そのときイヤホンで聴いていた深夜ラジオの馬鹿馬鹿しさよ
数年前、いかんともしがたい夜に、 「じゃあいっそ自転車乗っちゃう?」と、 寝静まった実家のドアを静かに開け、 ひとり自転車で都心を走りまくった。 とにかく坂が多くて飽きることはなかった。 長い下り坂はスリリングでよかった。 深夜、中心部は東京でもっとも暗い街になる。銀座まで行くと坂はなく、 数時間前までは煌びやかだったであろうショーウィンドウ。 必要最低限の照明がむしろ生々しかった。 汗が冷えてきたのと同時に現実的な気持ちが返ってきて、 明日に備えて帰路に着いた。 上り坂が続きまた汗をかく。 背後から空が白んでゆく。 車の往来が増え、 暗闇で見えなかった泥酔者たちが ところどころで路上で干から…
2023/06/20 00:45