【源氏物語687 第21帖 乙女42】姉に夕霧の手紙を渡した息子を咎める惟光。若君と知ると笑顔になって「‥女官のお勤めをさせるより貴公子に愛される方が良い。私も明石の入道になるかな」と言う。
五節の弟で若君にも丁寧に臣礼を取ってくる惟光の子に、 ある日逢った若君は平生以上に親しく話してやったあとで言った。 「五節はいつ御所へはいるの」 「今年のうちだということです」 「顔がよかったから私はあの人が好きになった。 君は姉さんだから毎日見られるだろうからうらやましいのだが、 私にももう一度見せてくれないか」 「そんなこと、私だってよく顔なんか見ることはできませんよ。 男の兄弟だからって、あまりそばへ寄せてくれませんのですもの、 それだのにあなたなどにお見せすることなど、だめですね」 と言う。 「じゃあ手紙でも持って行ってくれ」 と言って、若君は惟光《これみつ》の子に手紙を渡した。 これ…
2024/05/31 10:12