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2019/07/19

1件〜100件

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  • 書評:今野敏著、『継続捜査ゼミ』全2巻(講談社文庫)

    『継続捜査ゼミ』は、長年の刑事生活の後、警察学校校長を最後に退官した小早川が幼馴染の運営する女子大に再就職し、教授として『刑事政策演習ゼミ』、別名『継続捜査ゼミ』を受け持ち、5人のゼミ生たちと公訴時効が廃止された未解決の殺人等重要事案を取り上げて、捜査演習をします。その傍ら身近な女子大内の事件の解決にも取り組むので、ちょっとした探偵団のような様相を呈しています。ゼミ生たちの着眼点や推理は鋭く、最初の事案である逃走経路すら不明の15年前の老夫婦殺人事件を実際に解決に導いてしまいます。2巻では、〈三女祭〉という大学祭で実施されるミスコンに対する反対運動のリーダーが襲撃され、彼女に最後に二人きりで会った小早川に容疑がかけられ、強引な捜査を受ける一方、ゼミでは冤罪を取り上げ、実際に一審で有罪判決を受け、二審で無罪...書評:今野敏著、『継続捜査ゼミ』全2巻(講談社文庫)

  • 書評:谷瑞恵著、『額装師の祈り 奥野夏樹のデザインノート』(新潮文庫)

    谷瑞恵はこれまでコバルト文庫などの少女向け小説家というイメージがありましたが、この作品は新潮文庫というだけあって、文学性が高いです。主人公は、婚約者を事故で亡くし、その婚約者の職業であった額装を自分で始めることで、亡くした人とのつながりを保とうとする奥野夏樹。彼女の元にくる変わった額装の依頼(宿り木の枝、小鳥の声、毛糸玉にカレーポット)のために依頼主の背景や動機など依頼の裏に隠されているものを探し、その心を祭壇のような額で包み込む。そうした額装は夏樹の祈りのようなもの。彼女の額装に興味を示し、何かと話しかけたり、手伝ったりする純。彼もまた子どもの頃に友だちと川でおぼれ、不思議な臨死体験をしたことがあり、後遺症や罪悪感にもがいています。登場人物たちは皆、心に傷を負っており、その思いを額装してもらうことで観賞...書評:谷瑞恵著、『額装師の祈り奥野夏樹のデザインノート』(新潮文庫)

  • 書評:谷瑞恵著、異人館画廊シリーズ全7巻

    『盗まれた絵と謎を読む少女』絵画から図像(イコン)的意味を読む取る才能に恵まれていた此花千景(18)は、誘拐事件を機に両親に見捨てられて、祖父母に養育されます。祖父は画家で、千景の特殊な才能を否定することなく伸ばそうと渡英します。祖父母は先に帰国し、千景はイギリスでスキップを繰り返し、図像学(イコノグラフィー)の研究で学位を取得。祖父の死を機に帰国します。千景は祖母の営む異人館画廊兼カフェのある家の中の祖父のアトリエを受け継ぎ、そこで「彼に千景をもらってくれるように頼んでおいた」という旨の遺言を見つけます。このいいなずけは誰なのか。祖母の画廊兼カフェ「Cube」は珍しい絵を入手して観賞するサークル「キューブ」の集会場になっており、若くして老舗画廊を継いだ幼馴染の西川透磨に千景は否応なく巻き込まれ、図像の鑑...書評:谷瑞恵著、異人館画廊シリーズ全7巻

  • 書評:今野敏著、『石礫 機捜235』(光文社)

    渋谷署に分駐所を置く警視庁第二機動捜査隊所属の高丸卓也を主人公とする短編集『機捜235』の続編である『石礫機捜235』は一本の長編です。高丸と縞長が密行中に指名手配の爆弾テロ犯・内田を発見し追跡したことで、内田が追跡に気付いてタクシー運転手を人質に取って建築現場に立てこもるという事件が発生します。一方、パトカーでパトロール中だった自ら隊の吾妻と森田も内田が誰かと会ってリュックサックを交換しているところを中目黒駅で目撃しており、その目撃情報を立てこもり現場に来た特殊班SITや所轄刑事に報告するものの相手にしてもらえなかったため、高丸・縞長と共に独自に内田が立てこもる前に何をしたのかを探り出します。立てこもりは成り行きとはいえ陽動作戦の可能性もある。内田が中目黒駅であって荷物を交換した相手こそが爆弾をどこかに...書評:今野敏著、『石礫機捜235』(光文社)

  • 書評:横山秀夫著、『ノースライト』(新潮文庫)

    横山秀夫作品は2年ちょっと前に読んだ『影踏み』以来です。警察小説、犯罪小説のイメージが強い作家ですが、この『ノースライト』は建築士が主人公で、警察とはほぼ全く関係のないストーリーで、ミステリーではあるものの、文学作品と言ってもよいのではないかと思えるようなじんわりとした味わいがあります。建築士・青瀬稔は、施主の吉野に「あなたが住みたいと思う家を建ててください」と言われ、信濃追分に主に北向きの窓から採光し、そのノースライトの柔らかな光を家全体に行き渡らせるこだわりの設計をして、その家を建てました。この家は「Y邸」として〈平成すまい200選〉に取り上げられ、そのおかげでこれと同じ家を建てて欲しいなどの依頼が来るようになります。クライアントの1人が実際に信濃追分に行って、可能ならば内覧させてもらおうと思ったとこ...書評:横山秀夫著、『ノースライト』(新潮文庫)

  • 書評:池井戸潤著、『半沢直樹 アルルカンと道化師』(講談社)

    『半沢直樹アルルカンと道化師』は『俺たちバブル入行組』を始めとする半沢直樹シリーズの最新刊ですが、時系列は第一作と同じころの2001年。第一作ではまだ合併改名前で産業中央銀行でしたが、本作品では東京中央銀行になっており、半沢直樹はその大阪西支店融資課長をしています。第一作では、事件解決後、半沢に本店営業第二部次長の辞令がでていますので、このアルルカンのエピソードはそれよりも前のことになるはずなのですが、今一つ整合性が取れません。こうした小さな矛盾点は単行本が文庫化する際にもしかすると改訂されるのかもしれませんが。ストーリーは、大手IT企業ジャッカルが、業績低迷中の美術系出版社・仙波工藝社を買収するという話を大阪営業本部が半沢のいる大阪西支店に持ち込むことから始まります。最初はジャッカルの名前も伏せられてお...書評:池井戸潤著、『半沢直樹アルルカンと道化師』(講談社)

  • 書評:池井戸潤著、『民王 シベリアの陰謀』(KADOKAWA)

    内閣総理大臣・武藤泰山とその息子・翔がテロに遭い、なぜか中身が入れ替わるというSFめいた政治コメディを描いた『民王』の続編である『民王シベリアの陰謀』は、発足したばかりの第二次内閣の「マドンナ」環境大臣・高西麗子が発症すると凶暴化する謎のウイルスに冒され、衆目の中で暴れて隔離保護されることに端を発した感染拡大の国家的危機の話です。武藤泰山の息子・翔も仕事で京成大学の並木又二郎ウイルス学教授に届け物をした際に、後に「マドンナ・ウイルス」と命名されるこのウイルスに感染した教授に襲われ、自信も感染してしまいます。幸い翔は発症せず、間もなく隔離から解放されます。武藤泰山は東京感染研究所長の根尻賢太を感染対策チームリーダーに任命し、その助言を受けて緊急事態宣言の発令を断行しますが、野党や国民の受けが悪く、政敵の東京...書評:池井戸潤著、『民王シベリアの陰謀』(KADOKAWA)

  • 書評:情報文化研究所著、高橋昌一郎監修『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』(フォレスト出版)

    『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』は論理学的アプローチ、認知科学的アプローチ、社会心理学的アプローチの3つのアプローチに分類され、それぞれ20個、合計60個のバイアスを定義・関連バイアス・具体例・対策・参考文献という一定の型式に従って紹介します。「吊り橋効果」や「サブリミナル効果」などの有名なものから一般にはさほど知られていないものまで、比較的わかりやすくイラストや図解を使って説明されています。60個全部を記憶して対策するのは無理ですが、一度通して読むことでいかに人間の感覚や思考があてにならないかを知ることは、様々な誤謬に知らずに陥ることを防ぎ、より客観的・論理的・批判的に思考するための一助となります。以前にロルフ・ドベリの『ThinkSmart間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考...書評:情報文化研究所著、高橋昌一郎監修『情報を正しく選択するための認知バイアス事典』(フォレスト出版)

  • 書評:池井戸潤著、『ハヤブサ消防団』(集英社文芸単行本)

    池井戸潤作品は実に3年ぶりに読みました。足袋屋がランニングシューズを開発するストーリーの『陸王』を読んだのが最後でした。『ハヤブサ消防団』は、亡き父の故郷に東京から移住した売れないミステリ作家・三馬太郎が主人公のミステリーです。中国地方の田園地帯。田舎なので人々はよそ者には開放的ではないのですが、太郎は両親の離婚のせいで疎遠になっていたものの、祖父母が健在の時代は訪れることもあったので、「ああ、野々村さんとこの息子か」と出戻った村の子のようにすんなり受け入れられます。濃厚な人間関係も含めて田舎暮らしの醍醐味と心得、村人たちに誘われるまま自治会に入り、その会合の後の飲み会で、今度はハヤブサ地区の消防分団に勧誘を受け、それにも愛郷心を示そうとして引くに引けなくなって入団することになります。そして入団式の日、放...書評:池井戸潤著、『ハヤブサ消防団』(集英社文芸単行本)

  • 書評:今野敏著、『マティーニに懺悔を(新装版)』(ハルキ文庫)

    『マティーニに懺悔を(新装版)』は、富士見ヶ丘を舞台とし、「シノさん」と呼ばれるバーテンダーの経営する細長いカウンター・バーの常連の茶道の師匠が語る短編連作です。〈私〉より5歳年下の幼馴染でピアニストの三木董子(25)とアイルランド人のベンソン神父がこのバーでの飲み友達。元は『男たちのワイングラス』というタイトルでしたが、新装版で改題。「怒りのアイリッシュウイスキー」「ヘネシーと泡盛」「ブルゴーニュワインは聖なる血」「マティーニに懺悔を」「鬚とトニック・ウォーター」「ビールの泡」「チンザノで乾杯」「ヘネシーの微笑」の8話が収録されています。タイトルから察せられるように、この作品ではお酒が重要な役割を果たしています。〈私〉とベンソン神父が飲むのはブッシュミルズ、董子が飲むのは芳醇なヘネシー。主人公は、武道の...書評:今野敏著、『マティーニに懺悔を(新装版)』(ハルキ文庫)

  • 書評:今野敏著、倉島警部補シリーズ『曙光(しょこう)の街』他全6巻(文藝春秋)

    『ボディーガード工藤兵悟』シリーズの4巻『デッド・エンド』で日露混血の凄腕エージェント・ヴィクトルが登場していたので、『曙光(しょこう)の街』を始めとする倉島警部補シリーズを知り、こちらのシリーズも読んでみることにしました。これまで『曙光(しょこう)の街』、『白夜街道』、『凍土の密約』、『アクティブメジャーズ』、『防諜捜査』、『ロータスコンフィデンシャル』の6冊が出版されています。最新刊の『ロータスコンフィデンシャル』は単行本が2021年7月に発売されたばかりで、まだまだ続きそうな感じです。第1巻『曙光(しょこう)の街』の単行本が出たのは2001年のことで、冷戦終了からさほど時が経っていない頃、元KGBの特殊部隊員ヴィクトルが赤坂で勢力を伸ばすヤクザ組長を暗殺しようと日本に潜入。情報収集に単調な日々を送っ...書評:今野敏著、倉島警部補シリーズ『曙光(しょこう)の街』他全6巻(文藝春秋)

  • 書評:今野敏著、『潜入捜査 〈新装版〉』シリーズ全6巻(実業之日本社)

    今野敏の警察小説の原点とも言える『潜入捜査』シリーズは1991~1995年にアクションもののひとつとして書かれました。著者本人は警察小説を書きたかったものの、当時そのような需要があまりなかったのだとか。警視庁のマル暴刑事・佐伯涼は、情け容赦のない実力行使で裏世界の恨みを買っていたのですが、突然の異動命令が下り、警察手帖と拳銃を返上した上で「環境犯罪研究所」という環境庁の外郭団体へ出向せよという。同研究所は所長の内村と秘書の白石、そして佐伯を加えてたったの3人。環境犯罪を取り締まる法整備が整うまでの暫定措置だという。内村は省庁を跨いで異動した異例の経歴を持つキャリア官僚で、「官僚は国をよくするために働くべきだ」という理想を実践する食えない人物。後の隠蔽捜査の竜崎の原型キャラだそうです。一方、佐伯涼は大化の改...書評:今野敏著、『潜入捜査〈新装版〉』シリーズ全6巻(実業之日本社)

  • 今野敏著、萩尾警部補シリーズ『確証』『真贋』『黙示』(二葉文庫)

