【オリジナル小説】魔法少女まどか☆マギカ[新説]~ヴァルプルギスナハト~ 第十六話
第十六話 ともだち(beste Freundin) 「実は私、魔法少女やってます」 「は?」 翌日の放課後、ここは学校の屋上。 那月は壮絶なカミングアウトを、ど真ん中に直球でズバっと投げ込んだ。 「だから私ね、魔法少女なの。キュゥべえっていう変な生き物と契約して、魔女と戦うことになっちゃったの」 那月の表情は真剣そのもの。上半身を前のめりにし、柚葉の顔を覗き込むように語り続ける。 「どんな願いもひとつだけ叶う代わりに、魔法少女になって魔女と戦わないといけないの」 柚葉は片足を一歩引いて、口を歪めている。そんな柚葉に詰め寄るように、那月はさらに続けた。 「魔女っていうのは異形の姿をした化け物で、普通の人間には見えないんだけど、呪いを振り撒いて人間を殺そうとしているの」 身振り手振りを交えて、魔女の姿を伝える。 「魔女を倒すとグリーフシードっていうのが貰えるんだけど、それでソウルジェムの穢れを癒す……っていうか、つまり回復しないと私も死んじゃうの」 那月の言葉はさらに熱を帯び、感情たっぷりに話し続ける。 「でね、この間のプールの帰りにも魔女が出てきちゃって、その時は他の魔法少女が助けてくれたんだけど……柚葉も見てたでしょ? 知らない子が飛んだり跳ねたりして、魔女を退治するところ」 見滝原プールの帰りは柚葉も一緒だったので、蒼ユリが魔女を退治するところを見ていた。 「だからね、その……」 ひと通り済ませたところで、那月は言葉を詰まらせた。目を伏せると萎んだように俯いて、ウジウジと『らしくない』姿を見せた。 言ってみれば、ここまでの話はただの説明であって、本当に伝えたいのはそんなことじゃないんだよね。 柚葉は黙っていた。何も言わず、黙って次の言葉を待っていた。 「今まで隠してて、ごめん」 ようやく『本当に言いたかった言葉』が、那月の心の底からしぼり出された。魔法少女うんぬんとか、魔女と戦ってどうのとか、そんなことは結果の話であって、今日この壮絶なカミングアウトの前置きでしかない。 今まで伝えられなかった、話さなければならなかった、本当に言いたかった言葉が言えた。 ほんの少しの沈黙をおいて、柚葉が答える。 「何を言い出すかと思ったら『私、魔法少女です』って……那月さんの頭には、お花でも咲いてるのかな」 「いや、だから……」
2019/04/26 20:00