脱落者
「あぁ、俺らからもついに脱落者が・・・・・・」 カウンターに座る三人組。アルコールは三杯目だ。 その内の一人が嘆く声が聞こえる。 作り物のように光沢がある髪が目立つ。それぞれが向きたい方とは、おそらく逆に向けて固められている。 真ん中の一人を挟んで反対側に座るもう一人が、俯きながらグラスを傾けているのが見えた。 彼が脱落者、だろうか。 カチカチ髪の男が、身体を乗り出して、脱落者らしき男に言う。 「今が踏ん張り時なんじゃねぇの? 今がどん底だって。これから上がっていくしかねぇよ」 「・・・・・・皆、最初っから売れてた訳じゃないだろ!」 夢追い人か。 私はカウンターの内側で食器を洗いながら、彼らの…
2022/10/19 22:52