「空室の102号室」

「空室の102号室」

不動産投資家・木村修一(48歳)は、夢だったアパート経営を始めてまだ2年。築20年の中古アパートを購入し、「やっと自分の資産が形になった」と思っていた矢先のことだった。 ある日、早朝に一本の電話が鳴る。 「木村さん、102号室の入居者が…逮捕されました」 ──逮捕? 何がどうなってる? 急いで現場に駆けつけると、アパートの前には黄色い規制線。警察官が出入りしている。 「近所の八百屋のおばちゃん」によると、102号室の住人は日頃から怪しい動きがあったらしい。 「夜中に変な人が出入りしててねぇ…やっぱりって感じよ」 大家として何も気づけなかった自分を、木村は責めた。 数日後、警察か