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  • なぜ、初期宇宙に超大質量ブラックホールが既に存在しているのか? ダークマターの崩壊による水素分子の分解が原因かも

    ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の登場により、宇宙の歴史の初期段階において超大質量ブラックホールが存在することが明らかになりました。通常、ブラックホールの形成には、巨大な恒星が燃え尽き、その核が崩壊するまでに数十億年かかります。そのブラックホールも、物質の降着やブラックホール同士の合体、銀河同士の合体によって時間をかけて超大質量ブラックホールに成長していきます。それでは、なぜ初期の宇宙に超大質量ブラックホールが存在しているのでしょうか?ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による発見は、従来の形成理論では説明がつかないことだったんですねーそこで今回の研究で調べたのは、ダークマターがこの謎を解くカギを握っている可能性でした。ダークマターが水素の冷却を遅らせることで、巨大なガス雲の形成を促進したと考えた訳です。通常、水素は...なぜ、初期宇宙に超大質量ブラックホールが既に存在しているのか?ダークマターの崩壊による水素分子の分解が原因かも

  • 太陽系外縁部を航行する探査機“ニューホライズンズ”が宇宙の深淵を照らし出す微かな光“宇宙背景放射”を直接観測

    宇宙は、無数の銀河や星々が輝きを放つ広大な空間ですが、目に見える光を超えた“暗黒”が広がっています。この暗闇の深淵を照らし出す微かな光、それが宇宙背景放射(COB)です。宇宙背景放射は、宇宙の歴史を通じて生成されたあらゆる光が積み重なり、拡散して観測されるもの。その起源を解明することは、宇宙の進化と構造を理解する上で極めて重要となります。長年、天文学者たちは宇宙背景放射の強さを正確に測定し、その起源を特定しようと試みてきました。でも、地球や太陽系内では、太陽光や惑星間チリによる散乱光の影響が大きく、宇宙背景放射の観測は困難を極めていました。こうした中、新たな希望の光として登場したのがNASAの探査機“ニューホライズンズ”でした。2006年に打ち上げられた“ニューホライズンズ”は、2015年に冥王星系をフラ...太陽系外縁部を航行する探査機“ニューホライズンズ”が宇宙の深淵を照らし出す微かな光“宇宙背景放射”を直接観測

  • 周期的に恒星から物質を剥ぎ取っている? 銀河中心の超大質量ブラックホールの食事風景を解明へ

    今回の研究では、超大質量ブラックホールが“いつ”・“どのようにして”、物質を獲得し消費するのかを調べています。用いられたのは、NASAのX線天文衛星“チャンドラ”、ガンマ線バースト観測衛星“ニール・ゲーレルス・スウィフト(旧称スウィフト)”、ヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星“XMMニュートン”のデータでした。研究の対象となったのは、このようなブラックホールの活動が確認されている“AT2018fyk”。“AT2018fyk”は、地球から約8億6000万光年彼方の銀河の中心に位置する超大質量ブラックホールで、質量は太陽の約5000万倍もあります。最新のX線観測データから分かっているのは、“AT2018fyk”が伴星を奪われた恒星を約3.5年ごとに繰り返し部分的に破壊していること。この恒星は楕円軌道を描いて周回...周期的に恒星から物質を剥ぎ取っている?銀河中心の超大質量ブラックホールの食事風景を解明へ

  • 褐色矮星砂漠における最も離心率の高い褐色矮星を発見! TOI-2490 b”は恒星と同様のメカニズムで形成されたのかも

    今回の研究では、“TOI-2490b”と名付けられた新しい褐色矮星を発見しています。この褐色矮星の質量は木星の73.6倍ほど、太陽に似た恒星の周りを非常に偏心した軌道を描いて回っています。褐色矮星は巨大ガス惑星と恒星の中間に位置する天体で、その質量は木星の13倍から80倍の間になります。今回の発見のきっかけとなったのは、約872.5光年離れたG型主系列性“TOI-2490”の光度曲線に、トランジット惑星探査衛星“TESS”が検出したトランジットの兆候でした。その後の測光観測と視線速度の測定により、この信号が褐色矮星によるものだと確認されています。この発見は非常に重要なものと言えます。それは、褐色矮星が恒星と惑星の中間の質量(木星の13倍から80倍の間)を持つ天体で、その形成過程は完全には解明されていないか...褐色矮星砂漠における最も離心率の高い褐色矮星を発見!TOI-2490b”は恒星と同様のメカニズムで形成されたのかも

  • どの銀河も物質の密度は中心から外縁に向かって一定の割合で減少している? ダークマターと星の相互作用に関する新たな知見

    これまで、天文学者たちの頭を悩ませてきたことがあります。それは、銀河内の物質の密度が中心から外縁に向かって一定の割合で減少していること。このことは、銀河によって年齢や形状、大きさ、星の数が様々なことを考えると、不可能に思える現象でした。この謎を解くため、今回の研究では星とダークマターが互いに影響し合い、規則的な質量構造を作り出しているという説を立てています。でも、この説を裏付けるメカニズムは、これまで発見されていませんでした。そこで研究チームは、チリの超大型望遠鏡“VLT”を用いて22個の銀河を詳細に観測。銀河の質量構造におけるダークマターと星の分布の関連性を調査しています。その結果、質量密度の類似性は銀河自体ではなく、天文学者が銀河を測定しモデル化する方法に起因することが分かってきます。銀河全体の質量密...どの銀河も物質の密度は中心から外縁に向かって一定の割合で減少している?ダークマターと星の相互作用に関する新たな知見

  • ハッブルテンションは存在しない!? ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いたハッブル定数の測定から分かったこと

    今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の観測データを用いて、宇宙の膨張率を示す“ハッブル定数”を新たに測定しています。研究チームは、セファイド変光星、赤色巨星分枝の先端、炭素星という3種類の天体を用いて、10個の近傍銀河までの距離を測定。いずれも、これまでで最も正確とされる宇宙の膨張率の値、メガパーセクあたり秒速70キロメートル(70km/s/Mpc)と算出されました。この値は、宇宙マイクロ波背景放射の観測に基づくハッブル定数の推定値と誤差範囲内で一致。観測方法によってその値が異なるという大きな問題“ハッブルテンション(Hubbletension)”と呼ばれる矛盾は、存在しない可能性を示唆していました。今回の研究結果は、宇宙の進化に関する標準的な宇宙論モデルが正しい可能性を支持するもの。宇宙の年齢や...ハッブルテンションは存在しない!?ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いたハッブル定数の測定から分かったこと

  • 見つかった水和鉱物は小惑星内部に由来する? “プシケ”は本当に衝突によって外層を失った原始惑星の金属コアなのか

    今回の研究では、NASAのジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の観測データを用いて、金属を多く含む小惑星“プシケ”の表面に水酸基分子を発見しています。この発見は、水を多く含む炭素質コンドライトとの衝突によって、“プシケ”に水和鉱物がもたらされた可能性を示唆していました。“プシケ”は、火星と木星の間の軌道を公転する小惑星帯の中で最も大きな天体の一つで、かつては原始惑星であった可能性が科学者により指摘されていました。もし、発見された水和鉱物が“プシケ”内部に由来する場合、この小惑星はこれまで考えられてきたような原始惑星の核の名残りでないことになります。このため、“プシケ”の表面に水が存在することは、この小惑星の形成過程や太陽系の歴史について、これまでのモデルとは異なる複雑な進化の歴史を物語っている可能性があります。こ...見つかった水和鉱物は小惑星内部に由来する?“プシケ”は本当に衝突によって外層を失った原始惑星の金属コアなのか

  • 低温な恒星で発生するフレアほど遠紫外線放射が強くなる!? 赤色矮星が惑星に与える影響から生命が居住可能なのかを考えてみる

    今回の研究では、赤色矮星のフレアが、これまで考えられていたよりもはるかに強いレベルの遠紫外線放射を伴う恒星フレアを生成する可能性があることを発見しています。この発見が示唆しているのは、これらフレアからの強い紫外線が周辺の惑星の居住可能性に大きな影響を与える可能性があることでした。フレアからの遠紫外線放射は、一般的に想定されているよりも平均で3倍強力で、想定されるエネルギーレベルの最大12倍に達する可能性があることが示されました。この強力な遠紫外線放射の正確な原因は、まだ明らかになっていません。研究チームが考えているのは、フレアの放射線が特定の波長に集中していることが原因となること。このことは、炭素や窒素などの原子の存在を示唆していると考えています。この研究は、ケンブリッジ大学のVeraL.Bergerさん...低温な恒星で発生するフレアほど遠紫外線放射が強くなる!?赤色矮星が惑星に与える影響から生命が居住可能なのかを考えてみる

  • 小さなブラックホールの連星を利用して、これまで検出できなかった巨大なブラックホールの連星を見つける方法

    近年の重力波天文学の急速な進歩は、宇宙に対する私たちの理解に革命をもたらし、特に恒星質量ブラックホール連星の合体から生じる重力波の検出を可能としました。でも、銀河の中心に潜む超大質量ブラックホール連星の検出は、依然として大きな課題となっています。今回の研究では、近傍の小さな(恒星質量)ブラックホールの連星から放出される重力波を分析することで、銀河の中心に位置する大きな(超大質量)ブラックホールの連星を検出する新しい方法を提案しています。銀河の中心に位置する超大質量ブラックホールの起源は、天文学における最大の謎の一つと言えます。それらは、常に大質量であった可能性があり、宇宙がまだ非常に若い時に形成された可能性があります。あるいは、物質の降着や他のブラックホールとの合体により、時間の経過とともに成長した可能性...小さなブラックホールの連星を利用して、これまで検出できなかった巨大なブラックホールの連星を見つける方法

  • 原始ブラックホールが真空崩壊を引き起こし宇宙は崩壊する!? 考えられているほど安定的でないヒッグス場のエネルギー状態

    ヒッグス場は宇宙に遍在するエネルギー場で、他の素粒子に質量を与えています。今回の研究では、このヒッグス場に対し原始ブラックホールが真空崩壊を引き起こす要因となったのかを調べています。そこから分かってきたのは、ヒッグス場は不安定な状態にあり、ある日突然、より低いエネルギー状態に遷移する可能性があること。この相転移が起こると、物理法則が劇的に変化し宇宙は崩壊してしまうかもしれません。初期宇宙に存在したと考えられている軽い原始ブラックホールは、その高温のためヒッグス場の相転移を引き起こす可能性があることでした。でも、私たち人類が存在しているということは、このようなブラックホールは存在しなかったか、あるいはヒッグス場が相転移から保護される未知のメカニズムが存在する可能性があるということです。宇宙は、その誕生から今...原始ブラックホールが真空崩壊を引き起こし宇宙は崩壊する!?考えられているほど安定的でないヒッグス場のエネルギー状態

  • 磁石星は白色矮星同士の合体から形成される? 驚異的な速さで回転している非常に若いマグネターから分かったこと

    宇宙には太陽の約2倍の質量を都市ほどの大きさに凝縮させた超高密度星“中性子星”が存在しています。その中でも、特に強力な磁場を持ち、パルサーのように高速で回転しながら周期的な電磁パルスを放射している天体を“マグネター(磁石星:magnetar)”と呼びます。マグネターは、その極限的な物理状態から、天文学の分野において近年大きな注目を集めています。マグネターは、その誕生の過程や進化、なぜこれほどまでに強力な磁場を持つに至ったのかなど、多くの謎に包まれた天体です。天文学者たちは、これらの謎を解き明かすために、様々な観測や理論研究を進めています。その重要な手掛かりの一つとなるのが、マグネターの正確な位置や速度、その誕生からの時間スケールです。今回の研究では、超長基線電波干渉計“VLBA”を用いた3年間の観測により...磁石星は白色矮星同士の合体から形成される?驚異的な速さで回転している非常に若いマグネターから分かったこと

  • 中性子星同士の合体で生まれた残骸には何が起こるのか? 重力波、ニュートリノによる冷却や重力崩壊によるブラックホールへの進化

    中性子星同士の合体は、計り知れないほどのエネルギーが放出され、時空にさざ波をたてる非常に激しい宇宙のイベントと言えます。これらの衝突の結果から生じる残骸は、天体物理学者にとって大きな関心の的であり、その進化と最終的な運命は極限状態における物質の性質を理解する上で重要な意味を持ちます。今回の研究では、ペンシルベニア州立大学のスーパーコンピュータを用いてシミュレーションを実施。これを通じて、中性子星合体の残骸がどのように冷却され、場合によってはブラックホールへと崩壊していくのかを調べています。その結果、合体残骸の中心部は表面よりも温度が高く、対流が発生しない可能性が示唆されました。この発見は、中性子星合体やブラックホール形成に関する謎を解き明かす上で、重要な手掛かりとなるようです。この研究は、ペンシルベニア州...中性子星同士の合体で生まれた残骸には何が起こるのか?重力波、ニュートリノによる冷却や重力崩壊によるブラックホールへの進化

  • なぜ、進化の進んだ赤色巨星なのに異常に高いリチウム存在量を示すのか? 星の進化過程における未知のメカニズムの解明へ

    近年の天文学において、星の進化と元素合成に関する私たちの理解に挑戦する、“2MASSJ05241392-0336543”と呼ばれる並外れた星が発見されました。この星は、これまで知られているどの星よりもリチウムの含有量が極めて高く、その起源や進化について多くの謎を秘めています。今回の研究では、“2MASSJ05241392-0336543”の特異な組成、その進化の状態、および考えられるリチウム濃縮のメカニズムについて調査を実施。現在、この星はレッドクランプ星ではなく、レッドジャイアントブランチ上または初期漸近巨星分枝星ブランチ上にある可能性が高いと結論付けています。研究チームは、“2MASSJ05241392-0336543”で観測された極端なリチウムの存在量は、星の内部におけるリチウムの生成、または外部か...なぜ、進化の進んだ赤色巨星なのに異常に高いリチウム存在量を示すのか?星の進化過程における未知のメカニズムの解明へ

