文学に描かれた季節 『青年』森鴎外
『青年』は主人公の小泉純一が東京に出てきてから2ヵ月ほどの間の出来事を描いた作品です。時期は10月終わりから翌年の元旦。晩秋から初冬にかけての東京と箱根が舞台となります。 「今日も風のない好い天気である。銀杏の落葉の散らばっている敷石を踏んで、大小種々な墓石に掘ってある、知らぬ人の名を読みながら、ぶらぶらと初音町に出た。」 「諺にもいう天長節日和の冬の日がぱっと差して来たので、お雪さんは目映しそうな顔をして、横に純一の方に向いた。」 「刈跡から群がって雀が立つ。」 「常盤木の間に、葉の黄ばんだ雑木の交っている茂みを見込む、二本柱の門に大宮公園と大字で書いた木札の、稍古びたのが掛かっているのであ…
2022/11/23 16:13