろう。無理もないことだと女将の口から興奮が飛び出すのを聞き流していたが、肝心なことをきかねばな...懐の銭・・12

  • 懐の銭・・13

    玄関から頭をすりつけるかのように、かがみこんで、はいってきた文次郎と男は大橋屋の前で、さらに、べたりと頭を畳にすりつけんばかりである。男の胸中をおもんばかって、大橋屋・隠居は制した。「親方。私と親方の間でそれはない」文次郎をも、土下座まがいに頭をすりつけさすさまは、男の胸にも痛かろう。文次郎も隠居の心根を察っすると、男にちいさくめくばせをした。いっそう、男は小さくちじこもり、親方を見つめた瞳を畳の目をかぞえんばかりに低頭した。「まあ、それはよしにしましょうや」男にいいなおすと隠居はこほんと小さく咳払いをした。「お顔をあげなすって・・。まあ、私の話をきいてやってください」柔和な笑顔を男にむけて、男の顔が上がるのを待つと隠居はしゃべりはじめた。「私がね・・お金を用立ててさしあげようときめたのは、文次郎親方の思...懐の銭・・13

  • 懐の銭・・14

    泣いてる男の機嫌取りをするわけじゃないが、本来の目的をはたしきってから泣いてくれと隠居は男をおいたてはじめた。「さあさあ、その金を修造のやつにたたきつけ・・・おっと、また、なんくせをつけられちゃあいけないから、まあ、そこはこらえて、しっかり、証文をかかせて、きっちりかえしましたって、ぐうの音もでないようにしときなさいよ。なにせ、あいつは、町方役人とつうじてるんだからね。三日といったのでも、どんな、なんくせつけて、町方役人をひっぱりだしてくるかわかりゃしない。とにかく、急いで、一刻でもはやくけえして、変な考えをもたせちゃいけない」隠居の不安は、修造がいかに姑息かわかってるからだ・・。ちょっと、首をひねったのは、姑息に隙をつかれないようのという考えがわいてきたせいだ。「ご隠居のおっしゃるとおりだ。さあ、一時も...懐の銭・・14

  • 懐の銭・・15

    矢来の雨がふってきそうだと空をあおいで、懐の銭をぐっと押さえて確かめる。急ごうと走り出しながら、男の胸に大きな安堵がうかんでくる。これで、お里も安心だ。女将にいわれたように、男は死んでしまおうと思っていた。そうすりゃあ、なにもかも、かたがつく。その考えが甘いものだなんて思いもしないほど、なにもかもに嫌気がさしていた。逃げ出してしまえる理由がほしかったんだと思う。だが、親方への誤解が解けた今、男にはやっていかなきゃならない事がいっぱいできた。文棚をこしらえる。それから、大橋屋のご隠居にすこしずつでも、金をかえしていく。それから・・お里・・。嫁入りしたくなんかしてやれそうもないが、お里は手のいい針子だって、大店からあつらえものがくるようになってきてる。まあ、それで、ちょいと、小銭をためれりゃあ、恩の字だ。とに...懐の銭・・15

  • 懐の銭・・16

    懐の銭をおしながら、余計にわたしてくれた心使いの1両の所在も確かめる。落としちまっちゃいけねえと、足元に気をくばりながら男の足はせく。しかし・・。女将がなあ・・。文次郎親方なら、いざしらず・・。女将がなあ・・・。人の世がいかに情でささえられてるか。女将にも安心してもらえるような生き方をしなきゃいけない。品や物や金で礼をすることができない男はいっそう、生き様でかえすしかないと思う。それにしても、この1両・・。隠居さまはよくよくの苦労人・・まてよ?渡された30両と1両。もう一度ぐうと押してみて男は考えた。「俺は金かさの話をしたおぼえがない。親方だって、なんにもいってない・・」はあと男はおもいあたる。親方のほかに30両という金かさをしってるのは、女将しかいない。女将が金かさを隠居につたえ、ご隠居は黙って金を用意...懐の銭・・16

  • 懐の銭・・17

    大池の男を眼の端にとめながら、男は小道を登りきった。だが・・・・。池の端の男は男をおいかけてもこなかった。男の姿にさえきがついていないようだった。待てよ・・・。男は目の端に移った池の男の姿をおもいかえしていた。待てよ・・・。待てよ・・・。あの恰好は・・・。どこかの番頭か、手代か?男は不思議だと思った。こんな時刻に奉公人が池の端でじっとしている。店に帰らなきゃおかしいだろう?そんな自由がゆるされるはずもない。勝手気ままに息抜きをするにしたって・・・こんなところで・・。それとも、逢引かい?女を待ってるって、態か?男はほんのすこし、ふりかえって、大池の男をみた。なんとはなしに、妙な気がしただけだ。やけにものさびしそうなのは、女がなかなかこないせいかもしれない。人の恋路を邪魔する無粋はやめておくことだ。そんなこと...懐の銭・・17

  • 懐の銭・・18

    いきなり何者かにとびかかられ、驚いたのは池の男のほうだろう。まっさおに青ざめた顔がいっそうひきつっていた。「な・・なにをするのですか」40がらみの男がくみついたまま、池の男をおさえつけようともがいていた。「な・・・なにをするってのは、こっちの科白でぇ!!」男に怒鳴り挙げられ池の男は顔をふせた。自分が死のうとしていたことを思い出したというところだろう。「え?てめえ、死のうってしてやがったろ?おっちんじまおうっておもっただろう?」目的を思い出した池の男は静かな声で男につげた。「ええ。おっしゃるとおりです。どうぞ、みのがしてやってください」妙に弱弱しい声のくせに覚悟がこもってる。説教なんぞで、気がかわらない深いわけがあるように思えた。「みのがしてくれっていったってなあ。こそ泥だってそんな言い草がつうじるわけねえ...懐の銭・・18

  • 懐の銭・・19

    用心しながら池の男から身を離し、男は正面を切った。「ああ。まず、とくと、きかせてもらおうじゃねえか」だいたい、死んじまおうなんて思うのはせっかちすぎる。あの手、この手うってるのかどうか?やるだけやってだめだったのか?なにがあったか知らないが、うまい解決方法をみつけられないだけで、思い込みのあまり、おっちんじまうってのは、笑い話にしかなりゃしねえ。ちょいと前の自分がそうだった。思い込みすぎて、解決方法をさがすのさえ、どうでもよくなっちまう。てっとり早く解決しちまえばいいって死んじまうことばかり考える。だけど、解決するのは、自分の思い込みだけで、問題は依然としてそこに残るんだ。へへっ。これは女将の受け売りだな。男は腕を組んだ。おまえさんの話をきくから、もうおさえつけたりしねえから、話せという男の意志表示だった...懐の銭・・19

