Mushroom boyに囚われて ⑩(最終章)※18禁その2🔞
第十章 二人の鎌倉 到着のアナウンスの声に促された乗客はめいめいに、開いたドアの向こうへと足を踏み出した。わずかに傾き始めた太陽はホームの上に落ちた影を長く伸ばし、心なしかゆらゆらと歪めてみせる。 最後に降り立った僕は小さくなる列車の後姿を見送った。人々は改札口へと急ぎ足で向かい、ホームに残る人影は既になく、懐かしい景色を右から左へと眺める。 ここで僕は電車を待っていた。 独り善がりの失恋旅行だった。 後ろから彼が声をかけてきた。 差し出された暗記カード、今よりもずっとあどけなさの残る笑顔。 五年前の蒸し暑い夏の日──それが僕と風祭蓮の、そして成海基との出会い── 爽やかな風がホームを吹き抜け…
2021/01/09 00:00