    このところずっと今野敏作品を読み続けていますが、多作な著者なので、なかなか制覇できません。今回読んだのは萩尾警部補シリーズの『確証』『真贋』『黙示』の3冊。このシリーズは警視庁捜査三課、盗犯係の萩尾警部補、通称「ハギさん」が相棒の女性刑事・武田秋穂と共に独特の目をもって活躍する物語です。その「独特の目」というのは、いわば「盗人の気持ちになってみる」という盗人視点の見方によって手口や目的を読み取ることです。「プロ」と呼べる窃盗常習犯には独特のこだわりや手口の特徴があるので、それを見抜く力を養う必要のある捜査三課の刑事は皆、職人の雰囲気を持つようになるのだとか。しかし、職人の勘だけでは犯人逮捕に至らず、どうしても「確証」が必要になります。最初は捜査が勘を頼りに進み、最終的に必要な確証を得るに至るというストーリ...今野敏著、萩尾警部補シリーズ『確証』『真贋』『黙示』(二葉文庫)

  • 書評:今野敏著、『最後の封印』(徳間文庫)

    飛騨山系の登山ルートを大きく外れた原生林の中で「ミュウ・ハンター」の日系人シド・アキヤマが苦戦しているシーンから始まる『最後の封印』は、レトロウイルス流行後の世界を舞台にしたSF系ハードボイルド小説です。「ミュウ」というのは謎めいた存在で、レトロウイルスの進化形、HIV-4に感染した母親から生まれた子供たちを指している。額の瘤が特徴で、生まれながらに「第三の目」と呼ばれる持つ特殊能力を備えているため、社会への適応力を欠き、悪魔が人間の腹を借りて生まれたと言われおり、そのミュウを狩るミュウハンターを雇う組織がいくつもある。そして、このミュウハンターたちを排除し、ミュウを保護する組織〈デビル特捜(スペシャル)〉。そのどちらもミュウたちが本当はどういった存在なのか知らない。そんな中アキヤマは遺伝子工学の研究者で...書評:今野敏著、『最後の封印』(徳間文庫)

  • 書評:今野敏著、『ボディーガード工藤兵悟』全4巻(ハルキ文庫)

    1993年~1995年にかけて書かれた『ボディーガード工藤兵悟』シリーズは『ナイトランナー』『チェイス・ゲーム』『バトル・ダーク』の3編で完結していたのですが、17年後の2012年に復活し、第4巻『デッド・エンド』が加わりました。商品説明世界の戦場で戦ってきた工藤兵悟は、その優れた格闘術と傭兵経験を活かしてボディーガードを生業としている。ある日、工藤の元に、水木亜希子と名乗る女が現れた。かつての仲間の紹介で、依頼を持ちかけられた工藤だったが、直後彼女を狙う男たちに襲撃されてしまう。依頼は、謎に包まれた機密文書と彼女自身を死守すること--期限は3日間。だが、彼女を追ってきた敵は、世界最大の諜報機関CIAだったのだ。警察とCIAを敵に回し、工藤は彼女を守り抜くことはできるのか。傑作冒険サスペンス。商品説明の通...書評:今野敏著、『ボディーガード工藤兵悟』全4巻(ハルキ文庫)

  • 書評:今野敏著、『時空の巫女 新装版』(ハルキ文庫)

    1998年の作品である『時空の巫女』は、核爆発と核の冬の予知夢を見る超能力者たちと彼らの研究並びに地球滅亡を防ぐ方法を探ろうとする研究者、親会社の社長直々の命令で現場に戻って新人アイドル発掘に奔走する原盤製作会社社長の飯島、そしてかつてネパールの生き神様「クマリ」だったチアキ・チェス、予知能力があると思われるAVに出演していた池沢ちあきの2人の「チアキ」たちが織りなす「SF風世紀末ミステリー」と呼べるような作品です。普通の人間は時間が一定方向にしか流れていないように認識していますが、人が何かを選択するたびに世界が分かれて行くというパラレル・ワールドを示唆する量子物理学の理論があり、4次元のいわば「神」の視点から見れば過去も現在も未来もたくさんのバージョンが同時に存在しているという時空の考え方に着想を得た作...書評:今野敏著、『時空の巫女新装版』(ハルキ文庫)

  • 書評:結城光流著、『少年陰陽師 現代編1-2巻』(角川ビーンズ文庫)

    『少年陰陽師』の現代版第1巻『近くば寄って目にも見よ』は、1000年の時を超えて本編で関わり合った人物たちと同じ名前を持つ子孫たちが前世の縁に手繰り寄せられるかのように関わり合っているという設定で進められる短編集です。安倍清明の式となった十二神将たちは相変わらず安倍家に仕えており、安倍家は相変わらず陰陽師を生業をしているのですが、現代は闇も薄くなり、妖もけた外れの強いものは少ないので、昌浩たちは比較的平穏な生活を送っています。元は特別企画の『パラレル現代版』だった世界は大量の書下ろしを加えて一冊の本になったそうです。Amazonで購入する。Hontoで購入する。第2巻の『遠の眠りのみな目覚め』では、本格的に長編で、女性を夢に誘い生命力を奪うという化け物が登場します。やがて見鬼の才のある藤原顕子もその化け物...書評:結城光流著、『少年陰陽師現代編1-2巻』(角川ビーンズ文庫)

  • 書評:松岡圭祐著、『優莉凛香 高校事変 劃篇』(KADOKAWA)

    『優莉凛香高校事変劃篇』は、つい最近完結した『高校事変』シリーズの主人公優莉結衣の妹凛香の物語です。本編では語られていなかった凛香の日常や思いなどが綴られています。時間軸は本編の田代勇次が大量の武器をもって日本に上陸作戦を行う手前(本編IX)の辺りです。彼女がどういう思いで姉の結衣を殺そうとしたり、それが叶わなかった後、どういう思いを姉に抱いていたのか、彼女の複雑な憧れや孤独感、期待と失望、どうせダメだという諦念と自己嫌悪。様々な思いを持て余して自棄になりつつも、純粋なものを自分のせいで汚したくないという良心や守りたいという正義感は結衣と通じるものがあります。激しい「中2」生活を送った凛香の幸せを願わずにはいられない、そんなスピンオフの物語でした。Amazonで購入する。Hontoで購入する。にほんブログ...書評:松岡圭祐著、『優莉凛香高校事変劃篇』(KADOKAWA)

  • 書評:澤村御影著、『准教授・高槻彰良の推察8 呪いの向こう側』(KADOKAWA)

    商品説明年末、憂鬱な気分で実家に帰省した尚哉。複雑な気持ちを抱えながらも、父と将来の話を交わす。翌日、散歩に出た先で、尚哉は小学校時代の友人の田崎涼と出会う。何気なく民俗学研究室や高槻の話をすると、後日高槻の元に涼の兄から相談が。勤務先の小学校で「モンモン」という正体不明のお化けの噂が立ち、不登校の児童も出ているという。怪異大好きな高槻は喜ぶが、その小学校は苦い思い出が残る尚哉の母校で――。(第一章押し入れに棲むモノ)「幸運の猫」がいるという旅館に、泊まりがけで出掛けた高槻、尚哉、佐々倉。何故かスキーをすることになり、大いに戸惑う尚哉だが、高槻と佐々倉に教えてもらい、何とか上手く滑れるように。休憩所で宿泊客たちと歓談していると、うち一人が「昔会った雪女を探しに来た」と言い――?(第三章雪の女)夢で死者に会...書評:澤村御影著、『准教授・高槻彰良の推察8呪いの向こう側』(KADOKAWA)

  • 書評:今野敏著、『新装版 -神々の遺品』& 『海に消えた神々』(双葉文庫)

    探偵・石神達彦シリーズは、どうやらオーパーツ(それらが発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる出土品や加工品などを指すOutofPlaceArtefacts)をテーマとしているようです。元警察官の探偵・石神達彦が、ピラミッドの謎などのブログを書いていた人物の行方を探す依頼を受け、調査を始めると、数日前に起こった日本では著名なUFOライター殺人事件と関連性がありそうなことが判明し、否応なしにオーパーツと呼ばれる摩訶不思議な太古の文明の足跡を辿ることになります。リサーチは主に助手の明智小五郎ならぬ大五郎にやらせ、自分は聞き込みに回りますが、突然ロシア系の男に襲われたりします。一方、アメリカで超常現象研究チーム『セクションO』に極秘の実働部隊をつけるよう国防長官に依頼されたジョーンズ少将は、彼の以...書評:今野敏著、『新装版-神々の遺品』&『海に消えた神々』(双葉文庫)

  • 書評:今野敏著、『新装版-膠着-スナマチ株式会社奮闘記』 (中公文庫)

    『新装版-膠着-スナマチ株式会社奮闘記』は、今野敏の作品としてはかなり異色なのではないでしょうか。刑事も探偵もオカルト的ミステリーも出てこない。接着剤専門会社で新製品開発に失敗して、接着力のない接着剤(それはもう「接着剤」とは言えない)ものができてしまい、これをどうつかえば開発費の回収が可能になるか、引いては株価暴落・乗っ取りを防げるかが課題となります。テーマからすると、まるで池井戸潤の小説と言っても違和感がないような気がします。主人公は就職難でスナマチしか受からなかったので入社したという新入社員で、彼の視点から、指導役のスーパー営業マンの活躍や、機密のプロジェクト会議の様子、社内の人間関係などが描写されます。焦点はあくまでも接着力のない接着剤のなりそこないをどうするかということなのですが、接着剤の原理な...書評:今野敏著、『新装版-膠着-スナマチ株式会社奮闘記』(中公文庫)

  • 書評:今野敏著、『機捜235』(光文社文庫)

    『機捜235』は渋谷署に分駐所を置く警視庁第二機動捜査隊所属の高丸を主人公とする短編集です。公務中に負傷した同僚にかわり、高丸の相棒として新たに着任した白髪頭で風采のあがらない定年間際の男・縞長と組まされるところから始まり、縞長が捜査共助課見当たり捜査班に属していた時に獲得した指名手配犯を一瞬で見分ける特殊能力を発揮して実績を上げて行くうちに、徐々に二人が本当の相棒になっていく過程が描かれます。刑事ものの小説ばかり読んでいると、機捜は事件の端緒に触れて、刑事が現着したときに報告をしたら姿を消してしまうので、実際の役割・業務内容が見えないものですが、この小説では刑事から下に見られがちの機捜に焦点が当てられ、隊員たちの仕事に対する誇りや葛藤など見えにくい部分が表現されています。Amazonで購入する。Hont...書評:今野敏著、『機捜235』(光文社文庫)

  • 書評:今野敏著、『わが名はオズヌ』(小学館文庫)&『ボーダーライト』

    警視庁捜査一課・碓氷弘一シリーズの『パラレル』で登場した修験道の開祖・役小角が降臨する高校生が気になって、オリジナルの『わが名はオズヌ』を読んでみました。荒れた神奈川県立南浜高校に通う賀茂晶が自殺未遂をして以来、役小角が降臨するようになり、その法力により人を操ってしまう。元暴走族リーダーで今は後鬼として小角に従う同級生・赤岩猛雄、美人担任教師・水越陽子たちとともに、建設推進派の自由民政党代議士・真鍋不二人と大手ゼネコン久保井建設社長の策謀に立ち向かっていくというのがメインストーリーです。警視庁から賀茂についての調査要請を受けた神奈川県警生活安全部少年一課の高尾勇と丸木正太は、調査要請が取り下げられた後も調査し続け、賀茂晶の謎に迫ります。役小角についての蘊蓄がやや冗長なきらいはありますが、『特殊防諜班』シリ...書評:今野敏著、『わが名はオズヌ』(小学館文庫)&『ボーダーライト』

  • 書評:もり著、『屋根裏部屋の公爵夫人』全3巻(KADOKAWA)

    おすすめとして上がってきて、面白そうなので3冊まとめ買いした上に、一気読みしてしまいました。政略結婚のすえ公爵夫人となったオパールは、社交界デビューしたばかりの時にやらかしてしまった失敗のため、いわれのない不名誉な噂が立ち、それを真に受けていた公爵およびその使用人たちに剥き出しの敵意を向けられ、邪魔者扱いされたため、拗ねて屋根裏部屋にこもってしまいます。そこからの逆転劇が語られます。オパールは伯爵令嬢で、持参金以外にも自分の資産を持っており、子どもの頃から領地の管理人に様々なことを教わっていたので、その知識を生かして、借金にあえぐ公爵家の領地の再建に乗り出そうとしますが、公爵に相手にしてもらえなかったので、法務官の叔父の手を借りて公爵家の領地を自分名義に書き換え、名ばかりの夫に宣戦布告し、公爵領に向かい領...書評:もり著、『屋根裏部屋の公爵夫人』全3巻(KADOKAWA)

  • 書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 十三 十年飛ばず鳴かず』(B's‐LOG文庫)

    『茉莉花官吏伝』の最新刊が出ていたので早速読んでみました。絶対に失敗すると思われていた任務でとんでもない成功を収めた茉莉花は、足を引っ張ろうとする敵ではなく、味方につけようという魂胆を持ったお見合い攻勢を受けることになります。この巻は、そのお見合いの対処と、商工会主催の花祭の準備が描かれます。花娘の長女に指名された茉莉花は、街の人々との親交を深めつつ、犯罪者の視点を学んで街の治安対策を考える一方で、花娘の長女には本来必要のない舞と琵琶を真剣に練習します。さて、彼女は花娘の大役を成功させられるのか。そして、根本的なお見合い話対策とはどんなものなのか。この二つがこの巻の鍵です。ミッション自体はこれまでの外交ミッションに比べてかなりやさしいもの。そんな中で、皇帝・白陽との恋の甘味が増していき、なんとも微笑ましい...書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝十三十年飛ばず鳴かず』(B's‐LOG文庫)