  • 懐の銭・・20

    「で?なんだよ?いくら・・」呉服屋から預かった代金がいくらかときいてるとわかった池の男はかくかくと首をふった。「なんだよ?わからないのか?」男の問いにかすかに笑っているようにみえた。だが、男もすぐに思い当たる。おっちんじまおうと思う額だ。簡単にどうにかなる額じゃない。男はじんわりと懐をおさえた。30両と1両ある。この中からちょいと用立てやりゃあ・・・。と、考えはするものの、男は考えあぐねる。よわった・・この金はご隠居が親方が・・。女将の顔が浮かぶ。そしてなによりも、お里だ・・。ご隠居が天袋から1両の金をだしてきたのだって、ありゃあ、すからかんになっちまったに違いないんだ。封を解かず、1両ぬきだしてきたんだ。呼び銭にちがいねえんだ。なにもかもはたきだしてその金でお里をたすけてやれって、渡してくれた金だ・・。...懐の銭・・20

  • 箱舟 第3部を終えて・・・次は・

    作品箱舟のうしろにあるものは、「深淵」なのかもしれない。なにか、今のご時世の中例えば、統一教会に対する信仰こんなのも、考えようによっては「寄生体」のようなものに乗っ取られている・・と、いえるかもしれない。けして、宇宙人とかでなくそれ以上に質の悪い「癌細胞」のような自らが生み出す寄生なのかもしれない。だとすると、自覚の無いまま「寄生」(あるいは増殖)されているより箱舟の編集長などは、幸せなのかもしれない。などと、考えてしまった。次・・・よく考えたら、もうひとつ、二次創作が有った。元ネタは落語。落語のタイトルを書くとネタばれしてしまいそうで落語の方の紹介はしないけど・・・二次創作ということになる。落語という話芸を物語に仕立てようとしたときあ~~あの落語かあ・・・と読んでる途中に気が付かれてしまう・・・と、いう...箱舟第3部を終えて・・・次は・

  • 箱舟 ☆☆1

    その日を境に私の生活は、急変した。箱舟をかきあげた私はそれを世にだすことをあきらめた。なぜか、急激に、出版への意欲がうすれていったのだ。それは、おそらく私の中にはいった寄生物の操作に他ならないと思えた。彼らが人類に寄生するエネルギー体であること、そして、彼らがまず、実験的に人類にはいりこんで、仲間を誘導していくこと。このモデル実験に選ばれた人間はかなりいる。編集長もそうだろう。そして、ゴーストライターだった彼女もそうだった。ゴーストライターだった彼女はこの寄生体の存在を公開しようと試みた。その結果に訪れたのは死ではなかったのだろうか?彼女はどこまで、寄生体を認識していたか、さだかではない。だが、私が寄生体に寄生される未来を予知したように彼女もまた、予知したに違いない。そして、彼女の箱舟を書いた。彼女の中で...箱舟☆☆1

  • 箱舟 ☆☆2

    だから、彼らは私の意識の中にある「欲」を操作しているのだ。出版欲、名声欲・・。何でも良い。それらの「私の意識・観念」は、彼らにとって自分の環境に他ならない。その中で暮らす(寄生)彼らにとって私の意識・観念はまるで、大気のよごれのようにすみにくいんだ。私が出版して彼らの本当の目的を公開しようという思いは彼らにとって、自分たちの存在を否定され吐き出される行為にちがいない。けれど・・。彼らは逆に自分たちの存在を認めさせる必要がある。それは、禅問答ににているけれど、「在る」とするものにしか、存在し得ない存在なんだ。ゴーストライターはなにかのきっかけで、彼らの存在を認識した。そして、彼らが、ゴーストライターに寄生するために、なにかの引き金が必要だった。それは、なに?簡単な答えかもしれない。ゴーストライターの執筆欲を...箱舟☆☆2

  • 箱舟 ☆☆3

    まず、私がおこした行動は箱舟第1部を機関紙に発表するという当初の予定行動を実現することだった。穴埋めのゴーストライターのゴーストライターだってかまわない。まず、寄生生物の概念を多くの人間にしってもらうことが先だと思った。ところが・・・。ありえないことだった。編集長は私の顔をみるなり、「これは、使えない」にべのない返事だった。この時点ではっきりわかった。ゴーストライターから渡された「箱舟」を私に読ませる事が目的でしかなかったのだ。この時点でゴーストライターと私が書いたものが一致するという、ありえない事実をしることになる。私はこの物語が本当のことを言っていると知る。つまり、寄生型宇宙人がいると存在を認めてしまったのだ。これにより、波長がシンクロし私の中に寄生型宇宙人が入り込んだ。それだけが、目的だったのだ。編...箱舟☆☆3

  • 箱舟 ☆☆4

    すでに多くの人間が罹患していたといってよい。そこで、私はやっときがついた、おそらく、私の伝える事は(たわごと)あるいは(捏造)にしか受け取られないというに。私はいっそう、あせった。そのまま、箱舟を書き続ければ私は狂人としか、判断されない。どうすれば、よいのか、どうすれば、論破できるのかこれができなければ、根拠の無いものを信じない人間が目の前に見せられる偶然さえも、エレメント体の力だと信じている洗脳状況を解くことはできないだろう。微小ながらでも、寄生されていることに気がつけば何かが変わる。私は、自分の中の寄生エレメントの正体をさぐることにした。だが、これは、多くの人間を巻き込んでいるイリュージョンマジックに自分も罹患されることになるとは、気がついていない私であった。ここまで、意識世界を操っているとはしらず、...箱舟☆☆4

  • 箱舟 ☆☆5

    彼女が私を護った?そういうことになるのだろうか?私の考えすぎで単に本当に共存するだけ?だが、それは、彼女の罠でしかなかった。私の深層心理はマイナスエネルギーの存在を恐怖として信じ始めていた。これが、いっそう、自分から彼女からの答えをひきだそうとする心理になっていった。私はひどく、気分が沈みはじめた。それは、ほかでもない。自分をのっとろうとする存在である彼女にふりまわされてしまったせいだ。ひどく、気持ちが沈みながら、彼女の存在が気になる。マイナスエネルギーを発生する存在なんてあるものだろうか?もっと、いえば、悪霊なんて、いるものだろうか?自分の心のせいでしかないと彼女の存在を知る前なら私は一笑にふすことができた。だが、得たいの知れないマイナスエネルギーがあるという事実に驚愕しつつ、それを知ることができる彼女...箱舟☆☆5

  • 箱舟 ☆☆6

    つまり、私は自分の意志で彼女をえらんだのでなく彼女の意志に操られていたんだということ。つまるところ、自分の弱さにつけこませたのだ。私の中でまだ、疑問は残った。なぜ、元の寄生生物は私の「欲や恐れ」をはしごにしたのだろう。これが、なくなると、もうすこし、高度な精神性をもっているように思える寄生生物がはいってきた。むしろ、「欲や恐れ」からよりつく、悪霊らしきものや前の寄生生物から私を護ってくれるように思えた。彼女は私を導こうとしているのだろうか?私は自分が自分の主人公でないことに怒りをかんじていた。だから、疑問を感じる事が出来たのだと思う。だが、それでも、私は新たなる寄生生物を受け入れていた。ここにも、かすかな疑問を感じ始めたある日、「宇宙人とのコンタクト」というブログにたどり着いた。そこに書かれていたのは確か...箱舟☆☆6