  • 超巨星を7つも含む星団“バルバ2”を発見! 比較的最近に星形成活動が活発な領域で生まれた若い星団のようです

    2024年のこと、天文学の世界に新たに興奮をもたらす発見が報告されました。それは、天の川銀河の中、地球から約24,100光年彼方の位置に、複数の超巨星を含む新しい星団“バルバ2”が発見されたからです。この星団は、南米チリの天文学者ロドルフォ・バルバさんによって10年前に初めて特定されていたもの。2021年に彼がなくなったため、その研究結果はこれまで発表されていませんでした。これまで、チリによる減光のため見過ごされてきた“バルバ2”は超巨星が豊富な星団。少なくとも7つの超巨星を含んでいるんですねーこの星団の発見は、星々がどのように生まれ、進化していくのか、そして銀河全体の進化における星団の役割について、新たな知見をもたらす可能性を秘めているようです。この研究は、スペインのアストロバイオロジーセンターのヘスー...超巨星を7つも含む星団“バルバ2”を発見!比較的最近に星形成活動が活発な領域で生まれた若い星団のようです

  • ビッグバンから数百万年後に形成された若い星からの放射を発見! 一部の銀河は初期宇宙において非常に急速に成長していた

    ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡は、宇宙の夜明けに存在する古い銀河の並外れた姿を明らかにし、初期宇宙の理解に革命をもたらしました。これらの銀河の中でも、輝かしい光度と驚くべき大きさを持つ“JADES-GS-z14-0”は、宇宙の進化の初期段階における銀河形成に関する私たちの理解に挑戦しています。今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測から、これまでに特定された最も初期(遠方)の銀河の一つから放出されている光が、星形成からの継続的なバーストによるものであることを発見しています。研究チームは赤方偏移の測定を行うことで、この光が銀河の中心に位置する超大質量ブラックホールによるものではなく、ビッグバンから数百万年後に形成された若い星からの放射であることを確認。これまでのモデルでは、初期宇宙の銀河は小さく...ビッグバンから数百万年後に形成された若い星からの放射を発見!一部の銀河は初期宇宙において非常に急速に成長していた

  • 天の川銀河の薄い円盤に金属含有量に大きなバラつきのある古代の星を発見! ガイアデータが明らかにした銀河進化の新たなタイムライン

    今回の研究では、位置天文衛星“ガイア”によるミッションから得られた膨大なデータと、最新の機械学習技術の組み合わせにより、個々の星の年齢や金属含有量を、これまで以上に正確に推定。その結果、私たちの太陽系が属する薄い円盤の軌道上に、これまで考えられていたよりも、はるかに多くの古代の星が存在することを明らかにしています。これらの発見が示唆しているのは、天の川銀河の薄い円盤がビッグバンからわずか10億年以内の非常に早い時期に形成が始まったこと。これは、これまで考えられていたよりも約40億年から50億年も早い時期でした。さらに興味深いことに、これらの古代の星は金属含有量に大きなバラつきが見られたこと。太陽の2倍もの金属量を持つ星も見つかっていることから、天の川銀河の進化のごく初期には星々の誕生と進化が急激に進行し、...天の川銀河の薄い円盤に金属含有量に大きなバラつきのある古代の星を発見!ガイアデータが明らかにした銀河進化の新たなタイムライン

  • 破壊された系外惑星の内部物質の降着で白色矮星は汚染されている!? AIによる系外惑星の多様性や進化の歴史の解明

    今回の研究では、天の川銀河内で何百もの“汚染された”白色矮星を発見しています。これら発見された白色矮星が汚染されたのは、周囲を公転している惑星を積極的に取り込んだ結果でした。このことから汚染された白色矮星を研究することは、遠方に位置する太陽系外惑星の組成を研究するための貴重なリソースと言えます。さらに、このことは太陽系外惑星の多様性や進化の歴史を解き明かすのにも役立つはずです。ただ、問題となったのは、汚染された白色矮星を発見することが容易ではないことでした。それは、その兆候が微弱で検出が困難な上、白色矮星が惑星を飲み込んでから時間が経つと、重元素は白色矮星の内部に沈んでしまうからです。このため、観測可能な期間は限られてしまいます。そこで、本研究では、多様体学習と呼ばれるAI技術を用いた新し探査方法を開発。...破壊された系外惑星の内部物質の降着で白色矮星は汚染されている!?AIによる系外惑星の多様性や進化の歴史の解明

  • 極めて高速で移動する天体“超高速星”を市民科学者が発見! 太陽系からわずか400光年先に天の川銀河に重力的に束縛されていない天体

    宇宙空間において、天体は常に移動しています。私たちの太陽系も例外ではなく、天の川銀河の中心を軸に公転しています。でも、中にはその常識を覆すような、極めて高速で移動する天体も存在しているんですねーその代表例が“超高速星”で、その速度は天の川銀河の重力圏からさえも脱出できてしまうほどです。最近、市民科学者と天文学者の協力により、超高速星の候補となる興味深い天体が発見されました。その天体“CWISEJ124909.08+362116.0”と名付けられていて、その正体は低質量の星か褐色矮星だと考えられています。特筆すべきは、“CWISEJ124909.08+362116.0”が太陽系からわずか約400光年という近距離に位置していること。今回の研究では、“CWISEJ124909.08+362116.0”の観測結果...極めて高速で移動する天体“超高速星”を市民科学者が発見!太陽系からわずか400光年先に天の川銀河に重力的に束縛されていない天体

  • 銀河団同士の衝突ではダークマターが通常の物質よりも先に飛び出している! 衝突の際に受ける衝撃や乱流が影響しているようです

    今回の研究では、地球から数十億光年離れた場所にある、それぞれ数千の銀河を含む銀河団同士の衝突を解き明かしています。分かってきたのは、2つの巨大な銀河団の衝突により、そこに含まれる膨大な量のダークマターの雲が、通常の物質から切り離される様子でした。ダークマターは、光などの電磁波では観測することができず、重力を介してのみ間接的に存在を知ることができる物質。目に見える物質と重力的な相互作用をしますが、光では相互作用しないんですねー衝突の様子からは、ダークマターが通常の物質より先に飛び出していたことが分かっています。本観測は、ダークマターと通所の物質の速度のデカップリングを直接調べた初めてのものになります。この研究は、カリフォルニア工科大学の物理学研究教授EmilyM.Silichさんを中心とする研究チームが進め...銀河団同士の衝突ではダークマターが通常の物質よりも先に飛び出している!衝突の際に受ける衝撃や乱流が影響しているようです

  • 天王星の衛星アリエルの炭酸塩は隠された海の存在を示唆!? ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡で明らかになる氷衛星の多様性と複雑さ

    ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による最近の観測は、天王星の衛星アリエルの表面組成に関する貴重な情報がもたらされています。分光観測のデータが示しているのは、水の氷と非晶質炭素の混合物に加えて、豊富な二酸化炭素(CO2)の氷の存在。特に、アリエルの軌道運動方向から常に背を向けている“後半球”に、これらは顕著に集中していました。この発見は、太陽からの距離を考えると興味深いもの。それは、太陽から遠く離れ極寒環境と言われる天王星系でさえ、CO2は容易に昇華して宇宙空間に逃げてしまうからです。そこで、考えられるのは、何かがアリエルの表面に二酸化炭素を供給しているということです。アリエルの表面と天王星の磁気圏の荷電粒子との間の相互作用が、電離放射線によって分子が分解される放射線分解と呼ばれるプロセスを通じて、二酸化炭素を...天王星の衛星アリエルの炭酸塩は隠された海の存在を示唆!?ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡で明らかになる氷衛星の多様性と複雑さ

  • 超大質量ブラックホールの合体におけるダークマターの役割を解明! 最終パーセク問題も解明へ

    広大な宇宙の広がりの中で、天体物理学者は長い間、最も魅力的で謎めいた現象のいくつかを理解しようと努めてきました。その中でも特に興味深いのは、超大質量ブラックホールの合体です。このイベントは、時空の構造そのものに伝播する重力波として知られる“時空のさざ波”を生み出す、驚くべきエネルギーの事象と言えます。その超大質量ブラックホールは、私たちの太陽の何十億倍もの質量を持っていて、ほとんどの銀河の中心に存在すると考えられています。そして、超大質量ブラックホールの活動は、銀河の進化と成長を形づくる上で重要な役割を果たしています。近年の天体物理学における大きな進歩は、周波数が非常に低く、宇宙のあらゆる方向から伝わる重力波“背景重力波”の検出でした。この信号の発生源の一つに、合体する超大質量ブラックホールのペアから発生...超大質量ブラックホールの合体におけるダークマターの役割を解明!最終パーセク問題も解明へ

  • “ホットサターン”に水蒸気が存在する証拠を発見! 異常に大きなコアを持つ系外惑星の大気は酸素が豊富な環境なのかも

    今回の研究では、系外惑星“HD149026b”の大気中に水蒸気(H2O)が存在する証拠を発見しています。この系外惑星は、地球から約250光年彼方のヘルクレス座に位置し、土星とほぼ同じ大きさの高温ガス惑星なので“ホットサターン”に分類されています。さらに興味深いのは、“HD149026b”が地球の約110倍という異常に大きなコアを持っていること。いくつかの理論的なシナリオが提唱されていますが、この惑星の大気の観測を続けることで、これらの理論のいずれかを支持する、あるいは新た理論を示唆する可能性もあります。この研究は、東京大学の大学院生SayyedAliRafiさんを中心とする研究チームが進めています。本研究の成果は、2024年7月付でアメリカの科学雑誌“TheAstronomicalJournal”に“Ev...“ホットサターン”に水蒸気が存在する証拠を発見!異常に大きなコアを持つ系外惑星の大気は酸素が豊富な環境なのかも

  • なぜ、球状星団“テルザン5”では多くのパルサーが見つかるのか? 星同士の相互作用が頻繁に起こる密度が高い領域が原因かも

    天の川銀河の中心部“いて座”の方向に位置する球状星団“テルザン5”は、数十万個もの星々が密集する天体です。この星団には、パルサーと呼ばれる特殊な中性子星が多数存在することが知られているんですねーパルサーは、太陽よりも数十倍重い星が、その一生の最期に超新星爆発(II型超新星爆発)を起こすことで残される、強大な重力を持つ高密度な天体。中性子星の中でも、規則正しいパルス状の可視光線や電波が観測される“天然の発振器”と言える天体です。多くが超高速で自転していて、地球から観測すると非常に短い周期で明滅する規則的な信号がとらえられるので、パルサーと呼ばれています。パルス状の信号が観測されるのは、パルサーからビーム状に放射されている電磁波の向きが、自転とともに変化しているからだと考えられています。今回の研究では、球状星...なぜ、球状星団“テルザン5”では多くのパルサーが見つかるのか?星同士の相互作用が頻繁に起こる密度が高い領域が原因かも

  • 太陽のような恒星を周回する中性子星を発見! 非常に珍しい組み合わせの連星が21組も… 気になるのは超新星爆発による影響

    天の川銀河にある恒星の約半数は、2個以上の星が互いを回り合う“連星系”として生まれることが知られていて、これまでに見つかっている太陽系外惑星でも、2個以上の太陽を持つものはいくつも存在しています。私たちの太陽は一匹狼ですが、太陽のような多くの恒星が似たような恒星の周りを回っているのがよく見られるんですねーブラックホールも、しばしば互いの周りを回っていることがあります。その中で非常に珍しい組み合わせの一つが、太陽のような恒星と中性子星と呼ばれる死んだ恒星の組み合わせです。今回の研究では、太陽のような恒星の周りを公転している21個の中性子星らしきものを見つけています。中性子星は、太陽よりも数十倍重い星が、その一生の最期に超新星爆発(II型超新星爆発)を起こすことで残される、強大な重力を持つ天体。単体では非常に...太陽のような恒星を周回する中性子星を発見!非常に珍しい組み合わせの連星が21組も…気になるのは超新星爆発による影響

  • 天の川銀河の中心部に中間質量ブラックホールを発見! 初期宇宙における超大質量ブラックホールの形成過程の解明へ

    近年、天文学の分野において、銀河中心部における中間質量ブラックホールの発見が相次いでいます。これらの発見は、宇宙の進化、特に初期宇宙における超大質量ブラックホールの形成過程を解明する上で、極めて重要な意味を持つと考えられているんですねー今回、研究チームは、天の川銀河の中心に位置する超大質量ブラックホール“いて座A*(いてざエースター)”のすぐ近くにある星団の研究において、別の中間質量ブラックホールの兆候を発見しています。中間質量ブラックホールは膨大な研究努力にもかかわらず、これまでに全宇宙で約10個しか見つかっていませんでした。その中間質量ブラックホールは、ビッグバンの直後に形成されたと考えられていて、合体することで超大質量ブラックホールの“種”の役割を果たします。このことから、中間質量ブラックホールは、...天の川銀河の中心部に中間質量ブラックホールを発見!初期宇宙における超大質量ブラックホールの形成過程の解明へ