  • 書評:今野敏著、『警視庁捜査一課・碓氷弘一』シリーズ全6巻(中公文庫)

    警視庁捜査一課の中年刑事・碓氷弘一を主人公とする本シリーズは、最初からシリーズとしてコンセプトが練られたわけではなさそうな印象を受けました。というのは、6冊全部一気に2日半かけて読んだせいで、作風や構成の違いを強く感じたからかもしれません。『触発』と『アキハバラ』は構成が明らかに似ています。両作品とも犯人を含めた関係者の視点で語られる断片的なエピソードがパズルのように折り重なっていく手法です。それぞれ無関係に思われる人物たちがそれぞれの考え、行動していき、そうした話の糸が何本も絡み合ってやがて一つの大きな事件・事案(爆発テロと秋葉原のとある大きなショップでの爆弾予告と立てこもり事件)に収斂していきます。このため、碓氷弘一は登場人物の1人に過ぎず、「主人公」というほどの比重がありません。事件解決にかなり決定...書評:今野敏著、『警視庁捜査一課・碓氷弘一』シリーズ全6巻(中公文庫)

  • 書評:今野敏著、任侠シリーズ1~6巻(中公文庫)

    最近読んだ『マル暴甘糟』シリーズの甘糟がちょい役で登場しているという任侠シリーズ既刊6巻を一気読みしました。語り手は日村誠二。30代半ばで、今時珍しい任侠道をわきまえたヤクザ・阿岐本組の代貸です。組は組長を含めて総勢6名ですが、阿岐本組長が異様に顔が広く、全国のヤクザの組長に収まっている人たちと若い時分に兄弟の盃を交わしているため、大きな指定暴力団の傘下に入らないまま独立で生き残っています。甘糟はこの阿岐本組の様子見に来ており、時には阿岐本組に対する警察側の理不尽な扱いがあった際に助けてくれたりするので、「ちょい役」というほど小さな役割ではありません。さて、甘糟刑事のことはともかく、この任侠シリーズの面白いところは、組長が損得ではなく人情で様々な面倒ごとの解決を引き受け、そのたびに振り回されている心配性の...書評:今野敏著、任侠シリーズ1~6巻(中公文庫)

  • 書評:岡本裕一朗著、『哲学と人類 ソクラテスからカント、21世紀の思想家まで』(文春e-book)

    タイトルからものすごく壮大な歴史的俯瞰的な考察を想像しますが、そこまで網羅的なものではなく、「技術」「メディア」という観点から見た人類の発展略史のような感じでした。中心となるのは3つの技術革新とそれに影響を受けた思想の発展です。一つ目は文字の発明。ここではギリシャ哲学者のソクラテスの「書き言葉」に対する否定的な見方と、それでもなお「対話」としてソクラテスの教えを書き留めたプラトンについて考察されます。しかし書き留めて書物にするトレンドは変わらず、ついに「聖書」がベストセラーに。キリスト教の広がりは「書物」というメディアなしにはあり得なかったという考察。二つ目は印刷技術の発明。手作業で書き写していた書籍がグーテンベルクの印刷技術によってある程度大衆化したこと。ここでの「大衆化」はラテン語・ギリシャ語ではなく...書評:岡本裕一朗著、『哲学と人類ソクラテスからカント、21世紀の思想家まで』(文春e-book)

  • 書評:今野敏著、『特殊防諜班』全7巻(講談社)

    『連続誘拐』に始まる『特殊防諜班』シリーズは1980年代の作品で、米ソ冷戦真っ最中の時代に始まり、最終巻でベルリンの壁崩壊に至り、ドイツ統一に対する恐怖が描かれているあたりにものすごく時代を感じさせますが、7巻一気に読み切ってしまうくらいには面白いです。大きなテーマは、ユダヤ人の「失われた十支族」の1つの系譜が出雲の山奥に質素な神社を構える芳賀家の家系に伝えられており、この支族こそが黙示録で記されているところの人類滅亡の危機を生き延びる「新人類」と目されていることです。そしてそれを何が何でも滅ぼしたい謎の団体「新人類委員会」がその財力・組織力を駆使して暗殺・テロ行為を仕掛けて来ます。それを迎え撃つために「特殊防諜班」が試験的に結成され、自衛官の真田武男が引き抜かれて、緊急事態に限り総理大臣直属の捜査官とな...書評:今野敏著、『特殊防諜班』全7巻(講談社)

  • 書評:今野敏著、『マル暴甘糟』&『マル暴総監』(実業之日本社)

    読書日から少々日にちが経ってしまいましたが、『マル暴ディーヴァ』を読んでからシリーズの1・2巻があることに気付いて読んだものです。『マル暴甘糟』がマル暴に全然似合わないあまりやる気のない今風の刑事・甘糟を主人公とする最初の作品ですが、脇役としてはすでに任侠シリーズで登場していたということをこのあとがきで知り、今度はそっちを読んでみようと思うくらいには面白かったです。多嘉原連合の構成員が撲殺された事件から始まる捜査で、反社会的勢力同士の抗争なのか、被害者の反グレ時代の怨恨なのかを巡って捜査一課と対立しつつ、マル暴独自の捜査をするというのが粗筋です。このシリーズの面白さは、甘糟刑事の「あーいやだなあ、面倒くさい」という心の中が駄々洩れで、全然熱血・仕事熱心でないわりには、刑事を辞めてしまうほど仕事が嫌いという...書評:今野敏著、『マル暴甘糟』&『マル暴総監』(実業之日本社)

  • 書評:堀元見著、『教養(インテリ)悪口本』(光文社)

    『教養(インテリ)悪口本』というタイトルを見て「なんだその意地の悪そうな本は⁉」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、インターネット(特にSNS)には何のひねりもない「ばか、死ね」的な書き込みが溢れていることを考えれば、悪口を一ひねりして、ユーモアをもって笑い飛ばそうという著者・堀元見は、むしろ心優しいと思えませんか?悪口は誰も幸せにしない。言われた方はもちろん、言う方も聞く方も皆気分を害してしまうものです。どうやら、脳は主語を区別せずに情報処理するらしく、言われた悪口を「自分のこと」として変換してしまうようで(どこかで読んだ心理学研究の結果)、それゆえに悪口を言うことで、自分が悪口を言われたのと同じくらい腹が立つようです。悪口を言えば言うほどどんどん腹が立って来るという経験をした方も少なくないので...書評:堀元見著、『教養(インテリ)悪口本』(光文社)

  • 書評:今野敏著、『マル暴ディーヴァ』(実業之日本社)

    「お気に入り作家の最新刊」ということで自動的にお勧めされたので、そのままほいほい買って読んでしまった後に、これが『マル暴甘糟』シリーズの第3作であることに気が付きました(笑)というわけで、次に読む本はシリーズの前作『マル暴甘糟』と『マル暴総監』に決定ですね。ストーリーは住宅街の一角にあるひっそりとしたジャズクラブ「セブンス」に薬物取引関係の家宅捜査をすることに始まります。実はそのジャズクラブは警察OBの経営する店で、現役の管理官が歌姫として週2回出演しており、警視総監もお忍びで通っているといういわくつき。家宅捜査の時も警視総監がお忍びで来ており、面識のある甘糟にそのジャズクラブに嫌がらせをしている者がいるらしいので捜査してほしいと依頼します。主人公の甘糟は若手刑事で、なんで刑事になったのか、しかもよりによ...書評:今野敏著、『マル暴ディーヴァ』(実業之日本社)

  • 書評:今野敏著、『レッド(新装版)』(ハルキ文庫)

    環境庁の外郭団体に出向させられた警視庁捜査四課の相馬春彦は、仕事への情熱を失った日々を送っていた。そんなある日、山形県にある「蛇姫沼」の環境調査を命じられた相馬は、陸上自衛官の斎木明とともに戸峰町に赴く。だが、町の様子がどこかおかしい。なにかを隠しているような町役場助役と纒わりつく新聞記者。そして、「蛇姫沼」からは、強い放射能が検出された――。相馬たちを待ち受けているものとはいったい何か?傑作長篇小説、待望の新装版。(解説・細谷正充)『レッド』は1998年に発行された書下ろし長編で、ポリティカル・エンターテイメントに分類できる作品です。話が日本国内にとどまらず、アメリカの政府機関・諜報機関などが絡んでくるスケールの大きなドラマ展開です。最初は地元の「蛇姫沼」の「蛇姫」伝説が出て来るので、何かそれにまつわる...書評:今野敏著、『レッド(新装版)』(ハルキ文庫)

  • 書評:F.J. Jeske著、『Das kleine Buddhismus 1x1』 (F.J. Jeske)

    ドイツ語で仏教はどう語られるのか興味ありませんか?日本文化は仏教とは切っても切り離せない関係にありますので、ドイツ語で日日本の文化や思想を説明する際に、ドイツ語の仏教用語を知っていると便利です。本書「DaskleineBuddhismus1x1小さな仏教入門」はわずか64ページの小冊子で、ごく簡単に仏教の基本概念を説明しています。目次は以下の通りです。EinleitungはじめにVerschiedeneTraditionen様々な伝統DieDreiJuwelen三宝Buddha仏陀Dhamma法Sanghaサンガ(僧伽)DieVierEdlenWeisheiten四諦DerEdleAchtfachePfad八正道FünfSilas五戒Karma業Samsara輪廻Nirvana涅槃DasBodhisatv...書評:F.J.Jeske著、『DaskleineBuddhismus1x1』(F.J.Jeske)

  • 書評:福田 純也著、『外国語学習に潜む意識と無意識』 (開拓社言語・文化選書77)

    『外国語学習に潜む意識と無意識』は、私が少し前からよく見ているYouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」で外国語習得がテーマとして取り上げられた際に紹介された書籍の1つです。外国語学習は、極端に言えば誰でも何かしら意見を言える分野であるため、科学的根拠のない思い込みや個人の体験(サンプル数=1)だけに基づいたいい加減な意見が巷に溢れています。私は確かにドイツの大学院で一般言語学を収めたので、一般人に比べれば言語学の知識は多い方ですが、なにぶん20年以上アップデートしていなかったので、言語習得論についてもかなり新しい知見があると思って、この一冊を日本から取り寄せました。ドイツ語学習に関するドイツ語で書かれた本は、ドイツ語教師の資格を取る際にそれなりに読みましたが、日本語で書かれたものは読んだことがなかった...書評:福田純也著、『外国語学習に潜む意識と無意識』(開拓社言語・文化選書77)

  • 書評:松岡圭祐著、『JK II』(角川文庫)

    やはり予想通り「JK」の続編が出ました。しかも、たった4か月後に。相変わらずものすごい執筆スピードで、頭が下がりますね。IIは、主人公・有坂紗奈の平穏だったころのバイト風景から始まり、一転して不良たちに拉致され暴行を受ける中、両親が殺されるシーンになり、さらに整形して売り飛ばされた先の「輪姦島」での悪夢の日々の中、生き残るためにJK(ジョアキム・カランブー)の「窮鼠は学ぶ。逆境が師となる。」という教えを実践し、殺人技術を磨いていくシーンに変わり、最後に「もっとましな夢を見たかった」と目覚めます。前編のおさらいができる親切な出だしです。この巻では、前回は謎だらけだった紗奈の江崎瑛里華としての生活が描かれます。前回、彼女の両親と彼女自身を殺した不良たちへの復讐が果たされましたが、今回はそのバックにいた地元の暴...書評:松岡圭祐著、『JKII』(角川文庫)

  • 読書メモ:今野敏著、『リオ』『朱夏』『ビート』『焦眉』『無明』警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ

    仕事のストレス解消のために立て続けに5冊も読んでしまったのはいいのですが、書評というか読書メモすら書く暇もなく1週間以上過ぎてしまいました。このため、それぞれの作品の読後感はだいぶ薄れてしまい、粗筋しか覚えてません。『リオ』(新潮文庫)は警視庁強行犯係・樋口顕シリーズの第1作で、マンションで起きた殺人事件で現場から逃げて行くところを目撃されたらしい謎の美少女を追い求めるストーリーです。その後、もう1件、殺人事件が起き、そこでも同じ少女らしい人物の目撃情報があった。彼女が犯人なのか?この美少女の正体を明らかにするまでにかなり時間が費やされます。1996年の作品で、当時メディアを騒がせていた女子高生たちの「援助交際」をテーマにしています。普段冷静で慎重な樋口顕もリオの美少女ぶりには冷静ではいられず、懸命に自省...読書メモ:今野敏著、『リオ』『朱夏』『ビート』『焦眉』『無明』警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ

  • 書評:ピエール・ルメートル著、『英雄』(ドイツ語版) (Klett Cotta)