  • 箱舟 ☆☆終

    ******編集長・・。お客様です。ええ。なんでも亡くなられた水上千絵さんの遺作を出版したいとのことで、ご家族がおみえになっています。はい?・・・・・・・・・。ああ、作品タイトルは「箱舟(三部作)」だそうです。はあ?ああ、・・・・そうですか。判りました。***********水上千絵の家族が、ほかの出版社に「箱舟」をもちこまないためにも、私は「箱舟」をあずかった。「ほかに、ブログなどに発表されていませんよね?発表されていた場合、版権の問題がしょうじますので、あったら、削除なさってください。元の原稿もこちらで、保管させてください。ええ、ワードなどに書いてある物も完全消去願います。著作権は刊行本によって、証明されます。この著作権利に対し、売り上げの8%の印税をお渡しします。ところで、お母様は「箱舟」をおよみに...箱舟☆☆終

  • 意外と短かった第二部www

    同じタイトルが続くもので混乱させてしまうかもしれない。カテゴリから、引いていただくとして・・・箱舟第一部箱舟第二部自分が思っていたほど、第二部は長くなかった。で、第三部に突入するけど・・・ちょっと、挙げた作品の羅列をしてみる。作品の順番替えしたらカテゴリ順も替えるようにしているので箱舟第二部は箱舟第一部の下に付くようになる。現状の作品名(カテゴリ)1カテゴリに居れてしまっている物も有るので35作品と思う。カテゴリー箱舟第二部(5)掌編(7)パンパンとチョコレート(12)蛙(3)俺の胸の中の陽だまり(ー神戸にてー)(2)ユニコーン(8)彼の魂が・・(1)金と銀の夢の鞍(1)ノンちゃんの犬(1)思案中(4)葵(1)奴奈宣破姫(25)風薫る丘の麓で(10)「いつか、見た夢・・デ・ジャブ」(7)箱舟第一部(8)柿...意外と短かった第二部www

  • 箱舟 ☆3

    「水島かな子本人が小説をかいているわけじゃないんだよ。ゴーストライターが居るんだ」「つまり、穴をあけたのは、ゴースト・ライターさんだってことですね?」それが、どうしたっていうんだろう?売れっ子作家であろうが、ゴーストライターであろうが、「穴埋め」に使われるということに変わりはないじゃないか。ゴーストライターなんていうのは、その言葉が出来たようにそういう存在があるからこそ。作家が編集しなおしてもらうということだって、考えようによってはそこはゴーストが介在してるってことで、その割合がどこまでの物かの違いでしかない、なんて認識がある私は水島かな子の作品がゴーストライターの物だってことを意に介していなかった。一種、歌手のように、作詞、作曲が歌手本人でなく曲を売る才能や資質やチャンスをものにした歌手が歌う。水島かな...箱舟☆3

  • 箱舟 ☆4

    バスに乗ってる間、私の頭の中には疑問符ばかりが浮かぶ。A4封筒は、手軽な軽さ。短編なら、充分の量。でも、短編なら、そのまま、掲載すればよいだろう?もってきたというんだから、短編なら仕上がっているはず。長編小説の連載1~2回分?その続きを書けっていうことかな?私が読んだら書く気になるってこと?ーひょっとしたら、巧く、はめられたのかもしれないー読んだら最後、書かざるをえない心境になる?胸に抱いた封筒がやけに重たく感じられる。私に、読むべきか、読まざるべきかを迷わせる重さは、得たいのしれない魔物の封印を解く勇者の迷いに等しいかもしれない。でも、勇者はどこかで、己の勝ちを予測している。一方の私は・・・「君じゃなきゃ、書けない」という呪文に操られている愚か者でしかないのかもしれない。愚か者はバスをおりると、大きなた...箱舟☆4

  • 箱舟 ☆5

    私自身が奇妙にも、酷く冷静にうけとめているのだから、編集長とて、奇妙なほど、驚きもしないことを疑問に思うのはおかしいことかもしれない。だけど、今思えば、あの冷や汗?あの「君が考えたんだね?」って、念押し?それ、どういうことになる?亡くなった人間が持ってきた原稿と私の原稿が書き方こそ違え同じ設定になっていたなんて、通常なら・・吃驚なんてものじゃないよね?心霊現象以上の恐怖じゃないのかな?それが、大騒ぎせず、恐怖の色も見せず汗一つだけのこわばりで、私が書いたかどうかだけを確かめる。「そうだよね・・そうだよね・・」って?そうだ、あの時に確かにそう言ったんだ。それって、同じ設定だって事がわかった人が言うせりふなんだから・・・。そうだよね。は、ほかのなにかを納得してる言葉って事になる。つまり、それは、こういうこと?...箱舟☆5

  • 箱舟 ☆終

    唐突に付け足された第2部のはじまりをほんの少し書いて私はそれを読み直した。******箱舟(箱舟(第1部)を書き終えた私だったが、物語の終わらせ方がしっくりこなかった。だいいち、-私ーはこの先どうなってしまうんだろう?彼女と共存するにしたって、どういう風に共存していくんだろう?寄生植物を考えたって、寄生側が宿主を殺してしまうようなことをしないのとおなじように、彼女が宿主に必要以上のコンタクトをとらないのはわかるけど、どうなるんだろう?もうひとつの案でもう一度かきなおそうか?そうおもいながら私はカレンダーをちらりとみた。***********そうだった。第1部の終わり方がしっくりこないのをどうにかしようと、ここからすでに他力本願の自分がいたんだよね。こんなあまっちょろい考え方だから、現実と物語がごっちゃにな...箱舟☆終

  • 箱舟 (第一部) 投了しました。

    箱舟(第一部)を終えました。正直、なんだ?それ?と思わせていると、思います。で、たぶん、(第二部)の出だしで、「え?よくあるパターン・・夢落ちだったってこと?」と、思わせてしまうのではと・・・・ややこしい書き方をなったのは・・・自分でも、第一部の終頃に「なんだ、これ」と、思ったのです。第一部設定を活かす方法はないか急遽、考えながら第一部を終えたのですが・・・第二部・・読み続けてもらえるセンテンスがあるか、どうか・・・不安ですねwwwwでも、書いた以上完結させねば病がでて第三部に突入したわけで(第二部だけでは、足りていなかったということですがwww)飽きず、読んでもらえるか、不安な作品です。まず、第二部から、進めます。その前に恒例の順番替えもしかしたら、読んでる最中だった人そのページのままだと次の記事がなく...箱舟(第一部)投了しました。

  • 奴奈宣破姫、終えました。

    奴奈宣破姫終えました。奴奈宣破姫の表記は、他にいくつかあるのですが『古事記』では沼河比売、『先代旧事本紀』では高志沼河姫(こしのぬなかわひめ)、『出雲国風土記』では奴奈宜波比売命、その他奴奈川姫とも表記される。奴奈宣破の表記を選んだのはその文字が姫そのままであると思ったからです。奴は、翡翠のこと奈は、~の~による宣は、宣誓(甲子園球児~~)とかの「宣」で高貴な人がおっしゃる事はのたまう(宣う)誓いという高貴?なことを発言するので「宣誓」宣言する内容が、万民や天にむかうというところで命がけの尊きこと=宣言そして、破は、論破する、見破るの「破」奴奈宣破は、翡翠により見破った事などを言葉に(言い破る)する。翡翠に因る宣破ということで彼女が一族の「長」のような存在であり民を思い、その地を納めていたと、解釈できたの...奴奈宣破姫、終えました。