  • 地球外生命の痕跡は木星の衛星エウロパと土星の衛星エンケラドスの表面付近で生き延びている可能性があるようです

    木星の衛星エウロパと土星の衛星エンケラドスは、氷の外殻の下に海が存在していると考えられている天体です。そして、その地下の海には生命の存在が期待されているんですねー今回の実験が示唆しているのは、これらの海が生命を支えているのであれば、有機分子(アミノ酸、核酸など)の形でその生命の痕跡が、これらの惑星の過酷な放射線にもかかわらず、表面の氷のすぐ下で生き残ることができることでした。もし、無人探査機が生命の兆候を探すためにこれらの衛星に送られれば、放射線によって変形したり破壊されたりしても生き延びたアミノ酸を見つけるために、それほど深く掘り下げる必要ないようです。今回の実験に基づくと、エウロパでのアミノ酸の安全なサンプリング深度は、隕石の衝突によって表面があまり乱されていない領域の後半球(木星を周回するエウロパの...地球外生命の痕跡は木星の衛星エウロパと土星の衛星エンケラドスの表面付近で生き延びている可能性があるようです

  • ホットジュピターは高偏心移動によって形成される? これまでに発見されたどの惑星の軌道よりも離心率が大きいガス惑星を発見

    木星ほどの質量を持つガス惑星が、主星の恒星から極めて近い軌道(わずか0.015~0.5au程度:1天文単位auは太陽~地球間の平均距離)を、高速かつ非常に短い周期(わずか数日)で公転する天体があります。主星のすぐそばを公転し表面温度が非常に高温になるので、灼熱の木星型惑星“ホットジュピター”と呼ばれていて、系外惑星の発見初期に多く見つかっていました。ちなみに、太陽系最大の惑星である木星は、太陽の周りを約4000日かけて公転しています。同じようなガス惑星なのに、如何にホットジュピターの公転周期が短いのかが分かりますね。これまでの研究から、ホットジュピターは当初から高温の環境にはなく、“コールドジュピター”として、より寒冷で遠い場所で形成されたのではないかと考えられています。でも、どのようにして現在観測されて...ホットジュピターは高偏心移動によって形成される?これまでに発見されたどの惑星の軌道よりも離心率が大きいガス惑星を発見

  • ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が明かす褐色矮星の嵐と複雑な大気構造

    褐色矮星は、木星のような巨大ガス惑星と太陽のような恒星との中間的な性質を持つ天体で、その性質が注目されてきました。“WISE1049AB”は地球から最も近い褐色矮星の連星系で、その近さと明るさから、褐色矮星の詳細な研究に最適な天体として知らています。今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線分光装置“NIRSpec”と中間赤外線観測装置“MIRI”を用いて“WISE1049AB”を観測。“WISE1049AB”の大気組成、時間変動、およびそれらの波長依存性を詳細に調査しています。本研究により、褐色矮星の大気機構や天候に関する理解は飛躍的に進歩しました。今後、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による更なる観測や、より高度な大気モデルを用いた解析により、褐色矮星の気象条件と大気機構の理解が飛躍的に進むこ...ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が明かす褐色矮星の嵐と複雑な大気構造

  • 天の川銀河最大の球状星団“オメガ星団”の中心部に中間質量ブラックホールの強力な証拠 太陽の8200倍の質量を持つようです

    今回の研究では、20年以上にわたるハッブル宇宙望遠鏡の観測データから、天の川銀河最大の球状星団“オメガ星団”の中心に、太陽の8200倍の質量を持つ中間質量ブラックボールが存在する強力な証拠が発見しています。この発見は、ブラックホールの進化におけるミッシングリンクと考えられている中間質量ブラックホールの形成と成長に関する重要な手掛かりとなるはずです。この研究は、マックス・プランク天文学研究所のNadineNeumayerさんたちの研究チームが進めています。図1.今回の研究では、ハッブル宇宙望遠鏡が20年以上に渡って撮影した500枚以上のオメガ星団の画像データが使用。天の川銀河最大の球状星団“オメガ星団”の最も内側にある7つの高速で動く星を検出している。これらの恒星は、中間質量ブラックホールの存在を示す有力な...天の川銀河最大の球状星団“オメガ星団”の中心部に中間質量ブラックホールの強力な証拠太陽の8200倍の質量を持つようです

  • ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測が示唆 表面に液体の水が存在する可能性のある居住可能な氷の系外惑星

    くじら座の方向約48光年彼方に位置する“LHS11140”は、太陽の約5分の1の質量を持つ赤色矮星です。この赤色矮星“LHS1140”のハビタブルゾーン内を公転しているのが、“LHS1140b”という興味深い系外惑星です。この惑星は、その大きさから、当初はミニネプチューン、つまり水素を主成分とする厚い大気の層を持つガス惑星だと考えられていました。でも、近年の観測により、“LHS1140b”はミニネプチューンではなく、岩石や水に富むスーパーアースの可能性が高まってきたんですねーそして、2023年12月に行われたジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いた観測により、“LHS1140b”の質量と半径がより正確に測定され、その組成に関する重要な情報が得られました。ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測から示唆されたのは...ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による観測が示唆表面に液体の水が存在する可能性のある居住可能な氷の系外惑星

  • 【三大流星群】夏の風物詩“ペルセウス座流星群”が今年もやってくる! 2024年の見頃はいつ? どの方角を見ればいいの?

    “ペルセウス座流星群”は、12月の“ふたご座流星群”や1月の“しぶんぎ座流星群”と共に三大流星群と呼ばれていて、年間でも1,2を争う流星数を誇っています。2024年の“ペルセウス座流星群”の活動が最も活発になる“極大”を迎えるのは、8月12日(月)23時頃と予想されています。なので、多くの流星が見れそうなのは、12日深夜から13日未明にかけてになります。11日から13日にかけての3夜でも普段よりも多くの流星が見れそうです。いずれの夜も、21時頃から流星が出現し始め、夜半を過ぎて薄明に近づくにつれて流星の数が多くなることが予想されています。予想極大時刻の12日23時頃は、それなりに多めの流星が見られそうです。ただ、放射点がまだ低く、空の暗い場所で観察した場合の流星数は、1時間当たり25個程度…最も多く流星が...【三大流星群】夏の風物詩“ペルセウス座流星群”が今年もやってくる!2024年の見頃はいつ?どの方角を見ればいいの?

  • 宇宙にジュエルリングを発見! ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が見つけたのは重力レンズ効果を受けて明るく輝くクエーサーだった

    宇宙で輝くジュエルリング(宝石の指環)をジェームズウェッブ宇宙望遠鏡がとらえました。その正体は、地球から約60億光年彼方に位置するクレーター座にあるクエーサー“RXJ1131-1231”。前景銀河による重力レンズ効果で、“RXJ1131-1231”の像は明るく弧状に歪み、さらに4つの像が分離して観測されています。図1.ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡がとらえた宇宙で輝くジュエルリング(宝石の指環)。前景銀河による重力レンズ効果で、クエーサー“RXJ1131-1231”の像は明るく弧状に歪み、さらに4つの像が分離して観測されている。(Credit:ESA/Webb,NASA&CSA,A.Nierenberg)天然の拡大鏡“重力レンズ効果”重力レンズ効果は、アインシュタインの一般相対性理論によって予測された現象で...宇宙にジュエルリングを発見!ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が見つけたのは重力レンズ効果を受けて明るく輝くクエーサーだった

  • ナノヘルツ重力波が重力場によって曲げられる現象“解析レンズ効果”を用いた宇宙の膨張速度“ハッブル定数”の決定

    近年のパルサータイミングアレイ(PTA)によるナノヘルツ重力波の発見は、基礎科学に新たな可能性をもたらしました。今回の研究では、この発見に基づき、重力波の解析レンズ効果を利用した宇宙膨張の精密測定の可能性、特にハッブル定数測定への応用についてです。この研究は、トロント大学大学のDylanL.Jowさん、Ue-LiPenさんの研究チームが進めています。光や重力波などの波が重力場によって曲げられる現象解析レンズ効果とは、光や重力波などの波が、天体などの重力場によって曲げられる現象です。特に、波長がレンズ天体のサイズと同程度か、それ以上の場合は、幾何光学的なレンズ効果ではなく、解析レンズ効果が支配的となります。パルサータイミングアレイで観測されるナノヘルツ重力波は、波長が約1パーセクと非常に長いので、銀河円盤の...ナノヘルツ重力波が重力場によって曲げられる現象“解析レンズ効果”を用いた宇宙の膨張速度“ハッブル定数”の決定

  • 衝撃波による加熱はどのようにして起こるのか? 宇宙で最もエネルギーの高い現象の一つ銀河団合体を観測

    宇宙は、銀河、星、ガス、そして目に見えないダークマターが複雑に絡み合い、重力によって支配された広大な空間です。その中で銀河団は、最大で数千もの銀河が集まり、高温のプラズマに包まれ、巨大なダークマターのハローに囲まれた、宇宙最大の構造物として知られています。この銀河団の形成と進化は、宇宙の構造形成と進化を理解する上で重要なカギを握っていると言えます。銀河団は、静的な存在ではなく、絶えず進化し、互いに影響を及ぼし合っています。その進化において、特に重要な役割を果たすのが、銀河団同士の合体です。銀河団の合体は、ビッグバン以来、宇宙で最もエネルギーの高い現象の一つで、莫大な量のエネルギーを開放し、銀河団の構造と進化に劇的な変化をもたらします。銀河団の合体が起こると、銀河団内媒体(ICM)と呼ばれる、銀河団内の銀河...衝撃波による加熱はどのようにして起こるのか?宇宙で最もエネルギーの高い現象の一つ銀河団合体を観測

  • 133億光年彼方の銀河“SPT0615-JD1”内に5つの若い星団を発見! 宇宙再電離時代に高密度で大規模な星団が形成されていた

    私たちの天の川銀河には、何十億年もの間、自らの重力で集団を保ちながら生き延びてきた星団“球状星団”(※1)があります。※1.恒星の集まり。特に、恒星同士の重力で集団を保つ星団を自己重力星団と呼ぶ。今回見つかった5つの星団は自己重力星団だということが分かった。星団のうち数百万個以上の恒星が重力で集合し、概ね球状の形をとったものを球状星団と呼ぶ。数百光年以内に数万個以上の恒星が密集している。球状星団は、宇宙初期に生まれた、いわば化石のような天体だと考えられています。でも、いつどこで形成されたのかは、未だに良く分かっていませんでした。今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡(※2)を用いて、宇宙年齢4億6千万年の時代に銀河“SPT0615-JD1”内に、5つの若い星団を発見。(“SPT0615-JD1”の別...133億光年彼方の銀河“SPT0615-JD1”内に5つの若い星団を発見!宇宙再電離時代に高密度で大規模な星団が形成されていた

  • 多くの銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールの成長と進化の謎に迫るシミュレーション

    宇宙の広大無辺な広がりの中で、最も神秘的で抗いがたい魅力を放つ天体の一つに、多くの銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールがあります。このブラックホールは、想像を絶するほどの強大な重力を持ち、銀河全体の進化に計り知れない影響を与えていると考えられています。今回の研究では、最新のコンピュータシミュレーション技術を駆使することで、超大質量ブラックホールを取り巻く高温の円盤“降着円盤”がどのようにして形成され、進化していくのかを、これまでにない精度で解明すことに成功しています。このシミュレーションは、天文学者たちが1970年代から持ち続けてきた降着円盤に関する概念を覆し、ブラックホールと銀河の成長と進化に関する新たな発見への道を切り開くものになります。この研究は、カリフォルニア工科大学の天体物理学者チームが進...多くの銀河の中心に存在する超大質量ブラックホールの成長と進化の謎に迫るシミュレーション

  • 冥王星に地下海は存在しない? 巨大衝突がもたらしたハート模様の謎に迫る

    2015年のこと、NASAの探査機“ニューホライズンズ”による観測で、冥王星の表面に巨大なハート型の構造が発見されましました。この“ハート”は、その独特な形状、地質学的組成、標高の謎から、科学者たちの関心を集めることに。特に、その西側を占める涙滴型の領域“スプートニク平原”の起源は、大きな謎に包まれていました。今回の研究では、この謎を解明するために、数値シミュレーションを用いた研究を実施。角度と速度が比較的低い衝突が、スプートニク平原のような非対称な地形を形成することを確認したそうです。この研究は、スイスのベルン大学とアリゾナ大学の研究チームが進めています。本研究の成果は、英科学誌“Nature”系の天文学術誌“NatureAstronomy”に掲載されました。図1.冥王星への巨大でゆっくりとした衝突が、...冥王星に地下海は存在しない?巨大衝突がもたらしたハート模様の謎に迫る

  • 木星の上層大気は意外と複雑だった… 謎めいた大気現象をジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が観測

    木星は夜空で最も明るい天体の一つで、晴れた夜には肉眼でも容易に見つけることができます。地球から見える木星の極地には、明るく鮮やかなオーロラがあります。でも、木星の上層大気からの光は弱いので、地上の望遠鏡を用いた詳細な観測は困難でした。今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いて、木星の象徴的な大赤班の上空を観測。ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の高い赤外線観測能力によって、これまで見ることができなかった木星上層大気の詳細な姿をとらえることに成功し、様々な特徴を発見しています。これにより、かつては特徴が無いと考えられていた大赤班の領域が、複雑な構造や活動の宝庫だと分かりました。研究チームは、悪名高い大赤班の上空にある木星の上層大気を、これまでにない精度で研究することができたそうですよ。この研究は、英国レ...木星の上層大気は意外と複雑だった…謎めいた大気現象をジェームズウェッブ宇宙望遠鏡が観測

