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創作BL小説を掲載しています。(大学生、社会人、高校生、ノンケ、日常、切ない、甘々、一部R18含む) できたものから少しずつアップしていきたいと思います。

立石 雫
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2021/03/31

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  • ぬくもり(7)

    「――なあ。またたまにやって、これ」 高志の呼吸が落ち着くのを待っていたように、しばらく間を置いてから茂が口を開いた。「これ?」「うん」 茂の言葉を理解して、高志は回したままの両腕に再び力を込める。それに頷きながら、茂の手も再びその腕を抱え込んだ。目の前のむき出しの肩に注意を引き寄せられながら、高志は無意識のうちに頭の中の思いを口にしかけた。「もし俺と」「ん?」「――」「え? 何て?」 不意に言葉を止めたせいで、聞き逃したと思ったのか、茂が顔をこちらに向ける。高志は咄嗟に言

  • ぬくもり(6)

    「――細いな」「ん?」「お前の腰」 腹部に回した腕は、軽々とその体をその輪の中に収めていた。「ふ。何、今更」「薄い腹だなってずっと思ってた」「へえ、そうなんだ」「お前と初めて会った時にも思った」「へえ」「お前の第一印象、それ」「……」 茂はもう何も言わず、ただ頷いた。黙ったまま、後頭部を軽く高志に預けてくる。あの頃のことを思い出しているのだろうか、と想像する。あの日から始まった二人の関係。大学で初めて出会って、友達になって、親友になって、それから紆余曲折を経て恋人になった、

  • ぬくもり(5)

    そうやって高志の腕を大切そうに抱え込む茂が、高志を受け入れた部分で今どのように何を感じているのか、想像することは難しかった。言われるがまま、抽挿を再開する。すぐに抗いがたい快感が生まれ、そのまま欲に任せて体を動かし続ける。 茂が何かを求めているとすれば、それは高志と同じものではないのかもしれない。精を放つことにより得られる即物的な快感ではなく、もっと複雑で精神的な何か。 でも、こうやって後ろから高志の腕に抱き締められることを求め、肌と肌で触れ合うことを求めて、それを高志が

  • ぬくもり(4)

    夢中になって腰を動かしていると、茂が高志の名を呼ぶ小さな声が聞こえてくる。「……藤代」「ん?」「……脱ぎたい」「え?」 いったん動きを緩めて、よく聞こえるように顔を近付ける。「これ、脱ぎたい」 茂が、自分の着ているTシャツを示してそう言う。 高志は腕をほどき、茂のたくし上げたTシャツをその首から抜いてやった。茂が高志のTシャツの裾も引っ張る。「お前も」「ちょっと待って」 繋がったままの下半身をなるべく動かさないようにしながら、高志は着ていたTシャツを脱いだ。それから再び茂

  • ぬくもり(3)

    高志が準備をする間、茂は顔を上げなかった。 と言っても、茂は普段から準備の段階ではされるままになることが多かったため、いつものとおり高志に任せているのか、それとも気が乗らないのかが高志には分からなかった。いったん片付けたゴムとジェルをもう一度取り出した後、茂の履いているスウェットと下着を脱がせようと手を掛けながら、念の為「嫌?」と聞いてみると、茂はこちらを見ないまま、「嫌じゃない。して」と言った。 茂が少しだけ腰を上げたので、そのまま下を全て脱がせる。その後で、高志は自分

  • ぬくもり(2)

    「――どうした?」「何が」 問うてくる茂が何か言おうとするのに構わず、もう一度キスする。茂の腹に手を回して、Tシャツの中に入れた。何度もその肌を撫でた後、今度は下着の中に潜らせる。「――ん、藤代」 茂が唇を離して呼び掛けてくるが、離された唇で今度は茂の頬に口付け、それから耳たぶを軽く噛んだ。茂がわずかに肩をすくめる。下着の中に入れた手で下生えの感触をなぞり、その下にある温かくて柔らかいものを軽く握ると、茂がかすかに反応した。「あ……なあ」「ん?」「……」 しばらく触った後そ

  • ぬくもり(1)

