朝、目が覚めると布団の中で、足を縮こませて、布団の面積の3分の1ほどを余らせていることに気づく。身も心もコンパクトにまとめて、冒険的な野心を消失していく季節。私はそういう季節の生まれだ。母親の産道から何とか出てきて産声を上げると同時に、外界の過酷さを悟ったことだろう。出てきた瞬間、「ムリっすムリっす」と言いながら子宮に戻ろうとしたに違いない。縮こまっている朝は、「ムリっす」を思い出す。 はじめての外界への感想がそんなものだったら、当然私みたいな非力な人間に育つ。夏に生まれてたらきっと「ムリー!生きていけるかー」と陽気にツッコんでいただろうし、春か秋だったら「ふーん、こんなもんね」と肝の据わった…