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  • 知る権利

    暖気きてアスファルトの道ゆきげ川迷惑はお互い様と心得て祝杯あげるは助け合えてこそ・・・・・・・・・・・1971年6月28日のことだ。マンハッタン計画に参加した科学者ラビノビッチ氏が原爆投下前、その非倫理性や危険性を公表し、警告を発することを検討していたと公にした。「原子力兵器の最初の導入という重大な行為を広く国民に知らせていれば正義にかなった」。米ニューヨーク・タイムズ紙に載せた書簡の一文。告白した理由をその冒頭に記している。「ベトナム介入について国防総省が書いた歴史を、『機密文書』指定を無視して、暴露したこと」が自分を後押ししてくれたのだと(「国家機密と良心」岩波書店)。かの「ペンタゴン・ペーパーズ」のことだ。トンキン湾事件の自作自演などを知った国防総省の分析官エルズバーグ氏は、核兵器使用も懸念された戦...知る権利

  • ゴースト

    青空も流氷色に霞たりあおぞらもりゅうひょういろにかすみたりせせらぎの流れの音の安らぎを祈りをりたる枕の下の・・・・・・・・・・・血管→ゴースト化弥生3月の声を聞こうというのに厳しい寒さが続く。ちょっとした外出でも指先まで冷え切る。気候だけが原因ではないのかもしれない。毛細血管のゴースト化という現象があるという。加齢や生活習慣の影響で血管の細胞の隙間から血液成分がむだに漏れてしまい、十分な血液が流れなくなって空洞化し、やがて消失するのだそうだ。体中の血管の99%が毛細血管だというからこれは深刻である。ゴースト血管が増えると高血圧症や糖尿病、高脂血症といった生活習慣病のほか、認知症、骨粗しょう症の原因にもなるというから気をつけたい。不規則な生活、偏食、運動不足などは禁物である。血管が張り巡らされた人体図を思い...ゴースト

  • 見られる

    一日づつ筋トレサロンに春の来るひとひづつきんとれさろんにはるのくるどこからも見られてをりぬ人の世や目に入れども記憶留まらず・・・・・・・・・・・何かに見られている―。繁華街であたりに目を凝らすと、至る所からカメラが向けられている。そんな光景に当初は怖さを覚えたが、今や慣れっこになってしまった人も多いのではないか。推計では国内に500万台以上、世界では10億台前後のカメラが街頭に設置されているらしい。中国ではゼロコロナ政策に抗議した人たちを特定するため、監視映像を利用したという報道もある。国民の統制に使うのは御免だが、映像が刑事事件の容疑者逮捕につながるケースは多い。最近は救急や消防の活動で、街頭カメラの映像ではなく、市民がスマートフォンで撮影したリアルタイムの現場映像が活用されている。119番を通じた仕組...見られる

  • 戦争

    金子兜太許せぬ春の反戦歌対話などまどろこしくてと大喧嘩話し合いこそ地球人たる・・・・・・・・・・・歴史に「イフ」は禁物だが、生きていれば太平洋戦争は回避できたのではないかと惜しまれた人がいる。二・二六事件で暗殺された陸軍教育総監の渡辺錠太郎だ。皇道派の凶刃に倒れた永田鉄山と並び称される人物である。欧州留学から帰国後の新聞記者とのやりとりがある。「日本もいよいよ世界の軍事大国ですね」と水を向ける記者を手で制した渡辺は諭した。「軍事だけが独り走りをした大国は何よりも心配だ。戦争ばかりはやっちゃあイケナイ」(「渡辺錠太郎伝」小学館)。欧州で見聞きした第1次世界大戦の悲惨な現実が脳裏に刻まれていた。補給軽視や戦線拡大といったドイツの敗因を見抜いた名将である。日本軍の精神主義に警鐘を鳴らし、非戦を説いたのも徹底した...戦争