  • 逆賊 奴奈宣破姫・22

    もう一度、にぎはやひは言い直した。「みほすすみから、伝言をことずけられている。それをつたえねば、ひきかえすわけにはいかない」ぬながわひめに直接つたえる話であると気取ると頭をさげた男はなにか、じっと考え込んでいた。「通すのか、通さぬのか?通さぬとならば、お前たちはぬながわひめの臣下ではあるまい」にぎはやひの言葉に男の肩がふるえた。意を決したか、男はしゃべり始めた。「我らは、逆賊であることはまちがいありません」すると?「おまえらは、わしが姫の助きになるを許せぬということか」だが、それならば、さっさとにぎはやひを撃ちまかせばすむことであろう。ましてや、逆賊が逆賊であるとさらすものだろうか?「我らは、姫のお心に逆ろうて・・」「姫のお心とは?」にぎはやひがたずねれば、それを言わば、姫の心に従わざるをえなくなるとでも...逆賊奴奈宣破姫・22

  • 大御心 奴奈宣破姫・20

    どう見ても兵ではない。ぬながわひめを護ろうと決起した奴奈川の民である。胸に携えた鏡を高く掲げ恭順の態をみせながらにぎはやひの胸中は複雑なものになっていた。すでに、おおなもちの訃報は伝えられている。と、考えてよいだろう。当然、アマテラスが奴奈川を掌握しにやってくる。翡翠の霊力をあやつる巫女はいまや、どれほどの兵力を結集できるか。わずかながらも尽力しようと民・百姓までが竹やりを手にもつ。だが、それこそが、アマテラスの怖れなのだ。なによりも恐ろしいのは人心である。ぬながわひめのためならば、命もいらぬと信服する民をアマテラスはどうするだろう。みほすすみとて、刀の露にしてしまうアマテラスがアマテラスに逆らう心をみすごすだろうか?逆らわなければ、それでよしと出雲の民にみせつけるためにおおなもちとスサノオに死を与えた男...大御心奴奈宣破姫・20

  • 陸路 奴奈宣破姫・20

    海流にのった船が糸魚川にたどりつくのは易かった。が、それが、いっそう、にぎはやひを不安にさせていた。船の中でなんども、アマテラスの船がおいついてきはしないか艫に立った。アマテラスはすぐにでも、奴奈川にせめいってくることだろう。同じように海流にのれば、にぎはやひがぬながわひめの元にたどりつくまえに一戦、まじえることになるかもしれない。敵は統率がとれているばかりでない、日の神を擁立している。覇気はいっそう高まる。日食以降、奴奈川一族しか、アマテラスに反旗をひるがえすものもいないだろう。誰もがおのが身が大事に決まっている。孤立無援。こんな状態で奴奈川までたどりつけるのか。並ぶ住まいの中人もスサノオやおおなもちの恩義に背を向けるすまなさで、見ぬふりで通してくれてはいたがアマテラスの軍勢がはいってくれば、忠誠をみせ...陸路奴奈宣破姫・20

  • 出立 奴奈宣破姫・19

    出立の浜はこの先の暗雲ひとつ、匂わすことなく青い海原が朝日にきらめいていた。「いくがいい」客人を見送るがごとくに浜までやってきたアマテラスはにぎはやひに柔らかな笑みをみせていた。にぎはやひの命をうばうこともなく、こちらのいいぶんをきいて墓所までつれていきいつ、なんどき、にぎはやひが刀をぬくかとおそれることもなく、たった一人で相対してみせ寝場所をあたえいまは、丁重に見送る。深く頭をさげ小船にのりこんだにぎはやひの胸中にひとつだけ、うかぶことがある。ーそれが、おまえのなさけのかけかたかーアマテラスはにぎはやひの性格を捉えている。この先、にぎはやひがどうするかもみえている。にぎはやひはぬながわひめの元にはせさんじ対アマテラス戦に加勢しようとしている。その敵をのがすとはどういうことであろうかこう考えれば、胸中にめ...出立奴奈宣破姫・19

  • 哀れ 奴奈宣破姫・18

    ただ、たんによばれなかったからでてこぬだけなのか。ーいや、それはない。ー虜囚とまではいかぬかもしれぬが、囚われの身にはまちがいない。で、あらば動き回る自由を与えたアマテラスにせめても礼儀があろう。きこえぬふりなどでやりすごすわけがない。父、おおなもちの死に、我をうしのうてしもうたか。が、ことしろぬしがそこらを自由にうごきまわっているといってみほすすみにも自由をゆるされているとはかぎらない。自失のはてふせこんでしまったか、あるいは、奥から一歩もでることがかなわぬ縄網にからめとられているか?いや・・。縄にかけなければならないほどのわけがあるのなら、アマテラスは・・・。いやな考えがわいてくる。ことしろぬしに自由を与えている。このにぎはやひには、怒りに血をのぼらすこともせずおかげでまだ生きている。なんらかの基準で...哀れ奴奈宣破姫・18

  • 不在 奴奈宣破姫・17

    月がのぼりはじめると、海にてりかえした光が辺りいったいを散り染める。ぼんやりと道がうかびあがり、馬の荒い息が波音にかさなりあって、ひずめの音にかきけされていく。やがて、美穂の浜ちかく、潮の香りがいっそう濃くなった。と。人家が立ち並ぶその奥。浜に干された漁網が月光にうかびあがる。美穂の社はもう、目と鼻のさきだった。社近くになると夜営を張る兵の焚き火がいくつも点在しあがった炎が水面に朱をまたたかせた。その様子で野営の陣が岸辺近くにいるとわからせた。いまや、攻め入ってくるものも、なく引き上げの号令を待つだけの兵は大きな炎の照り返しをうけていた。用心をも焚き火の薪にかえたようだった。その兵達があわててたちあがると、アマテラスの馬が通りすぎるまでじっと立ち尽くしていた。「ここだ」とアマテラスにしめされ、社の門をくぐ...不在奴奈宣破姫・17

  • 月光 奴奈宣破姫・16

    ひざまづいていた足がまっすぐのばされるとアマテラスは馬からおりたったその場所にあゆみよっていった。「にぎはやひ。せめても馳走なりもてなそう」せっかく、はせさんじてきたのだから、夕餉くらいたべていけ。たべたら、朝にはここをいでよ。言下にしいた追放と見逃しに従うしかない。どのみち、もう、ここにいたとて、なんの役もない。「わかった」むすりと答えたものの、あたりは漆黒の闇がますますふかまっている。この暗さで馬に乗ることは不可能に近い。アマテラスは暗闇の中、たやすく馬にあゆみよったが、にぎはやひの目は夜鷹に程遠い。ーこの闇さえ、見透かすか?それは巫ゆえの力か?-おぼつかない足でアマテラスの声のあった方をめざす。その足取りにきがついたのであろう。「もう少し明かりがいるか・・。しばし、待っておれ」言うがはやく、アマテラ...月光奴奈宣破姫・16