    ピエール・ルメートルはフランス人作家なので、邦訳がなければフランス語原文で読むべきなのでしょうが、この短編『英雄(Unhéros)』のドイツ語版の電子書籍で99セントで販売されていたので安さに惹かれて買ってしまいました。1929年のフランスの片田舎Saint-Sauveurサン・ソベールのIsidoreChartierイシドール・シャルティエ市長が再選を目指して、その村出身の唯一の有名人Paul-RémyDelpratポール・レミ・デルプラという詩人(?)の遺骨をハンガリー・ブダペストから50キロ北にあるミシュコルツという街から取り戻す事業に取りかかります。市長が様々な外交手続きを済ませた後、墓堀人JosephMerlinジョセフ・メルランが実際に遺骨を取りに行くことになります。物語はこの墓堀人の苦労物語...書評:ピエール・ルメートル著、『英雄』(ドイツ語版)(KlettCotta)

  • 書評:松岡圭祐著、『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VI 見立て殺人は芥川』(角川文庫)

    ecritureシリーズもこれですでに6巻となります。相変わらず松岡圭祐は驚異的な執筆スピードですね。続編が出るまでに間が空きすぎると前回までの話が思い出せなくなることも多々ありますが、この著者に限っては続編をじりじり待つ必要がなく、ほとんど二か月おきに読めるのがすばらしいですね。さて、今回杉浦李奈が関わる事件は、改造スタンガンによる2件の殺人と犬の殺害プラス雀の負傷です。事件が起きたのは閑静な住宅街。殺された被害者の1人は普通の50代のサラリーマン・館野良純でしたが、その死体の上に芥川竜之介短編集から切り抜かれた『桃太郎』が置かれていたので、以前に関わったことのあった警視庁捜査一課の山崎の推薦で品川署の刑事組織犯罪対策課から李奈が文学の専門家として捜査協力を依頼されます。もう1人の犠牲者の顔が猿に似てい...書評:松岡圭祐著、『ecriture新人作家・杉浦李奈の推論VI見立て殺人は芥川』(角川文庫)

  • 書評:川添 愛著、『ふだん使いの言語学: 「ことばの基礎力」を鍛えるヒント』 (新潮選書)

    何を隠そうがちで理論言語学をベースとした本を日本語で読むのは初めてだったのですが、「ふだん使い」と銘打っているだけあって、用例が身近なもので、問題ポイントの解説も分かりやすく、従って、どのように改善・修正すべきなのかも明確に分かる構造になっています。「言った、言わないが起こるのはなぜ?」「SNSの文章が炎上しやすい」「忖度はなぜ起こる?」……理論言語学の知見を使い、単語の多義性や曖昧性、意味解釈の広がり方や狭まり方、文脈や背景との関係などを身近な例から豊富に解説。文の構造を立体的に掴む視点が身につき言葉の感覚がクリアになる、実践的案内。上の商品案内は実に的を得ています。本書は、意識的に言葉を運用して、誤解や炎上を防ぐのに大いに役立つことでしょう。目次まえがき第一章無意識の知識を眺める:意味編第二章無意識の...書評:川添愛著、『ふだん使いの言語学:「ことばの基礎力」を鍛えるヒント』(新潮選書)

  • 書評:今野敏著、『波濤の牙 海上保安庁特殊救難隊 (新装版)』(ハルキ文庫)

    商品説明台風が接近し、海が荒れる茅ヶ崎沖で、海難事故が発生した。海上保安庁特殊救難隊の惣領正らは、直ちに現場に急行。北朝鮮船籍らしき船から、三人の男を無事救出した。だが、救助した男たちが突如変貌し、惣領たちに銃口を向けてきた。男たちの要求は、沈みゆく船から“荷物”を取って来いというものだった。荷物とは一体何なのか?彼らの目的は?特救隊の男たちの決死の戦いが始まる――。傑作長篇小説、待望の新装版。(解説・関口苑生)「新装版」というタイトルからも分かるように、この作品はかなり古いもので、1996年に祥伝社より発行。2004年に文庫・新装版として角川から発行され、今年8月16日に電子書籍版として発行された作者の76番目の作品。海上保安庁特殊救難隊という特殊な組織を取り上げ、時化た海でのその活躍を描くというだけで...書評:今野敏著、『波濤の牙海上保安庁特殊救難隊(新装版)』(ハルキ文庫)

  • 書評:松岡圭祐著、『ウクライナにいたら戦争が始まった』

    商品説明:単身赴任中の父と3か月を過ごすため、高校生の瀬里琉唯(るい)は母・妹とともにウクライナに来た。初日の夜から両親は口論を始め、琉唯は見知らぬ国で不安を抱えていた。キエフ郊外の町にある外国人学校にも慣れてきたころロシアによる侵攻が近いとのニュースが流れ、一家は慌ただしく帰国の準備を始める。しかし新型コロナウイルスの影響で一家は自宅から出ることができない。帰国の方法を探るものの情報が足りず、遠くから響く爆撃の音に不安と緊張が高まる。一瞬にして戦場と化したブチャの町で、琉唯は戦争の実態を目の当たりにする。琉唯という17歳の女子高生の視点で描かれているため、背景の分析のようなものは一切なく、「見たまんま」の情景描写が続きます。激しい爆撃・銃撃の中逃げまどい、英語も少ししかできず、わずかの挨拶程度のウクライ...書評:松岡圭祐著、『ウクライナにいたら戦争が始まった』

  • 書評:61. 神永 曉著、『微妙におかしな日本語: ことばの結びつきの正解・不正解』 (草思社文庫)

    何かと忙しくて読むのに大分時間がかかってしまいましたが、ついに『微妙におかしな日本語:ことばの結びつきの正解・不正解』を完読しました。本書の魅力は長年『日本国語大辞典』の編集に携わってきた著者が、歴史的な用例を明らかにしつつ、本来の言葉のつながりがどれで、本来的な言い方ではないが許容範囲であるのはどれで、どれは明らかに誤用なのかを決めつけではなく慎重に論じているところです。例えば、「最近の言葉の乱れ」の例としてよく挙げられる「全然大丈夫」のような「全然プラス肯定形」の用法ですが、実は「全然プラス否定形であるべき」という根拠が歴史的に見ると見つからないのだそうで、江戸時代から用例がある「全然」ですが、後に肯定も否定も続くことがあったにもかかわらず、昭和28~29年に「本来否定を伴う」という規範意識が国語研究...書評:61.神永曉著、『微妙におかしな日本語:ことばの結びつきの正解・不正解』(草思社文庫)

  • 書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。7』(ビーズログ文庫)

    『十三歳の誕生日、皇后になりました。7』は、赤奏国がお正月を迎える時期に占いが流行り出し、占いで「こうするとよい」と言われたことを仕事に持ち込んで、国宝の剣が失われたり、同じく国宝の赤い宝石が見分けがつかなくなったりというトラブルが発生し、その調査に幼い皇后・李杏が任される、というストーリーです。事件は起きてますが、人の命が脅かされるような危険なものではなく、市井の人々が占いにお金を出せるほど国の復興が進み、それゆえの新しい問題という位置づけで、全体的に見るとほのぼのとした流れです。皇帝・暁月が「ちょうどよかったから」という適当さで選んだはずの李杏にますますほだされて行くところがほっこりしますね。一途で努力家の彼女の今後の成長が楽しみですが、物語としてはこのままだとやや平坦過ぎるので、きっとそのうちとんで...書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。7』(ビーズログ文庫)

  • 書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第十四幕』(富士見L文庫)

    『紅霞後宮物語』はこの巻で本当に完結しました。第十三幕から7年後、関小玉が皇后に返り咲くところから物語が始まります。とはいえ、新たに事が起こるのではなく、紅霞後宮物語を閉じるためだけに書かれた多くの断片的なエピソードで構成されています。小玉は市井の人々に「ばあさん」と呼ばれて親しまれ、文林とも和やかな関係を育み、帝姫・令月を養育するという日常の中、文林の病が悪化し、やがて崩御。小玉が慈しみ育てた皇太子・鴻が即位し、小玉は文林のいない後宮で何の役にも立てないことを自覚して、後宮を出て庶民に戻る。文林の死んだことになっている長男のその後。隣国の實と康の世代交代。などなど。最後の「残照」の章ではさらに時代が下り、辰がついに滅びる。少々長すぎるエピローグという感じで盛り上がりに欠けていました。関小玉の影が薄すぎる...書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語第十四幕』(富士見L文庫)

  • 書評:北原 保雄著/編、『問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?』(大修館書店)

    へんな日本語にも理由(わけ)がある!「ご注文は以上でよろしかったでしょうか」「こちら和風セットになります」「全然いい」などの“問題な日本語”を取りあげ、それがどのような理由で生まれてきたか、どのように使えばよいかを、日本語の達人、『明鏡国語辞典』の編者・編集委員がわかりやすく解説。という商品説明の本書『問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?』は2004年12月に刊行された本で、実は続編があり、「その4」まであります。さらに番外編として『かなり役立つ日本語ドリル―問題な日本語番外』が2冊出版されています。私はYouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」で紹介されていたので、Amazonポイントを消化すべくとりあえず本書だけを買いました。昔とは違って、今は世界中の発信がタイムリーに入手できます。それで、...書評:北原保雄著/編、『問題な日本語―どこがおかしい?何がおかしい?』(大修館書店)

  • 書評:三上延著、『ビブリア古書堂の事件手帖 II ~扉子と不思議な客人たち~』(メディアワークス文庫)

    『ビブリア古書堂の事件手帖』の第1巻が発行されてから10年を記念して書かれた本書『扉子と不思議な客人たち』は同シリーズの10冊目となるそうです。この巻は、探偵小説3大奇作の1つと言われる夢野久作の『ダグラ・マグラ』をめぐる物語です。古書店・虚貝堂の跡取り息子・杉尾泰明の死により遺された約千冊の蔵書。これは、法的には高校生の息子・樋口恭一郎が相続することになっているが、虚貝堂店主・杉尾正臣がこれを全て売り払うという。恭一郎の母・佳穂は、これを阻止しようとビブリア古書堂に相談し、栞子と大輔は虚貝堂店主も出店する即売会場で説得を試みるが、即売会ではいくつものトラブルが待ち受けていた。曲者の栞子の母・千恵子が陰で糸を引いている気配もあります。目次プロローグ・五日前初日・映画パンフレット『怪獣島の決戦ゴジラの息子』...書評:三上延著、『ビブリア古書堂の事件手帖II~扉子と不思議な客人たち~』(メディアワークス文庫)

  • 書評:三上延著、『ビブリア古書堂の事件手帖II ~扉子と空白の時~』 (メディアワークス文庫)

    栞子と大輔の娘・扉子が活躍するシリーズ第2弾『ビブリア古書堂の事件手帖II~扉子と空白の時~』は、ますます母の栞子にそっくりになって来る扉子が急に祖母に呼び出され、父・大輔の付けていた事件手帖のうち、2012年と2021年の横溝正史の『雪割草』に関わるものを持って来て欲しいと頼まれ、それを持って馴染みのブックカフェに行くところから始まります。本編の第一話~第三話はその事件手帖に書かれている内容で、扉子が祖母・篠川千恵子を待ちつつそれを読んでいる設定です。プロローグ第一話横溝正史『雪割草』I第二話横溝正史『獄門島』第三話横溝正史『雪割草』IIエピローグ第一話の時は2012年。まるで横溝正史の金田一耕助シリーズに出てきそうな元華族の上島家で、横溝正史の幻の作品と言われる『雪割草』が盗まれたと身内の中で騒ぎにな...書評:三上延著、『ビブリア古書堂の事件手帖II~扉子と空白の時~』(メディアワークス文庫)

  • 書評:宮田登著、『民俗学』(講談社学術文庫)

    宮田登著、『民俗学』(2019)は、民俗学とは何か、日本における民俗学の成り立ちから現在に至るまでの研究の発展や変遷、民俗学的に重要な「常民(性)」「ハレ」「ケ」「ケガレ」などの概念の説明など、非常に示唆に富んだ入門書です。装丁や構成が現代的な意味で分かりやすくなっているわけではないので、その辺りは「学術文庫」であるところを考慮して大目に見る必要があるかと思います。つまり、手っ取り早く読める本ではありません。目次まえがき1民俗学の成立と発達2日本民俗学の先達たち3常民と常民性4ハレとケとゲガレ5ムラとイエ6稲作と畑作7山民と海民8女性と子供9老人の文化10交際と贈答11盆と正月12カミとヒト13妖怪と幽霊14仏教と民俗15都市の民俗先日一気読みした『準教授・高槻彰良の推察』シリーズの高槻淳教授の専門分野は...書評:宮田登著、『民俗学』(講談社学術文庫)

  • 読書ノート:栞子さんの本棚 ビブリア古書堂セレクトブック 2 (角川文庫)

