秋津温泉
久し振りに映画『秋津温泉(1962)』を観る。この作品のモチーフ——『男の煮え切らない・優柔不断な性格が災いし、十七年という永きにわたり静かに燃え続け、遂に成就することなく破滅へと向かう愛』。原作者は、直木賞作家・藤原審爾(ふじわら・しんじ)——受賞作は昭和二十七年・上期の『罪な女』——その年の直木賞選考委員会はもめにもめた。委員のうちの何人かが「今さら、(藤原の)こんな作品(『罪な女』)に直木賞をやるくらいなら、なぜ、(藤原の)昭和二十四年(候補作)の『秋津温泉』に芥川賞をやっておかなかったんだ!」と言って退席してしまったという。芥川賞に五回もノミネートされながらとうとう受賞出来なかつた川上宗薫が、純文学をあきらめてポルノ小説を書き始めた事にも似て、藤原審爾も『秋津温泉』で芥川賞を逃して以来、純文学か...秋津温泉
2024/11/30 12:18