  • 天の川銀河を公転する衛星銀河はいくつあるのか? ダークマターの塊の中でどのようにして星ができて銀河に進化するのか

    今回の研究では、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラが撮像した最新のデータの中から、私たちの住む天の川銀河に付随する衛星銀河を新たに2個発見しています。研究チームが以前に発見した衛星銀河も合わせると、天の川銀河の周りには、理論予測の倍以上の衛星銀河が存在することが明らかになりました。このことは、銀河の形成史とそれを左右するダークマターの性質に対して、新たな問題を投げかける発見となるようです。この研究は、本間大輔(国立天文台)、千葉柾司(東北大学)、小宮山裕(法政大学)、田中賢幸(国立天文台)、岡本桜子(国立天文台)、田中幹人(法政大学)、石垣美歩(国立天文台)、林航平(仙台高専)、有本信雄(元国立天文台)、RobertH.Lupton(プリンストン大学)、MichaelA.Strauss(プリンストン大学)...天の川銀河を公転する衛星銀河はいくつあるのか?ダークマターの塊の中でどのようにして星ができて銀河に進化するのか

  • 現在、木星で観測される“大赤斑”は1665年にカッシーニが発見した“永久斑”とは別物? 形成メカニズムをシミュレーションで検証

    木星の“大赤斑(GreatRedSpot)”は、太陽系の惑星の中で最大かつ最も寿命の長い渦として知られています。でも、その寿命については議論があり、その形成メカニズムは隠されたままでした。今回の研究では、木星の“大赤斑”の起源について、歴史的な観測記録と数値モデリングを用いて詳細な分析を実施。長年、“大赤斑”の前身と考えられてきた“永久斑(PermanentSpot)”との関係、そして大赤斑形成の要因となり得る3つのメカニズムについて検証しています。この研究は、バスク大学のAgustinSánchez-Lavegaさんたちの研究チームが進めています。本研究の成果は“GeophysicalResearchLetters”に“TheOriginofJupiter'sGreatRedSpot”として掲載されまし...現在、木星で観測される“大赤斑”は1665年にカッシーニが発見した“永久斑”とは別物?形成メカニズムをシミュレーションで検証

  • カイパーベルトは思っていたより広い? すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラによる探査機“ニューホライズンズ”の調査対象探し

    世界で初めて冥王星のフライバイを行ったNASAの探査機“ニューホライズンズ”は、その後もいくつかの延長ミッションを行っています。その延長ミッションにおいて、“ニューホライズンズ”が今後調査するカイパーベルト天体の候補探しに、すばる望遠鏡の広く深い撮像観測が貢献しているんですねー今回の研究では、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ“HSC(HyperSuprime-cam)”によるカイパーベルト天体の探査画像に、独自の解析手法を適用。その結果、カイパーベルトの領域を広げる可能性のある天体を発見しています。“HSC”を用いたミッションチームによるカイパーベルト探しは今も続いていて、今後も北米グループを中心として、次々と論文が出版される予定です。本研究は、それに先駆けて、日本の研究者が中心となり、日本で開発された...カイパーベルトは思っていたより広い?すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラによる探査機“ニューホライズンズ”の調査対象探し

  • 4番目のパラメーターを持つ色荷ブラックホールが初期宇宙に存在した!? 重力を介して存在を知ることができる暗黒物質の正体かも

    光などの電磁波では観測することができず、重力を介してのみ間接的に存在を知ることができる物質“暗黒物質(ダークマター)”の正体は、今でもよく分かっていません。候補の一つとして、誕生直後の宇宙で生成されたとされる“原始ブラックホール(Primordialbkackhole)”が挙げられていますが、その生成過程もよく分かっていません。そこで、今回の研究では、初期宇宙で原始ブラックホールが生成される過程を調査。すると、その研究の副産物として、理論的には提唱されていたものの生成ルートが判明していない“異色”の存在であった、いわば“色荷ブラックホール”とでも表現できるような存在にたどり着くことになります。色荷ブラックホールは、あまりにも小さすぎるので、現在の宇宙には残っていないと考えられています。それでも、初期宇宙の...4番目のパラメーターを持つ色荷ブラックホールが初期宇宙に存在した!?重力を介して存在を知ることができる暗黒物質の正体かも

  • 中性子星だとすると理論上観測できないはず 53.8分という極めて長い周期で性質が変化する謎の電波源“ASKAP 1935+2148”を発見

    中性子星(neutronstar)は、太陽の8倍以上の恒星が、一生の最期に大爆発した後に残される宇宙で最も高密度な天体です。原子から構成される恒星とは異なり、主に中性子からなる天体で、ブラックホールと異なり半径10キロ程度の表面が存在し、そこに地球の約50万倍の質量が詰まっているんですねー一般に強い磁場を持つものが多い天体でもあります。自転に伴う数ミリ秒から数秒程度の特徴的な電磁波パルスを放射する中性子星は、宇宙に存在する強力な電波放射源の一つになります。中性子星の自転周期は短く、通常は数秒未満で、自転周期が1秒未満のものも珍しくありません。今回の研究では、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の電波望遠鏡群“ASKAP(AustralianSquareKilometreArrayPathfin...中性子星だとすると理論上観測できないはず53.8分という極めて長い周期で性質が変化する謎の電波源“ASKAP1935+2148”を発見

  • 人類が初めて手にした恒星間天体に由来する破片かも? 太陽系の外からやってきた恒星などの天体を公転しない天体に迫る

    太陽系の外からやってきた“恒星間天体”としては、“オウムアムア”や“ボリソフ彗星”が公式に認められています。ただ、この2つ以外にも、恒星間天体には複数の候補があるんですねーその一つ“CNEOS2014-01-08”は、地球に落下したことが確認された初めての恒星間天体の可能性があります。今回、この“CNEOS2014-01-08”に由来するとみられる微小な金属球の発見が発表されましたまだ、分析は初期の段階ですが、この発見が本当であれば、人類は史上初めて恒星間天体のサンプルを採取したことになります。ただ、現時点では発見には多くの異論・反論もあるようです。この研究は、ハーバード大学のAviLoebさんが主導する“ガリレオ・プロジェクト”が進めています。恒星などの天体に重力的に束縛されていない恒星以外の天体恒星間...人類が初めて手にした恒星間天体に由来する破片かも?太陽系の外からやってきた恒星などの天体を公転しない天体に迫る

  • 何が急激な加速膨張“インフレーション”を引き起こしたのか? 重要な情報が刻まれている原始重力波の計算を簡単に行う方法

    よく、「宇宙はビッグバンで始まった」と言われます。でも、より正確には宇宙が誕生し、非常に高い真空のエネルギーにより宇宙が急激な加速膨張をしていた時期“インフレーション”を経て、その結果としてビッグバンが発生したとされています。インフレーションが起きたのは、宇宙が誕生して1036分の1秒後から1034分の1秒後までの間。その結果、誕生した瞬間は原子よりも遥かに小さかったとされる宇宙は、空間的に数十桁も大きくなっていきます。そして、インフレーション理論では、その際に放出された熱エネルギーがビッグバンの火の玉となった考えられています。この理論は、宇宙の観測を通じて原始宇宙の密度の濃淡“原始密度揺らぎ”を調べる研究によって検証されてきました。でも、具体的に何が急激な加速膨張を引き起こした駆動源だったのか、その全体...何が急激な加速膨張“インフレーション”を引き起こしたのか?重要な情報が刻まれている原始重力波の計算を簡単に行う方法

  • “わたあめ”並みの密度しかない系外惑星“WASP-193b”を発見! 巨大ガス惑星“ホットジュピター”はどこまで低密度になれるのか

    地球や火星のような岩石と金属で構成された岩石惑星と比べると、木星や土星のように水素やヘリウムが主成分の“巨大ガス惑星”は密度が低い天体になります。これに加えて、木星ほどの質量を持つガス惑星が主星(恒星)のすぐそばを公転することで表面温度が非常に高温になる“ホットジュピター”のような環境では、大気が熱膨張することでさらに密度が低くなってしまいます。今回の研究では、太陽系外惑星観測プロジェクト“スーパーWASP”(※1)の観測データから新たな惑星“WASP-193b”を発見しています。※1.“スーパーWASP”はスペイン領カナリア諸島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台と、南アフリカ共和国の南アフリカ天文台で構成されている。他の観測データも組み合わせて計算して分かったのは、“WASP-193b”の平均密度が...“わたあめ”並みの密度しかない系外惑星“WASP-193b”を発見!巨大ガス惑星“ホットジュピター”はどこまで低密度になれるのか

  • 2つの超大質量ブラックホールが合体しようとしている!? 複雑に広がったスペクトルを発見

    ほとんどの銀河の中心には、太陽の100万倍から100億倍の質量を持つ“超大質量ブラックホール”(※1)が存在すると考えられています。私たちの天の川銀河の中心にも、太陽の400万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール“いて座A*(エースター)”が存在しています。※1.大質量星が超新星爆発を起こした後に誕生する、太陽の数倍~数十倍程度の質量を持つ“恒星質量ブラックホール”は宇宙には多数存在している。一方で、存在は予測されていても、確実な発見例がほとんど無い太陽質量の100倍~10万倍という“中間質量ブラックホール”もある。銀河同士が衝突合体を繰り返すことで自身が進化していく中で、複数の超大質量ブラックホールも連星を形成すると考えられます。理論的には、超大質量ブラックホールの連星が合体するまでのタイムスケールは、...2つの超大質量ブラックホールが合体しようとしている!?複雑に広がったスペクトルを発見

  • 地上が困難なら宇宙へ! 低周波電波の観測に対応する宇宙望遠鏡構想“GO-Low”は10万機以上の小型衛星で課題を克服

    宇宙空間内の放射源天体から届けられる光(電磁波)の中で、地上の天文台では観測が困難な周波数帯の“光”が存在しています。それは、周波数が15MHz以下の低周波数(※1)です。この周波数は、約50~1000キロ上空の“電離層(電離圏)”によって遮られてしまうので、地上の天文台では受信することが困難になることがあるからです。※1.天文学で低周波電波(LowFrequencyRadio)という用語が使われるが、周波数の範囲は明確に定められていない。この低周波数電波を観測するための宇宙望遠鏡が、マサチューセッツ工科大学(MIT)ヘイスタック観測所のMaryKnappさんが率いる研究グループによって提案されています。それは、10万機以上の小型衛星の“集合体”を配備する構想“GO-LoW(GreatObservator...地上が困難なら宇宙へ!低周波電波の観測に対応する宇宙望遠鏡構想“GO-Low”は10万機以上の小型衛星で課題を克服

  • 129億光年彼方で合体を起こしているクエーサーを発見 宇宙の夜明けの時代に銀河や中心ブラックホールはどのように進化したのか?

    今回の研究では、すばる望遠鏡とジェミニ北望遠鏡を用いた観測により、合体中の2つの巨大ブラックホール(クエーサー)を発見しています。このクエーサーのペアは、これまでに知られている中で最も遠方に位置するもの。それだけでなく、“宇宙の夜明け”と呼ばれる時代でその存在が初めて確認された合体中の巨大ブラックホールになるようです。この研究は、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(KavliIPMU,WPI)の尾上匡房特任研究員とJohnSilverman教授が参加する愛媛大学、国立天文台などの研究者からなる研究チームが進めています。本研究の成果は、2024年4月10日付のアメリカの天体物理学専門誌“TheAstrophysicalJournalLetter”に、“DiscoveryofMergingTwi...129億光年彼方で合体を起こしているクエーサーを発見宇宙の夜明けの時代に銀河や中心ブラックホールはどのように進化したのか?