    『栞子さんの本棚ビブリア古書堂セレクトブック2』は三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズの作中に登場した作品の中から13作品をセレクトした本です。江戸川乱歩『孤高の鬼』抜粋~ビブリア古書堂の事件手帖4小林信彦『冬の神話』抜粋~ビブリア古書堂の事件手帖4江戸川乱歩『黄金仮面』抜粋~ビブリア古書堂の事件手帖4江戸川乱歩他『江川蘭子』抜粋~ビブリア古書堂の事件手帖4江戸川乱歩『押絵と旅する男』~ビブリア古書堂の事件手帖4江戸川乱歩『二銭銅貨』~ビブリア古書堂の事件手帖4小沼丹『黒いハンカチ』~ビブリア古書堂の事件手帖5寺山修司『われに五月を』抜粋~ビブリア古書堂の事件手帖5木津豊太郎『詩集普通の鶏』抜粋~ビブリア古書堂の事件手帖5太宰治『駆込み訴え』~ビブリア古書堂の事件手帖6黒木舜平(太宰治)『断崖の錯...読書ノート:栞子さんの本棚ビブリア古書堂セレクトブック2(角川文庫)

  • 書評:石田リンネ著、『女王オフィーリアよ、王弟の死の謎を解け』(富士見L文庫)

    『女王オフィーリアよ、己の死の謎を解け』に続く第二弾『女王オフィーリアよ、王弟の死の謎を解け』が発売されたので、早速買って読みました。前回は、オフィーリア女王が殺され、死の間際、薄れゆく意識の中で「私は、私を殺した犯人を知りたい」と強く願ったため、王冠の持ち主にだけ与えられる“古の約束”により、妖精王リアによって10日間だけ生き返り、その間に犯人探ししてついに「呪い」を発動させることに成功し、彼女の代わりに彼女を殺そうとした犯人たちが妖精王リアに殺されてしまいましたが、今回はオフィーリアの弟ジョンが何者かによってブロンズ像で後頭部を殴られて殺されてしまいます。ところがジョンは二日後の葬儀の際に息を吹き返すのです。そこでオフィーリア女王は妖精王リアにとっての「王冠の所有者」の定義について考えるのですが、もし...書評:石田リンネ著、『女王オフィーリアよ、王弟の死の謎を解け』(富士見L文庫)

  • 栞子さんの本棚 ビブリア古書堂セレクトブック 1 (角川文庫)

    『栞子さんの本棚ビブリア古書堂セレクトブック』は三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズの作中に登場した作品の中から12作品をセレクトした本です。夏目漱石「それから」抜粋アンナ・カヴァン「ジュリアとバズーカ」小山清「落穂拾い」フォークナー「サンクチュアリ」抜粋梶山李之「せどり男爵数奇譚」抜粋太宰治「晩年」坂口三千代「クラクラ日記」抜粋国枝史郎「蔦葛木曽桟」抜粋アーシュラ・K・ル・グイン「ふたり物語」抜粋ロバート・F・ヤング「たんぽぽ娘」F・W・クロフツ「フローテ公園の殺人」抜粋宮沢賢治「春と修羅」抜粋巻末の「収録された作品についての諸々」で三上延ご本人のこれらの作品に対する思いや注釈が書かれています。つくづく著者と私の読書暦が重ならないなと思いつつ太宰以外は興味深く読ませていただきました。中でもロバー...栞子さんの本棚ビブリア古書堂セレクトブック1(角川文庫)

  • Frenkel & Kang著、An Ugly Truth: Inside Facebook's Battle for Domination (The Bridge Street Press)

    Blinkistというドイツ語書籍の要旨を聴けるアプリで「InsideFacebook:DiehässlicheWahrheit(フェイスブック・インサイド醜い真実)」という本が紹介されていたので聞いてみました。ここではオリジナルの英語版「AnUglyTruth:InsideFacebook'sBattleforDomination(醜い真実:フェイスブックの覇権争いの内実)」の方を挙げておきます。2021/7/13刊行で、未邦訳です。Amazonで購入する。フェイスブックがヘイトスピーチなどを一切規制しなかったことで問題になっていたことを覚えている方は多いかと思います。私も記憶の片鱗に留めておいた程度で、その影響力や問題の深刻さについて大して考えたことはなかったのですが、かなりの実害があるようです。20...Frenkel&Kang著、AnUglyTruth:InsideFacebook'sBattleforDomination(TheBridgeStreetPress)

  • 書評:松岡圭祐著、『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 V 信頼できない語り手』(角川文庫)

    本シリーズ『ecriture新人作家・杉浦李奈の推論』のIV巻が出たのは4月半ば。2か月も経たないうちにもう続巻が書き下ろされ、しかも先月は新たにシリーズ化しそうな『JK』が上梓され、相変わらずの著者の著作スピードに頭が下がる思いです。私はこのシリーズを自動購入に設定しており、昨晩V巻が私の電子書籍ライブラリーに追加されたので、就寝前に「出だしだけでも」と本当にちょっと見るつもりで読み始めて、結局、止まらなくなって気が付いたら最終章まで読み終わり、小鳥たちのさえずりを聴くことになってしまいました。恐るべし、松岡圭祐。その読者牽引力は驚異的です(もちろん全作品ではありませんが)。さて、V巻の事件は大規模な惨劇から始まります。日本小説家協会の懇親会会場で大規模火災が起き、小説家をはじめ多くの出版関係者が亡くな...書評:松岡圭祐著、『ecriture新人作家・杉浦李奈の推論V信頼できない語り手』(角川文庫)

  • パリ食べ歩き

    コロナパンデミックのせいで旅行ができず、2020年1月末にブリュッセルに行ったのを最後にずっとおこもりしていましたが、5月26日から29日まで祭日を含めて4連休にしたフランス住まいのお友だちと一緒にパリに行きました。パリは何と32年ぶり!「食べ歩き」というタイトルからもお分かりのように、大した観光はしていません。今回の旅行の目的は、女同士で楽しくおしゃべりしながら美味しいものを食べることと、ついでに私のつたないフランス語の実地訓練でした。ホテルさて、泊まったホテルはメトロのConvention駅から徒歩2・3分くらいの二つ星ホテル「HôtelAvenir」でした。パリ北駅からは30分近くかかり、どこへ行くにもメトロまたはバスに乗る必要があります。この意味で交通の便は悪くはないという程度です。このホテルはパ...パリ食べ歩き

  • 書評:澤村御影著、『准教授・高槻彰良の推察』1~7巻+EX (角川文庫)

    『准教授・高槻彰良の推察』全7巻(未完結)と番外編のEXの計8冊を一気に読みました。このため、各巻個別の書評を書くのが困難なので、7巻までの全体的な書評を書きたいと思います。主人公は大学1年生(途中進学して2年)の深町尚哉。彼は10歳のときに祖父母の住む田舎でお盆祭りに熱を出したために行けなかったのですが、夜中にふと目が覚め、太鼓の音を聞きつけて、まだ盆踊りをしているのかと思って外に出て行くと、そこでは死者たちが面をかぶって踊っていたのです。尚哉も従兄からお土産にもらったお面を付けていたので最初は気づかれなかったものの、昨年死んだはずの尚哉の祖父に見咎められ、帰ろうとしたものの、他の死者たちにも見つかってしまったので、代償を払うことになります。その時彼は「孤独になる」というべっこう飴を選んでその場で食べます。気...書評:澤村御影著、『准教授・高槻彰良の推察』1~7巻+EX(角川文庫)

  • 書評:今野敏著、『呪護』(角川文庫)

    『呪護』は鬼龍光一シリーズの前作を含め第5作になります。出雲族を祖とする鬼道衆に属する鬼龍光一は陰の気が凝り固まって怒りや性欲に憑りつかれたようになる「亡者」の退治を生業とする祓い師で、黒づくめの服装がトレードマーク。同じく出雲族のトミノアビヒコを先祖とする奥州勢の安倍孝景は白づくめの服装に銀髪がトレードマーク。この黒白コンビが怪奇の分野を担い、現実主義の極みと言える警察側に属する警視庁生活安全部・少年事件課・少年事件第三係の巡査部長、富野輝彦が主人公で、怪奇物語に警察小説という器を与える役割を果たしています。しかし、この富野輝彦もトミノアビヒコの直系トミ氏に連なる者で、本人は自覚していないのですが、霊能系の能力を秘めているらしく、また、鬼龍と孝景と共に奇妙な体験を重ねるうちに、法律に基づく現実と霊能的観点から...書評:今野敏著、『呪護』(角川文庫)

  • 書評:松岡圭祐著、『JK』(角川文庫)

    『JK』というタイトルと言い、表紙の写真と言い、『高校事変』に続く高校生ヒロインの話だということが容易に察しがつきます。しかし、JKは女子高生の略ではなく、ジョアキム・カランブー(JoachimKarembeu1922─2004)のイニシャルで、「窮鼠は学ぶ。逆境が師となる。」という格言を言った人です。これが本作品の底流に流れるモチーフと言えます。物語は、川崎という指定暴力団の多い土地柄、懸野高校における不良の傍若無人ぶりとは対照的とも言える懸野高校の一年生・有坂紗奈の比較的平穏な日常生活から始まります。クラスでも人気があり、吹奏楽部とダンスサークルでも頼りにされ、バイト先の介護施設でも入所者たちに愛されていた。そんな彼女の座右の銘が上のジョアキム・カランブーの格言だ。彼女は笑顔を絶やさず、一見何の苦労もなさそ...書評:松岡圭祐著、『JK』(角川文庫)

  • 書評:原田マハ著、『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫)

    100冊以上あった積読本の中に長いこと埋もれていた『暗幕のゲルニカ』。どうしてこの本を買ったのか、きっかけすらもう覚えていないのですが、どこかで誰かが勧めていて、何かしら興味を惹いたので買っておいたのでしょう。その価値はありました。本書は「アートの力とは何か」を世に問うミステリー。まさに『ゲルニカ』を生み出した画家、パブロ・ピカソが絵筆一本でゲルニカ空襲を行ったフランコ反乱軍とそれを支持したナチス・ドイツおよびムッソリーニ・イタリアのファシズムに、引いては戦争や暴力一般に対して「芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ」と立ち向かったように、観賞するための飾りではないアート、世に干渉するアート、政治的・社会的メッセージ性が濃厚なモダンアートの影響力を、小説という別の表現手段のアートで描く作品です。こ...書評:原田マハ著、『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫)

  • 書評:今野敏著、『道標 東京湾臨海署安積班』(ハルキ文庫)

    『道標東京湾臨海署安積班』は短編集です。『道標』というタイトルが暗示するように、安積剛志の初任科時代(「初任教養」)から地域課(「捕り物」)などを経て刑事となり(「熾火」)、さらに出世して係長に就任し、彼を中心とした結束の固い安積班ができるまでの経過(「視野」、「消失」、「みぎわ」、「不屈」、「係長代理」、「家族」)や石倉進鑑識係長が安積の依頼を最優先で受けるようになったきっかけ(『最優先』)などが語られています。「不屈」、「係長代理」、「家族」の3編では安積班の最新メンバーである水野真帆が登場しており、時系列はほぼ本編と同じです。『東京ベイエリア分署』『神南署』『東京湾臨海署』の三期に亘って、三十年以上書き継がれてきた著者のライフワークなだけあって、登場人物も多く、以前に安積とであった人たちが立場を変えて再登...書評:今野敏著、『道標東京湾臨海署安積班』(ハルキ文庫)

  • 書評:今野敏著、『潮流 東京湾臨海署安積班』(ハルキ文庫)

    買ったまま放置して1年ほど経ってしまいましたが、積読本の山も小さくなってきましたので、手を付けることにしました。東京湾臨海署安積班シリーズはその前の東京ベイエリア分署シリーズも入れるとずいぶんとロングランのシリーズですが、主要キャラはほぼ同じでもマンネリ化しない作品群です。東京湾臨海署の強行犯係の安積剛志係長を中心にした物語ではあるものの、警察組織内の実に多くの人間がそれぞれの仕事をこなしながら協力したり対立したりして織りなす複雑な人間関係と、様々な事件を解決していくスーパーヒーロー不在のリアリティーが魅力です。さて、この『潮流』は安積班全員が比較的平和に署に詰めて書類処理などをしていたある日に急病人が3人立て続けに救急車で病院に搬送されたことから始まります。彼らにつながりはなく、共通点も見つからないのですが、...書評:今野敏著、『潮流東京湾臨海署安積班』(ハルキ文庫)

  • 書評:大野和基・編、『コロナ後の世界』 (文春新書)

    新型コロナウイルスが国境を越えて感染を拡大させる中、現代最高峰の知性6人に緊急インタビューを行い、世界と日本の行く末について問うた本書は、2020年3月の時点から見た未来考察であるため、その後のパンデミックの展開や現在のウクライナ戦争などはもちろん考慮に入れられていません。しかしながら、その時点でジャレド・ダイアモンド、ポール・クルーグマン、リンダ・グラットン、マックス・テグマーク、スティーブン・ピンカー、スコット・ギャロウェイの6人がどんな根拠を基にどのような未来考察を行い、どのような行動の提案を行ったのかを知るのは興味深く、示唆に富んでいます。彼らの提案は、その後の状況変化によって修正されるべき点がほとんどない普遍性のある指針でもあるため、一読に値します。[主な内容]ジャレド・ダイアモンド「21世紀は中国の...書評:大野和基・編、『コロナ後の世界』(文春新書)

  • 書評:石角完爾著、『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』(集英社ビジネス書)