  • 闇の中に 奴奈宣破姫・15

    かみ殺した笑いがまだ口の中にのこっている。粛清なる事実をつげるにふさわしからぬ。アマテラスは静かに頭をたれ己が静まるの待った。やがて、にぎはやひにまたも邪推されるだろう事実をしゃべりだした。「すべてが、おおなもちである」にぎはやひの顔が怒りに震える。顎が宵闇の中でがくがくとうごいている。言葉にならぬ怒りを言葉にしようとするものの口中、舌がしびれ、こわばっているとみえた。「おおなもちは出雲を思いに思った男だ。死してもなお出雲をまもりたかろう」ーそれが、答えだというかーそれが、おおなもちの体を九つに裂いた答えだというか。「いずれにの、出雲をとりまいてやれるようにと、思うておる」裂いた体を出雲の端々に埋め、守護の神とあがめたてまつらせてやるという。「まなかのはの、天まで届く社においてやろう。ように約束を護ったと...闇の中に奴奈宣破姫・15

  • 方円 奴奈宣破姫・14

    「どうした?おりぬのか?」馬上であれば黒き石はことさらはっきりとみえておろう。にぎはやひは、黒き石の数にとまどうているとみえた。「あ?ああ・・」やっと、馬の背をおりると、アマテラスの近くにあゆみよりながら、尋ねるしかない。「ここか」おおなもちの墓はここだというのか?にぎはやひのとまどいをみすかしてアマテラスは言葉少ない。「ああ。そうだ」またも笑いがこみあげてきそうである。にぎはやひの勝手な憶測がどういうことであるか、あの墓々をみて、何を考えたやら・・・。「あれは・・どういうまじないだろう?」にぎはやひの選んだ尋ねぶりだった。「はて?まじないとはいかなることだろう?」黒き石のうち、八つは方円の線上におかれ、おそらく、方位にあわせて、等間隔に配置されている。八つの石の中心にことさら大きな黒き石が座っている。そ...方円奴奈宣破姫・14

  • 茅の中に 奴奈宣破姫・13

    落ちいく陽においつこうとするがごとく走りいくアマテラスの馬の手綱がひきしぼられた。馬が荒い息のままその場に静止するとアマテラスは馬の背から降りた。ーここか?-馬上のにぎはやひはあたりをみわたした。目にうつったのはただ、ただ広い茅の群生だった。さほど、背の高くない茅がならびたつ、その向こうの茅がおしなべられている。落ちいく陽光がおしなべられた茅の中に並び立つ七つ、八つの黒い石を影絵のようにうかびあがらせていた。奇妙であった。ーま・・まさかースサノオにかかわる一族、娘のすせり姫・・妻のくしいなだ姫(ごめん、うろおぼえ、ちがってるかも)・・その他もろもろを処刑したのか?その数をかぞえなおす。ーひい・ふう・みい・よお・・・・-ここのつの黒き石。ー見ないほうが良いというのはこのことか?スサノオにかかわるすべてを抹殺...茅の中に奴奈宣破姫・13

  • 疑惑 奴奈宣破姫・12

    真にスサノオが眠るかどうかわからぬが、スサノオの墓は確かにあった。「おおなもちの亡骸は?」「うむ」返事を返したがアマテラスは言葉をつなごうとしない。「スサノオをこのままにしておくのも、哀れでな。社をひとつ、建立してやろうとおもっている」にぎはやひの問いをかわすかのようである。「おおなもちの亡骸は?」にぎはやひはもう一度尋ねなおした。先のように剣をつきつけてくればアマテラスにとって都合のわるい質問であり、再び、話をそらすとしても、同じである。「見ぬほうがよいぞ」アマテラスには、臆するということがないとみえた。「それはどういう意味だろうか?」亡骸を墓所に埋めたのではないのか?亡骸は無残に放置されたか?さらされているということか?が、そうであるならば、アマテラスは前言をたがえることになる。「まあ、よいわ。ついて...疑惑奴奈宣破姫・12

  • 奴奈宣破姫を上げ始めたのですが・・・

    チサトの恋、を終わらせ・・・(順番換えました)奴奈宣破姫を上げ始めたのですが・・・この物語・・・勝手な解釈ですので、とまどわせてしまっていると思っています。美穂神社の諸手船神事の中だったか(国譲りの様子かと)その中に饒速日の名前が有ったり奴奈宣破姫が、大国主命に連れられ(略奪?)出雲にきていたことがあるとか・・・一方で奴奈川あたりでは、その話はデマだとか?真偽様々のところ、こんな解釈もありかな?と書いたものです。で、話変わりますがタグでは、#小説#私が作家・・(略)と、いうのを張り付けていますが小説とか、小説家とか作家とか・・・そんなだいそれた言い方には抵抗を感じています。本来は物語とか作品という書き方をしています。小説家・作家ではなく物書き・・・きちんとした文章を書けていないので小説・小説家と、いうより...奴奈宣破姫を上げ始めたのですが・・・

  • チサトの恋・15

    慌てふためいているのは私だけのようで、テントの中の女性達は医師たちの様子で、手術室を使えないことは元より、看護士の助産も無理だと判断していたようだった。テントの外にでて、干されている看護服をみつけると、さいわい、乾いていて、私はとりあえずそれをはおることにした。次は・・。まず、手指の消毒だろう・・と、手を洗い、応急処置テントにはいって、消毒アルコールを探した。アルコールをさがしながら、ふと、迷う。確かTVの手術の場面では、ヨードかなにかを手にぬってそれから、ぴっちぴっちのゴムの手袋をはめてなかったっけ?アルコールなんかでいいのかな?と、この期に及んで何も知らない自分に迷いだす。そんな、あたしをひっぱったのが、先にテントに妊婦を運び込んだ女性のひとりだった。テントのむこうを指差して、見せる。見れば、隅のほう...チサトの恋・15

  • チサトの恋・14

    日本と違って、湿度が低く、木陰や建物の中にはいってしまえば、暑さをかんじないし、少々、身体を動かしても汗が落ちるなんて事が無い。暑いのは、日差しでしかないわけで、あたしはテントの中で横になって、眠っても充分睡眠がとれた。取材旅行は元々、嫌いじゃないし、どこでも、寝れるという図太さがなけりゃ、カメラマンなんて、職業はやっていけやしない。そんな、あたしだったから、目がさめたのも、随分、陽が登っていた頃だった。食事を作る約束があったと、あわてて、口をゆすぎ、調理場所にかけつけてみれば、慎吾も約束の一員だったのか、大きな鍋と格闘しているところにでくわした。「よお。相変わらず、だな」そうそう、あたしは、どちらかというと、寝覚めが悪い。半分、ねぼけた顔がまだ、残っているに違いない。「よく、寝れたのか」妙に優しい言葉は...チサトの恋・14

