19歳の少年
私は慈恵医大晴海トリトンクリニックの所長ですが、今年度退官となり、本日、大学の皆さんの前でお話をします。 正直申し上げて40年以上慈恵医大に身を置いて教授職を拝命できるとは思っていませんでした。 しかし、思い返してみますと一人の患者さんがきっかけでここまで来られた気がします。 それは慈恵医大で初めてのHIV患者で血友病の19歳の少年でした。当時HIVは今でいうエボラ出血熱のようで、受け持ちを希望する医師はいませんでした。私はあまり迷いなく受け持ちになりました。 しかし、治療法もなくみるみる悪くなっていきました。彼の血液検体には赤字でMと記され、病院で私と彼だけが違う世界にいるようでした。彼はま…
2024/01/31 11:31