31話 馬の蹄が犬の餌
馬を並べてつないでおけるこの柵をベースにコミュニケーションのイロハを習った。 ところでその日初めて、僕は馬の「蹄」が人間でいう「爪」にあたるものなのだと知った。サムエルがおもむろに鎌のような道具で蹄を1センチほどそぎ落としたのだ。そのスライスされた白い蹄の一部は、人間が爪切りでパチリと切るのとは規模が違う。僕の手のひらより少し大きいぐらいだ。そして地面に落ちた瞬間、待ち構えていた2匹の犬が競い合うようにそれを食べ始めた。 「こいつらの好物なんだよ」 と、サムエルは何でもないことのように言った。 ブラッシングなどで馬とのコミュニケーションを一通りこなすのは、昨日と同じルーティンだ。硬い毛のブラシ…
2020/02/13 10:51