  • チサトの恋・13

    小さなため息がまじり、慎吾はポケットの煙草をひっぱりだす。「そろそろ、底をつく。貴重品だ」苦笑でため息をかみころして、煙草に火をつける。「俺な・・。元々、行き詰まりを感じたのは、お前のせいなんだよな」意外な告白に、私もまた煙草をとりだした。慎吾の様子があまりにも、殊勝にみえた。いつも自信たっぷりの慎吾がやけにはかなげにみえ、私もしらふで話をきけそうになかったが、さすがに酒はない。酒の代わりの煙草で、妙な気配をかわしながら、慎吾が先をしゃべりだすのを待つことにした。「なんだよ?食ってかかってこないのかよ?」慎吾は私をからかいながら、自分が満身創痍をさらけだしてるとしっかり自覚させられてもいた。「俺な。おまえを超えることもできない男なのかとおもってさ」慎吾は此処で微妙に言葉を選んだ。超えることのできない「カメ...チサトの恋・13

  • チサトの恋・12

    手短に看護士に説明すると、彼女はにこりと笑ってうなづいた。私はテントをぬけだすと、慎吾の元にはしっていった。呼びかける私の姿に軽く手をふってみせる慎吾にかすかな疑問を感じた。なんで、驚かないんだ?看護士も妙ににこやかだったし?慎吾の前につったつと、途端に掛けられた言葉が疑問をさらに肯定した。「やあ、来たな」それ?私が来るのを判っていた?「なんで?」私の疑問に慎吾は呆れた顔を見せた。「なんで、お前がきても、俺が驚かないかってか?」図星である。「お前・・・馬鹿じゃない?」これだ、これ。相変わらず、こっちをこけにする態度。でも、たいてい、慎吾の言う通り、私が馬鹿なせいではある。「ど~~せ、馬鹿ですよ。馬鹿だから、教えてもらわなきゃわかりませ~~~~~ん」「たく、だから、女は駄目なんだよな。目先の事態でしか、物事...チサトの恋・12

  • チサトの恋・11

    そのまま、あたしの久しぶりの休日はなにごともなく、平穏無事におわる筈だった。ソファーテーブルの端においた、携帯のコールにでなければ。「もし?」もちろん、着信音でその相手が編集長だってわかってる。着信の音楽はご丁寧に「天国と地獄」にしている。携帯にまで、かかってくる用件は、往々にして地獄沙汰であるため、精一杯の皮肉ではあるが、まかり間違っても当の編集長がすぐ傍に居る時に携帯にかけてくるなんてことはないので、編集長にこの皮肉をつきつけることはない。「おお、チサト・・あのな」やだね。こんな時間におまけに、もったいぶった言い方。「あのさ・・。まあ、俺も考えに考えたんだけど、このさい、やむをえないし、まあ、おまえも少林寺の腕は確かだし、急ぎだし、あの・・」つまり、女であるあたしを行かせるには、ためらう場所であり、慎...チサトの恋・11

  • 次の作品・・・

    ロビンの瞳(ポーの一族より)拘束(蛮骨×蛇骨)秘めやかなる想いは五月の空に(ポーの一族より)ボーマン・ボーマン・5-ジンクスーボーマン・ボーマン・6-時には乙女のようにーこの5編で二次創作は終にしようと思っている。ところが、よく考えると、SO2シリーズの登場人物をモチーフに描いた作品が有った。SO2本編内にでてきている「彼女」はなんだか、ミーハーなきゃぴきゃぴお姉さんというイメージであったが二次創作内では洞察力があり、人を見抜きやがて訪れる「つまづき」を警告するシビアな女性という側面を持っている。「いつか、見た夢・・デ・ジャブ」の中の貴子女史ににている。頼りになる意見をいうタイプだが貴子女史のように、姉御肌ではなく面倒見は悪い。ゆえに、鋭い「忠告」を、短く与え本人自らが、切り開いていくように皮肉ともとれる...次の作品・・・

  • 萩尾望都フアンに、どつかれそうな気もするが・・・

    先日もニュースで女史の活躍を確認したところだった。小学館は23日、「ポーの一族」「イグアナの娘」などで知られる漫画家の萩尾望都さん(73)が、米国の権威ある漫画賞「アイズナー賞」で、優れた作品を残した漫画家を表彰する「コミックの殿堂」を受賞したと発表した。萩尾さんは「この素晴らしい贈り物に心から感謝いたします。私は10代の頃、手塚治虫の作品に感動して漫画家を目指しました。文化や表現はこのように派生し受け継がれていくのだと、改めて思います」などとコメントを寄せた。小学館によると、過去に同じ賞を受賞した日本人に手塚治虫さん、大友克洋さん、宮崎駿さんらがおり、萩尾さんは7人目という。ヤフーオークションでも、女史の原画・色紙1枚がものすごい値段で売られていたのを見た。その女史のポーの一族の中の小鳥の巣という作品の...萩尾望都フアンに、どつかれそうな気もするが・・・

  • とってつけた感・・を取り払うための「種」

    悪童丸、終えました。もう少し、したら順番替えします。この物語はいろんなところに、「種」を含んでいる。と、言うことも有って出来れば、1から順番に読んでほしいという思いが有ります。後の編で、その「種」の種明かしをしたいと思うのですが、仕込み?をよんでくれていないと種明かしにならないwwwwこういう手法の大道は実は、落語ではないかと思っています。前振りの時本編と関係ない話を良くします。例えば「ふたなり」と、いう落語。この「ふたなり」の落ちのために話者はふたなり、と、よく似た言葉を出してきます。「食たなり」関西のイントネーションですので文字では伝わりにくいのですが食ったまま・・・それっきりというニュアンスです。ーおっさん?昼めしはまだじゃろうーー朝に、食たなりじゃあーと、いう調子で「食たなり」という「種」を前振り...とってつけた感・・を取り払うための「種」

  • ー悪童丸ー 16 白蛇抄第2話

    翌朝になると、かのとは早くから起きてやはり立ち働いていた。「もう、良いのか?」「はい。ご心配をおかけ致しました」「いや。すまぬ。わしのせいなのだ」「はい?」東鉄の言葉を聞いていなかった様であった。「あの?なにか?」「いや、色々と心配をかけたのが障ったのであろう。すまなかったの」「いえ。だんな様。とんでもない」「かのと、無理をするな。草臥れておったら、ゆっくり、身体を休めておればよいのだぞ。此度のこともあるし端女をつこうたらどうだ」「厭です」妙にはっきりと断りを口に出す。「だんな様の事は、かのとがします」きつい口調である。かのとにとっては人には譲れぬ事なのである。思わせぶりな言葉に政勝の頬がつい緩むのであるが、問題はそんな事ではない。「かのとが一人で居て倒れこんだらと思うと、心配でならぬのだ。かのとの話し相...ー悪童丸ー16白蛇抄第2話