    『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』は、ユダヤ教のウルトラオーソドックスの宗派に改宗した著者が、世界最古にして最大の議論集「タルムード」にある数々の説話とそれらの根底にある知恵を紹介しています。【目次】はじめに――タルムードに満載されているサバイバルの知恵第一章お金を引き寄せるユダヤ哲学「この世には人を傷つけるものが三つある。悩み、諍い、空の財布。三つのうちからの財布が最も人を傷つける」魔法のザクロ~「ノーペイン・ノーゲイン」ー犠牲なくして成功なし七匹の太った牛と七匹の痩せた牛~豊かさの次には必ず対貧困が襲ってくるーしかし貧困の次に豊かさが来るとは限らないお金を恵むなら全員に~借りたものを惨めに扱うなかれー尊厳を傷つけない貸し方をせよ土地は神が与えたもうもの~土地は誰のもの?ー土地の所有は50年でご破算に...書評:石角完爾著、『ユダヤ人の成功哲学「タルムード」金言集』(集英社ビジネス書)

  • 書評:両@リベ大学長著、『お金の大学』(朝日新聞出版)

    大分前に紙書籍で日本から送ってもらってそのまま積読本になってしまっていましたが、ようやく読むことができました。著者はYouTubeのお金の教養チャンネル〈リベ大〉で日々日本人のマネーリテラシーを高めようとたくさんの動画を発信しており、本書はそれら多数の動画に通ずる基礎がまとめられています。このため、詳細を知りたい読者のためにそれぞれの項目でQRコードをスキャンして該当動画に飛べるようになっています。お金のハウツー本は数多くありますが、本書(およびリベ大)の特徴は、バランスのよい再現性の高さにあります。つまり、誰が真似してもそれなりの結果が出せる方法とそれに必要な知識、さらにそれに伴うリスクとリスク対策がマンガ的に優しく解説されているので、真似しやすいのです。煽りに明示されているように、著者のお金にまつわる思想は...書評:両@リベ大学長著、『お金の大学』(朝日新聞出版)

  • 書評:堀元見著、『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』(徳間書店)

    例外的に紙書籍をAmazonで予約購入したのが本書『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』でした。その理由は、著者と田中泰延さんとの対談の「ぶっちゃけ」たほうの後半ライブを視聴できる条件がそれだったから。対談は非常に楽しかったし、ようやく届いた本書も面白かったです。堀元見氏はYouTubeの『ゆる言語学ラジオ』の出演・プロデュースしており、私はこのチャンネルで彼のことを知りました。慶応義塾大学理工学部卒業後、就職せずに「インターネットでふざける」を職業にしたという変わり種で、著書に『教養悪口本』(光文社)があります(そちらは未読)。さて、そのような著者がビジネス書ベストセラーを100冊読んで、教えをスプレッドシートにまとめて行くプロセスをYouTube公開しながら執筆したのが本書なわけです...書評:堀元見著、『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』(徳間書店)

  • 書評:ユヴァル・ノア・ハラリ著、『サピエンス全史』上下合本版(河出書房新社)

    いろいろと読書の寄り道をしたため、『サピエンス全史』の上下巻を完読するのに1か月余りかかりました。概要は中田敦彦のYouTube大学の動画を見て、おおよそ知っていましたが、実際に読むとなるとかなりの量です。興味深い内容であることは確かですが、そのボリュームに相応しく膨大な詳細情報が記載されており、読んで咀嚼するのに時間がかかります。目次(上)第1部認知革命第1章唯一生き延びた人類主第2章虚構が協力を可能にした第3章狩猟採集民の豊かな暮らし第4章史上最も危険な種第2部農業革命第5章農耕がもたらした繁栄と悲劇第6章神話による社会の拡大第7章初期体系の発明第8章想像上のヒエラルキーと差別第3部人類の統一第9章統一へ向かう世界第10章最強の征服者、貨幣第11章グローバル化を進める帝国のビジョン(下)第12章宗教という超...書評:ユヴァル・ノア・ハラリ著、『サピエンス全史』上下合本版(河出書房新社)

  • 書評:松岡圭祐著、『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 IV シンデレラはどこに』(角川文庫)

    『ecriture新人作家・杉浦李奈の推論IVシンデレラはどこに』は前巻の『ecriture新人作家・杉浦李奈の推論IIIクローズド・サークル』からわずか2か月後に発刊されています。こんなに速く次巻が出る小説シリーズが他にあるでしょうか。ラノベでも3・4か月に1度だと思うのですが。今回の『シンデレラはどこに』編は、前巻のアガサ・クリスティーのパロディ風とは打って変わって、再び盗作(翻案)問題を取り上げているものの、ヒロインの杉浦李奈が脅迫によってなぜか『シンデレラ』の童話の原典が何かを調べる羽目になる非常に面白いストーリーです。シリーズ中最高の面白さだと思います。『シンデレラ』の起源をめぐる研究だけでも相当興味深いのですが、これが他作家の作品をそっくり真似て、文体や名前を変えただけの小説を多数ハイペースで出版し...書評:松岡圭祐著、『ecriture新人作家・杉浦李奈の推論IVシンデレラはどこに』(角川文庫)

  • 書評:今野敏著、『変幻』(講談社文庫)

    『変幻』は、『同期』シリーズ3部作の完結編です。警視庁捜査一課刑事の宇田川が語り手ですが、初任科研修で仲が良かった同期の蘇我は表面上公安を懲戒免職となって隠密行動を取っており、さらにもう一人の同期・大石陽子は特殊班に属しており、この巻で「しばらく出向で会えなくなる」と言って同僚数人集めて夕食を一緒に食べた後、音信不通になります。そこで殺人事件が起こり、宇田川ら捜査一課が関わることになりますが、死体を運ぶのに使われた車の持ち主を探す過程で、容疑者が関係するヤクザのフロント企業が大石陽子の潜入捜査先である可能性が浮上。さらに、蘇我が大石陽子の救出に協力してくれるよう宇田川に頼んできます。潜入捜査が本来非合法であるため、公に救出作戦を立てられないどころか情報収集も困難を極める中、果たして大石は救出されるのか?!このシ...書評:今野敏著、『変幻』(講談社文庫)

  • 書評:今野敏著、『大義 横浜みなとみらい署暴対係』(徳間書店)

    『大義』は横浜みなとみらい署暴対係シリーズのスピンオフ短編集で、「タマ取り」「謹慎」「やせ我慢」「内通」「大義」「表裏」「心技体」の7編が収録されています。「タマ取り」では常磐町の神風会組長・神野義治、通称「常磐町のとっつぁん」が「本牧のタツ」という70歳前後のヤクザに命を狙われているという噂から捜査が始まります。なぜ70代のヤクザ同士で今更そんなお礼参り的なことをするのか、その背景も動機も不明なので捜査します。オチはふっと笑える微笑ましいものです。「謹慎」でははヤクザ3人が殴られて負傷し、身柄確保した諸橋係長と城島係長補佐がヤクザに訴えられた事件が倉持の視点で描かれます。事件解決よりも倉持の捉え方に重きが置かれています。「やせ我慢」は横浜みなとみらい署暴対係の一番の若手・日下部の視点で語られます。日下部と組ん...書評:今野敏著、『大義横浜みなとみらい署暴対係』(徳間書店)

  • 書評:今野敏著、『探花―隠蔽捜査9―』(新潮社)

    『スクエア』、『清明―隠蔽捜査8』に続いて、勢いで隠蔽捜査シリーズ第9弾『探花』も読んでしまいました。それだけ今野作品は一度読み出すと止まらなくなるほどテンポの良い話運び、程よいディテールの説得力などの魅力にあふれているということですね。今回は福岡から神奈川県警の警務部長へ異動になった同期入庁試験トップの八島という男が不穏な空気をまき散らしています。なんでも入超試験の成績がトップだったことを殊更に誇っており、警察トップの椅子取りゲームを真剣にやっているようなタイプで、竜崎伸也の価値観とはまったく相容れない人物。さらに横須賀のヴェルニー公園で死体が発見され、近くでナイフを持って走っていく白人を見たという目撃証言があったため、米軍との折衝を竜崎が行い、米海軍の犯罪捜査局から特別捜査官が派遣され、竜崎の判断で捜査本部...書評:今野敏著、『探花―隠蔽捜査9―』(新潮社)

  • 書評:今野敏著、隠蔽捜査8『清明』(新潮社)

    昨日読んだ横浜みなとみらい署暴対係シリーズ第5弾『スクエア』で扱われた事件の容疑者の身柄が確保されたタイミングで竜崎伸也が神奈川県警刑事部長に着任するところから隠蔽捜査シリーズ第8巻の『清明』の物語が始まります。この小さなリンクがあるために続けて読んでみようという気になりました。ファンにとって異なるシリーズのストーリーが交差したり、登場人物が重なったりすると、なぜか意外なところで知り合いに再会したときのようなワクワクとした嬉しい気分になれるものです。神奈川県警の四角四面の流儀・風潮に慣れないなりに、「合理的でない」の一言でバッサリ切り捨てにしてしまうのではなく、そこそこ尊重する柔軟な態度を示す竜崎は少し丸くなったのでしょうか。着任早々、県境で死体遺棄事件が発生し、警視庁の面々と再会するものの、どこかやりにくさを...書評:今野敏著、隠蔽捜査8『清明』(新潮社)

  • 書評:今野敏著、横浜みなとみらい署暴対係シリーズ『スクエア』(徳間文庫)

    『逆風の街』『禁断』『臥龍』『防波堤』に続いて横浜みなとみらい署暴対係シリーズ第5弾となる『スクエア』ですが、なんと今野敏氏の著作200冊目でもあるそうです。記念すべき一冊に相応しいと言えるかどうかは分かりませんが、本シリーズの安定の面白さであることは請け合いです。横浜みなとみらい署暴対係係長「ハマの用心棒」こと諸橋とその補佐である城島は熱心に仕事をするあまり組織の枠組みから外れてしまうことも往々にしてあるため、警察の綱紀を正したいと自ら進んで県警本部監察官となったキャリアの笹川に目をつけられて、ことあるごとにそのやり方に対して文句を言われてきましたが、この巻ではその笹川が朝っぱらから横浜みなとみらい署にやって来て、神奈川県警本部長のお呼びだから一緒に来いと諸橋・城島を連れ出しに来ます。そんなお偉いさんの呼び出...書評:今野敏著、横浜みなとみらい署暴対係シリーズ『スクエア』(徳間文庫)

  • 書評:奥山真司監修、『サクッとわかる ビジネス教養 地政学』(新星出版社)

    ロシアによる大々的なウクライナ侵攻の影響で、にわかに地政学が脚光を浴びているようで、関連書籍が注目を集めています。このため、何冊か私の目にも止まり、そのうちの一冊『サクッとわかるビジネス教養地政学』をサクッと読んでみました。私の地政学的知識は非常に断片的で、ヨーロッパに偏っていたのですが、本書によって多少その偏りが是正されたと思います。まず、そもそもの話として地政学とは何か、という問題から始まり、宗教・文化等に関わらず、地理的な条件から国の振る舞いを見るために、世界勢力をランドパワー(内陸国家)とシーパワー(海洋国家)に分割し、外に出ようとするランドパワーとそれを抑え込もうとするシーパワーの対立と捉え、これを踏まえて世界各地の物流(主に海路)の要所をめぐる紛争の歴史的経緯を見て行きます。基本的に地図上で状況を分...書評:奥山真司監修、『サクッとわかるビジネス教養地政学』(新星出版社)

  • 書評:しきみ彰著、『後宮妃の管理人』全6巻(富士見L文庫)

    ラノベには古代中国王朝風の舞台設定も後宮の物語も多いネタではありますが、時々上がって来る「お勧め作品」の中でこの『後宮妃の管理人』のいきなり勅旨で皇帝の側近で大貴族の嫡男と婚姻し、後宮妃の健康と美容の管理をする役割を与えられた28歳の商会の娘という設定が面白そうなので手に取ってみました。妃が主人公ではなく、妃たちを管理する官吏が主人公というのが異色です。しかも、独身の若い娘が頑張る立身出世物語ではなく、「嫁き遅れ」と当人も諦めている20代後半女性の政略結婚から始まるところが面白いですね。玉商会の娘として商会を切り盛りし、子どもの頃の衝撃的な事件をきっかけに、美しくあろうとするあまり騙されたり危ない目に遭ったりする女性たちを支援することに使命感を燃やしている玉優蘭は、その美容や女性の健康に関する知識を買われての異...書評:しきみ彰著、『後宮妃の管理人』全6巻(富士見L文庫)

  • 書評:松岡圭祐著、『高校事変XII』(角川文庫)

    松岡圭祐の高校生ハードボイルドシリーズ『高校事変』が遂に完結しました。この最終巻はとにかく戦闘シーンの連続で息つく暇もなく、あれよあれよという間に日本の半分が焦土と化すような危機的状況に至ります。異母兄弟姉妹たちを始め、様々な事件を通じて関わり合った(元)警察官やクラスメートなどの味方が増えたとはいえ、ヒロインの優莉結衣は所詮高校生に過ぎません。圧倒的な資金力と軍事力を盾についに表立って日本国家を掌握した優莉家長男・架祷斗に対抗する術はあるのか?パワーの不均衡さは途方もなく、どこにも打開策がなさそうな絶望的な状況です。ここで絡んでくるのが(ややネタバレになりますが)智沙子と結衣の母親、昭和・平成時代に二度も日本を滅亡させそうになった凶悪テロリスト・友里佐知子の遺産です。前回すでに登場していた『探偵の探偵』の紗崎...書評:松岡圭祐著、『高校事変XII』(角川文庫)