  • 火星の衛星フォボスはどうやって形成されたのか? 小惑星捕獲説か巨大衝突説かは元素組成の観測から判別できるようです

    月の研究によって地球の歴史が明らかになってきたように、火星の衛星の研究は衛星そのものだけでなく火星の歴史の理解にも繋がります。火星にはフォボスとダイモスの2つの衛星があり、それらの形成過程については、これまで天体表面の色や地形を根拠とする“小惑星捕獲説”や公転軌道の特徴を説明する“巨大衝突説”が提唱されてきました。でも、その議論に未だ決着はついていないんですねーJAXAの火星衛星探査計画“MMX(MartianMoonseXploration)”では、様々な科学観測とフォボス表面から採取するサンプルの地上分析を組み合わせることにより、火星衛星の形成過程を解明することを目的としています。そこで、今回の研究では元素組成に注目し。衛星フォボスの形成過程の違いを見分けることを目指しています。異なる形成過程を経験し...火星の衛星フォボスはどうやって形成されたのか?小惑星捕獲説か巨大衝突説かは元素組成の観測から判別できるようです

  • “JADES-GS-z14-0”が観測史上最も遠い銀河の記録を更新! 初期の宇宙では恒星の誕生や銀河の進化は想像以上に速かった

    宇宙に無数に存在する銀河は、いつ誕生したのでしょうか?このことは、よく分かっていないんですねーただ、初期の宇宙に存在する銀河の数や大きさは、宇宙がどのように誕生したのかを探る上での基礎的な情報となります。今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡の観測によって、観測史上最も遠い銀河“JADES-GS-z14‐0”と、2番目に遠い銀河“JADES-GS-z14-1”を発見したことを報告しています。特に、“JADES-GS-z14‐0”は、その距離にもかかわらず非常に明るい銀河なので、宇宙における銀河の形成過程を見直す必要があるのかもしれません。この研究は、ピサ高等師範学校のStefanoCarnianiさんを筆頭とする国際研究チームが進めています。本研究の内容は、特定の科学誌に論文が掲載される前のプレプリ...“JADES-GS-z14-0”が観測史上最も遠い銀河の記録を更新!初期の宇宙では恒星の誕生や銀河の進化は想像以上に速かった

  • なぜミニネプチューンは楕円軌道を公転しているのか? 赤色矮星周りの短周期惑星の軌道は潮汐力で円軌道化されるはず

    今回の研究では、NASAのトランジット惑星探査衛星“TESS”(※1)と地上の望遠鏡の連携観測により、4つの年老いた赤色矮星(星の年齢は10億歳以上)(※2)の周りにミニネプチューン(※3)を発見しています。※1.“TESS”は、地球から見て系外惑星が主星(恒星)の手前を通過(トランジット)するときに見られる、わずかな減光から惑星の存在を探る“トランジット法”という手法により惑星を発見し、その性質を明らかにしていく。繰り返し起きるトランジット現象を観測することで、その周期から系外惑星の公転周期を知ることができる。※2.表面温度がおよそ摂氏3500度以下の恒星を赤色矮星(M型矮星)と呼ぶ。実は宇宙に存在する恒星の8割近くは赤色矮星で、太陽系の近傍にある恒星の多くも赤色矮星。太陽よりも小さく、表面温度も低いこ...なぜミニネプチューンは楕円軌道を公転しているのか?赤色矮星周りの短周期惑星の軌道は潮汐力で円軌道化されるはず

  • ヴァージン・ギャラクティックが宇宙船スペースシップ2による最後の宇宙飛行に成功! 2026年からは新型宇宙船デルタ・クラスへ

    日本時間2024年6月9日未明のこと、アメリカの民間宇宙企業ヴァージン・ギャラクティック社(VirginGalactic)は、宇宙船スペースシップ2の2号機“VSSユニティ(VSSUnity)”による、同社7回目の商業宇宙飛行ミッション“Galactic07”を実施しました。6名のクルーを載せた“VSSユニティ”は、高度80キロ以上の宇宙空間(※1)へ到達した後に、無事地上へ帰還したことが同社から発表されています。※1.国際的には高度100キロ以上が宇宙と定義されているが、米空軍は高度80キロ以上と定義している。図1.“Galactic07”ミッションでロケット・モーターを点火して上昇する“VSSユニティ”。(Credit:VirginGalactic)ヴァージン・ギャラクティック社によると、空中発射母機...ヴァージン・ギャラクティックが宇宙船スペースシップ2による最後の宇宙飛行に成功!2026年からは新型宇宙船デルタ・クラスへ

  • スタートレックに登場するバルカン星は実在しない? 検出した波長は恒星表面が脈動や振動することで生じるドップラー効果だった

    地球から約16.2光年に位置する恒星“エリダヌス座40番星A”(※1)。この恒星は、2018年に太陽系外惑星“エリダヌス座40番星Ab”の発見が報告されたことで、SF作品“スタートレック”シリーズのファンの間で話題となりました。その理由は、主要なキャラクターを排出した異性種族“バルカン人”の出身惑星“バルカン星”が設定された星系だからでした。※1.異称として“HD26965”、“エリダヌス座オミクロン2星A(ο2EriA)”、“ケイドA(KeidA)などがある。”今回の研究では、“エリダヌス座40番星Ab”の存在について、新しい装置で得られた観測データを元に分析。その結果、惑星の存在を示すとされたシグナルは、実際には恒星活動によって発生したものであることを突き止めています。話題となったバルカン星かもしれな...スタートレックに登場するバルカン星は実在しない?検出した波長は恒星表面が脈動や振動することで生じるドップラー効果だった

  • “いつ”、“どこで”発生するか分からない恒星フレア現象の観測に成功! 2つのX線観測装置“MAXI”と“NICER”による全天監視と詳細観測

    りょうけん座RS星に代表されるフレア星で、公転周期が比較的短い、分離型の近接連星系“RSCVn型連星”。このRSCVn型連星が起こすフレア(※1)現象は、太陽フレアより桁違いに大きいことが知られていて、巨大フレアの発生メカニズムや周辺環境への影響を調べる上で重要な対象と言えます。※1.フレアは、恒星の外層大気で磁場に蓄積されたエネルギーが、突発的に解放される爆発現象。今回の研究では、国際宇宙ステーションに搭載された広範囲観測を得意とする全天X線監視装置“MAXI”(※2)と、詳細観測を得意とする高精度X線望遠鏡“NICER”(※3)を使用。この2つのX線観測装置を組み合わせることで、全天の“いつ”、“どこで”発生するか分からないフレア現象を、初期段階で発見し、詳細な観測を開始することに成功しています。※2...“いつ”、“どこで”発生するか分からない恒星フレア現象の観測に成功!2つのX線観測装置“MAXI”と“NICER”による全天監視と詳細観測

  • 金星は火山が活発に活動している3つ目の天体になる!? 30年前の探査機がとらえたレーダー画像の比較で溶岩流の痕跡を発見

    現役で噴火を起こしている活火山は、太陽系内では非常に珍しい存在です。地球以外で活火山が見つかっているのは木星の衛星イオのみ。兄弟星と呼ばれるほど地球と似ている金星では、直近の噴火に関する予備的な証拠が挙がっていたものの、決定的なものではありませんでした。今回の研究では、NASAが30年前以上に運用していた金星探査機“マゼラン”のレーダー画像を分析。噴火で生じた溶岩流の証拠を探索しています。その結果、1990年から1992年にかけて流出した溶岩流の可能性が高い地形の変化を、2つのエリアで発見しました。本研究は、直前に発表された別の研究と合わせて、金星の火山が直近でも活発に活動していて、それも1990年代という人間のタイムスパンでも、つい最近に噴火した可能性が高いことを示しています。この結果が正しければ、金星...金星は火山が活発に活動している3つ目の天体になる!?30年前の探査機がとらえたレーダー画像の比較で溶岩流の痕跡を発見

  • 天の川銀河の円盤部を高速で通過した天体の痕跡を発見! 初めて確認された見える天体を伴わない暗黒物質サブハロー

    今回の研究では、天の川銀河の比較的静穏な領域で、異常に広い速度幅(※1)(約40kms-1)を持った分子雲(CO16.134-0.553)を発見しています。※1.速度幅とは、天体を構成するガスの運動に起因する、スペクトル線の周波数幅のこと。この分子雲は膨大な力学的パワーを有し、過去に強い衝撃波を受けた痕跡が見られました。にもかかわらず、明確なエネルギー供給源が付随していないんですねー過去の広域データを精査してみると、CO16.134-0.553がやや大きな分子ガスの膨張球殻状構造(シェル)の一部を構成すること、天の川銀河の当該領域には巨大な原子ガスの“空洞”が存在し、天の川銀河下方には長大な直線状“フィラメント(※2)”が存在していることが分かりました。※2.フィラメントは細長い空間構造のこと。これらの空...天の川銀河の円盤部を高速で通過した天体の痕跡を発見!初めて確認された見える天体を伴わない暗黒物質サブハロー

  • 何がきっかけでエディアカラ紀の生物は複雑化・大型化したのか? 地磁気が弱くなったことによる酸素濃度の上昇が生物を進化させた

    約6億年前の“エディアカラ紀(エディアカラン)”は、目に見える大きさの多細胞生物が発見されている最も古い時代として注目されています。でも、なぜエディアカラ紀に生物の身体が複雑化・大型化したのか、その理由はよく分かっていません。今回の研究では、エディアカラ紀の“地磁気”の強さに注目。調査の結果、エディアカラ紀の約2600万年の間、地磁気の強さは現在の10分の1以下、最小で約30分の1というかなり低い水準だったことが判明しました。最終的にこの出来事が、海水中の酸素濃度を増加させ、生物の進化を促した可能性があるようです。この研究は、ロチェスター大学のWentaoHuangさんたちの研究チームが進めています。図1.今回の研究により、エディアカラ紀の地球は地磁気が極端に弱かった可能性が示された。当時の生物にとって、...何がきっかけでエディアカラ紀の生物は複雑化・大型化したのか?地磁気が弱くなったことによる酸素濃度の上昇が生物を進化させた

  • 天の川銀河で高度な文明が作るダイソン球の候補を7個発見!? 恒星から放たれるエネルギーを無駄なく活用する構造物は実在するのか

    宇宙において、非常に高度な文明が建造すると予測されているもの。その一つに、恒星から放出される全てのエネルギーを利用するための巨大な構造物“ダイソン球(Dysonsphere)”があります。今回の研究では、地球から比較的近い距離にある恒星約500万個を対象にダイソン球の探索を実施。その結果、ダイソン球の可能性を否定できない天体を7個見つけています。もちろん、現段階では単なる自然な天体である可能性の方がずっと高く、ダイソン球を実際に見つけた可能性は低いようです。それでも、この7個の天体はかなり変わった性質を持っているので、興味深い発見と言えます。この研究は、ウプサラ大学のErikZackrissonさんをリーダーとする“プロジェクト・ヘーパイストス(ProjectHephaistos)”が進めています。図1....天の川銀河で高度な文明が作るダイソン球の候補を7個発見!?恒星から放たれるエネルギーを無駄なく活用する構造物は実在するのか

  • スペースXの新型ロケット“スターシップ”が打ち上げ成功! 多数のタイル消失やフラップ損傷でも大気圏再突入・軟着水を成功

    日本時間2024年6月6日、アメリカの民間宇宙企業スペースX(SpaceX)社は、開発中の新型ロケット“スターシップ(Starship)”による第4回飛行試験を実施しました。第1段の“スーパーヘビー(SuperHeavy)”は海上への軟着水に成功。第2弾の宇宙船“スターシップ(Starship)”本体は宇宙空間を飛行後、機体が一部破損しながらの大気圏再突入を経て海上への軟着水に成功しました。図1.スターシップは第4回飛行試験のため、アメリカ・テキサス州ボカチカにあるスペースX社の施設“スターベース(Starbase)”を離床。第1段に搭載された33基のラプターエンジンのうち1基が停止したが、スターシップは無事宇宙へ向かった。(Credit:SpaceX)“スターシップ”は、第1段の大型ロケット“スーパーヘ...スペースXの新型ロケット“スターシップ”が打ち上げ成功!多数のタイル消失やフラップ損傷でも大気圏再突入・軟着水を成功

  • 少ない燃料と短時間で月に到達できる軌道設計に成功! カオス軌道だと探査機の軌道が予想不可能になってしまうはずだけど…

    5月30日のこと、三体問題に由来する“カオス軌道”をいくつも渡り歩いていく手法を考案し、地球-月の“円制限三体問題”の最小モデルである“ヒル方程式系”において、地球周回軌道から月周回軌道へ探査機が向かう場合、従来の軌道を上回る、高効率で短時間、なおかつ頑健な軌道を設計することに成功したことを、北海道大学と九州大学が共同で発表しました。本研究の成果は、北海道大学電子科学研究所の佐藤讓准教授、九州大学大学院工学研究院航空宇宙工学部門の坂東麻衣教授、同・大学工学部航空宇宙工学専攻の平岩尚樹大学院生、ブラジル・リオデジャネイロ連邦大学数学研究所のイザイア・ニゾリ博士たちの国際共同研究チームによるもの。詳細は、アメリカ物理学会が刊行する物理とその関連分野を扱う学際的な学術誌“PhysicalReviewResear...少ない燃料と短時間で月に到達できる軌道設計に成功!カオス軌道だと探査機の軌道が予想不可能になってしまうはずだけど…

  • 連星系“VFTS 243”のブラックホールは超新星爆発を伴わずに誕生していた!? 太陽の約10倍の質量を持つ恒星が完全崩壊を起こす可能性

    太陽よりも数十倍重い星は、その一生の最期に超新星爆発(II型超新星爆発)を起こし、強大な重力を持つ中性子星やブラックホールなどのコンパクトな天体を残すと考えられています。でも、実際には、全く超新星爆発を起こさずにブラックホールへと崩壊する“完全崩壊(Completecollapse)”を起こす恒星もあると考えられています。今回の研究では、片方の恒星が完全崩壊に至った可能性が高いと言われている連星系“VFTS243”について、観測記録とモデル計算を照らし合わせることで、完全崩壊を起こしたという仮説が妥当かどうかを検証。その結果、“VFTS243”のブラックホールは超新星爆発の影響を受けていない、つまり完全崩壊を経験していると考えて妥当だとする結果が得られています。本研究結果は、実態がよく分かっていない超新星...連星系“VFTS243”のブラックホールは超新星爆発を伴わずに誕生していた!?太陽の約10倍の質量を持つ恒星が完全崩壊を起こす可能性

  • 宇宙はいかにして理論的に期待される複雑な姿ではなく、観測から明らかになった単純な姿を獲得したのか

    東京大学宇宙線研究所の渡慶次孝気特任研究員は、パリ高等師範学校物理学部門のVincentVennin主任研究員との共同研究において、初期宇宙の急激な加速膨張(インフレーション)(※1)の過程で、揺らぎ(※2)の量子的な振る舞いが私たちの宇宙を稀な確率で実現した結果、現在のような単純な姿が観測されるに至ったことを明らかにしています。このことは、初期宇宙の高エネルギー環境から理論的に期待される複雑な姿と、実際に観測されているその単純な姿、という両者の隔たりを自然な理論で解消する重要な成果と言えます。逆に、将来的な観測が宇宙の複雑な姿の痕跡をとらえた場合に、インフレーションの理論モデルを同定する大きな手掛かりを与えるものです。※1.インフレーションとは、宇宙が生まれた直後、1000兆分の1000兆分の1秒よりも...宇宙はいかにして理論的に期待される複雑な姿ではなく、観測から明らかになった単純な姿を獲得したのか