  • 穀倉地帯

    春遠し穀倉地帯はまだ真白胸張って俺らはなまら標準語と方言いいし青年のゐる・・・・・・・・・・・ほのかな日差しの中、萱草(かんぞう)の花のような笑い声が風に乗る。丘を上がってくるのは、衣服にくわを荒縄で縛り付け、おけを手にする2人の娘。詩人は思わず口にする。「曠原(こうげん)の淑女よあなたがたはウクライナの舞手のやうに見える」。宮沢賢治が、「曠原淑女」を作ったのは1924年(大正13年)のことだ。ウクライナの情景に接した経緯は不明だが、「ヨーロッパのパン籠」と呼ばれた大穀倉地帯である。故郷の農家の女性を異国の地の踊り子に例えたのも、そこに理想の農業の姿を見いだしたからなのだろう。「新たな時代は世界が一の意識になり生物となる方向にある」と信じた賢治である。幸せの大地と称賛したウクライナの景色が荒れ果て、人命も...穀倉地帯

  • 停戦

    停戦を臨む子等には春遅し雪道を転ばぬように七百歩眩しき道を一歩踏みつつ・・・・・・・・・・・停戦。その言葉は幼い兄弟にとって希望の言葉だった。戦火を逃れて、祖父と暮らす少年を描いた絵本「ぼくと弟はあるきつづける」(岩崎書店)のお話である。「停戦になったら、さいしょの船で、おまえたちをむかえにいく」。遠い故郷から届いた手紙に父はそう記した。「おにいちゃん、テーセンって、なに?」「テーセンまでなんて、まてないよ」。弟は嘆く。それでも両親に会いたいという願いを、その言葉に託すしかなかった。日本画家の小林豊さんは、訪れた中東・アジアでの体験を基に数多くの絵本を出している。「ぼくと弟はあるきつづける」は黒海地方を舞台にした3部作の完結編だ。祖父が他界し、旅する2人は多くの人と出会い、支えられる。多様な言葉を話す人々...停戦

  • はだしのゲン

    春めくも人間界はまだ寒く人が死に五十回忌も過ぎしときお参り止める人の悲しき・・・・・・・・・・・ヒップホップ・グループ、ライムスターの代表曲「B―BOYイズム」に「そのたくましさ見習えはだしのゲン」という詞がある。その曲を聴いて、被爆地の広島で懸命に生きた少年を思い浮かべた人は多いだろう。日本文化研究者コンドリーさんもその一人だ。曲に関する自著で、家が燃えるなかで親が死ぬのを見た後、感情的・身体的にもがきながら生きたとゲンの心境を詳述した。短い歌詞から分析が具体的に広がったのは漫画を読んだ経験があったからだろう。漫画などの作品を、見聞きした時の感情や環境と無縁に記憶することは難しい。「漫画そのものよりも、それを読んだ経験や漫画を取り巻く諸イデオロギーのほうへ読者は目を奪われる」とは文芸評論家陣野俊史さんの...はだしのゲン

  • 銀河鉄道

    新月の二月の星や冴えかえる星々の海に旅立つ漫画家の次行く先は平和の星なり・・・・・・・・・・・疎開先の愛媛県で終戦を迎えた漫画家松本零士さんにとって忘れられない夜がある。公職追放となり炭焼きで生計を立てていた元陸軍少佐の父親が、満天の星の下で話してくれた南方の星の海の美しさと敵機撃墜の悔恨である。飛行隊長だった父親は撃墜のたび逡巡(しゅんじゅん)した。「一瞬、そいつの家族のことが頭をよぎるんだ」。天空を埋める星々とそのまたたきを映す大海の幻想的な光景とは対照的な戦争の現実。松本さんの作家としての原点だ。松本さんは戦後、敗戦の苛酷さを目の当たりにした。わが物顔の進駐軍、戦争孤児、困窮する暮らし、相次ぐ自殺者。貧しくとも、民間パイロットの依頼を「二度と空は飛ばない」と断り続けた父親の姿から人としてのありようを...銀河鉄道

