路傍の如来の説法−5〈残暑の頃の集い①〉
上野の森の木々も隙間を塞がんとするが如く精一杯に繁り.まだその勢いの衰えを見せぬ日差しは大地を焦がすが如く照り付け.時折り吹いてくる涼風が仏衣の裾を揺らし、行く夏を惜しむかの如く鳴き交わす蝉の声に.秋の足音を感じる残暑の頃、人々は別段に示し合わす事もなく再び導かれるように集まってきた。上野駅の不忍口を出ると.いつもと同じように辻に立たれる[路傍の如来]を拝し.その湧き上る歓喜を抑えつつ近づき低頭合掌し.路傍の如来の持鉢に僅かな施与をすると.路傍の如来が微笑み指し示す空地へと右回りに移動して路傍の如来が行を上げられるのをお待ちした。 昨晩降り続いた雨の湿気で蒸し暑さを感じながら、皆それぞれに前の…
2019/08/30 11:52