ASIDをしてまゐる
文殊菩薩の物言わぬ眉に、陽が差していた。文殊菩薩は座していた獅子と離れてしまったまま、曼陀羅の張り付いた仏壇に並べて置かれている。藤の樹で作られた物らしいが、罰当たりにも壊されたのだ。知人が、まるで生き物の様に大切にしていたそれは、もろい物だった。 ぽつねんとそれを眺めやっている私は仕事も辞めて、よるべなく、九〇〇〇〇円がある他、ひねもす何もない。喪についていた。詩を書く知人が死んだの。 知人は四〇を過ぎたばかりの歳だった。曼陀羅に囲われて死んだのだ。哲学を持っていたし、《樹木のスタンザ》と題された詩で名の知られているらしい賞を執った事もあったのだが、それでは食えずにいた知人はL
2019/01/10 09:39