  • 地獄坂

    この世からあの世の喜び多喜二の忌人の世にあるまじきかな拷問の仕打ちを受けし今日は多喜二忌・・・・・・・・・・・息の上がる急傾斜が続く。地獄坂の名もうなずける。上り詰めた先に小樽高商(現・小樽商大)のキャンパスはあった。大正末期の3年間、1人の学生がここで学び、青春を送った。後のプロレタリア作家小林多喜二(1903~33年)。今も同じ敷地にある樽商大の付属図書館は、彼が書き込んだ本を大切に保管する。芥川龍之介や志賀直哉の作品の余白には「頭のいいトリック」「生活を善意に静観」と記した。万年筆だろうか、細字の丁寧な筆跡から文学青年の勉強ぶりが読み取れた。卒業後は拓銀に入行し、坂を下った先の銀行街「北のウォール街」で働く。恵まれた待遇のエリートとなったが、苦学した自身の境涯を忘れなかった。貧困や格差の拡大、労働者...地獄坂

  • 流されろ!

    やさしげな雨待ちをりて今日雨水雨水から啓蟄になり土匂う鈍行列車のよふに近づく・・・・・・・・・・・四海(この世界)が困窮しては天から与えられた幸いも永く断たれる。道徳の欠けた為政者が国家を治めれば災害が相次ぐ―。1837年(天保8年)2月19日、大坂で起きた大塩平八郎の乱に際し大塩が訴えた檄文(げきぶん)の冒頭だ。大坂町奉行所与力として役人の不正摘発に力を入れた大塩は、飢饉のさなかに賄賂が横行し民百姓が困窮する事態に憤った。乱はその日のうちに鎮圧されるが、各地に一揆が広がり幕藩体制は揺らぐ。時移り大阪が舞台の森友学園問題が発覚したのは6年前の2月。「私や妻が関係していたとなれば、首相も国会議員も辞める」と述べた元首相は不幸にも帰らぬ人となったが、生前のインタビューを載せた「安倍晋三回顧録」(中央公論新社)...流されろ!

  • 揺りかご

    トッカリの流氷のベッド揺られをりトッカリとはアイヌ語でアザラシのこと千億の星と共にと思う夜星のゆりかごに乗りたい私・・・・・・・・・・親の学歴や所得の差が子供の教育機会の不平等につながる「教育格差の再生産」に警鐘を鳴らしたのが、2019年3月でお茶の水女子大を定年退職した耳塚寛明教授だ。20年ほど前のことである。格差を認めれば不公平が固定化し、さらに助長しかねないとして、当時の教育学の関係者の間では異端視されたが、富める者はますます豊かに、乏しい者はますます貧しくなる格差社会の到来を見通した慧眼(けいがん)だった。フランスの経済学者ピケティは、受け継がれる資産の格差が拡大する状態を世襲資本主義と呼んだ。その一因が職業の世襲である。機会の不平等の格差が常態化し、社会を停滞させるからだ。昨年「このあたりで(長...揺りかご

  • 二段ベット

    予感から直感の風流氷来葡萄蔓飛び降りたるはセピア色物置の屋根モノクロームに・・・・・・・・・・・「2段ベッドに寝るとしたら、上と下のどちらがいいですか」。テレビ番組で視聴者へのアンケートを見ていて、息子3人が幼少だった頃を思い出した。4年間で3人を出産したので、みんなほぼ年子。一人一人の友だちは、3人の友だちでもある。わが家はいつも学童保育さながらの賑やかさだった。三男が3歳くらいの頃、2段ベッドを購入。当然1人はベッドに寝られないことになる。夫婦で考えた。「毎日交代しよう」。同じ部屋だが、ベッドの上と下、そして両親と寝るというローテーション。まだ3人とも親と一緒に寝たい年齢とあって、ベッドじゃない日はうれしそうだった。あるとき、三男が風邪で熱を出し、3日間続けて私たちと寝ることになった。「おまえいいなあ...二段ベット

  • わからない?