  • ー悪童丸ー 17 白蛇抄第2話

    刻限が来るのを待って早々に政勝は退出した。下足箱の所まで来ると澄明が待っていた。「もう、よろしいのですか?」「御主ずっと待っておったのか?」「いえ、たった今、ここに参りました」「御主こそ、良いのか?」「ああ、あの事ですか?あれは、勢姫がお決めになられたらよろしいとの一言で、片がつきました」「成るほどの」「所で朝方にかのと様の具合が悪かったようにいっておいででしたが?」「ああ。それは、治ったと言うたであろう」「政勝殿。それは東鉄の看立て違いです」東鉄に診せたとも言ってもおらぬうちから一言の元である。「な?」「御家に帰って、驚かれぬよう今から申上げておきます。かのと様は妖かしの物を孕んでおります。ご自分で気が着くわけはないのですが、その、妖かしの性をかのと様の血が浄化しようとして、それが、出来ぬと判るとそれを...ー悪童丸ー17白蛇抄第2話

  • ー悪童丸ー 18 白蛇抄第2話

    しばらくすると、婆がでてきて「わしじゃ、無理じゃ、これは神主か巫女か、とにかく神様事に縋るしかない」と、後も見ず帰ろうとする。慌てて止める政勝に「どうも、通じない方だ」横から澄明はお梅にむかい重湯をありったけ作れというと塩を持って来るようにいう。呆気に取られている政勝を尻目に「私がします」と、いう。「な、ばかな、」澄明ががやにわに肩袖を脱いだ。「御気になさっていることは、心配なさらなくてよい。私は女です」げと思ってみれば晒しで括られた胸はきつく絞られてはいた。が、それでも押さえ切れない膨らみがある。政勝の眼を追っていた澄明だったが「お解かりですね?よろしゅうございますね?」言い捨てるとかのとの居る寝間に入って行った。「かのと」澄明が呼ぶが返事がない。せいて、「お梅殿。まだできませぬか?」と、襖越しにお梅に...ー悪童丸ー18白蛇抄第2話

  • ー悪童丸ー 19 白蛇抄第2話

    朝を迎えると政勝は身支度を始めた。かのとは慌てて、起き上がると台所に入っていった。「だんな様、あの?」明日は非番ゆえゆっくり朝寝坊をするといっていた政勝であったのである。かのとを起こさぬように抜け出たつもりであったのでかのとの声に驚き、政勝が振りかえった。「おう。起こしてしもうたか」「あ、いえ」「あの、どちらに?いえ、その前に朝を召し上がってからお出かけ下さいませ」「うむ」朝餉がしつらえられると政勝はかのとを呼んだ。「食べぬのか?」茶を沸かすと、かのとはやっと政勝の前に座った。何やら不安げに、淋しげな顔を見せているのは今日は政勝が一日家にいるものと思いこんでいたのがそうでないと判ったせいである。そんな、かのとを、くすりと笑うと「白河の家に行って来ようと思うてな」「澄明様に何か?」「いや。正眼殿にな」白河正...ー悪童丸ー19白蛇抄第2話

  • ー悪童丸ー 終 白蛇抄第2話

    政勝が去ると正眼はひのえに向って「ひのえ。気持ちの良い男じゃのう」「はい」「横恋慕はならぬぞ」「え?なんといわれました?」正眼の意外な言葉にひのえは、問い直した。この父はひのえの気持ちを知っているのやもしれなかった。「いや、なんでもない。おおっ。しもうた」正眼が急に大きな声で言うのでひのえは「ど、どうなさいました」「米がないのであろう?今ならまだその辺りにおろう。袋に詰めて一斗ほどもたせてやれ」慌てて、ひのえが倉に入って晒しの袋に米を詰めると政勝の後を追った。正眼が昨日の事を知っているのが、ひのえにも判る。政勝のした事など正眼も男である。四の五の思う事もない。それより、それとなくひのえに最後に政勝との逢瀬を作ってやるつもりでもあったのであろう。それで、思い残すなと言いたいのであろう。「父上。すみませぬ」口...ー悪童丸ー終白蛇抄第2話

  • ー悪童丸ー 15 白蛇抄第2話

    軽い溜息をつくと澄明は足駄をはんだ。外はまだ、暗い。「いくか?」父である正眼が声をかけた。「父上」「苦労であったの。主膳殿にもあかせず。しかし、因縁を通り越そうとは、また、思い切った事を」「いえ、どうなるかは」「悪童丸の子を孕み易い日を選んで教えたのも、因を解いておいたのもお前の采配であろうが?」「はい。姫が鬼であらば姫と三条の子もやはり、鬼。さすれば、かなえ様の父の様に、また、主膳殿のように三条も鬼の子を何処かに嫁がせてしまいましょう。その苦しみを業を受けるのはもう、終わりにせねばなりますまい?姫が御心が真であらば必ずや悪童丸を・・・」「うむ。それがよい。早う行け。人に見られてはなるまい」「はい」この日が来るのを予期していた。いや、この日にさせた澄明は先んじて自然薯を掘り起しにゆくとそれを今日まで風通し...ー悪童丸ー15白蛇抄第2話

  • 言い訳・・

    ー悪童丸ー白蛇抄第2話を、掲げ始めておりますが・・・ま~~~自分でも、読み直していると恥ずかしくなる表現があるのです・・・掲載しちゃってよいんだろうかねえ・・・と迷うのですが・・・そこで、自分を励ますとともに言い聞かせることが有ります。実は、この物語の構成上ここまで、書く理由があるのです。だいぶ後ろの方の物語の「種明かし」のー根拠ーになるのです。この物語は、文芸社の書評でも前編では、判然としなかった事が他編で初めて明らかにされる事実によって急に輪郭をもったものとなって眼前に立ち現われる。と、書かれているのです。今回の表現は多編で解き明かされる伏線の下地といいましょうか。そんな効果をいれているので、省くわけにはいかない。――「白蛇抄1~14」-文芸社審査書評よりー(当時14編まででした)人と鬼と、そして神。...言い訳・・

  • 四苦八苦は、ばれていたwww

    書評の中の文章には「青さ」が残るもののと、いう部分は自分でも思い当たる処がある。科白の多い物語になってくるとどう、その場の雰囲気やら心理を表すしぐさや情景を書けばいいか迷う。おまけに、出たとこ勝負というか浮かんだことを文字に移していく作業になるため科白以降の文章を選択・練るなんて時間が無い。そんなことしていたら書こうとおもったことを忘れてしまう。(キャパが少ないだけだがwww)で、その瞬間にできるだけ気を付けているのだが・・・「?????」と、言うと・・・「????」と、言った。と、~~~と、~~~~などとか、そのあたりが稚拙だと思う。あとは、~~のようにと、いうあいまい表現。レフイスは頬に残ったアランの唇の跡を拭うようにいやあもっと良い言い方ないんだろうかね~~~~。レフイスは頬に残ったアランの唇の跡を...四苦八苦は、ばれていたwww

