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入日くん https://irihikun.hatenablog.com/

本を年間約200冊読む内向的人間のちょっとした発信。夜になる前の入日の時間を楽しんでいただきたいブログです。

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2020/04/10

  • カーテンは開けないけれど

    僕はカーテンを開けない。 そのせいで、家で過ごす時は外の様子がまるで分からない。 いつもは落ち着くはずのカーテンの内側。 それがとてもこわくなったのがこの前の休日だ。 カーテンの内側で静かに本を読んでいると、急に気が付いた。 実は外ではとんでもないことが起きていて、 僕が世界中の注目の的になっているのではないかと 玄関の前には僕の部屋に押し入るタイミングを図っている警察官が何人も待機してして、 その周りを近所の人たちが、ただの好奇心で囲っている。 そんな気がしてしまうといてもたってもいられなくなって、とりあえず玄関を開けてみるしかない。 風が吹き込む音と、この焦燥感に似合わない鳥の可愛らしいさ…

  • 味見はいらない

    料理を作る時人は味見をする、それは必要なのだろうか。 味見をしたとして、私が理解できることは 「美味しいか美味しくないか」 それだけ。 美味しかった場合どうなるかというと 私の気分が良くなり にこにこ笑顔で食卓に料理が並べられる。 さて美味しくなかった場合が問題だ。 何度も何度も、私はそれを食べる。 美味しくない、ということを、何度も確認する。 美味しくないものが、何もせずただ食べ続けるだけで美味しくなるはずがないのに。 次に食べたらもしかしたら美味しくなっているのではないか、という絶対にないことを期待して何度も食べる。 なぜ食べるだけなのかというと、それ以外にできることがないからだ。 だって…

  • 春を教えるのはたんぽぽではない

    朝、誰もいない教室。 一番最初に入ったのは、3年間の中で初めてだ。 窓際の席に座り、窓の外を眺めて中学生活を振り返る。 授業をサボった回数は数え切れないし、先生と喧嘩した回数も数え切れない。 こんな俺でも心がざわついてしまう卒業という言葉が、誰もかれもが浮つく春の空気のように、苦手だった。 ちらほらとクラスメイトが教室に入ってきて、その中の一人が俺に向かって勢いよく飛び跳ねねてくる、隣の席の田中優吾だ。 「おい洋介〜、珍しいなこんな時間に。さっき途中で見たんだけどたんぽぽ。春だなー、こんな寒いのに」 「俺春嫌いだから」 朝の冷えた空気に反発するように大きい雄吾の声も、少し鬱陶しかった。 そんな…

  • コーヒーのうしろに

    今週のお題「大発見」 見つけるべきではなかったかもしれない。 貼り紙で募集するアルバイト、 昼でも薄暗い店内、 マスターの入れるこだわりのコーヒーは格別に美味しいのに、 それは何かしらのきっかけで店に入り、他の喫茶店と同じように、なんとなくコーヒーを頼んで飲むまで、知られることがない。 そんな風にひっそりとすることで、この場所を守っているような喫茶店の、物置になっている部屋。 そんな場所に、さらに地下に続く階段が、意図的に隠されているなんて、そうだ、やはり冷静に考えて、見つけるべきではなかった。 そして僕はそれをもっと早くに判断しなければならなかったと、それを再び隠す前に、田辺くーん、とマスタ…

  • 脱落者 改訂

    この仕事の好きなところは、手を水で洗い流す、それを何度もできるところだ。 手で水を受けている時は、その美しさに見惚れているだけでいい。 カウンターを挟んで真正面に座る三人組のひそひそと話している声も、 こんなに細く流れる水の音が掻き消してくれる。 真ん中に座る男は、光沢がある髪が目立つ、髪だけではなく、彼自身も全て作り物ではないかと思ってしまう程ちぐはぐに見える。出来損ないの作り物。 ちぐはぐ男の右手、つまり私が向かって左側に座る男は、入ってきてからずっと俯いている。 顔を覆う髪の隙間から、高い鼻だけ覗いている。顔を上げたら、綺麗な顔をしているだろう。 少なくとも、ちぐはぐ男と、その横の特に印…

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