  • 原始ブラックホールの形成は実現するのか? より複雑なモデルを考えるか、全く別のメカニズムを考えていく必要があるようです

    今回の研究では、原始ブラックホール生成に関係した大きな振幅を持った小さなスケールのゆらぎ同士が、量子論的にぶつかり合う効果を場の量子論に基づいて、初めて詳細に計算しています。その結果、小スケールに生成した大きなゆらぎが、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)で観測されるような大スケールの揺らぎにも影響を及ぼすことを明らかにしました。太陽の数十倍の質量を持つブラックホールの起源やダークマターの起源を、原始ブラックホールによって説明できるほど大きなゆらぎを予言するモデルにおいては、宇宙マイクロ波背景放射の観測結果と矛盾するほど影響が大きいことから、大きな質量の原始ブラックホール生成のためには、より複雑なモデルを考えるか、全く別のメカニズムを考えなければならないことを示したことになります。この研究は、東京大学国際高等...原始ブラックホールの形成は実現するのか?より複雑なモデルを考えるか、全く別のメカニズムを考えていく必要があるようです

  • 中間質量ブラックホールは球状星団の中で超大質量星から形成されている!? 最先端のシミュレーションによって明らかになった形成過程

    今回の研究では、球状星団(※1)の形成過程で、星の合体から超大質量星(※2)を経て中間質量ブラックホールが形成され得ることを、数値シミュレーションにより明らかにしています。※1.星団のうち数百万個以上の恒星が重力で集合し、概ね球状の形をとったもの。数百光年以内に数万個以上の恒星が密集している。※2.超大質量星は、太陽の数百倍から1万倍もの質量を持つ恒星。まだ、その存在について観測的な証拠はない。本研究では、新たに開発した計算手法により、世界で初めて球状星団の形成過程を、星一つ一つまで数値シミュレーションで再現。その結果、形成中の球状星団の中で星が次々と合体することによって、太陽の数千倍の質量を持つ超大質量星が形成され得ることが分かりました。さらに、星の進化の理論に基づいた計算によって、この超大質量星は後に...中間質量ブラックホールは球状星団の中で超大質量星から形成されている!?最先端のシミュレーションによって明らかになった形成過程

  • マイクロクエーサー“SS433”に付随する分子雲から近紫外線放射を発見! 分子雲とジェットの直接相互作用

    今回の研究では、地球から約1.8万光年彼方に位置するマイクロクエーサー“SS433”(※1)の相対論的ジェットに付随する分子雲(※2)から、近紫外線が放射されていることを発見しています。研究グループでは、近紫外線のアーカイブデータと“SS433”に付随する分子雲を比較することで、近紫外線の放射が“SS433”に一番近い分子雲だと特定。近紫外線の放射領域が、分子雲の広がりと一致しているとことを確認しています。さらに、分子輝線、遠赤外線のデータとの比較からは、近紫外線放射は分子雲の背後、“SS433”のジェットと分子雲の相互作用面から放射されていることを明らかにしました。この紫外線放射が分子雲や分子雲中の星間ダストを暖め、暖められた星間ダストが遠赤外線で再放射していることも突き止めています。この結果は、宇宙線...マイクロクエーサー“SS433”に付随する分子雲から近紫外線放射を発見!分子雲とジェットの直接相互作用

  • NASAの小惑星探査機“サイキ”がイオンエンジンを始動! 時速20万キロまで加速し小惑星“プシケ”への到着は2029年

    現地時間5月22日のこと、NASAは小惑星探査機“サイキ(Psyche)”のイオンエンジン始動を発表しました。2023年10月に打ち上げられた“サイキ”の目的は、火星と木星の間に広がる小惑星帯を公転する小惑星“16Psyche(プシケ)”の周回探査。このミッションは、“ディスカバリー計画”14番目として2017年に選定されました。図1.小惑星探査機“サイキ”は打ち上げ後に約6年間をかけて小惑星“プシケ”へ向かう。小惑星“プシケ”に到着するのは2029年8月の予定。(Credit:NASA/JPL–Caltech/ASU)小惑星“プシケ”は、鉄やニッケルといった金属を豊富に含む“M型小惑星”に分類されています。その正体は初期の太陽系で形成された原始惑星のコア(核)ではないかと予想されてきました。過去に探査機...NASAの小惑星探査機“サイキ”がイオンエンジンを始動!時速20万キロまで加速し小惑星“プシケ”への到着は2029年

  • 系外惑星からの光を直接観測できる宇宙望遠鏡“ローマン・コロナグラフ”の準備完了! 恒星の光を取り除く技術で第2の地球を発見へ

    NASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡には、恒星の光を遮りその光芒に隠された惑星を見ることができる“ローマン・コロナグラフ”という装置が搭載されます。この装置を用いた新しい観測技術を実証することで、地球外のハビタブル(生命が居住可能)な世界の探索への道を拓くのに役立ちます。この技術実証装置は、最近になって南カリフォルニアにあるNASAのジェット推進研究所(JPL)から、メリーランド州グリーンベルトにあるNASAのゴダード宇宙飛行センターへ出荷。そこで2027年5月までの打ち上げに向けて、宇宙望遠鏡衛星に組み込まれる予定です。でも、この大陸をまたいでの旅の前に、ローマン・コロナグラフはエンジニアが“ダークホールを掘る”と呼ぶ、星の光を遮る能力の最も完全なテストを受けていました。宇宙では、この“ダー...系外惑星からの光を直接観測できる宇宙望遠鏡“ローマン・コロナグラフ”の準備完了!恒星の光を取り除く技術で第2の地球を発見へ

  • これで2例目! 直径が木星ほどしかない超低温の赤色矮星を公転する地球サイズの惑星“SPECULOOS-3 b”を発見

    今回の研究では、トランジット法で惑星を検出する望遠鏡ネットワークを用いて、直径が木星ほどしかない超低温の赤色矮星の周りを公転する地球サイズの惑星“SPECULOOS-3b”を発見しています。このタイプの星の周りに惑星が発見されたのは“トラピスト1”に続く2例目になります。“SPECULOOS-3b”は、主星に非常に近い軌道を回っているので、大気が存在する可能性は極めて低いようです。それでも、超低温矮星の性質を深く知ることや、生命の存在に適した惑星があるかどうかについても、より深く理解できる可能性があるようです。この研究は、ベルギー・リエージュ大学のMichaëlGillonさんを中心とする研究チームが進めています。サイズや質量が恒星としての下限に近い超低温矮星赤色矮星(※1)は、中心で水素の核融合反応が起...これで2例目!直径が木星ほどしかない超低温の赤色矮星を公転する地球サイズの惑星“SPECULOOS-3b”を発見

  • 地球の双子星“金星”に似た系外惑星を発見! 惑星が生命の存在に適した環境を持つための条件を探るカギになるかも

    今回の研究では、すばる望遠鏡の赤外線分光器“IRD”などを用いた観測と、NASAのトランジット惑星探査衛星“TESS”を用いた観測との連携を通じて、地球からわずか40光年の位置に新たな系外惑星“グリーゼ12b”を発見。“グリーゼ12b”は、地球や金星と同程度の大きさを持ち、太陽よりも低温の恒星の周りを12.8日をかけて周回しています。“グリーゼ12b”が恒星から受け取る日射量が金星の場合と同程度なこと。また、大気が散逸せずに一定量残っている可能性があることから、“グリーゼ12b”はこれまでに発見された系外惑星と比べて、金星のような惑星の大気の特徴を調べるのに最も適した惑星と言えそうです。金星は地球の兄弟とも呼ばれる惑星ですが、金星が地球と異なり生命にとって過酷な環境になった原因は、大きな謎として残されてい...地球の双子星“金星”に似た系外惑星を発見!惑星が生命の存在に適した環境を持つための条件を探るカギになるかも

  • NASAとの協力拡大で火星探査車を2028年に打ち上げへ! ロシアによるウクライナ侵攻で中止になっていたエクソマーズ2022

    2024年5月16日のこと。ヨーロッパ宇宙機関とNASAは、ヨーロッパ宇宙機関の火星探査計画“エクソマーズ(ExoMars)”における、火星探査車“ロザリンド・フランクリン(RosalindFranklin)”のミッションに関する覚書に署名したことを発表しました。図1.火星表面で探査を行うヨーロッパ宇宙機関の火星探査車“ロザリンド・フランクリン”のイメージ図。(Credit:ESA/Mlabspace)“ロザリンド・フランクリン”は、かつて火星に存在していた、あるいは今でも存在するかもしれない、生命や生命の痕跡の探索を目的として開発された探査車です。放射線や厳しい温度環境から保護されているとみられる地下2メートルからサンプルを採取するためのドリルをはじめ、ラマン分光装置、赤外線ハイパースペクトルカメラ、有...NASAとの協力拡大で火星探査車を2028年に打ち上げへ!ロシアによるウクライナ侵攻で中止になっていたエクソマーズ2022

  • 最も遠方の宇宙に合体しつつある超大質量ブラックホールを検出! 超大質量ブラックホールは最初期の頃から銀河の進化と関係していた

    国際的な天文学者チームは、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いて、宇宙誕生7億4000万年後の宇宙で2つの銀河と、その中心に位置する超大質量ブラックホール(※1)が合体しつつあることを発見しました。この発見は、これまでに検出されたブラックホール同士の合体として最も遠いもので、宇宙の初期に検出された初めての例になります。※1.超大質量ブラックホールは、太陽の数十万~数十億倍以上もの質量を持つブラックホール。ほぼ全ての銀河の中心には、このような大きなブラックホールが存在すると考えられている。ブラックホールの急成長“ZS7”と呼ばれる合体しつつある銀河のペアに存在るブラックホールの質量は、どちらも太陽の5000万倍ほど。ただ、一方のブラックホールは高密度のガスの中に埋もれているので、はっきりしたことは分かっていま...最も遠方の宇宙に合体しつつある超大質量ブラックホールを検出!超大質量ブラックホールは最初期の頃から銀河の進化と関係していた

  • 生命活動に関連して放出される化学分子の存在を証明することは困難… 系外惑星“K2-18b”にジメチルスルフィド存在するのか

    太陽以外の恒星の周りを公転する太陽系外惑星(系外惑星)の中には、地球のように適度な温度と豊富な液体の水を持つかもしれない惑星がいくつか見つかっています。その一つ“K2-18b”について、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡による大気組成の観測の結果、豊富なメタンと二酸化炭素に加えて、生命活動と関連のあるバイオマーカーとして注目されている“ジメチルスルフィド”が見つかったと、2023年9月に発表された研究では報告されていました。でも、今回の研究では、この報告に否定的な結果でているんですねー本研究では、“K2-18b”模した惑星の大気をコンピュータでモデル化。シミュレーションにより熱や光によって生じる化学反応を再現してみると、この観測データを元にジメチルスルフィドを検出できたという先の研究結果は、怪しことが示されたそ...生命活動に関連して放出される化学分子の存在を証明することは困難…系外惑星“K2-18b”にジメチルスルフィド存在するのか

  • 全体がマグマで覆われた惑星“TOI-6713.01”を発見! 潮汐力と恒星からの放射による加熱

    ある天体の近くを別の天体が公転している場合、潮汐力によって内部が過熱されて地質活動が活発になることがあります。そのような天体の一例が木星の衛星イオです。イオは、ほぼ常に複数の火山が噴火しているほど地質活動が活発です。今回の研究では、地球から約66光年離れた恒星“HD104067”について、NASAのトランジット惑星探査衛星“TESS”による観測データを分析。その結果、これまで見逃されていた3番目の惑星の候補を見つけています。今回見つかった惑星候補“TOI-6713.01”は、他の惑星からの潮汐力によって表面温度が最大約2400℃に加熱され、全体がマグマで覆われているようです。近くからは、まるで“スター・ウォーズ”に登場する惑星“ムスタファー”のように見えるそうです。さらに、近い将来には“TOI-6713....全体がマグマで覆われた惑星“TOI-6713.01”を発見!潮汐力と恒星からの放射による加熱

  • JAXAとヨーロッパ宇宙機関共同の水星探査ミッション“ベピコロンボ” 推進システムに十分な電力を供給できない不具合が発生

    JAXAとヨーロッパ宇宙機関が共同で推進する水星探査ミッション“ベピコロンボ”で、不具合が発生していることが公表されました。発生している不具合は、電気推進システムがフルパワーで動作しないというものです。図1.水星に接近する“ベピコロンボ”のイメージ図。手前側に太陽電池アレイを備えた電気推進モジュール(イオンエンジン)が見えている。(Credit:spacecraft:ESA/ATGmedialab;Mercury:NASA/JPL)ラスターに利用できる十分な電力が供給できない問題“ベピコロンボ”は、JAXAとヨーロッパ宇宙機関のそれぞれの周回探査機で、水星の総合的な観測を行う日欧協力の大型ミッションです。周回探査機は、JAXAの水星磁気圏探査機“みお(MMO:MercuryMagnetosphericOr...JAXAとヨーロッパ宇宙機関共同の水星探査ミッション“ベピコロンボ”推進システムに十分な電力を供給できない不具合が発生

