第18話 国境の子守歌
僕は1週間かけて何度もダニエルの鼻歌を聞き、ああでもない、こうでもないと歌詞をあてていった。 悲しげなメロディ(マイナーコード)でトーンが統一されていて、聞いているうちに僕は加藤登紀子を思い出した。 実は留学にあたり加藤登紀子のCDをカセットにダビングして持ってきていた。もともと好きで聞いていたわけではないが、日本から来たのに洋学ばかりのカセットを持ち歩いていたのでは、日本の音楽を聞かせてくれと言われたときに格好がつかない。 実際、オアハカで大学で知り合ったメキシコ人の学生たちや、僕がお世話になった大家さん家族から、日本の音楽ってどんなのかと聞かれることは何度もあった。そして、僕はそのたびに、…
2021/04/30 00:00