あなたへ 7 働き者
かくして「一人っ子」の恩恵は、新たなきょうだいの誕生まで。その最たるものは、夕飯である。前橋時代に、肺炎を患い、入院したこともあり、あなたは、体の線が細く、風邪を引きやすい「心配な子」であった。一年生の身体計測では、体重が17kgほどで、背もクラスで前から三番目だったと、あなたは記憶している。最初の子として、子育ての経験のない両親は、ずっと心配であったに違いない。夕飯の場面。タマネギが嫌い、食が細いあなた。食事が始まると、ご飯の盛られた器に、父から母から、おかずが投げ入れられる。たとえば、すき焼きが出た時には、糸こんにゃくしか取ろうとしない私の茶碗に、父から牛肉が、母から、白菜、春菊、椎茸が、次々と載せられていく。野菜炒めのときには、肉の脂身だけ摘まんでいるあなたに、人参、キャベツ、タマネギの攻勢が始まる...あなたへ7働き者
2024/09/28 21:59