    数週間ぶりに肌を合わせた後、シャワーを終えて高志が部屋に戻ると、先に浴び終えていた茂がベッドの上で布団にくるまっていた。 何故か高志の枕に頭を載せ、いつも高志の寝る壁側に寝ている。首だけを動かして、高志を見上げてくる。「お前、今日はそっちで寝るの?」 高志がそう聞くと、茂は当たり前のように「うん」と頷く。「ふうん」 まあいいけど、と独り言のように呟いて、高志はベッドの上に腰を下ろした。――何でさも当然のような顔で頷いてるんだ。 一拍遅れてさっきの茂の様子が面白くなってきて

  • 2(52)

    「……要するに、お前の方に続ける気がないってことか」 高志が硬い声を出すと、茂は俯いたまま唇を噛み締めた。それから、ほんのわずか、見えるか見えないかの小ささで首を振る。「――そうじゃない」 声に潜むかすかな震えに気付いて、高志は苛立ちをぶつけた自分をすぐに悔いた。静かに呼び掛ける。「細谷」「そうじゃなくて……俺は多分、そのうちお前の邪魔になるかもしれないけど」「だから、そんなことないって」「でも、俺もう……前みたいに我慢するって考えたら、しんどくて」「我慢?」「……お前のこ

  • 2(51)

    最終章 12月 服を着てキッチンに行き、冷蔵庫を開ける。喉が乾いていた。ペットボトルの水を取り出して部屋に戻り、ベッドの縁に腰かけて飲んでいると、茂が目を覚ました。高志を見てすぐに柔らかく笑う。「……寝てた」「ちょっとだけな」「俺もちょうだい」「ああ」 もう一本取りに行こうとすると、起き上がりながら「それでいい」と手を差し出してくるので、高志は持っていた水をそのまま渡した。茂が喉を見せてごくごくと飲む。そのむき出しの肩を見て、高志は床に落ちていたTシャツを拾って手渡

  • 2(50)

    ゆっくりと時間をかけて茂に負担のないように充分に解してから、「いけそう?」と声を掛けると、茂は離れないまま頷く。「お前は?」「いけるよ」「……勃ってる?」「うん」 そう答えて、高志はそっと指を抜いた。体を起こした茂が、確かめるように高志の股間を軽く触ってくる。「前と後ろ、どっちからがいい?」 そう聞くと、茂は「前からがいい」と言った。高志は頷き、茂が再びベッドに横たわるのを見ながら、自分も全て脱いで手早くゴムを付けた。「……怖いか?」 茂の両膝を抱え上げて間に入る。下から

  • 2(49)

    「――なあ」 ヘッドボードに置いたジェルとゴムを取ろうと身を起こすと、茂が下から話し掛けてくる。「ん?」「矢野さんにやったみたいにやって」 そう言った茂が何を求めているのか、高志にはすぐに分かった。「いいよ」 ゴムとジェルをいったんシーツの上に置いて、高志は少し後ろに下がってベッドの上に座った。起き上がった茂が高志の前で膝立ちになる。「俺にもたれて」「こう?」 間近に来た茂が高志の肩に手を置く。「うん」 片手を茂の体に回して支えながら、もう片手でジェルを取ろうと視線をシーツ

  • 2(48)

    部屋に戻ると、高志と茂はそれぞれ上着を脱ぎ、買ってきたものをローテーブルの上に置いた。何となくそのまま床に腰を下ろす。 しばらく無言で座っていたが、やがて茂が口を開いた。「俺、もう一回風呂入っていい?」「うん」 茂の姿がバスルームに消えると、高志の中で、じっと座って待っていることに妙な羞恥心が生まれた。 とりあえずローテーブルの上の袋を手に取り、食べ物を冷蔵庫に入れる。それから、もう一つのドラッグストアの袋からジェルを取り出した。いったんテーブルの上に置いたが、再び手に取

  • 2(47)

    ぎし、とベッドが傾くのを感じて、ふと目を覚ます。いつの間にか転た寝していたようだった。既に電気は消されて暗闇に包まれた中で、茂が横に入ってくる。「ごめん」 茂が、囁くように言う。「俺、ここで寝ていいんだよな」「うん」 体の向きを変えながら、少し端に寄ってスペースを空ける。シーツの上に落ちていた本に栞を挟み、ヘッドボードの上に置いた。茂は、枕代わりに置かれていたクッションの位置を調整してから、体が触れないくらいの位置に横たわった。茂の体温が感じられないような、でもやはり少し

  • 2(46)