  • 小惑星の衛星セラムに働く力から年齢を200~300万歳と予測! コストが低く多くの小惑星に適用できる年齢推定方法

    太陽系には無数に小惑星が存在していますが、実はその年齢を知ることは一般的に困難なんですねー小惑星の年齢は、表面にあるクレーターの密度が推定の大きな手掛かりとなります。ただ、この手法が使えるのは、探査機による接近観測が行われたほんの一握りの小惑星に限られてしまいます。今回の研究では、NASAの小惑星探査機“Lucy(ルーシー)”が接近観測を行った152830番小惑星ディンキネシュの衛星セラムについて、力学的なシミュレーションを通じて年齢推定を行っています。その結果、セラムの年齢はわずか200~300万歳で、相当に若いことが示されました。さらに、この年齢はクレーターの密度を元に推定された年齢と一致していたんですねー力学的な年齢推定は、望遠鏡などを用いた遠隔的な観測方法に適用できる手法です。このことから、無数に...小惑星の衛星セラムに働く力から年齢を200~300万歳と予測!コストが低く多くの小惑星に適用できる年齢推定方法

  • 初期の火星では有機物は生命活動ではなく大気中の一酸化炭素から作られていた!? 生命探査における有機分子の由来特定に役立つかも

    火星の堆積物中に含まれる有機物は、大気中の一酸化炭素(CO)から生成されたものがあるようです。火星の有機物は、異常な炭素の安定同位体比(※1)を持つことが知られていました。でも、その原因は不明だったんですねーそこで、本研究では大気中でCO2の光解離によって作られるCOが、この同位体異常を持つことを、室内実験と理論計算によって明らかにしています。さらに、このCOは還元的な初期火星大気中では、有機物となり堆積することも分かりました。研究チームでは、こうした実験結果を元にモデル計算を実施。すると、驚くべきことに、最大で大気中のCO2の20%が有機物として地表に堆積したことも分かりました。このような結果は、今後の火星探査に新しい展開をもたらすはずです。また、さらなる研究により、生命発生前の初期惑星環境で、どのよう...初期の火星では有機物は生命活動ではなく大気中の一酸化炭素から作られていた!?生命探査における有機分子の由来特定に役立つかも

  • 生命と大気の両方を保護している地磁気は37憶年前に存在していた

    地球は固有の強い磁場(地磁気)を持つ天体の一つです。この地磁気は、陸上に棲む多くの生物にとって欠かせない存在で、地球誕生から徐々に強くなっていったと考えられています。ただ、その正確な時期はよく分かっていませんでした。今回の研究では、グリーンランドから産出した極めて古い岩石を調査。その結果、この岩石から約37億年前の地球に地磁気が存在していた証拠を見つけています。このことは、最も古い時代の地磁気の証拠になるもの。また、その強度は現在と比べてもそれほど弱くない値なので、地磁気の形成や、古代の生命がどのように進化し、数を増やしたのかを探る上でも重要な発見になるようです。この研究は、マサチューセッツ工科大学のClaireI.O.Nicholsさんたちの研究チームが進めています。図1.有害な太陽風を遮断する地磁気は...生命と大気の両方を保護している地磁気は37憶年前に存在していた

  • 新星爆発が生命にとって必須元素のリンを桁違いに多く供給していた? 超新星起源説では説明できないリン元素の化学進化

    遺伝子を合成するのにリンは不可欠な元素です。そのリンは、一体宇宙のどこで作られるのでしょうか?この疑問について、これまで私たちは明確な答えを持っていませんでした。今回の研究では、白色矮星の中で最も重い星の表面で生じる爆発によって、大量のリンが合成されることを突き止めています。さらに、その爆発頻度、つまり宇宙へのリンの供給率も分かってきました。46憶年前の太陽系誕生時は、現在よりもリンの要求率は高かったことようです。この研究は、国立天文台JASMINEプロジェクト辻本拓司助教、西オーストラリア大学国際電波天文学研究センター戸次賢治教授たちの国際共同研究チームが進めています。本研究の成果は、アメリカの天体物理学雑誌“アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ”オンライン版に、“PhosphorousEnrich...新星爆発が生命にとって必須元素のリンを桁違いに多く供給していた?超新星起源説では説明できないリン元素の化学進化

  • 生物が存在する惑星は緑色とは限らない? 赤色矮星を公転する系外惑星に存在する光合成生物を考えてみる

    宇宙から地球を見ると、植物に広く覆われた陸地が緑色に見えます。この緑色は、植物の光合成を支えるクロロフィル(Chlorophyll、葉緑素)と呼ばれる物質と関係があります。植物の葉などに含まれているクロロフィルは、太陽光を吸収する役割を果たしています。でも、緑色の光は吸収されにくく、葉から漏れ出た緑色光を私たちの目がとらえることで植物は緑色に見えています。図1.NASAの宇宙天気観測衛星“DSCOVR(ディスカバー)”の光学観測装置“EPIC”で2024年5月5日に撮影された地球。(Credit:NASAEPICTeam)それでは、植物のように光合成を行う生物が繫栄している太陽系外惑星(系外惑星)も緑色に見えるのかというと、そうとは限らないようです。今回の研究では、光合成生物が存在する系外惑星の色が、地球...生物が存在する惑星は緑色とは限らない?赤色矮星を公転する系外惑星に存在する光合成生物を考えてみる

  • 質量や大きさ、周囲の環境が違っても、ガス供給やジェットの放出などの物理過程は超大質量ブラックホール間で普遍的なのかも

    今回の研究では、天の川銀河の中心に潜む超大質量ブラックホール“いて座A*(エースター)”のごく近傍で、電波の偏光をとらえることに成功。新たに得られた偏光の画像からは、ブラックホールの縁から渦巻状に広がる整列した強い磁場が発見されました。この磁場構造は、M87銀河の中心にある超大質量ブラックホールと驚くほど似ていて、強い磁場がすべてのブラックホールに共通して見られる可能性を示唆しています。さらに、この類似性は、“いて座A*”に隠されたジェットがある可能性も示唆しているようです。この研究は、国際研究チーム“イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・コラボレーション”が進めています。本研究の成果は、2024年3月27日付でアメリカの天体物理学雑誌“AstrophysicalJournalLetters”に掲...質量や大きさ、周囲の環境が違っても、ガス供給やジェットの放出などの物理過程は超大質量ブラックホール間で普遍的なのかも

  • カール・セーガンは30年前に異星人探しの実験をしていた! 木星探査機“ガリレオ”の観測データを用いた地球上の生命発見

    1989年10月のこと、NASAの木星探査機“ガリレオ”が打ち上げられました。“ガリレオ”は木星に到達するのに十分な速度を得るため、まず太陽系内を何度か周回し、地球や金星をフライバイ(※1)して加速する必要がありました。※1.探査機が、惑星の近傍を通過するとき、その惑星の重力や公転運動量などを利用して、速度や方向を変える飛行方式。燃料を消費せずに軌道変更と加速や減速が行える。積極的に軌道や速度を変更する場合をスイングバイ、観測に重点が置かれる場合をフライバイと言い、使い分けている。図1.NASAの木星探査機“ガリレオ”が600万キロ離れた場所から見た地球と月。(Credit:NASA)フライバイを行ったとき、ガリレオは本来の目的である木星探査に先立って地球を観測しています。その観測でカール・セーガン(※2...カール・セーガンは30年前に異星人探しの実験をしていた!木星探査機“ガリレオ”の観測データを用いた地球上の生命発見

  • やっぱり月面から飛び出した破片? 地球を周回しているように見える準衛星“カモオアレワ”を生み出したクレーターを特定

    469219番小惑星“カモオアレワ(Kamooalewa)”(※1)、は見た目は地球の周囲を公転しているように見える“準衛星(Quasi-satellite)”の一つです。その公転軌道や表面の物質の観測結果が示しているのは、カモオアレワが普通の小惑星よりも月に類似していること。このことから、カモオアレワが月の破片だという証拠探しが行われています。今回の研究では、カモオアレワのような破片が月の表面から飛び出すには、どのような条件が必要かをシミュレーションで解析しています。その結果分かってきたのは、数百万年前に直径10~20キロのクレーターを作るような天体衝突が、カモオアレワのような準衛星軌道を持つ小惑星を飛び出させるということでした。これほどの直径と若さを持つクレーターはジョルダーノ・ブルーノしかないので、...やっぱり月面から飛び出した破片?地球を周回しているように見える準衛星“カモオアレワ”を生み出したクレーターを特定

  • ブラックホールの大きさを測るには? 光でも逃げ出せなくなる境界“事象の地平面”までらしいです

    ブラックホールについての記事などを読むと、ブラックホールの大きさは“太陽の○倍の質量”というように、質量で表されているのを見ることが多いと思います。例えば、私たちが住む地球が属している天の川銀河の中心には、“いて座A*(いてざエースター)”という超大質量ブラックホールが存在していて、その質量は太陽の約400万倍の質量を持っていると考えられています。とても大きそうだということは何となく分かりますが、半径でいうとどれくらいになるのか想像は付きませんね。Credit:NASA’sGoddardSpaceFlightCenter;background,ESA/Gaia/DPAC重力で潰れたコンパクトな天体太陽のおよそ8倍以上の質量を持った恒星が、進化の最終段階で鉄の中心核を作ると、鉄は宇宙で最も安定した元素なので...ブラックホールの大きさを測るには?光でも逃げ出せなくなる境界“事象の地平面”までらしいです

  • 火星ミッションで食料を賄う農業は可能か? フランスの研究グループが可能性を探る探査車“AgroMars”を提案

    2016年に日本でも上映された映画“オデッセイ(原題はTheMartian(火星の人))”では、マットデイモン演じる宇宙飛行士マーク・ワトニーが火星に一人取り残されて、ジャガイモを栽培しながらサバイバルを続けるシーンがあります。NASAでは、2040年までに火星への最初の有人飛行を実現するとしていますが、このような長期ミッションでは克服すべき課題がいくつかあります。その一つが、火星滞在中の食料をどう確保するのかという問題です。もちろん、最初の有人探査では、必要となる物資は地球から運搬することになるはずです。では、続けて行われる火星での長期滞在ミッションでも、物資は地球から運搬されるのでしょうか?やはり、火星ミッションでの生活に必要な物資は、一部でも火星で賄う必要があるはずです。今回の研究では、火星で農業を...火星ミッションで食料を賄う農業は可能か?フランスの研究グループが可能性を探る探査車“AgroMars”を提案

  • 観測開始は2025年! 標高5640メートルの山頂に大型赤外線望遠鏡TAOが完成

    日米欧で運営される電波望遠鏡群“アルマ望遠鏡”の建設地として知られる南米チリのアタカマ砂漠。この砂漠にそびえるチャナントール山の山頂(標高5640メートル)に、標高世界一の天文台として建設された“東京大学アタカマ天文台(TAO;TheUniversityofTokyoAtacamaObservatory)”があります。この天文台に、口径6.5メートルの大型赤外線望遠鏡(TAO望遠鏡)のエンクロージャ(望遠鏡など機械設備一式を格納した筐体)を含めた山頂施設が完成したことを、5月1日に東京大学が発表しました。図1.南米チリのアタカマ砂漠にそびえるチャナントール山。その山頂に建設されたTAO天文台の観測ドーム。(Credit:東京大学TAOプロジェクト)標高5640メートルの山頂に作られた赤外線望遠鏡東京大学ア...観測開始は2025年!標高5640メートルの山頂に大型赤外線望遠鏡TAOが完成

  • 小惑星リュウグウから回収した試料の表面に太陽系の磁場情報を記録した新しい組織を発見

    今回の研究では、探査機“はやぶさ2”が小惑星リュウグウから回収した試料の表面を詳細に調査しています。その結果、“マグネタイト(磁鉄鉱)”(Fe3O4)粒子が還元して非磁性となった、似た構造の木苺状組織を発見し、“疑似マグネタイト”(疑似Fe3O4)と命名しています。さらに、それを取り囲むように点在する渦状の磁区構造を持った多数の鉄ナノ粒子からなる新しい組織も同時に発見したそうです。今回の研究は、“はやぶさ2”の初期分析チームである“石の物質分析チーム”にょる初期分析の一環として行われました。この研究は、北海道大学低温科学研究所の木村勇気教授、ファインセラミックセンターの加藤丈晴主席研究員、同・穴田智史上級研究員、同・吉田竜視上級技師、同・山本和生主席研究員、日立製作所研究開発グループの谷垣俊明主任研究員、...小惑星リュウグウから回収した試料の表面に太陽系の磁場情報を記録した新しい組織を発見

  • NASAの火星小型衛星ミッション“EscaPADE”はブルーオリジンの大型ロケット“ニューグレン”初号機に搭載され打ち上げへ

    EscaPADE(EcapeandPlasmaAccelerationandDynamicsExplorers)は、火星を周回する軌道に2機の探査機を投入し、火星を取り巻く磁気圏などを観測するミッションです。このミッションにより様々なデータを得ることで、太陽風が火星の磁気圏に与える影響などが理解できる見込み。簡単に言えば、太陽風が火星の大気をどのように吹き飛ばし、火星の気候を変えてしまったのかが分かってくるはずです。2機の探査機はRocketLabが開発し、大きさは冷蔵庫ほど、燃料込みの重さは約120キロとなり、打ち上げは9月29日が予定されています。この2機の探査機を打ち上げるのが、ブルーオリジン社の新型ロケット“ニューグレン(NewGlenn)”です。ニューグレンは、直径7メートルの2段構成で全長82...NASAの火星小型衛星ミッション“EscaPADE”はブルーオリジンの大型ロケット“ニューグレン”初号機に搭載され打ち上げへ