    いくたびも雪の深さを尋ねけり正岡子規・・・・・・・・・・・企業の繁栄はおよそ30年だと、名だたる企業の再建で辣腕(らつわん)を振るった実業家の親族から以前うかがったことがある。創業者の理念や手腕を学んだ2代目が業績を発展させるが、経験不足の3代目が経営を傾けてしまうのだとか。そんな経験則も、トヨタ自動車名誉会長の豊田章一郎さんには当てはまらなかった。自動織機の発明に生涯をささげた豊田佐吉の孫にして、父喜一郎が開発に乗り出した自動車メーカーを世界有数の企業に育て上げた手腕と実績はむしろ創業者のそれに近い。佐吉は官僚外交の前に国民外交がなければならないとの信念から日中親善に傾注した。1918年(大正7年)には単身上海に渡航し、現地で紡織工場を設立している。5歳の時に他界した祖父の記憶は少ないと語っていたが、も...わからない?

  • 薬とは?

    紙風船抱え富山の薬売り老人に薬多量に処方され過ぎたる薬及ばざるごと・・・・・・・・・・・神の怒りを買い、今まさに大蛇に絞め殺されようかという場景だ。にもかかわらず、その大理石像はなぜ断末魔の悲鳴を上げていないのか。芸術史に名高いギリシャ神話に題材を取るラオコーン像を巡る論争である。18世紀のドイツの美術史家ビンケルマンは古代ギリシャ期の作品とする論考を発表。ところが、思想家レッシングはギリシャ彫刻に特徴的な感情の表出がなく、ローマ帝政期のものだと異論を唱えるなど長年の論争の的となった彫像だ。美術史と異なる視点で一刀両断したのが、19世紀ドイツの哲学者ショーペンハウアーだった。絵画や彫刻は美を損なわずには悲鳴を表現できないから、悲鳴を上げていないのだという。芸術のためには神話の人物も声を上げるわけにはいかな...薬とは?

  • 祈り

    立つ春に祈りの詩も届きたりあなたの召使になるからと言う幼子の願い叶わずもがな・・・・・・・・・・・トルコ人の青年とクルド人の青年の交流を描いた映画「遙かなるクルディスタン」に印象的な場面がある。ダム建設により水没した村の湖面に突き出たイスラム教礼拝所の塔ミナレットだ。西アジアの山岳地帯「クルディスタン」にまたがって暮らすクルド人は国を持たない世界最大の民族とされる。オスマン帝国の崩壊後も大国の思惑に翻弄(ほんろう)され、悲願の独立は今なお道半ばにある。トルコ国内では敵視され、イラク戦争やシリア内戦の影響を受け続ける人々である。湖面のミナレットは生命を維持する水が他者の犠牲の上に成り立っていることを示しているのだろう。その姿は虐げられるクルド人の境遇に重なる。トルコ南部のシリア国境付近で発生した地震の犠牲者...祈り

  • 一生

    雪道も一歩先行く吾の杖ゆきみちもいっぽさきゆくわれのつえ一生は山坂もあり谷もあるそれぞれ想うこれで良しとす・・・・・・・・・・・昨年の秋のこと。祖母の家に遊びに行くと、自分の生い立ちを話しておきたいから書き取ってほしいと突然頼まれた。おそらく、その年の1月に亡くなった祖父の通夜の準備をしたときに、自分の生い立ちを元気なうちに伝えておかねば、と思ったのだろう。初孫の私が聞き役となり、長女の母が書き取る。聞き漏らさないようにとスマホのボイスメモを起動し、生い立ちインタビューが急きょはじまった。98歳の祖母は、何のカンペを見ることもなく、自分の卒業した学校名、代用教員で働いたこと、祖父との結婚、子供4人の誕生日、車の免許を取ったことまで鮮明に、その年月日と共にすらすらと話し始めた。45歳の私が履歴書を書くとき、...一生

