空気が冷たくて
指先が特に、思うようには動かせない。外へ出ると、たびたび、 「ティッシュを……」 介助者がいなければ、鼻がかめないのである。脳性まひ、という障害のためだ。 電動車いすに乗せてもらっても、ひとりでの散歩はとうぶん大自然の神がゆるしてくれそうにない。冷たい空気の刺激で涙がぼろぼろ、鼻水も流れて、冴えないオッサンの顔が、さらにたいへんなことになってしまうからだ。 自宅にいると午前十時に、玄関のドアがひらく。 「よろしくお願いします」 ヘルパーさんがきて、ぼくはキッチンへ這っていった。 冷蔵庫をあけてもらって、中をみる。足りなくなっている食材があった。 ヘルパーさんについてもらい、電動車いすで近くのス…
2017/01/20 22:19