  • 書評:スティーブン・スローマン&フィリップ・ファーンバック著、土方 奈美訳、『知ってるつもり 無知の科学』(早川書房)

    知と無知をめぐる思索・考察の歴史は長く、「知っているつもり」の「知識の錯覚」古代ギリシャのソクラテスに端を発しクリティカルシンキングとして現代に受け継がれている思考法などがいい例です。『知ってるつもり無知の科学』は、認知科学を始めとする学際的なアプローチと豊富な事例を用いてこの人類の永遠のテーマに迫ります。ソクラテス(紀元前470~399年)曰く、賢者は全てのものと万人から学び、凡人は自らの経験から学ぶ。そして愚者は何でもよく知っているつもりになる(知ったかぶりをする)。このソクラテスの名言を認知科学的な実験で証明したのがコーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーで、ダニング=クルーガー効果と呼ばれています。曰く、能力の低い人ほど自分の能力を過大評価し、逆に能力の高い人は自分の能力を過小評価...書評:スティーブン・スローマン&フィリップ・ファーンバック著、土方奈美訳、『知ってるつもり無知の科学』(早川書房)

  • 書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。6』(ビーズログ文庫)

    石田リンネ氏のもう1つのシリーズ『十三歳の誕生日、皇后になりました。』の最新刊も『茉莉花官吏伝十二歳歳年年、志同じからず』と同時発売でしたので、茉莉花の後に続けて一気読みし、例によって夜更かし。この巻では時系列が『茉莉花』と同時になっており、バシュルク国から白楼国へ帰国する途中の茉莉花が赤奏国に立ち寄って、皇后・莉杏にアドバイスをするシーンがあります。さて、本筋のお話は、赤奏国皇帝・暁月が冬になって比較的余裕があるので「優先順位の低かった片付けなければならないことを片付けろ」と4人の若手官僚・武官たちに課題を、それと同時に莉杏には「皇后として相談される」という課題を与えます。「相談を受けるだけではなく、その先も考えろ」という指示も付け足して。4人の若手官僚・武官たちにそれぞれ与えられた課題は、先々皇帝の残した負...書評:石田リンネ著、『十三歳の誕生日、皇后になりました。6』(ビーズログ文庫)

  • 書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝 十二 歳歳年年、志同じからず』(ビーズログ文庫)

    『茉莉花官吏伝』の最新刊を発売と同時に購入し、早速一気読みしました。(本当は別の本を読んでいる最中なのですが、とりあえずそれを脇に置いて)「絶対に失敗する任務」として山に囲まれたバシュルク国への潜入捜査に送り込まれた茉莉花は、第一関門であった傭兵学校への入学を果たしただけでなく、とんとん拍子で進級して3年生の幹部候補生となり、野外演習に出かけた際にムラッカ国の襲撃に遭遇してしまい、異国人はおろかバシュルク国民ですら立ち入りが制限されている要塞の内側へ避難することになります。ムラッカ国兵たちが外側の街を火の海にし、内側には避難民たちと共に間諜が入り込んで井戸に毒を入れる可能性を予見した茉莉花は、バシュルク国に窮地を救うため、茉莉花の監視を担っていたアシナリシュ・テュラ軍事顧問官の協力を得て、皇帝の信頼の証として下...書評:石田リンネ著、『茉莉花官吏伝十二歳歳年年、志同じからず』(ビーズログ文庫)

  • 書評:ブレイディみかこ著、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』(新潮文庫)

    ブレイディみかこ氏の著作を読むのはこれで4冊目になります。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』でブライトンのカトリック系の小学校から地元の底辺中学に入ったばかりの息子は、続編の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』では中2になり、授業でのスタートアップ実習、ノンバイナリーの教員たち、音楽部でのポリコレ騒動、ずっと助け合ってきた隣人との別れ、そして母の国での祖父母との旅などの「事件」を通じてその豊かな感受性で傷ついたり、後ろめたさを感じたり、不条理に感じたり、「ライフってそんなものでしょう」などと何か悟ったりして成長して行きます。このエッセイは『波』2019年5月号~2020年3月号に掲載されたものです。本書の魅力は何か。それはただの中学生の成長物語ではないところ。イギリスの下層労働者階級が多...書評:ブレイディみかこ著、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』(新潮文庫)

  • 書評:松岡圭祐著、『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 III クローズド・サークル』(角川文庫)

    売れないラノベ新人作家・杉浦李奈が事件に何らかの形で関わり、それについてノンフィクションを書くために調査して、真相を明らかにするというシリーズ『ecriture新人作家・杉浦李奈の推論』ですが、その第3弾はパターンが変わり、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』風の事件の真っただ中に杉浦李奈が放り込まれ、クローズド・サークルを生き残って真相究明する本格ミステリーです。彗星のごとく現れた人気作家・櫻木沙友里を発掘し、独占し続ける中堅出版社の爽籟社の文芸編集者・榎嶋裕也が後続作家の公募を打ち、李奈と彼女の友人坂・那覇優佳を含む8人が最終選考に残ります。彼女たちは瀬戸内海のリゾートアイランド汐先島に招待されます。オフシーズンのため、高級宿泊施設を含む島ごと三日間貸し切り、祝賀会と今後の説明かいがあるという話...書評:松岡圭祐著、『ecriture新人作家・杉浦李奈の推論IIIクローズド・サークル』(角川文庫)

  • 書評:Marc-Uwe Kling, 『QualityLand 3.0 Kikis Geheimnis クォリティランド 2.0 キキの秘密』 (Ullstein)

    Marc-UweKlingの『QualityLandクォリティランド』の続編である本書『QualityLand2.0KikisGeheimnisクォリティランド2.0キキの秘密』は、基本的には第1巻で謎めいた存在であったKikiUnbekanntの正体に迫るSF風刺コメディです。ナンセンス・ドタバタの色合いが濃い小説ですが、ところどころに辛口の風刺パンチのきいた小説です。メインストーリーに並行して、前回は勝手に送り付けられたピンクのイルカ型バイブレーターの返品で困っていたPeterArbeitsloserが法改正によってようやく彼の本来の職業である機械治療師として働けるようになり、様々な機械が抱える問題に耳を傾けて治療するシーンの描写がナンセンスで爆笑ものです。しかし、彼の平和は長く続かず、キキの命を狙うPup...書評:Marc-UweKling,『QualityLand3.0KikisGeheimnisクォリティランド2.0キキの秘密』(Ullstein)

  • 書評:Marc-Uwe Kling, 『QualityLand クォリティランド』 (Ullstein)

    Marc-UweKlingの『QualityLandクォリティランド』は、現在のアルゴリズムのはびこるデジタル社会を究極まで推し進めた未来社会の中でNutzloser(役立たず)のレッテルを貼られている主人公PeterArbeitsloser(ペーター・ジョブレス)の幸せでない生活とそこから芽生える反発心をコミカルに描くSF風刺小説です。しゃべる自動運転車、家のドア、家電、Ohrwurm(耳の虫・耳鳴り)と呼ばれるアシスタント、注文しなくても届く品物、世界観・考え方に合わせて提示されるニュースや広告等々。そこに描かれる近未来の世界は、まさにデジタル化の進む社会が向かっている方向です。このようなIoTを極めた世界を描き出すことで様々な社会批判が可能だと思いますが、マルク=ウヴェ・クリングはコメディアンとしての才能...書評:Marc-UweKling,『QualityLandクォリティランド』(Ullstein)

  • 書評:ブレイディみかこ著、『女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち』(幻冬舎新書)

    ブレイディみかこの著作を3冊立て続けによみましたが、この『女たちのポリティクス台頭する世界の女性政治家たち』では指導者を題材としているため、彼女のお得意の「地べた」視点ではなく、「上から」のアングルで書かれています。とはいえ、いわゆる「上から目線」といったネガティブな意味ではありません。目次はじめにEU離脱とメイ首相~おしゃれ番長はパンチバッグメルケル時代の終焉~EUの「賢母」か「毒親」か「ナショナリズム」アレルギーのとばっちりを受けて~スコットランドのスタージョン首相アレクサンドリア・オカシオ=コルテス~どえらい女性議員がやってきたヤア!ヤア!ヤア!極右を率いる女たち~新たなマリーヌ・ル・ペンが続々と現れている理由「インスタ映え政治」の申し子~ニュージーランドのアーダーン首相「サイバー暴行」と女性政治家たち~...書評:ブレイディみかこ著、『女たちのポリティクス台頭する世界の女性政治家たち』(幻冬舎新書)

  • 書評:ブレイディみかこ著、『ブロークン・ブリテンに聞け Listen to Broken Britain』(講談社)

    『ブロークン・ブリテンに聞けListentoBrokenBritain』は「群像」2018年3月号~2020年9月号に掲載された時事エッセイ連載記事を書籍化したものです。さらに同誌2017年11月号に掲載された「エモジがエモくなさすぎて」も収録されています。ブレグジットの交渉の停滞期~コロナパンデミック発生後まで著者曰く「地べた」からの視点でイギリス社会を描写しています。緊縮財政で一番あおりを食っている底辺の労働者階級と一般的な格差拡大、生理用品が買えないために生理の時には学校を休む児童の話、左派・右派のスキームが当てはまらない離脱派と残留派の対立などなど、ニュース報道だけでは見えてこない英国社会の複雑でブロークンな内情がかなり軽やかな口調・文体で暴露されている。この著者の好ましい点は、やはりローアングル、「地...書評:ブレイディみかこ著、『ブロークン・ブリテンに聞けListentoBrokenBritain』(講談社)

  • 書評:ブレイディみかこ著、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)

    ブレイディみかこ氏の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとプルー』という本はアイルランド人の夫と息子さん一人と共にイギリスのブライトンの(元)公営住宅地に住む著者が、人種も貧富の差もごちゃまぜの近所の元底辺中学校に通い始めた息子と共に日常的に出会うイギリス社会の歪み、底辺の苦悩と逞しさについて考えていく様子をこのエッセイにまとめたものです。この本も様々な賞を受賞しているので、すでにご存じの方もいらっしゃるかとは思いますが、日常的な差別を考えて対処していく上でとても示唆に富んだエッセイです。私が本書に好感を持ったポイントは、差別とそれに基づく時にフィジカルな攻撃を扱ってはいても、差別する側を特別な悪人のように非難するといった正義を振りかざして「差別者」を人として貶める攻撃的な(あるいは報復的な)姿勢がないところで...書評:ブレイディみかこ著、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)

  • 書評:今野敏著、『奏者水滸伝 全7巻合本版』(講談社)

    『奏者水滸伝全7巻合本版』は『阿羅漢集結』『小さな逃亡者』『古丹、山へ行く』『白の暗殺教団』『四人、海を渡る』『追跡者の標的』『北の最終決戦』の7作品をひとまとめにした電子書籍です。さすがに一日一晩で読破することは無理ですが、4日間で読み終えました。第1巻である『阿羅漢集結』は聖者と呼ばれた偉大なジャズマンがニューヨークで予言を残して死ぬところから始まり、「何かが動く」予感をさらに盛り上げるように木喰を名乗る謎の旅の僧侶が「羅漢」と思われるジャズ奏者を北海道・京都・沖縄で3人見つけ出して東京に集結させ、そこにふらふらと惹かれるようにもう1人東京出身の伝説化していたアルトサックス奏者が登場し、4人集結してジャズバンドを結成するところまでの物語です。北海道の野生児ピアニスト古丹神人、沖縄の天才的武闘家にしてドラマー...書評:今野敏著、『奏者水滸伝全7巻合本版』(講談社)

  • 書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語 第十三幕』(富士見L文庫)

    久々に日本語のラノベを読んで、ようやく頭に休暇を与えられた気がします。しかし、この『紅霞後宮物語第十三幕』は第十二幕の発売から1年以上経過しているので、話がどこで終わっていたのか思い出すのに一苦労しました。主人公・関小玉が皇后から陰謀により後宮の最下層・冷宮に落とされ、恩赦で位の低い妃として後宮に復帰したところまでが前回の話で、今回は陰謀の張本人の遺児である帝姫の養育に勤しむ小玉の日常が描かれています。療養中だった紅霞宮の女官たちも小玉と一緒に冷宮に入れられていた清喜や綵も戻ってきて、帝姫とその乳母たちの子どもたち3人の赤ちゃんで大賑わいしている中、皇帝・文林と皇太子・鴻との穏やかな家族の時間が持てて。。。とかなり地味な展開です。文林と小玉は相変わらずかみ合ってない夫婦ですが、それなりに深い情で結ばれている関係...書評:雪村花菜著、『紅霞後宮物語第十三幕』(富士見L文庫)

  • 書評:Manja Präkels著、Als ich mit Hitler Schnapskirschen aß(私がヒトラーとシュナップス用チェリーを食べた時)