  • 次に掲げる作品・・・

    文芸社に白蛇抄をおくってみたところ長過ぎたかwww出版は保留・・・その判断をどうするかということだとこっちも勘違いしたのだけど他に作品有りますかということで、3編ほど送った。蛙とブロー・ザ・ウィンドと壬生浪二人・俄狂言・恋語蛙の書評は、どこに行ったかwww次に掲げるブロー・ザ・ウィンドの書評を張り付ける。二つの書評・・ブロー・ザ・ウィンド前回応募作の「白蛇抄」同様、やはりこれらの作品にも「憂生ワールド」と呼べる物が確固として存在している。細かい心理描写の積み重ねによって織り成す著者の人間ドラマは、恋愛というテーマを掲げながらも、決してそこだけには留まらない。とりわけこの三作品《蛙・・他)に関しては、「人間」と云うものを真っ直ぐ見据え、人が生きるという事を誠実に問う姿勢が終始貫かれており、静かな感動に満ちて...次に掲げる作品・・・

  • プロフィール画像だけど・・・

    なんでもチェックしなきゃ、気がすまないらしく、引っ張ってきたハエたたきをお尻の下に確保しておいて、絵の具の点検!!猫の左側に妙なもの(透明で何か所か光っている)が写っていてその上の奥の方に髪の毛の長い女性が居るように見える。気のせいかにゃあ?プロフィール画像だけど・・・

  • どうしようかな~~~~

    ボーマン・ボーマン5を上げてきた。かなり過激な表現が入るシリーズなのであと、2編くらいしか上げないと思うけど・・・かなりの荒療治で視点をひっくり返して解決するという裏技の持ち主なので、番外編を2編ほど書いてシリーズに収めた。書き方は、非常にラフで例えば、ー「俺、だめだよ」と、ハロルドはつぶやく。ー等というのが普通の表現だとするとラフに書くとー「俺だめだよ」って、ハロルドがいいやがる。ーと、言う風にボーマンサイドの心情をそのまま出したりする。次に挙げるのをどうしようか・・・ボーマン・ボーマン6にしようか他の二次創作にしようか・・それとも別の物・・・ちょっと、迷っているがその前に、ボーマン・ボーマン5の再編集。(単に順番を変えるだけであるがwww)どうしようかな~~~~

  • 迷いどころ

    短めの作品から掲げていくことにしているのだけど・・・ジャンルが、色々、違っている。と、言うところで戸惑う。先に1の1だけ挙げた白蛇抄は全体で17話からなるオムニバス。蟷螂は比較的短いけど・・・全体17話でだと、100万文字くらいになる。ジャンルが色々というのも時代物(風?)恋愛ものSFもどき二次創作BL官能小説コメディほか・・・と、あるのだがgooでは、過激な作品は出せないと考えて20作品位は出典しないつもりでいる。ただ、こうやって、一挙に上げようとするとき読む人のタイミングによっては嫌いなジャンルにぶつかったり逆に良いと思い、続けて読んでいたのになんだ、こんなことを書くのかとがっかりさせてしまうかもしれないとおもったりもする。なんにせよ一味違った考察とか、自分にだけしか書けない(と、信じてるwww)セン...迷いどころ

  • 久しぶりの執筆(おこがましい言い方WW)

    ユニコーンを書きながら語彙のなさ表現力のなさ嫌になってくる。おまけに失語症チックでさっきまで、覚えていたはずの言葉が出てこなくなる。まあ・・・その症状???が酷くなってほとんど、ものを書かなくなっていたのだけど。でも、よく考えたらひっきりなしに書いていた頃だってそんな症状はあった。あったから、ひとつの「激励」を作っていた。ー物語は完成してこそー上手に書こうとか名文を書こうとかそんなことはいっさい考えないことにした。時に、言葉(文章)がでてこない。そんな時は小学生の作文(上手な子いるから、たとえにならんか)でいいとにかく、文字にすること。でてこない時は、それこそ箇条書きだって良い。最終的に完成させなきゃ、それは物にならない。そんな風で、いくつもの作品を書いてきたけど・・・いつのまにやら遠ざかってしまっていた...久しぶりの執筆(おこがましい言い方WW)

  • 実は・・・

    今、書き始めているユニコーン。これは、実際にあったことをモチーフにしている。物語として成立させるにしても・・・相変わらずの手法(書き方)なのだけど・・・なにも、構想がない。むしろ、書いていくことであの事件から得た物を引っ張り出せたり何らかの解明ができるのではないか?というトライ的なものがある。なので、情けないことをいうけどもしかしてまったく「もの」にならない話で終わってしまうかもしれない。そして、もう一つは、奇妙な話なのでーこの人、大丈夫?ーって心配されまいか・・・そんな不安もある。けど・・・書いてみようと思う。実は・・・

  • gooにも、掲げようと・・・

    久しぶりに覗いてみたら約3000日も経過していたのになにも、作品を置いていなかった。で、短めの作品から揚げなおしをしています。カテゴリの中でいくつかの章に分かれたときは一端、揚げてカテゴリで開いて貰えたら上から順番に読めるように再投稿しています。久しぶりにブログ村に登録したもののジャンルーサブジャンルに迷いました。サブジャンルをノンジャンルにしたのはどれにも当てはまらないジャンルという意味でなく多岐にわたるジャンルであるため、ジャンルをどれかに選べないという意味でジャンル無しーいろいろある。と、言う意味合いです。長編になってきたら、連載形式にして最後まで上げたときに順番とおりに成るように再投稿するつもりです。しばらく、短めの物を上げるのにせわしない投稿が続くと思いますがご容赦ください。gooにも、掲げようと・・・

  • 底・・・で 1

    悠貴・・・。倖・・・。だいたいが、俺のせい。盗人というのは、管理者が財産から目をはなす隙をいつでも、見計らっている。俺は、犯罪心理学に精通しているわけでもなく、まして、俺自身、悠貴という管理者が倖という財産から目を離す隙をいつでも狙ってる盗人の心をもっているとさえ気が付いてなかった。だから、俺は今、自分の心にうろたえてるしなによりも、俺は自分がひどく、卑怯でしかないと思う。悠貴は事故にあって、病院に搬送され、集中治療室で経過を見ている。この状態のどこをとれば、悠貴が倖から目を離したといえるだろうか?悠貴が倖の目を盗んで他の女とのランデブーにいそしんでるとでもいうのなら、俺は大手をふって、倖への恋情を肯定しよう。だが、今。俺の親友でもある悠貴が大変な状況にあるというのに、俺は・・・倖の・・・。これから・・告...底・・・で1

  • 底・・・で 終

    それから・・・。この話の続きを書くのは、俺にとって、惨めなことでしかない。だけど、俺の心の底に、倖という女性は、今も住み続けている。だから、表面上の結びつきなど、どうでもいい事で、それは、くしくも、また、倖の生き様そのまま。それをなぞらえることで、俺の倖への証にしたいと決めている。あの日の朝。俺は倖を手に入れた安心感と倖との交渉に、満足しきって、快い眠りに落ちていた。俺の携帯に病院からの連絡が入った事も、倖がそれを受けて病院に行った事も気が付かず俺は眠りをむさぼり続けていた。やがて、目覚めた俺はまず、倖の存在を確かめた。隣に眠っているはずの倖がいなくて、俺は狭いワンルームの部屋の中を見渡した。トイレ?それとも、シャワー?倖の気配をさぐりながら、俺は携帯に手を伸ばした。時間を確かめるためと病院からの連絡がは...底・・・で終

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