  • 寒冷地

    紀元節オホーツクの空晴れわたり国中の電力会社守り居て国民守らぬ首相の忖度・・・・・・・・・・・今国会では岸田文雄首相が掲げた「次元の異なる少子化対策」が焦点の一つになっている。だが異次元の課題はまだある。電気・ガス代の異常なまでの高騰ぶりだ。とりわけ北海道など寒冷地にある一戸建て住宅の負担が重い。エネルギー価格が上昇しオール電化住宅などでは暖房費がかさみ、交流サイト(SNS)には光熱費1カ月10万円超えの悲鳴が年初からあふれる。できる限りの節電に努めたのに、東日本大震災前と比べ3倍近くになった世帯もあるようだ。オール電化など熱源の選択を自己責任論で切って捨てる向きもあるが、冬の暖は命にも直結する。年金生活者にはなかなか許容できぬ額だろう。この問題が衆院予算委員会で取り上げられた。首相はあまりに素っ気なかっ...寒冷地

  • パイロット

    日本国初代天皇建国日にほんこくしょだいてんのうけんこくびこの国の八方見据え舞いあがれ嵐もあるが晴れの日もある・・・・・・・・・・・航空機のパイロットが最も神経を使う時間帯がある。離陸時と着陸時を合わせた「魔の11分間」。このわずかな時間に飛行機の事故が最も起こりやすい。第一に低空域を飛んでいる。鳥が機体に衝突するバードストライクといったトラブル発生の可能性が高い。さらに自動操縦から手動への切り替えによる人的ミスといった危険も。「慣れたベテランでも油断は禁物です。緊張します」。航空自衛隊の幹部に操縦かんを握る重圧を聞いたことがある。4月に任期が終了する日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁の後任に、元日銀審議委員の経済学者、植田和男氏が起用されることになった。言ってみれば、日本経済の航路を定める「パイロット」の交代...パイロット

  • 声かける

    二月の心温もる祖父忌日にんがつのこころぬくもるそふきじつ声かける大事な事と思わずに過ぎさりし日々悔やむが多し・・・・・・・・・・・世の中には変わった地名があるものだ。例えば山梨県には談合坂、山口県には談合峠という具合に。中近世は「だんこう」「だんこ」などと読み、話し合いや相談を意味した。坂や峠の名は村人が話し合った場に由来する。問題が複雑だったり利害が衝突したりする場合もある。すると何日もかけて全員の納得を得た。公平に取り決めして互いに助け合う民衆の知恵だった。社会学者加藤秀俊さんの著書「常識人の作法」に教わった。それが明治以降、次第に「だんごう」と濁って読むようになる。意味も暗い陰りを帯びていく。現在では入札などで競争者同士があらかじめ価格や落札者などを決めておくことを指す。いわば出来レースである。東京...声かける

  • 見る

    マスクの眼その顔の裏読み解けリその人のその雰囲気のあるやなしいずくに有りても秘密など見せ・・・・・・・・・・・きらびやかなネオンに照らされ、人々が行き交う。札幌・ススキノは北日本最大の盛り場だ。ここは細川たかしさんの軽快な大ヒット曲「北酒場」の舞台を思わせる。「歌詞のように、長い髪の女性が雑踏を歩いて似合う街。これ、ススキノだと」。本人の述懐である。さほど広くないエリアに3千近い店がひしめいている。ちょっとお人よしで、くどかれ上手で、涙もろい。歌さながらの男女の恋物語が今夜も紡がれるのかもしれない。この北の酒場通りで、かつて過ごした時期があったという。海を隔てること4千キロ弱、フィリピンの入管施設に収容されていた道産子たちだ。まじめな好青年、やんちゃな盛り上げ役、剣道が強い…。知人たちが語る人物像は報じら...見る