    マンヤ・プレーケルスの「AlsichmitHitlerSchnapskirschenaß(私がヒトラーとシュナップス用チェリーを食べた時)」は2017年にVerbrecherVerlagから出版され、2018年度Jugendliteraturpreis青少年文学賞やAnna-Seghers-Preisアンナ・セーガース賞、KranichsteinerJugendliteraturpreisクラーニヒシュタイナー青少年文学賞受賞作品です。物語はドイツ民主主義共和国だった1980年代にブランデンブルク州のHavelstadtハーヴェルシュタットで子ども時代を過ごしたMimiSchulzミミ・シュルツによって語られます。「民主主義共和国」とは名ばかりの一党独裁国家だった東ドイツ。ブランデンブルクの田舎町で育った少女の...書評:ManjaPräkels著、AlsichmitHitlerSchnapskirschenaß(私がヒトラーとシュナップス用チェリーを食べた時)

  • 書評:Ferdinand von Schirach著、『Strafe(刑罰)』(Random House ebook)

    フェルディナント・フォン・シーラッハの「Strafe(刑罰)」は邦訳もされているのですでにご存じの方も多いでしょう。Inhalt目次DieSchöffin参審員DiefalscheSeite反対側EinhellblauerTag快晴のある日LydiaリュディアNachbarn隣人DerkleineMann小男DerTaucherダイバーStinkefisch臭い魚DasSeehaus湖畔邸Subotnikスボートニク(無償奉仕活動)TennisテニスDerFreund友人全編を貫くモチーフは「孤独」と言えます。著者が刑事弁護人(Strafverteidiger)であるため、どの話も何らかの形で刑事犯罪が関わっているのですが、特に適切に罰せられないまま埋もれてしまう犯罪が本書ではメインになっています。しかし、それ...書評:FerdinandvonSchirach著、『Strafe(刑罰)』(RandomHouseebook)

  • 書評: 古賀 史健著、『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』(ダイヤモンド社)

    「この一冊だけでいい。」100年後にも残る、「文章本の決定版」を作りました。(担当編集者:柿内芳文)という煽りはいささか大げさかなと思いますが、『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』は文章、特に読者を楽しませる「コンテンツ」を作る際の基本姿勢について、取材から執筆、そして推敲に至るまでのプロセスを通して語ります。取材・推敲・執筆の3部構成、全9章。序論のライターの定義の部分を入れれば全10章になる本書はなかなかの大作です。目次──取材(第1部)──第1章すべては「読む」からはじまる・一冊の本を読むように「世界」を読む・なぜ、あなたの文章はつまらないのか・情報をキャッチせず「ジャッジ」せよ……等第2章なにを訊き、どう聴くのか・なぜ取材はむずかしいのか・取材を「面接」にしてはいけない・質問力を鍛える「つなぎことば」...書評:古賀史健著、『取材・執筆・推敲――書く人の教科書』(ダイヤモンド社)

  • 書評:ジャレド・ダイアモンド著、『銃・病原菌・鉄』

    本書は著者の友人であるニューギニア人のヤリの「あなたがた白人は、たくさんのものを発達させてニューギニアに持ち込んだが、私たちニューギニア人には自分たちのものと言えるものがほとんどない。それはなぜだろうか」という疑問に答えるために行った20年以上の調査研究の集大成です。この問いかけは更新世以降の人類史と現代の人類社会の核心をついており、それに応えようとする試みは、過去において(もちろん現在でも往々にして)人種差別的な結論になりがちでした。著者、ジャレド・ダイアモンドは、全て環境要因として説明します。まず第一に、栽培化や家畜化の候補となり得る動植物種の分布状況が大陸によって異なっていたことが挙げられます。比較的簡単に栽培化が可能だった野生祖先種のほとんどが肥沃三日月地帯と呼ばれるチグリス・ユーフラテス川流域に集中し...書評:ジャレド・ダイアモンド著、『銃・病原菌・鉄』

  • 書評:海堂尊著、『氷獄』(角川文庫)

    立て続けに海堂尊作品を読みましたが、この『氷獄』でとりあえず一段落となりそうです。『氷獄』は桜宮サーガの短編集で、「双生」「星宿」「黎明」の短編3編と「氷獄」の中編1編が収録されています。「双生」の時間軸は1994年春、東城大学医学部付属病院に碧翠院桜宮病院院長の双子の娘・すみれと小百合が半年間研修に来ることになり、愚痴外来もとい不定愁訴外来の田口医師が二人の面倒を見るという面倒を押し付けられるという話です。『螺鈿迷宮』~『輝天炎上』に連なる桜宮サーガのエピソードの1つで、ミステリーの要素は全くありません。その間に来診に来ている老夫婦(痴呆症初期の妻とパーキンソン病の夫)をめぐる治療法・対処法がテーマです。「星宿」の時間軸は2007年冬、東城大学医学部付属病院の別棟、オレンジ新棟が舞台です。『ナイチンゲールの沈...書評:海堂尊著、『氷獄』(角川文庫)

  • 書評:海堂尊著、『玉村警部補の災難』(宝島社文庫)

    『玉村警部補の巡礼』を読んで、そういえば前作の『玉村警部補の災難』の内容をほとんど覚えておらず、ブログに書評も書いていなかったので読み直してみました。以前これを読んだのはブログを始める前だったのでしょうね。この作品は玉村警部補が警察庁のデジタル・ハウンドドッグという異名を持つ加納警視正の桜宮市での活躍報告書を念のため東条大学の不定愁訴外来の田口公平先生に確認してもらうという形式で4つの事件簿が提示されます。目次0不定愁訴外来の来訪者1東京都二十三区内外殺人事件2青空迷宮3四兆七千億分の一の憂鬱4エナメルの証言各章の間に「不定愁訴外来の世迷い言」と題された玉村警部補と田口医師の事件に関するやり取りが差し挿まれます。1つ目の「東京都二十三区内外殺人事件」では田口医師が東京に出張した際に「火喰い鳥」の異名を持つ厚生労...書評:海堂尊著、『玉村警部補の災難』(宝島社文庫)

  • 書評:海堂尊著、『玉村警部補の巡礼』(宝島社文庫)

    『玉村警部補の災難』の続編である本作品は四国遍路事件ロードマップのような作品です。前作で警察庁の「デジタル・ハウンドドッグ」の異名を持つ加納警視正が玉村警部補になにかと「遍路送りにするぞ」と脅していたので、それに対抗すべく玉村警部補が「知れば怖くない」と遍路を発心し、有給休暇を利用して四国へ旅立つことに始まります。その遍路の旅に加納警視正がなぜか仕事にかこつけて毎回同行し、行く先々で大小の事件を解決していきます。ちょうど遍路開創1200年の記念の年(2014)で、加納の遍路の目的がこの特別記念スタンプを集めるラリーに成り代わってしまうのはご愛敬です。目次阿波発心のアリバイ土佐修行のハーフ・ムーン伊予菩提のドラキュラ讃岐涅槃のアクアリウム高野結願は遠く果てしなく全編を通して加納警視正が追っている事件は前作「エナメ...書評:海堂尊著、『玉村警部補の巡礼』(宝島社文庫)

  • 書評:石田リンネ著、『女王オフィーリアよ、己の死の謎を解け』(富士見L文庫)

    昨年11月に発売された『女王オフィーリアよ、己の死の謎を解け』を見逃していたのですが、先週末に偶然発見して即購入して一気読みしました。ライトノベルなので2時間ぐらいで読み終わってしまいましたが、これは面白いですね。粗筋はタイトルからお分かりのように、オフィーリア女王が殺され、死の間際、薄れゆく意識の中で「私は、私を殺した犯人を知りたい」と強く願ったため、王冠の持ち主にだけ与えられる“古の約束”により、妖精王リアによって10日間だけ生き返り、その間に犯人探しをするというファンタジー推理小説です。生前は夫の影に隠れて政治にはほとんど関与せず、控えめな態度に徹していたのですが、生き返った後は怒りに駆られているのと、「どうせ10日間の命」という開き直りで、打って変わった活発な女性に変身。この彼女のこれまで抑圧されてきた...書評:石田リンネ著、『女王オフィーリアよ、己の死の謎を解け』(富士見L文庫)

  • 書評:マルクス・ガブリエル著、(未邦訳)『Moralischer Fortschritt in dunklen Zeiten 暗い時代での道徳的進歩』

    前回マルクス・ガブリエルの著書(大野和基訳)『世界史の針が巻き戻るとき』をご紹介してから4カ月余りも経ってしまいました。それというのも次に手に取ったのが『MoralischerFortschrittindunklenZeiten暗い時代での道徳的進歩』(2020年8月)で、ドイツ語だったからです。途中で内容的な飽きもあってしばらく放置し、全然違う本を何冊も読んでいたのですが、新年になって心機一転とばかり再度取り組んでついに完読しました。まずは目次を大きな章立て(4章)だけではなくその下の小題も含めてざっとご覧になってみてください。目次EinleitungはじめにErstesKapitelWasWertesindundwarumsieuniversalsind第一章価値とは何か、またなぜそれらは普遍的なのかThe...書評:マルクス・ガブリエル著、(未邦訳)『MoralischerFortschrittindunklenZeiten暗い時代での道徳的進歩』

  • 書評:江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集 新版』2(創元推理文庫)

    江戸川乱歩編の世界推理短編傑作集の新版全5巻を買ったのは発売されてさほど経っていない2019年のことだったと思いますが、2020年1月~3月にかけて1巻を読んで以降、2~5巻は積読本化していたのですが、年末年始で仕事の隙間ができたので2巻をようやく手に取ってみました。収録作品は次の9編:ロバート・バー『放心家組合』バルドゥイン・グロラー『奇妙な跡』G.K.チェスタトン『奇妙な足音』モーリス・ルブラン『赤い絹の肩かけ』オースチン・フリーマン『オスカー・ブロズキー事件』V.L.ホワイトチャーチ『ギルバート・マレル卿の絵』アーネスト・ブラマ『ブルックベンド荘の悲劇』M.D.ポースト『ズームドルフ事件』F.W.クロフツ『急行列車内の謎』1.『放心家組合(TheAbsent-MindedCoterie)』(1905)Ro...書評:江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集新版』2(創元推理文庫)

  • 書評:今野敏著、横浜みなとみらい署暴対係シリーズ『防波堤』(徳間文庫)

    横浜みなとみらい署暴対係シリーズの『逆風の街』、『禁断』、『臥龍』を買った当時は電子書籍化してなかったので遅れて読む羽目になった『防波堤』はシリーズ第3弾。表題作の他、「噛ませ犬」「占有屋」「ヒットマン」「監察」「鉄砲玉」の6つのエピソードから成ります。この巻では昔ながらの任侠としてかなりの力を持つ「神野のとっつあん」と呼ばれる神風会組長・神野義治とその唯一の組員である岩倉真吾がかなり活躍しています。横浜をよそのやくざ者から守ろうと任侠なりのやり方で動いているものの、敵の狡猾さに嵌められて岩倉が逮捕されてしまったり、最後の「鉄砲玉」ではみなとみらい署暴対係係長の諸橋を狙う者から神野が1人でいるときに襲撃されてしまったり。「監察」では諸橋を以前から敵視しているらしい笹川監察官が例によって例の如く諸橋の捜査のやり方...書評:今野敏著、横浜みなとみらい署暴対係シリーズ『防波堤』(徳間文庫)

  • 書評:松岡圭祐著、『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 II』(角川文庫)

    『ecriture新人作家・杉浦李奈の推論II』は何と今年9冊目の新刊なのだそうで、著者の旺盛な多作ぶりには何やらミラクルめいたものがあります。『小説家になって億を稼ごう』(新潮新書)で紹介されていた小説の書き方をご本人も実践されているらしいので、頭の中で常にいくつもの物語が進行していて、「熟成」した物語から一気に書き下ろしていく感じなのだろうと想像しています。商品説明推理作家協会の懇親会に参加したラノベ作家・杉浦李奈は、会場で売れっ子の汰柱桃蔵と知り合う。後日、打ち合わせでKADOKAWAを訪れた李奈は、その汰柱が行方不明になっていることを知る。手掛かりとなるのは、1週間後に発売されるという汰柱の書いた単行本。その内容は、実際に起こった女児失踪事件の当事者しか知り得ないものだった。偶然の一致か、それとも・・・...書評:松岡圭祐著、『ecriture新人作家・杉浦李奈の推論II』(角川文庫)

  • 書評:松岡圭祐著、『出身成分』(角川文庫)

    商品説明脱北者の証言に基づく――貴方が北朝鮮に生まれていたら、この物語は貴方の人生であるこの国に生を受けただけなのに、希望はどこにある――平壌郊外の保安署員クム・アンサノは11年前の殺人・強姦事件の再捜査を命じられた。犯人として収容されている男と面会し記録を検証するが、捜査の杜撰さと国家の横暴さを再認識するだけだった。実はアンサノの父は元医師。最上位階級である「核心階層」に属していたが、大物政治家の暗殺容疑をかけられ物証も自白もないまま収容されている。再捜査と父への思いが重なり、アンサノは自国の姿勢に疑問を抱き始める。そしてついに、真犯人につながる謎の男の存在にたどりつくが……。鉄壁な国家が作り出す恐怖と個人の尊厳を緻密に描き出す、衝撃の社会派ミステリ長編。北朝鮮を舞台にするミステリーはそれ自体とても珍しいもの...書評:松岡圭祐著、『出身成分』(角川文庫)

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