    第10章 12月-二人 ふと気付けば、22時を過ぎていた。「お前、泊まるなら、先に風呂入れよ。体冷えてるだろ」 外で座り込んでいた茂の手を取った時、氷のように冷えていたのを思い出し、高志はエアコンをつけた。それから湯船にお湯を溜めるためにバスルームに行って給湯器のスイッチを押す。再び部屋に戻り、クローゼットからタオルや着替えを出して、茂に渡した。「腹減ったから、お前が風呂入ってる間に何か買ってくる。お前も減ってるんじゃないか」「あー、うん、少し」「ほとんど食わないま

  • 2(45)

    「――なあ」 やがて、空気を変えるように、茂が明るい口調で聞いていた。「ジェルって、コンビニに売ってると思う?」「え? さあ……なさそうだけど」 いきなり変わった話題に、高志はとりあえず答える。「だよな」 それから茂は、足元の鞄から財布を取り出した。何かカードを出そうとして、思い出したように一万円札を高志に差し出す。「そうだ、これ返す。払っといたから」「いや……いいよ」「いいから。来年、受かってたら奢ってくれるんだろ」 高志が手を出さずにいると、茂はお札をローテーブルの上に

  • 2(44)

    ふと、高志は唇を離した。 高志の下半身に茂の腰の辺りが触れているのに気付く。その意図的な接触は、そこに顕れた高志の興奮を確認するように小さく動いた。そうして見上げてきた茂は、高志と目が合うと、視線を逸らして顔を伏せた。 それからしばらく躊躇した後、意を決したように茂が口を開く。「……入れる?」 少しだけ頭が冷え、高志は体を離した。一つ溜息をついてから、ゆっくりと答える。「……入れない」 てっきり安堵を見せるものと思った茂は、硬い表情で俯いたまま、更に問うてくる。「何で」「

  • 2(43)

    「……何だよ」 やがて茂が聞き取れないくらいの声を発する。高志は再び茂の顔を見た。「……お前が電話してきたんだろ……」 俯いたまま、茂が呻くようにそう言った。握りしめた手がかすかに震えている。「お前が、また会いたいって言ったんだろ……! だから俺は……」 顔を上げて叫ぶようにそう訴えてくる茂の目は、濡れているように見えた。「細谷」 高志は思わず茂の名を呼ぶ。目の前の茂を見つめる。しかし、高志はもう何も言うべきことを持っていなかった。「……せっかく忘れようとしてたのに……」

  • 2(42)

    自嘲気味に高志はそう呟く。高志の名刺を手にして嬉しそうに笑っていた茂。高志の部屋に行ってみたいと言った茂。わざわざ手土産を持って実家の母親に挨拶していた茂。今思い出したって、あの態度に裏があるなんて思えなかった。それでも茂は、あんな風に友達に戻ったかのように振る舞いながらも、常に冷静に判断していたのだ。いつでもまた逃げられるように。「お前、それで怒ってたのか? だったら全然違うから。隠したりしてない。何でそう思ったんだよ」 茂の声が聞こえてくる。口元が震え出すのを自覚した

  • 2(41)

    コンビニの袋をローテーブルの上に置くと、鞄を床に降ろし、上着のポケットからスマホを取り出して電源を入れる。本当ならこのまま茂のデータを消してしまうつもりだった。高志はしばらくスマホが立ち上がるのを見つめていたが、結局、そのままスマホをベッドの上に放り投げた。 ふと人の気配がして顔を上げると、いつの間にか茂が部屋の入口に立っている。目が合った瞬間、高志は視線を逸らした。「なあ。お前、何でいきなり帰ったの」 少し酔いの冷めたような様子の茂が、落ち着いた口調でそう高志に問い掛け

  • 2(40)

    店を出てから二時間弱、自宅の最寄り駅が見えてくるまで、高志は歩き続けた。冬の夜にもかかわらず、体は熱を発してシャツの中で汗が流れていた。 ひたすら歩くことで、ほんの少し気分が好転した。忘れてしまえた訳ではなく、希望を見出した訳でもなく、ただ心が麻痺したように、冷めた気持ちでありのままを受け止め始めていた。涙はもう出なかった。 歩いてきた静かな住宅街から駅前通りへ出ると、視界が一気に明るくなる。 自宅マンションに入る前にいつも立ち寄るコンビニに寄り、缶チューハイ数本とペット

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