  • 中性子星の自転が突然速くなる現象“グリッチ”の起源を探る! 中性子星内部の量子流体による量子渦に着目

    今回の研究では、中性子星の内部の量子流体(※1)が導く巨大な量子渦ネットワークの持つ統計性を、世界で初めて発見しています。※1.量子流体(超流動体ともいう)は、20世紀初めに冷却したヘリウムで発見された量子的な状態。量子流体は揃っている位相を持つので抵抗を持たない(粘性がない)流体という興味深い性質を持つ。類似的な状態として金属の超伝導(電荷もつ量子がつくる量子流体)があり、そちらは電気抵抗がゼロで電流が流れるので、応用上非常に重要。中性子星の量子流体は、Migdal(1960年)や玉垣‐高塚ら(1970年頃)による先駆的な研究を初めとして、現在も世界中でかっぱすに研究されている。中性子星は、太陽の10~30倍程度の恒星が、一生の最期に大爆発した後に残される宇宙で最も高密度な天体です。原子から構成される恒...中性子星の自転が突然速くなる現象“グリッチ”の起源を探る!中性子星内部の量子流体による量子渦に着目

  • 観測史上最も明るいガンマ線バーストの正体は普通の超新星爆発だった! なぜ生成されるはずの重元素が見つからないのか

    短時間に高エネルギーのガンマ線を放出する、宇宙で最も高エネルギーな天文現象の1つが“ガンマ線バースト”です。2022年に観測されたガンマ線バースト“GRB221009A”は、観測史上最も明るいガンマ線バーストとして天文学者の注目を集めました。このガンマ線バーストについては、どうしてこれほど明るいのかという議論が生じ、中には既存の物理学では説明できない現象が起きているとする説もあります。今回の研究では、ジェームズウェッブ宇宙望遠鏡を用いて“GRB221009A”の残光を観測。その正体が、特徴がない普通の超新星爆発(II型超新星)だったことを突き止めています。ただ、発生源が普通の現象だったと判明した一方で、新たな謎も生じているんですねー超新星爆発は鉄よりずっと重い元素を生成すると考えられてきましたが、特徴がな...観測史上最も明るいガンマ線バーストの正体は普通の超新星爆発だった!なぜ生成されるはずの重元素が見つからないのか

  • 彗星コマ中のアンモニア分子はどこから来たのか? 別の分子などから二次的に放出されているのかも

    今回の研究では、C/2014Q2(Lovejoy)彗星で観測されたアンモニア分子(NH3)を生成する謎の未同定分子について、彗星コマとガスのシミュレーション結果と観測結果との比較から、太陽紫外線での光解離寿命を約500秒とする結果を得ています。近年、彗星核にはアンモニウム塩(※1)が、窒素原子のキャリアとして豊富ではないかと指摘されています。でも、今回の研究結果においては、シアン化アンモニウム(NH4CN)や塩化アンモニウム(NH4Cl)といった単純なアンモニウム塩の存在は否定的と言えます。※1.アンモニウム塩は化学式ではNH4Xと表記される分子種の総称。XにはCNやClなどが入る。それでは、どのような分子がアンモニア分子の生成起源となっているのでしょうか?今後の分光実験による研究の進展が望まれています。...彗星コマ中のアンモニア分子はどこから来たのか?別の分子などから二次的に放出されているのかも

  • 小惑星の軌道を意図的に変更するミッションで予想外の結果! 少なくとも4個の岩が火星に衝突する可能性があるようです

    小惑星の軌道を意図的に変更できるかどうかを検証したミッションがありました。それは、NASAの小惑星軌道変更ミッション“DART”で、目標天体となった小惑星の衛星“ディモルフォス”の公転軌道を変更することに成功しています。ただ、実験では事前に予測されていない結果をもたらしているんですねーその一つが、幅数メートルの岩がいくつも飛び出したことでした。今回の研究では、DARTミッションで飛び出したことが観測された37個の岩の軌道を追跡。そのうち4個が、将来的に火星に衝突する可能性があることを突き止めています。この分析結果は、地球や火星に衝突する小さな天体の起源を考察する上で、重要なものになるようです。この研究は、地球近傍天体調整センター(NEOCC)のMarcoFenucciさんとイタリア国立天体物理学研究所(I...小惑星の軌道を意図的に変更するミッションで予想外の結果!少なくとも4個の岩が火星に衝突する可能性があるようです

  • なぜ、コロナはこんなに超高温になるのか? 熱以外の手段でエネルギーを伝える仕組み光遷移とその確率を上げる電弱ホール効果

    太陽の表面温度(※1)は5500℃なのに、数千キロ上空の“コロナ(太陽コロナ)”の温度は100万℃にもなります。なぜ、コロナはこんなに超高温になるのでしょうか?このコロナが加熱されるメカニズムはまだ分からず…“コロナ加熱問題”と呼ばれるこの謎の解明は、太陽研究における大きな課題になっています。※1.太陽を含めた恒星の“表面”は、通常は不透明な部分の最表層部のことを指す。これは“光球”と呼ばれ視覚的な表面と一致する。今回の研究では、“電弱ホール効果”と呼ばれる現象を通じて、コロナ加熱のカギは素粒子“ニュートリノ”が崩壊して“光子”となるとする理論を発表しています。この研究は、北海道大学の石川健三さんと北海道科学大学の飛田豊さんの研究チームが進めています。熱以外の手段でエネルギーをコロナへ伝える仕組み地球から...なぜ、コロナはこんなに超高温になるのか?熱以外の手段でエネルギーを伝える仕組み光遷移とその確率を上げる電弱ホール効果

  • JAXAが発表! H3ロケット3号機は先進レーダー衛星“だいち4号”を載せて6月30日に打ち上げへ

    H3ロケット3号機による先進レーダー衛星“だいち4号(ALOS-4)”の打ち上げ予定日が決定したと、4月26日にJAXAから発表されました。設定された打ち上げ日は2024年6月30日。打ち上げ予定時刻は、日本標準時間の12時6分42秒~12時19分34秒。打ち上げ不備期間は7月1日から7月31日としています。H3ロケットは、種子島宇宙センター大型ロケット発射場から打ち上げられることになります。図1.H3ロケット試験機2号機打ち上げライブ中継より先進レーダー衛星“だいち4号”搭載される先進レーダー衛星“だいち4号”は、2014年に打ち上げられた陸域観測技術衛星2号“だいち2号”の後継機となります。Lバンド合成開口レーダーを搭載し、新開発のデジタル・ビーム・フォーミング技術などを活用することで、“だいち2号”...JAXAが発表!H3ロケット3号機は先進レーダー衛星“だいち4号”を載せて6月30日に打ち上げへ

  • 初期の天の川銀河に合体した2つの銀河の痕跡を発見! 大量の恒星データから見つけた古く運動方向や速度が揃った2つの集団

    初期の天の川銀河は、複数の小さな銀河が合体して誕生したと言われています。近年、恒星の位置や運動方向に関する大規模なデータが揃ったことで、合体した銀河の痕跡を具体的に知ることができるようになってきました。今回の研究では、大量の恒星が記録されている“ガイア”と“スローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)”のデータを組み合わせて分析。そこから、合体した銀河の痕跡を探っています。その結果、今から約120~130億年前という極めて初期の時代に、天の川銀河と合体したと推定される2つの銀河の痕跡を発見することに成功。これらの銀河を、ヒンドゥー教の神話に因み“シャクティ(Shakti)”と“シヴァ(Shiva)”と名付けられたそうです。この研究は、ドイツ・マックス・プランク地球外物理学研究所(MPE)のKhyatiM...初期の天の川銀河に合体した2つの銀河の痕跡を発見!大量の恒星データから見つけた古く運動方向や速度が揃った2つの集団

  • 濃いガスの中で生まれた星が成長している間にも材料は外部から流れ込んでいる! なので星は絶えず化学的特徴を変え続けるようです

    太陽を始めとする恒星(星)は、材料となる分子ガスが雲のように集まった分子雲の中でも、特に分子ガスの密度の高い場所“分子雲コア”で生まれます。その星が生まれつつある分子雲コアで、外部から星の材料となるガスが追加で流れ込む構造が、最近の観測から見つかっています。このような構造は“ストリーマー”と呼ばれています。最近の研究からは、太陽系の形成段階においてもストリーマーが存在していた可能性が指摘されていて、その研究の重要性が認識され始めています。ストリーマーは、最終的に出来上がる星や惑星の化学組成に大きく影響すると考えられます。このことからもストリーマーを調べることは、生命を育む惑星系環境がどのように形成されるかを調べる上でも重要なことと言えます。今回の研究では、太陽と同程度の質量の星が生まれているペルセウス領域...濃いガスの中で生まれた星が成長している間にも材料は外部から流れ込んでいる!なので星は絶えず化学的特徴を変え続けるようです

  • 星の赤ちゃんの“くしゃみ”をアルマ望遠鏡による観測で発見! 星が誕生する過程で磁束を外に捨て去る仕組み

    太陽を始めとする恒星(星)は、材料となる分子ガスが雲のように集まった分子雲の中でも、特に分子ガスの密度の高い場所“分子雲コア”で生まれます。分子雲コアには磁力が働いていて、星が誕生する過程で磁束として分子雲コアのガスとともに星に持ち込まれます。でも、磁束をすべて持ち込んでしまうと超強力な磁力を持つ星になってしまい観測事実と合わなくなってしまいます。では、磁束を捨て去る仕組みは、どのようになっているのでしょうか?このことは磁束問題と呼ばれ、研究者の間で40年以上にわたり議論されていています。これまでは、磁気拡散という効果によって、星の周りの円盤から磁束のみがジワジワと染み出すように抜けていくと考えられていました。今回の研究では、地球から約450光年と星の誕生現場としては最も近いおうし座分子雲にある、“MC2...星の赤ちゃんの“くしゃみ”をアルマ望遠鏡による観測で発見!星が誕生する過程で磁束を外に捨て去る仕組み

  • 太陽系外縁天体は数十億年に渡ってほとんど変質を受けていない原始的な天体なのか? 小惑星アロコスの内部構造をモデル化した研究

    太陽系の8つの惑星のうち、最も外側を公転している海王星の公転軌道のさらに外側。そこには、“太陽系外縁天体”(※1)と呼ばれる天体が無数あります。※1.元の論文では、アロコスなどのような天体を“カイパーベルト天体(KBO)”と表現している。ただ、エッジワースとカイパーが予測した天体の存在や分布は、現在知られているものとは大きく異なっていて、この名称には異論もある。最近では、正確にはイコール関係ではないものの、ほぼ同義語かつ中立的な語として“太陽系外縁天体”という呼称が使われる傾向にので、ここでは太陽系外縁天体と表現を使用している。その太陽系外縁天体は、形成時に取り込んだ揮発性物質(低温でも蒸発しやすい成分)を、現在でも保持しているのではないかと考えられています。でも、揮発性物質がどのような形で保持されている...太陽系外縁天体は数十億年に渡ってほとんど変質を受けていない原始的な天体なのか?小惑星アロコスの内部構造をモデル化した研究

  • 太陽観測衛星“SOHO”の画像から見つかった彗星が5000個に到達! ボランティアによる市民科学プロジェクトによる成果

    NASAとヨーロッパ宇宙機関の太陽観測衛星“SOHO”は、太陽を観測しながら、太陽のごく近くを通過する彗星を次々と見つけてきました。“SOHO”は彗星を観測する衛星ではないにもかかわらず、これまでに“SOHO”以外が発見してきた全ての彗星を上回るほどの数の彗星を発見しているんですねーそして、観測開始からもうすぐ28年となる2024年3月25日のこと、“SOHO”の撮影画像から発見された彗星の数がちょうど5000個目に到達。このマイルストーンは多くの人々の協力なしには達成できなかった数値で、市民科学が科学的研究に影響を与えていることを示す一例となりました。図1.太陽観測衛星“SOGO”のイメージ図。“SOHO”は太陽を観測するために設計・運用されていたが、図らずも彗星観測にとって有用なこと分かった。(Cre...太陽観測衛星“SOHO”の画像から見つかった彗星が5000個に到達!ボランティアによる市民科学プロジェクトによる成果

  • 天の川銀河で最大の恒星質量ブラックホールを発見! 重元素の少ない恒星から生まれたようです

    恒星質量ブラックホールは、大質量星が超新星爆発を起こした後に誕生する、太陽の数倍~数十倍程度の質量を持つブラックホールです。今回発見されたのは、これまで天の川銀河で発見された中で最も重い恒星質量ブラックホールでした。このブラックホールが位置しているのは、わし座の方向約1962光年彼方、質量は太陽の約33倍。ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星“ガイア”(※1)のデータから、恒星が見えざる天体に振り回されているように見える事例を探すことで発見されました。“ガイア”はヨーロッパ宇宙機関が運用する衛星で、天の川銀河の精密な3次元マップを作ることを目的とし、天体の位置や運動について調査する位置天文学に特化した宇宙望遠鏡です。天の川銀河に属する莫大な数の恒星の位置と速度を、きわめて精密に測定・記録しています。※1.“ガ...天の川銀河で最大の恒星質量ブラックホールを発見!重元素の少ない恒星から生まれたようです

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