  • 政治家

    夜の星たった一つに冴えかえるよるのほしたったひとつにさえかえる勝手連とふ春風を背に受けて北の風土と共にあるやも・・・・・・・・・・・引退時の横路さん腰縄姿の人たちがぞろぞろと歩いていく。拘置所から検察庁へ移り取り調べを受けるためだ。小学校の登校時、少年はその光景をたびたび目にして不思議に思う。「どういう人たちなんだろう」。両親が教えてくれた。悪いことをした人も、そうでない人もいる。そして無実の人や弱い立場の人を救う仕事があるんだよ―。横路孝弘さんが弁護士を志す原点だった。やがて法律家となる夢をかなえた青年は衆院議員だった父の死に伴い、1969年に国政の場へ打って出る。巧みな弁舌と鋭い分析力によって国会論戦の花形となった。時代の一歩前を走る存在でもあった。81年の道知事選で初当選した原動力の一つは既成政党や...政治家

  • 好きを極める

    陽を浴びた福寿草待つ雪間かな薄氷思いも薄きあれやこれ陽にあたりなば消えゆく氷・・・・・・・・・・・福岡はその昔、音楽の街と呼ばれた。大陸への玄関口は世界の文化の輸入拠点だった。戦時中は本場の洋楽に触れることができると全国から人が集まった。戦後は井上陽水さんらが「ニューミュージック」旋風を起こし、海援隊が九州弁でヒット曲を生んだ。そして、後に「めんたいロック」と呼ばれた音楽シーンの中心にいたのが、先日亡くなった「シーナ&ロケッツ」の鮎川誠さんだ。久留米市出身の鮎川さんが初めて洋楽に触れたのは、レイ・チャールズの「ホワッドアイセイ」。レコード店に通って試聴しては書店で音楽誌を立ち読みし、ラジオであらゆる音楽を吸収した。1960年代に迎えた思春期はどっぷりと音楽につかった。誰にも文句を言わせまいと奨学金を得て九...好きを極める

  • イメージ

    ぬくぬくと産湯の赤子春兆すぬくぬくとうぶゆのあかごはるきざす厳冬の今だからこそ春を待つ心の春を心に焼きつけ・・・・・・・・・・・抵抗の起こる確率が高いことを根拠に、ある社会的階層の住民全体を殲滅(せんめつ)し、民族的、人種的統合を破壊する。ファシズムとは人間を集合ととらえる力学で、独立した個人=人間という概念を拒否する。第2次世界大戦の転換点となったスターリングラード攻防戦を描いた、旧ソ連の作家ワシーリー・グロスマンの大作「人生と運命」の一節である。著者の母もナチス・ドイツ占領下のユダヤ人虐殺で命を奪われた。ドイツの侵攻を食い止め、退却させた戦いは、ロシア人にとって栄光の記憶として残る。雨、雪、霧の悪天候を利用した意表をつく大規模攻撃で敵の軍を包囲し、降伏に追い込んで要衝を奪還した。「一歩も引くな」と指示...イメージ

  • 雪まつり

    汗と泥まみれて雪像雪化粧あせとどろまみれてせつぞうゆきげしょう空と海それにも増して輝ける春陽を浴びた流氷の白・・・・・・・・・・・澄んだ青空を背景に白銀の雪像が映える。つんと張り詰めた冷気はかえって心地よい。さっぽろ雪まつりがきょう始まる。本番直前の大通会場には人々の期待感が漂っていた。当然だろう。コロナ禍で本格開催は3年ぶりなのだから。大小を問わず雪像の仕上げが追い込み中だった。市民参加コーナーにある大谷翔平選手や「となりのトトロ」のネコバスも丁寧にお化粧してもらっていた。作業は手作りそのものだ。どこか素朴な光景は中高生が雪像を作った草創期のまつりを思わせる。全国各地を大混乱させた冬将軍も、ここでは大いに歓迎された。10トントラック1600台分もの新雪が運ばれ、さらに厳しいしばれが造形をぎゅっと引き締め...雪まつり

