近松に恋を問うたなら
○揖斐高『頼山陽 詩魂と史眼』(岩波新書)……揖斐先生は近世文学の学者のなかで抜群に文章のうまい方ですが、本書などはまさに円熟の筆捌き。単なる文飾なんてものではなく、すべてが見えている人だからこそ書ける文章なのだろう。まして対象が頼山陽という少なからず暑苦しい人間だから、ここまでしずかに描ききるのはよけいに難しい(と思われる)。○夫馬進『訟師の中国史』(筑摩選書)○米田彰男『イエスは四度笑った』(筑摩選書)……イエスが笑ったという記述は『ユダの福音書』に四回出てくるが、いずれもグノーシス主義的な、正統派の教義を嘲笑する性格のもの。つまりグノーシス主義の宣伝のためのものとおぼしい。そして共観福音…
2024/08/07 11:49