  • ぽかぽかの声届かずや春立つ日大声で笑えば心の鬼だっていつの間にやら福にへんしん・・・・・・・・・・・東京都小平市には「鬼の宿」という行事が残る旧家があるそうだ。節分の晩には豆をまかず、「鬼は外」と叫ぶこともしない。家の中に鬼を迎える場所を設け、赤飯やお神酒を供えて灯明をともしておくという(「季節のなかの神々」春秋社)。民俗学者の宮田登も「福は内、鬼は内」と唱える旧家の話を聞いたことがあると自著に書いていた。元は神と同じ「隠れているもの」を意味したオニである。尋常でない力が邪気を払うものと期待したのだろう。立春を前に厄を払う節分に欠かせない大豆の高騰が続く。コロナ禍による輸送の停滞、中国などでの大幅な需要の増加、ウクライナ情勢に円安と、その原因は複雑に絡み合う。豆乳製品の値上げも相次いだ。帝国データバンクが...鬼

  • ご意向

    流氷に乗り海豹のくる北の街りゅうひょうにのりあざらしのくるきたのまちぎぃーぎぃーと流氷の鳴く北の海海豹の子に聞かせる歌かも・・・・・・・・・・・「北朝鮮新型ミサイル試射」。11993年6月11日、本紙夕刊の1面トップ記事だ。「政府筋」の話として他紙も一斉に報じた。情報源は石原信雄官房副長官。後に本人が認めている。在任期間7年3カ月。官僚機構の頂点で7人の首相に仕えた石原氏は渋滞を避けるため電車通勤しており、毎朝、横浜市内の私鉄の駅で取材するのが首相官邸詰め番記者の日課だった。混雑する構内で「北朝鮮がミサイルを撃ったことを知っていますか」と突然切り出す。北朝鮮がミサイル開発に着手した初期段階。日本に影を落とし始めた危機を事実として国民に知らせることが必要だと考え、首相や官房長官には相談せず独断でリークした。...ご意向

  • ミャンマー

    流氷の原野広ごり海明けぬ敬虔な仏教国の権力者手放せぬ想いに呑みこまれたる・・・・・・・・・・・ミャンマーには130を超える民族が存在する。自治権や権益を巡る対立は英国植民地時代の分割統治に起因する根深い問題だ。独立から70年以上も内乱が続く国は世界に例がない。国軍の存在感を高めた要因は、そんな治安の不安定さだった。初代首相のウ・ヌーは収拾に失敗。その下野のたびに選挙管理内閣を任された国軍のネ・ウィン将軍はついにクーデターを決行する。1962年のことである。国民の間には国軍の政治介入を歓迎する空気すらあった。「ミャンマー政変」(ちくま新書)の著者北川成史さんは「議会制民主主義のつまずきは、国家の安定には自分たちのコントロールが必要だというメンタリティを国軍に与えた」と分析する。力の信奉は特権意識を育み、民主...ミャンマー

  • 君が代

    日脚伸ぶ雪の白さの変わるごと君が代はなんと素敵な歌だろう一人一人を大事にせよとは・・・・・・・・・・・忌野清志郎さんのパンク風「君が代」が物議を醸した時、評価したのが先日亡くなった民族派団体一水会の元代表鈴木邦男さんであった。国の愛し方は一つではない。むしろ上から強制して一つの型にはめる方が危ういというわけだ.君が代のメロディーには五つの試案があった。中には賛美歌風のものもあった。君が代や日の丸がなくても国は愛せる。戦渦の血で汚されたうしろめたさを持っているくらいの方がちょうどいいと、音楽家坂本龍一さんとの対談で話していた。血気盛んなころには抗議行動で逮捕されたこともあったが、筋を通す憂国の志だった。だから、国土を破壊する原発に反対し、人権の観点から慰安婦問題を論じた。むやみに敵対心をあおり、やたらと武力...君が代

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